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女神のパン屋~飛ばされて異世界~ 9
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「こんにちは。今日のパンはいかがでしたか?」
「おぉ、ヒロコ殿か、やはり何も入っていなくても旨いものじゃったよ」
「それは良かったです。明日は特別にかき揚げ丼を持ってきますよ」
「いや、明日はオムスビに、えぇっ?特別にかきあげどん?」
「えぇ。今日は天ぷらにするので、ついでにかき揚げを作って、明日それを丼にして食べようかなぁって思っているのですよ。だからそれを持ってきますよ」
「特別か、嬉しいのぉ」
「えぇ、それで、ちょっとお尋ねしたいのですが、ここの温泉の水は飲める水でしょうか?」
「この温泉の水かの?飲めますぞ。ほれ」と、脱衣所の一角を指差す。そこには以前はなかった水飲み場が作られていた。
「ヒロコ殿が、水を飲まないといけないと歌姫殿におっしゃっておられたのを聞いておったので、あのように水飲み場を設けたのじゃが、普通の水と、この温泉の水の両方を飲めるようにしたのじゃよ」
飲んでもいいんだ。じゃあまずはちょっと飲んでみよう。
水飲み場に言って、温泉水を少し飲んでみる。しゅわしゅわと口の中ではじけて、少し苦くて、少ししょっぱい。期待通りだ。
ササラから、調味料として塩分の含まれた湧き水を使うと聞いていたから、もしかしたら?と思っていたのだ。ウキウキしながら、店から持って来たリンゴジュースの空き瓶に温泉水を詰めて、浴場主さんのところに戻る。
「温泉の水は、前から飲んでいました?」
「いや、飲めることは分かっておったが、飲んでおらなんだな。なんでじゃ?」
「温泉の成分によっては、飲み続ける事で、病気になるものもあるらしいのです。ミネラルが足りない人には、不足の解消になって、体調が良くなることもあると思うのですが、飲み続けると余分なミネラルのせいで体の中に石が溜まったりすることもあると聞いたことがあります。わたしも詳しくは覚えていなくて、今は調べようもないので、はっきりしたことは言えません。でも、そのまま飲むより、料理に使って摂取する方が安心かと思うので、一応ご注意いただいた方がいいかと思います」と、うろ覚えながらの知識を伝える。
「そうでしたか。それはいかん。みなに注意しますじゃ」
「ちょっと試した見たいことがあるので、今日帰ったら早速やってみますね。天ぷらも、この水で揚げると美味しく出来ると考えているのですよ」と、瓶を持ち上げて笑ってみせた。口にしちゃいけないと勘違いされても困るのだ。
そして、瓶を大事に抱えて、温泉を後にした。
「ヒロコさん、それは?」とササラに聞かれたので
「温泉の水をもらって来たの。これで天ぷらを揚げるのだけど、もう一つ出来たら嬉しいなぁと思っているものがあってね、今日は帰ってすぐにそれを作ってみるよ。夕食は天ぷらだから、昼食はそれを食べて済ませたいと思っているの。うまく行ったら、ササラの係りにするから、一緒にやってみようね」
「はいっ」とササラは元気よく答えた。朝の落ち込みは解消されたようだ。
店に戻ったら、早速温泉水でマフィンを作る。
飲んだ感じ、鉱泉水に似ていると思った。鉱泉水は重曹成分を含んだ水なので、ガスを発生させ、マフィンなどケーキ生地を膨らますことが出来る。
わたしは酵母にはまってしまった為、滅多に使わなかったけれど、様々なアレルギーが蔓延した現代では、酵母に反応する人もいて、そんな方たちの要望に応えるために、いろんな方法でお菓子を膨らませていた。
