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第十楽章
獲物を狩る者(7)
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苦しむリンカを見かねたか、ラッドが声をかけてくれた。
「リンカ、この歌詞に意味は無いんだよね?」
「うん」
「だったら歌詞を変えよう」
「でも、どんな歌詞が良いかは分からないの」
「君が成功したとき『何がやりたかったのか』その願いを言葉にして」
「で、でもそれって……」
言葉によるイメージ補強、それはあの人が教えた魔法の使い方である。それを呪歌に使いたくはない。
「願いを言葉にする、そうする事で言葉に力が宿るんだ」
「え?」
「言葉には力がある。人の心を動かす力が。その言葉をメロディに乗せるから、歌は人の心を打つんだ。言葉の力を、歌詞の力を信じてくれ」
「違う……」
「何が?」
「うん、違うんだ。ありがとう、ラッド」
意味ある言葉を使う、行為としては同じだが、ラッドの考えは魔法に限定したあの人の教えより広い概念だ。
あの人は信じられないし信じたくない。
だがラッドなら信じられる。
大群衆の心を、今リンカの心を「言葉の力」で動かしたラッドなら。
「あの時私が願った事は……一点に集中する……違うな。もっと手で束ねてぎゅっと絞る様な、押しつぶす。ああ、それは力の使い方で願いじゃないか。私は一点に集まって欲しかったんだ、魔力に。だから魔力よ集まれーかな?」
「落ち着いて。リンカが納得できるものが正解だ。君が決めて良いんだから」
その言葉もまたリンカの心を動かした。
「私が決めて、良いんだ」
リンカは目指していた地を見失い、今まで彷徨っていた。だがそれは違うのだ。
今は自由に、進路を自分で決めて良いのだ。
(私はあの時、絶望したんじゃない。自分で決めていた進路から解放されたんだ)
胸のつかえがスッと抜けた。
「私は魔力が集まる事を願っていた。魔力よ集まれー、私が決めた一点に。ちょっと長いな。魔力よ集えー、私の前に」
かなり良い線だ。
「魔力よ集え、私の手の間に」
惜しい。
「魔力よ集え、我が手の間に」
言葉がなめらかに出た。
「魔力よ集え、我が手の間に。これだ!」
「それを曲に乗せよう」
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
ラッドが二音強く奏でた。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
三番目を高く奏でた。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
二音、上と下。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
急激に魔力が収縮した。両手の間で小さな燐光が灯る。芥子粒より小さいが、先ほどより大きな緑の光が。
リンカの胸から喜びがあふれ出た。
「ラッド、出来たよ!」
「さすがリンカだ!」
違う。さすがなのはラッドだ。
リンカの心は喜びに次いで自信が湧いてきた。彼がいれば自分も――
「その前に、やる事を片付けないとね」
リンカはドラゴンに向き直った。
「さっきのは、これよ!」
凝縮した魔力を一方に放った。
光はドラゴンの鼻先を掠めて虚空へと消える。それを目で追ったドラゴンが臭い息を吐いた。
「ドラゴンの怒りが解けたぞ」
ラッドが声を弾ませる。
「やったんだ、私……私たち」
闇に閉ざされていたリンカの人生に、希望の光が差し込んでいた。
♪
「……キースキン、本当にドラゴンの怒りが解けたのだな?」
トゥシェがラッドに確認してきた。
「ああ、目を見れば分かるさ」
猫目型の瞳孔が広がったのだ。
「……間違いないのだな?」
「おい」
「大丈夫だよトゥシェ。ラッドにはお客さんの心が分かるんだから」
「……信じましょう」
(こいつ)
トゥシェはリンカから長杖を受け取ると、ドラゴンに向かって歩きだした。その足取りはしっかりしたもので、躊躇いや恐れといった足音の乱れは聞こえない。
(凄い度胸だ)
嫌味な奴だが、その勇敢さは認めざるを得ない。
トゥシェは右手を掲げた。
「ドラゴンよ!」
裏返りこそしたが、声も出ている。
「贈り物だ。受け取れ!」
「おい、ちょっと大胆すぎるぞ」
思わず声を漏らしてしまう。リンカも口元に両手を当てて震えている。
近づいたトゥシェにドラゴンが頭を下げてきたのだ。巨大な口が少し開き、ずらりと並ぶ牙が見える。
(そうか。口に獲物が近づくのだから、ドラゴンが緊張することは無いのか)
犬ならば仰向けになって腹を見せる、降参の仕草なのだろう、ドラゴンの口に近づくという行為は。
その口元までトゥシェは迫る。
彼が掲げた右掌から宝石が宙に浮き上がった。空中を滑ってドラゴンが開けた口に飛び込む。
音を立ててドラゴンが口を閉ざしたとき、リンカが小さく悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫なの?」
「あ、ああ。目を細めているから、怒ってはいないよ」
