【完結】素直に家政婦が必要だと言ってください

あおいまとか

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14.輝かしい未来

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「ええ?お出かけですか?」

 玄関を出ようとドアを開けた。協会長につけられた、助手が慌てている。
 しかしセヌートの意識は外の太陽に向いていた。
 (眩しすぎる。徹夜の身にはつらい)
 もう若くないのだ。

  
 助手が慌てて壺を出している。

「違う。コロンバリウムじゃない……じいさんのとこ」

 この助手には感謝している。トゥッセに会いに行く時に、壺にトゥッセの好物を詰めてくれる。

 墓まいりに行くと、少しだけ心が安らぐ。
 まだ、自分がトゥッセに何かできることがあると感じることができるから。地の国にいった者に、そんな気持ちを抱くのは幻想だとわかっていたが、もうトゥッセと自分がなんのつながりもないと思うよりマシだった。

「協会長ですか?……いってらっしゃいませ」

 助手が、こちらに丁寧に頭を下げた。
 フラフラとセヌートは歩き出す。

 今日持って行くのは、例の準禁術の媚薬だ。先日、うっかりこぼしてしまったが、本来ならセヌートしか触ることが許されず、直接じいさんに手渡さないといけない薬である。

 この仕事もたぶん自分でなくてもいい。作れる人数はたしかに少数だが、他にも作れる魔術師は王都にいるはずだ。じいさんが俺の生活を心配して回してるだけだ。

 作りなおしにも時間がかかってしまったので、最後の仕上げである昨夜は夜通し起きているはめになった。提出期限はとっくに切れている。

 だが、しびれをきらした協会長に家に乗り込まれても困る。

 会うといろいろ小言を言われるが、協会長が自分を心配しているのはわかっている。

 彼はああ見えて、魔術師全員を慈しみ国内の魔術師の配置に心を砕いてる。魔術師協会長に魔術の能力はそう必要とされていない。市井に王宮に、人材の差配が主な仕事だ。他人に興味がないことの多い魔術師の中では、希少な人物だ。

 だから自分に助手を、つけようとする。

 今までの助手はいつの間にか居なくなっていたし、それでいいと思っていた。ほおっておいてほしかったからだ。あの家で1人で生活するのになんの不自由も無かった。

 今度の助手は長くなってしまっている。

 
 それについても協会長と話さなければ。
 
 ああ、それにしてもあの晩はよく眠れたな。

 媚薬のこぼれた事故を思い出す。
 いつも眠りは浅く、何か夢をみているが、朝起きた時には夢の内容は覚えていない。目覚めても体が重く、疲れがあるだけだ。
 
 しかしあの晩はしっかり熟睡したと感じて、朝を迎えた。うしろにナニが入ってはいたが。
 体を限界まで動かしたからかもしれないし、ねむるときに人肌がそばにあったからかもしれなかった。
 
 だが、ただ眠るために使うには、この媚薬は原料が高価すぎる。
 交わっていた時のキースを思い出す。
 閨事にうとそうな彼は、こちらがびっくりするほど最中も一生懸命だった。
 
 彼は若い。まだ何も失ってない若者だ。

 俺とは違う。彼には未来がある。
 早く、自分から手放してやらねばならない。


 トゥッセと別れてから、頭にモヤがかかったようにうまく思考できない。昔はすぐにいろんなことを決断できた気がするのに。

 ***

 セヌートは協会長に媚薬を渡しながら伝える。

「助手はもったいないですよ。こんなおじさんに 」
「あほうめ。お前の倍以上はいきているわしに、喧嘩をうっとるのか 」

 睨まれるが、そう怖いわけではない。

「未来ある若者です」
「わしにとってはお前も十分若い。わかっとるか?」

 協会長には、リーヴァイ師について学んでいた頃から目をかけてもらった。出会った頃から、じいさんだったが、魔王討伐から帰ると、彼はさらに老け込んでいた。

 若く、遠征と戦闘に耐えうる魔術師を幾人も戦場に送り込む責任を、彼も、故リーヴァイ師も感じていたのを知っている。

 もともと孤児で、日々の食事にもこと欠いていたのだ。魔術師候補として拾わなければ、あの状況の王都では、早晩スラムの隅で冷たくなっていただろう。だからそんなに気に病まなくていいのにと思う。自分など気にかけなくていいのに。

 自分が英雄などと呼ばれるようになったのはたまたまだ。
 たまたま人より魔力が大きく、たまたま魔物の巣で、魔王に直行する集団と行動を共にした。それだけ。
 
「助手は不要です。おれのそばではなく、もっと有意義にすごさせてやってください 。
 彼らのためにおれたちは頑張った 。
 若い彼らがのんびりと食事をとっている。それだけで十分です」
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