これは混ぜてすぐ焼けるから、パンの発酵を待っている間や成形している間にササラに作ってもらえれば、今よりもたくさんの品を作ることが出来るので、かなり期待している。
ササラに一つ一つ説明しながら、粉と塩を合わせてふるい、別のボウルに米飴、豆乳、温泉水、菜種油を混ぜて、粉と液体を混ぜ合わせたら、マフィンカップに入れて、高温で焼く。高温で焼くことで、ガスが発生するのだ。
オーブンに入れたところで気が付いた。
「あぁ~~~~失敗した」
「えぇっ、まだ出来ていないのに、もう失敗が分かるのですか?」
「分かる。温泉水はしょっぱかったから、塩分があることが分かっていたのに、粉に塩を混ぜちゃったから、たぶん、しょっぱくて、もしかしたら苦いマフィンになったかも」
失敗しても平気だと言ったそばから、その見本のように失敗してしまうなんて、まるでわざとそうしたみたい。バカだなぁと思いながら笑ってしまった。
まあ味はともかく、膨らむかどうかの実験だから、うまく膨らんだら今度は塩を入れずに作りなおせばいいし、しょっぱくても、他のものとの組み合わせでバランスが良くなるようにして食べればいいからいいか。
すると
「本当に、自分の失敗でも笑うんですね。なんだか気持ちが楽になりました」と喜んでくれた。
マフィンは、最初は高温で焼き、徐々に温度を下げて焼き上げる。
待っている間に、明日の仕込みの準備を進め、食べてから一気に仕込めるようにしておく。
そして約30分後、無事に(?)マフィンが膨らんで焼きあがった。
アツアツをお皿に盛り付け、三人で試食を兼ねてのランチ。
半分に割って、中まで焼けているか一応確認すると、ふっくらと出来ていて、とりあえず安心。そして一口食べてみた。思ったよりしょっぱくない。食事マフィンとしては、これはこれでありかも。
二人も、わたしを真似て食べ始め
「酵母のものとはまた違う味わいがあるのですね。簡単だったから、すぐに出来そうな気がします」と頼もしい感想。カッタも黙々と食べている。
「じゃあ、わたしが明日の仕込みをしている間に、おなじものをいくつか作っておいてくれる?そうねぇ、何も入れないものと、ドライフルーツを入れるものの二種類にしようかな。あ、塩は入れないでね」と言ったらササラは笑って頷いた。
自宅から量りの予備を持って来て、使い方を説明し、まずはさきほどと全く同じ量で作ってもらい、それがうまく行ったら、量を増やして作ってもらう。
ただ、一度に量を多く作ると、混ぜるのが大変で、結局時間がかかってしまうので、あまり増やさないように注意する。たくさん作る場合でも、何回かに分けて作った方が効率がいいのだが、それも経験だから、あまり詳しく言わないでおいた。とはいえ、文字と同じで数字も良く分かっておらず、計算力もさほど高くない為、勝手にすごい量を作ることは出来ないと思っているのだけれど。数字や計算は、ちょっとずつ教えていく必要がある。
ササラは文字が読めて書けると言っていたけれど、実際のところ、たぶんさほど知らないのだと思う。何しろ書いてもらったパンの説明が、ものすごく短くされているように思えたのだから。突っ込んで聞かなかったけれど、もしかしたら、甘い、しょっぱい、固い、柔らかい、程度しか書かれていなかったのでは?と思っている。完全な村社会で、外との交流がさほどなければ、発展しない分野かもしれない。折を見て、そのあたりのことも聞いてみようと思っている。
明日の仕込みを終えたら、次は夕食の準備だ。
その前に、朝の焦げた鍋からおこげをそっと壊さないように気をつけながら取り出す。取り出したら、なべ底に当たっていた部分を上にして、ザルに乗せて乾かす。油で揚げるから完全に乾かしておきたいのだ。