ドラゴンはゆっくりと首をもたげた。翼を広げる。どうやら移動するらしい。
巨体が浮かび上がった。重さを感じさせずに上昇する。翼を動かさないせいか風はあまり吹かない。触れてもいない木々が大きくしなり、折れかけていた幹があちこちで音を立てて最後の繋がりを断たれた。
高度を上げたところでドラゴンは翼を打ち振り、飛び去って行く。
「終わった……」
ラッドの体から力が抜け、仰向けに倒れた。
「大丈夫?」
リンカが心配そうに覗き込んでくる。
「き、緊張が解けたら、腰が抜けて……」
我ながら情けない声だ。なのにリンカは笑顔になった。
「良かった。私もさっき、そうなったよ。ドラゴンが相手だもん、しょうがないよ」
「……情けないぞ、キースキン」
戻ってきたトゥシェの声が不満げだ。
「し、仕方ないだろ。俺は……君の様に、勇敢じゃないから」
「そんな事ないよ。ラッドは凄く勇敢で――」
「……そうだな。君は臆病な人間だ」
「トゥシェ、言い過ぎだよ」
「……しかし君はドラゴンを前にして淀みなく演奏できたではないか。恐怖を知らない人間は勇敢ではなく、無謀と言う。自分の臆病さを克服できる人間こそ、勇敢と言うべきだ。その臆病さを克服できた事は誇って良い。ところで聞きたいのだが、連中の隠れ家で君は演奏を――」
トゥシェの声が遠ざかった。目の前が暗くなり、リンカが呼ぶ声がかろうじて拾えたが、すぐに聞こえなくなった。
♪
突然倒れたラッドは、会話しているうちに返事がなくなった。リンカは彼にすがって肩を揺する。
「ラッド、どうしたの?」
「……気絶したようです」
「そうなんだ、良かったー。でもせっかくトゥシェが褒めてくれたんだから、そこは聞いて欲しかったなー」
「……そんな事がありましたか」
「もう、照れ屋さんなんだから。そう言えば演奏って何のこと?」
「……自分を攻撃した魔導師を追跡していたドラゴンが引き返した――それが演奏によるものだとしたら、最初にドラゴンを呼び寄せたのも彼と考えれば辻褄が合います」
「そうか。ラッドは凄い音楽家だもんね」
「……それはどうでしょう。人間とドラゴンとは違いますから」
「あれれ~、せっかくあえたのにラッドねちゃってる~」
不意打ちの声にリンカは飛び上がった。
「ルビちゃん!?」
「は~い」
フェアリーのルビがフワフワと浮いている。
「今までどこにいたの?」
「ひど~い! ドラゴンがいなくなるまではなれてて~って、リンカがいったのに~!!」
「あ、ああ、ごめんなさい。また私ったらうっかりど忘れしちゃって」
「も~う、リンカはうっかりばっかり~! ぷ~んだ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
むくれる小さな友人に、リンカは何度も頭を下げたのだった。
「リンカ、この歌詞に意味は無いんだよね?」
「うん」
「だったら歌詞を変えよう」
「でも、どんな歌詞が良いかは分からないの」
「君が成功したとき『何がやりたかったのか』その願いを言葉にして」
「で、でもそれって……」
言葉によるイメージ補強、それはあの人が教えた魔法の使い方である。それを呪歌に使いたくはない。
「願いを言葉にする、そうする事で言葉に力が宿るんだ」
「え?」
「言葉には力がある。人の心を動かす力が。その言葉をメロディに乗せるから、歌は人の心を打つんだ。言葉の力を、歌詞の力を信じてくれ」
「違う……」
「何が?」
「うん、違うんだ。ありがとう、ラッド」
意味ある言葉を使う、行為としては同じだが、ラッドの考えは魔法に限定したあの人の教えより広い概念だ。
あの人は信じられないし信じたくない。
だがラッドなら信じられる。
大群衆の心を、今リンカの心を「言葉の力」で動かしたラッドなら。
「あの時私が願った事は……一点に集中する……違うな。もっと手で束ねてぎゅっと絞る様な、押しつぶす。ああ、それは力の使い方で願いじゃないか。私は一点に集まって欲しかったんだ、魔力に。だから魔力よ集まれーかな?」
「落ち着いて。リンカが納得できるものが正解だ。君が決めて良いんだから」
その言葉もまたリンカの心を動かした。
「私が決めて、良いんだ」
リンカは目指していた地を見失い、今まで彷徨っていた。だがそれは違うのだ。
今は自由に、進路を自分で決めて良いのだ。
(私はあの時、絶望したんじゃない。自分で決めていた進路から解放されたんだ)
胸のつかえがスッと抜けた。
「私は魔力が集まる事を願っていた。魔力よ集まれー、私が決めた一点に。ちょっと長いな。魔力よ集えー、私の前に」
かなり良い線だ。
「魔力よ集え、私の手の間に」
惜しい。
「魔力よ集え、我が手の間に」
言葉がなめらかに出た。
「魔力よ集え、我が手の間に。これだ!」
「それを曲に乗せよう」
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
ラッドが二音強く奏でた。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
三番目を高く奏でた。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