焦げた鍋には重曹を振り入れてから、水をいれ、火にかける。こうすると焦げが浮いて洗いやすくなる。
「鍋は焦がさないことが一番だけれども、焦げた鍋の始末の仕方を覚えておけば、失敗しても動じなくなるでしょ。温泉水でも同じ効果が得られると思うから、ちゃんと覚えておいてね」とササラに言うと、神妙な顔をして頷いていた。
ササラが作った温泉マフィンも無事に焼き上がって、美味しそうに膨らんでいる。カッタが食べたそうにしていたけれど
「天ぷらを食べるためには、腹ペコにしておいた方がいいから、今は我慢ね」と言ったら、軽く口を尖らせつつも、誘惑に負けない為か、マフィンから離れ、森に向かっていった。蔓草を採る為だろう。彼は彼なりに自分が出来る事をしようと頑張っている。
今日は天ぷらだから、ご飯は簡単に炊飯器で炊くことにして、先に味噌汁を準備し、大根をすりおろしておく。それからボウルに小麦粉と米粉を半々、塩を一つまみ入れて軽く混ぜて、粉を平らにならしてから、菜箸で中央に穴を開け、そこに温泉水を少しずつ入れながら、粉を崩すようよう混ぜていく。小麦粉だけじゃなく、米粉を入れる事でさっくりとした衣が出来るのだ。まぁどちらかだけでもいいのだけれど、わたしは両方入れるのが好き。
柔らかい衣が出来たら、しばらくそのまま置いておく。そうすることにより、粉がさらに水を吸い、落ち着くのだ。
その間に様々な野菜を適当な大きさに切る。玉ねぎは輪切りにして、茄子やピーマンは縦半分に、かぼちゃは薄く、さつまいもは輪切り、葉物もいけそうなものは洗って適当な長さにしておく。シソや春菊など癖の強い葉物は天ぷらにすると、その癖の強さが活きる。オットは一人で外食をする時は、たいてい春菊そばを外で食べて来てたっけ。
かき揚げは、玉ねぎと人参の細切りと、トウモロコシに似た大粒の実をそいだもの。
これらは全てもらって来た野菜で、こっちの名前は相変わらず聞き取り不能。もうとっくに諦めて、勝手に知っている野菜と同じと思って呼ぶことにした。
野菜の準備が整ったら、深めのフライパンに米油と少量のごま油を1センチほど注ぎ入れ、弱火で加熱。植物油は湯気が立つほど熱すると、有害物質が発生するらしいし、最近は低温で揚げる方が良いとされている。
まずはおこげを揚げるので、油は少な目であとでもう少し追加する。
ササラとカッタを近くに呼び、揚げている様子を見せることにした。
「ほら、熱い油に入れると乾いたおこげが膨らんで、面白いでしょ」と言うと、二人とも不思議そうにそれを見ていた。
途中でひっくり返し、全体的に膨らんだら、油から取りだし、経木を敷いた皿に乗せ、サッと醤油をかける。塩でもいいけれど、個人的に醤油をかけるのが好きだ。
続いて、薄く衣をつけた野菜を揚げていく。揚げると言っても、両面を揚げ焼きにする感じ。芳ばしい香りが部屋中に広がり、誰かのお腹がぐぅっと鳴った。恥ずかしそうにしている二人に
「先に食べ始めていいよ。揚げたてが美味しいからね」と声をかけると、二人はご飯をよそい、みそ汁も入れて、テーブルについた。
でもわたしが食べないと、二人は食べ始めないことが分かっているので、皿に乗った天ぷらを一つ手でつまみ、口に入れて食べて見せた。
口に入れるとサクサクッと音がして、美味しく揚がっていることを示す。
「まずはそのまま食べて、好みで塩をかけたり、このタレにつけて食べてね。大根おろしは必ず食べてね」と勧める。
タレは、明日のかき揚げ丼の事を考えて、多目に作ってある。大根おろしを食べるのは油の消化吸収を助ける為だから、絶対食べた方がいい。
二人に声をかけながらも、どんどん揚げていき、最後に残った衣にかき揚げ用の野菜を全部入れて、衣を余さず使う。
全部揚がったところで、わたしも席に着き、サクサクの天ぷらを味わって食べた。
「ヒロコさん、これすっごく美味しいです。知っている野菜が、こんな風になるなんて信じられない」と声を弾ませるササラ。カッタの目もキラキラと輝いている。
「でしょ。油をたくさん使うから、滅多にしないけれど、たまに食べたくなるの。そしてわたしはこれが好きなの~」とサツマイモの天ぷらを示す。
天ぷらをすると、オットが毎回からかい気味に
「さつまいもは揚げないの?」と聞いてくるくらい、わたしにとっては天ぷら=さつまいも。天ぷらの時は多目に作って、翌日以降も楽しんで食べていた。
揚げ物は油が酸化するから、作り置きはしない方が良いとされているし、多量の油でお腹を壊すわたしだけれども、自作の揚げ物でお腹を壊すことはない。かぼちゃの天ぷらも、小学校の給食で出たのが美味しくて、うっかり食べ過ぎて五時間目の体育の授業に差し障った記憶がある・・・あれは気持ち悪かった。
「お腹いっぱいになる前に、ほら、おこげの揚げたのも食べてみてね。残念ながらちょっとしかないけどね」とニヤリと笑って二人に勧めた。
天ぷらを食べて、なんとなく想像がついたのか、わたしが朝から言っていたことが納得出来たのか、同じようにニヤリと笑って、おこげを手にするササラ。
カッタとわたしも一つずつとり、口に入れる。
「わぁ~こんなに美味しいなら、もっと盛大に焦がすべきでした!」なんて言っている。
「焦がしたくて焦がせるわけじゃないし、炊くのが上手になっていくと、焦がす回数も減るけど、これでまたやる気が出たでしょ」
「はい。あの時は本当にどうしようかと思って落ち込みましたし、笑われて嫌な気持ちになりましたけれど、良くわかりました」
そして、ちょっと考え込んだ後
「結局、何かあっても対処出来るすべを身に着けておくことが大切なんですね。マフィンがしょっぱかったら、水を飲めばいいですしね」とニヤリと笑ったので
「良く出来ました」とワハハと笑い返した。
そして、明日からは温泉水のマフィンを、早めに降りてきて作ってもらい、品数を増やすことにした。これで大分楽になり、求める人に半分ではなく一つずつあげることが出来るかもしれない(日々増えていくから、それもどうなるか分からないのだけれども)。
ただ、ササラには籠も作ってもらいたいから、負担が増えることになり、申し訳ないと思う。そのあたりのこともおいおい考えていかねば。
翌日は、予定通りわたしがパンを成形している間に、マフィンを作れるだけ作ってもらい、合間を縫ってオムスビを作ったり、籠を作ったり、とにかく二人で出来る限りのことをして出かけた。
温泉に着いたら、いつも通りササラには浴場主さんにかき揚げ丼を持って行ってもらい、わたしは集まった人々に、今日は温泉水で作ったマフィンがあることを伝える。頑張った甲斐あって、やっと半分ではなく、一人に一つの品を渡すことが出来た。
「おぉ、ヒロコ殿か、やはり何も入っていなくても旨いものじゃったよ」
「それは良かったです。明日は特別にかき揚げ丼を持ってきますよ」
「いや、明日はオムスビに、えぇっ?特別にかきあげどん?」
「えぇ。今日は天ぷらにするので、ついでにかき揚げを作って、明日それを丼にして食べようかなぁって思っているのですよ。だからそれを持ってきますよ」
「特別か、嬉しいのぉ」
「えぇ、それで、ちょっとお尋ねしたいのですが、ここの温泉の水は飲める水でしょうか?」
「この温泉の水かの?飲めますぞ。ほれ」と、脱衣所の一角を指差す。そこには以前はなかった水飲み場が作られていた。
「ヒロコ殿が、水を飲まないといけないと歌姫殿におっしゃっておられたのを聞いておったので、あのように水飲み場を設けたのじゃが、普通の水と、この温泉の水の両方を飲めるようにしたのじゃよ」