二音、上と下。
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
♪魔力よー集えー、我が手の間にー♪
急激に魔力が収縮した。両手の間で小さな燐光が灯る。芥子粒より小さいが、先ほどより大きな緑の光が。
リンカの胸から喜びがあふれ出た。
「ラッド、出来たよ!」
「さすがリンカだ!」
違う。さすがなのはラッドだ。
リンカの心は喜びに次いで自信が湧いてきた。彼がいれば自分も――
「その前に、やる事を片付けないとね」
リンカはドラゴンに向き直った。
「さっきのは、これよ!」
凝縮した魔力を一方に放った。
光はドラゴンの鼻先を掠めて虚空へと消える。それを目で追ったドラゴンが臭い息を吐いた。
「ドラゴンの怒りが解けたぞ」
ラッドが声を弾ませる。
「やったんだ、私……私たち」
闇に閉ざされていたリンカの人生に、希望の光が差し込んでいた。
♪
「……キースキン、本当にドラゴンの怒りが解けたのだな?」
トゥシェがラッドに確認してきた。
「ああ、目を見れば分かるさ」
猫目型の瞳孔が広がったのだ。
「……間違いないのだな?」
「おい」
「大丈夫だよトゥシェ。ラッドにはお客さんの心が分かるんだから」
「……信じましょう」
(こいつ)
トゥシェはリンカから長杖を受け取ると、ドラゴンに向かって歩きだした。その足取りはしっかりしたもので、躊躇いや恐れといった足音の乱れは聞こえない。
(凄い度胸だ)
嫌味な奴だが、その勇敢さは認めざるを得ない。
トゥシェは右手を掲げた。
「ドラゴンよ!」
裏返りこそしたが、声も出ている。
「贈り物だ。受け取れ!」
「おい、ちょっと大胆すぎるぞ」
思わず声を漏らしてしまう。リンカも口元に両手を当てて震えている。
近づいたトゥシェにドラゴンが頭を下げてきたのだ。巨大な口が少し開き、ずらりと並ぶ牙が見える。
(そうか。口に獲物が近づくのだから、ドラゴンが緊張することは無いのか)
犬ならば仰向けになって腹を見せる、降参の仕草なのだろう、ドラゴンの口に近づくという行為は。
その口元までトゥシェは迫る。
彼が掲げた右掌から宝石が宙に浮き上がった。空中を滑ってドラゴンが開けた口に飛び込む。
音を立ててドラゴンが口を閉ざしたとき、リンカが小さく悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫なの?」
「あ、ああ。目を細めているから、怒ってはいないよ」
ドラゴンはゆっくりと首をもたげた。翼を広げる。どうやら移動するらしい。
巨体が浮かび上がった。重さを感じさせずに上昇する。翼を動かさないせいか風はあまり吹かない。触れてもいない木々が大きくしなり、折れかけていた幹があちこちで音を立てて最後の繋がりを断たれた。
高度を上げたところでドラゴンは翼を打ち振り、飛び去って行く。
「終わった……」
ラッドの体から力が抜け、仰向けに倒れた。
「大丈夫?」
リンカが心配そうに覗き込んでくる。
「き、緊張が解けたら、腰が抜けて……」
我ながら情けない声だ。なのにリンカは笑顔になった。
「良かった。私もさっき、そうなったよ。ドラゴンが相手だもん、しょうがないよ」
「……情けないぞ、キースキン」
戻ってきたトゥシェの声が不満げだ。
「し、仕方ないだろ。俺は……君の様に、勇敢じゃないから」
「そんな事ないよ。ラッドは凄く勇敢で――」
「……そうだな。君は臆病な人間だ」
「トゥシェ、言い過ぎだよ」
「……しかし君はドラゴンを前にして淀みなく演奏できたではないか。恐怖を知らない人間は勇敢ではなく、無謀と言う。自分の臆病さを克服できる人間こそ、勇敢と言うべきだ。その臆病さを克服できた事は誇って良い。ところで聞きたいのだが、連中の隠れ家で君は演奏を――」
トゥシェの声が遠ざかった。目の前が暗くなり、リンカが呼ぶ声がかろうじて拾えたが、すぐに聞こえなくなった。
♪
突然倒れたラッドは、会話しているうちに返事がなくなった。リンカは彼にすがって肩を揺する。
「ラッド、どうしたの?」
「……気絶したようです」
「そうなんだ、良かったー。でもせっかくトゥシェが褒めてくれたんだから、そこは聞いて欲しかったなー」
「……そんな事がありましたか」
「もう、照れ屋さんなんだから。そう言えば演奏って何のこと?」
「……自分を攻撃した魔導師を追跡していたドラゴンが引き返した――それが演奏によるものだとしたら、最初にドラゴンを呼び寄せたのも彼と考えれば辻褄が合います」
「そうか。ラッドは凄い音楽家だもんね」
「……それはどうでしょう。人間とドラゴンとは違いますから」
「あれれ~、せっかくあえたのにラッドねちゃってる~」
不意打ちの声にリンカは飛び上がった。
「ルビちゃん!?」
「は~い」
フェアリーのルビがフワフワと浮いている。
「今までどこにいたの?」
「ひど~い! ドラゴンがいなくなるまではなれてて~って、リンカがいったのに~!!」
「あ、ああ、ごめんなさい。また私ったらうっかりど忘れしちゃって」
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