飲んでもいいんだ。じゃあまずはちょっと飲んでみよう。
水飲み場に言って、温泉水を少し飲んでみる。しゅわしゅわと口の中ではじけて、少し苦くて、少ししょっぱい。期待通りだ。
ササラから、調味料として塩分の含まれた湧き水を使うと聞いていたから、もしかしたら?と思っていたのだ。ウキウキしながら、店から持って来たリンゴジュースの空き瓶に温泉水を詰めて、浴場主さんのところに戻る。
「温泉の水は、前から飲んでいました?」
「いや、飲めることは分かっておったが、飲んでおらなんだな。なんでじゃ?」
「温泉の成分によっては、飲み続ける事で、病気になるものもあるらしいのです。ミネラルが足りない人には、不足の解消になって、体調が良くなることもあると思うのですが、飲み続けると余分なミネラルのせいで体の中に石が溜まったりすることもあると聞いたことがあります。わたしも詳しくは覚えていなくて、今は調べようもないので、はっきりしたことは言えません。でも、そのまま飲むより、料理に使って摂取する方が安心かと思うので、一応ご注意いただいた方がいいかと思います」と、うろ覚えながらの知識を伝える。
「そうでしたか。それはいかん。みなに注意しますじゃ」
「ちょっと試した見たいことがあるので、今日帰ったら早速やってみますね。天ぷらも、この水で揚げると美味しく出来ると考えているのですよ」と、瓶を持ち上げて笑ってみせた。口にしちゃいけないと勘違いされても困るのだ。
そして、瓶を大事に抱えて、温泉を後にした。
「ヒロコさん、それは?」とササラに聞かれたので
「温泉の水をもらって来たの。これで天ぷらを揚げるのだけど、もう一つ出来たら嬉しいなぁと思っているものがあってね、今日は帰ってすぐにそれを作ってみるよ。夕食は天ぷらだから、昼食はそれを食べて済ませたいと思っているの。うまく行ったら、ササラの係りにするから、一緒にやってみようね」
「はいっ」とササラは元気よく答えた。朝の落ち込みは解消されたようだ。
店に戻ったら、早速温泉水でマフィンを作る。
飲んだ感じ、鉱泉水に似ていると思った。鉱泉水は重曹成分を含んだ水なので、ガスを発生させ、マフィンなどケーキ生地を膨らますことが出来る。
わたしは酵母にはまってしまった為、滅多に使わなかったけれど、様々なアレルギーが蔓延した現代では、酵母に反応する人もいて、そんな方たちの要望に応えるために、いろんな方法でお菓子を膨らませていた。
これは混ぜてすぐ焼けるから、パンの発酵を待っている間や成形している間にササラに作ってもらえれば、今よりもたくさんの品を作ることが出来るので、かなり期待している。
ササラに一つ一つ説明しながら、粉と塩を合わせてふるい、別のボウルに米飴、豆乳、温泉水、菜種油を混ぜて、粉と液体を混ぜ合わせたら、マフィンカップに入れて、高温で焼く。高温で焼くことで、ガスが発生するのだ。
オーブンに入れたところで気が付いた。
「あぁ~~~~失敗した」
「えぇっ、まだ出来ていないのに、もう失敗が分かるのですか?」
「分かる。温泉水はしょっぱかったから、塩分があることが分かっていたのに、粉に塩を混ぜちゃったから、たぶん、しょっぱくて、もしかしたら苦いマフィンになったかも」
失敗しても平気だと言ったそばから、その見本のように失敗してしまうなんて、まるでわざとそうしたみたい。バカだなぁと思いながら笑ってしまった。
まあ味はともかく、膨らむかどうかの実験だから、うまく膨らんだら今度は塩を入れずに作りなおせばいいし、しょっぱくても、他のものとの組み合わせでバランスが良くなるようにして食べればいいからいいか。
すると
「本当に、自分の失敗でも笑うんですね。なんだか気持ちが楽になりました」と喜んでくれた。
マフィンは、最初は高温で焼き、徐々に温度を下げて焼き上げる。
待っている間に、明日の仕込みの準備を進め、食べてから一気に仕込めるようにしておく。
そして約30分後、無事に(?)マフィンが膨らんで焼きあがった。
アツアツをお皿に盛り付け、三人で試食を兼ねてのランチ。
半分に割って、中まで焼けているか一応確認すると、ふっくらと出来ていて、とりあえず安心。そして一口食べてみた。思ったよりしょっぱくない。食事マフィンとしては、これはこれでありかも。
二人も、わたしを真似て食べ始め
「酵母のものとはまた違う味わいがあるのですね。簡単だったから、すぐに出来そうな気がします」と頼もしい感想。カッタも黙々と食べている。
「じゃあ、わたしが明日の仕込みをしている間に、おなじものをいくつか作っておいてくれる?そうねぇ、何も入れないものと、ドライフルーツを入れるものの二種類にしようかな。あ、塩は入れないでね」と言ったらササラは笑って頷いた。
自宅から量りの予備を持って来て、使い方を説明し、まずはさきほどと全く同じ量で作ってもらい、それがうまく行ったら、量を増やして作ってもらう。
ただ、一度に量を多く作ると、混ぜるのが大変で、結局時間がかかってしまうので、あまり増やさないように注意する。たくさん作る場合でも、何回かに分けて作った方が効率がいいのだが、それも経験だから、あまり詳しく言わないでおいた。とはいえ、文字と同じで数字も良く分かっておらず、計算力もさほど高くない為、勝手にすごい量を作ることは出来ないと思っているのだけれど。数字や計算は、ちょっとずつ教えていく必要がある。
ササラは文字が読めて書けると言っていたけれど、実際のところ、たぶんさほど知らないのだと思う。何しろ書いてもらったパンの説明が、ものすごく短くされているように思えたのだから。突っ込んで聞かなかったけれど、もしかしたら、甘い、しょっぱい、固い、柔らかい、程度しか書かれていなかったのでは?と思っている。完全な村社会で、外との交流がさほどなければ、発展しない分野かもしれない。折を見て、そのあたりのことも聞いてみようと思っている。
明日の仕込みを終えたら、次は夕食の準備だ。
その前に、朝の焦げた鍋からおこげをそっと壊さないように気をつけながら取り出す。取り出したら、なべ底に当たっていた部分を上にして、ザルに乗せて乾かす。油で揚げるから完全に乾かしておきたいのだ。
焦げた鍋には重曹を振り入れてから、水をいれ、火にかける。こうすると焦げが浮いて洗いやすくなる。
「鍋は焦がさないことが一番だけれども、焦げた鍋の始末の仕方を覚えておけば、失敗しても動じなくなるでしょ。温泉水でも同じ効果が得られると思うから、ちゃんと覚えておいてね」とササラに言うと、神妙な顔をして頷いていた。
ササラが作った温泉マフィンも無事に焼き上がって、美味しそうに膨らんでいる。カッタが食べたそうにしていたけれど
「天ぷらを食べるためには、腹ペコにしておいた方がいいから、今は我慢ね」と言ったら、軽く口を尖らせつつも、誘惑に負けない為か、マフィンから離れ、森に向かっていった。蔓草を採る為だろう。彼は彼なりに自分が出来る事をしようと頑張っている。
今日は天ぷらだから、ご飯は簡単に炊飯器で炊くことにして、先に味噌汁を準備し、大根をすりおろしておく。それからボウルに小麦粉と米粉を半々、塩を一つまみ入れて軽く混ぜて、粉を平らにならしてから、菜箸で中央に穴を開け、そこに温泉水を少しずつ入れながら、粉を崩すようよう混ぜていく。小麦粉だけじゃなく、米粉を入れる事でさっくりとした衣が出来るのだ。まぁどちらかだけでもいいのだけれど、わたしは両方入れるのが好き。
柔らかい衣が出来たら、しばらくそのまま置いておく。そうすることにより、粉がさらに水を吸い、落ち着くのだ。
その間に様々な野菜を適当な大きさに切る。玉ねぎは輪切りにして、茄子やピーマンは縦半分に、かぼちゃは薄く、さつまいもは輪切り、葉物もいけそうなものは洗って適当な長さにしておく。シソや春菊など癖の強い葉物は天ぷらにすると、その癖の強さが活きる。オットは一人で外食をする時は、たいてい春菊そばを外で食べて来てたっけ。
かき揚げは、玉ねぎと人参の細切りと、トウモロコシに似た大粒の実をそいだもの。
これらは全てもらって来た野菜で、こっちの名前は相変わらず聞き取り不能。もうとっくに諦めて、勝手に知っている野菜と同じと思って呼ぶことにした。
野菜の準備が整ったら、深めのフライパンに米油と少量のごま油を1センチほど注ぎ入れ、弱火で加熱。植物油は湯気が立つほど熱すると、有害物質が発生するらしいし、最近は低温で揚げる方が良いとされている。
まずはおこげを揚げるので、油は少な目であとでもう少し追加する。
ササラとカッタを近くに呼び、揚げている様子を見せることにした。
「ほら、熱い油に入れると乾いたおこげが膨らんで、面白いでしょ」と言うと、二人とも不思議そうにそれを見ていた。
途中でひっくり返し、全体的に膨らんだら、油から取りだし、経木を敷いた皿に乗せ、サッと醤油をかける。塩でもいいけれど、個人的に醤油をかけるのが好きだ。
続いて、薄く衣をつけた野菜を揚げていく。揚げると言っても、両面を揚げ焼きにする感じ。芳ばしい香りが部屋中に広がり、誰かのお腹がぐぅっと鳴った。恥ずかしそうにしている二人に
「先に食べ始めていいよ。揚げたてが美味しいからね」と声をかけると、二人はご飯をよそい、みそ汁も入れて、テーブルについた。
でもわたしが食べないと、二人は食べ始めないことが分かっているので、皿に乗った天ぷらを一つ手でつまみ、口に入れて食べて見せた。
口に入れるとサクサクッと音がして、美味しく揚がっていることを示す。
「まずはそのまま食べて、好みで塩をかけたり、このタレにつけて食べてね。大根おろしは必ず食べてね」と勧める。
タレは、明日のかき揚げ丼の事を考えて、多目に作ってある。大根おろしを食べるのは油の消化吸収を助ける為だから、絶対食べた方がいい。
二人に声をかけながらも、どんどん揚げていき、最後に残った衣にかき揚げ用の野菜を全部入れて、衣を余さず使う。
全部揚がったところで、わたしも席に着き、サクサクの天ぷらを味わって食べた。
「ヒロコさん、これすっごく美味しいです。知っている野菜が、こんな風になるなんて信じられない」と声を弾ませるササラ。カッタの目もキラキラと輝いている。
「でしょ。油をたくさん使うから、滅多にしないけれど、たまに食べたくなるの。そしてわたしはこれが好きなの~」とサツマイモの天ぷらを示す。
天ぷらをすると、オットが毎回からかい気味に
「さつまいもは揚げないの?」と聞いてくるくらい、わたしにとっては天ぷら=さつまいも。天ぷらの時は多目に作って、翌日以降も楽しんで食べていた。
揚げ物は油が酸化するから、作り置きはしない方が良いとされているし、多量の油でお腹を壊すわたしだけれども、自作の揚げ物でお腹を壊すことはない。かぼちゃの天ぷらも、小学校の給食で出たのが美味しくて、うっかり食べ過ぎて五時間目の体育の授業に差し障った記憶がある・・・あれは気持ち悪かった。
「お腹いっぱいになる前に、ほら、おこげの揚げたのも食べてみてね。残念ながらちょっとしかないけどね」とニヤリと笑って二人に勧めた。
天ぷらを食べて、なんとなく想像がついたのか、わたしが朝から言っていたことが納得出来たのか、同じようにニヤリと笑って、おこげを手にするササラ。
カッタとわたしも一つずつとり、口に入れる。
「わぁ~こんなに美味しいなら、もっと盛大に焦がすべきでした!」なんて言っている。
「焦がしたくて焦がせるわけじゃないし、炊くのが上手になっていくと、焦がす回数も減るけど、これでまたやる気が出たでしょ」
「はい。あの時は本当にどうしようかと思って落ち込みましたし、笑われて嫌な気持ちになりましたけれど、良くわかりました」
そして、ちょっと考え込んだ後
「結局、何かあっても対処出来るすべを身に着けておくことが大切なんですね。マフィンがしょっぱかったら、水を飲めばいいですしね」とニヤリと笑ったので
「良く出来ました」とワハハと笑い返した。
そして、明日からは温泉水のマフィンを、早めに降りてきて作ってもらい、品数を増やすことにした。これで大分楽になり、求める人に半分ではなく一つずつあげることが出来るかもしれない(日々増えていくから、それもどうなるか分からないのだけれども)。
ただ、ササラには籠も作ってもらいたいから、負担が増えることになり、申し訳ないと思う。そのあたりのこともおいおい考えていかねば。
翌日は、予定通りわたしがパンを成形している間に、マフィンを作れるだけ作ってもらい、合間を縫ってオムスビを作ったり、籠を作ったり、とにかく二人で出来る限りのことをして出かけた。
温泉に着いたら、いつも通りササラには浴場主さんにかき揚げ丼を持って行ってもらい、わたしは集まった人々に、今日は温泉水で作ったマフィンがあることを伝える。頑張った甲斐あって、やっと半分ではなく、一人に一つの品を渡すことが出来た。
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◆例によって思いつきでサクッと書いたため詳細な設定はありません。主人公以外の固有名詞も出ません。
比較的ありがちなすれ違いの物語。ただし、ちょっと他作品では見ない切り口の作品になっています。
◆仕様上選択しなくてはならないし女性主人公なので「女性向け」としていますが、本来は性別問わず広く問われるべき問題です。男女問わず読んで頂き向き合って下さればと思います。
◆話の都合上、差別的な表現がありR15指定しております。人によってはかなり不快に感じるかと思いますので、ご注意願います。
なお作者およびこの作品には差別を助長する意図はございませんし、それを容認するつもりもありません。
◆無知と無理解がゆえにやらかしてしまう事は、比較的誰にでも起こり得る事だと思います。他人事ではなく、私(作者)も皆さん(読者)も気をつけましょうね、という教訓めいたお話です。
とはいえ押し付ける気はありません。あくまでも個々人がどう考えどう動くか、それ次第でしかないと思います。
◆なろう版で指摘頂いたので恋愛ジャンルからファンタジージャンルに変更します。恋愛ものと思って読んで下さった皆さまごめんなさい。
◆この話も例によって小説家になろうでも公開致します。あちらは短編で一気読み。
◆なろう版にて多くの感想を頂いています。
その中で「声が出せない以外は健康で優秀」という設定に違和感があるとご指摘を頂きました。確かに障碍というものは単独で発現するものではないですし、そのあたり作品化するにあたって調べが足りていなかった作者の無知によるものです。
ですので大変申し訳ありませんが、現実世界ではない「魔術もある異世界」の話ということで、ひとつご容赦願えればと思います。誠に申し訳ありません。
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