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成就編
触れ合い*
しおりを挟む食事を終えた食器も片付けられていない部屋で、唇を啄む音だけが室内を満たす。
先に身を離したのは荒垣だった。限界とばかりに寺崎を引き剥がすが、引き剥がされた本人は不満げだ。
これでは、どちらが想い想われているのか分からない。
「タ、タンマ!」
「なんだよ、不満か?」
「ふ、まんじゃ、ない、けど……」
荒垣はモゾモゾと不自然に胡座をかいていた脚を折りたたむ。
当然、寺崎が違和感に気が付かない筈がなかった。
「勃ったか」
「う……しょうがないだろ」
同じ男として理解できなくはない。が、好きな相手に恥ずかしそうに縮こまる荒垣のことが、柄にもなく可愛いと思ってしまった。
「じゃあやめるか?」
「……やめないで」
恥ずかしがるクセに欲に忠実な姿に、寺崎は思わず笑ってしまった。
荒垣のベッドに場所を移し、再び荒垣の唇に自分のものを重ねる。
「ん……ちゅ、うぁ……」
角度を変える為に口を離すたび、隙間から漏れる吐息が興奮に繋がる。
寺崎は一旦口を離し、荒垣の首筋に唇を寄せた。
「ん、ちょ、寺崎……!」
「キスしてるだけだ。痕は付けない」
慌てる荒垣を宥めながら、ちゅ、と音を立てて唇を押し当てるだけの行為をする。荒垣だけ先に風呂に入っていたので、汗臭さや荒垣自身の匂いはあまりしない。
今のところ、荒垣に対する性欲は働いていない。
それよりも、ハグやキスをしてゆっくりくっついていたい欲の方が寺崎の中では大きい。
ゲイ嫌いであることを考えれば十分大きな変化だ。しかし、荒垣に対しても、己に対しても不快感がないのだから不思議だ。
「はぁ……」
「んっ!……くすぐってェ」
自分よりも大きい荒垣の身体を抱き寄せながら、肩口に額をくっつける。
髪やかかる熱い吐息が首筋に触れるたび、荒垣がピクリと身体を動かす。
寺崎はくっついているだけで満足なのだが、やはり荒垣はそうもいかないらしい。どうしてもモゾモゾと動くので、寺崎も不満げに顔を上げた。
「どうしたんだよ」
「なんか、積極的過ぎねェ……?俺逆に怖いんだけど」
「んー?アルコールが入ってるからな。ハイになってることは認める」
ついでに、内心考えてた企みも暴露してみる。
「あと、勢いで身体の一線を越えれば、後から気持ちも追いつきやすくならないかな、とは考えてる」
「おま、自分を大切にしろよ……!」
「お前に言われたくないな」
言いながら、寺崎は荒垣のスウェットの中に手を突っ込んだ。
「お、おい……!」
慌てる荒垣を尻目に、寺崎は荒垣の素肌をなぞる。荒垣の抗議を無視してさわさわと堪能していたら、ある一点を掠めたところで荒垣が口を閉ざした。
「……ここか?」
「んぁ!つよく、触んな……」
親指で潰すように乳首を触ってやると、荒垣は鼻にかかった声を漏らした
言われた通りに力を弱めて触ってやると、次第にそこは芯を持って固くなった。
「自分で開発したのか?」
「んぅ……きもちぃって聞いたから」
「へぇ」
乳首を触ってやるだけで興奮した息を漏らす荒垣には多少の嗜虐心が煽られる。
このまま乳首だけを触り倒しても良かったが、初めてで一点だけイジメ倒すのは少し気が引けたので、そこからは手を逸らしてやる。
「なぁ、お前は何かしたいとかないの」
「んぇ……?」
「俺ばっかり触ってるけど」
「ん……寺崎に触られんの、好きだから。このまま触ってほしい」
「……そっか」
「んンッ!?」
このままと言った口でまたしても驚きの声をあげるのだから、寺崎は内心どっちだよとツッコミを入れた。
しかし荒垣が慌てるのも無理はない。
寺崎が手を這わしたのは、服の上とはいえ股の間。緩く兆した荒垣の股間だからだ。
「えっ……えっ!?」
「なんだよ、そういう流れだっただろ」
「そうだけど……い、イヤなら無理すんなよ?」
「不思議とイヤじゃない。無理ならそもそも触らないから安心しろ」
「んっ!むぅ、ん」
荒垣のブツを柔く揉みながら、再び荒垣に口付ける。
手の中のそれは寺崎の想定より勃ちが悪い。そういえば今日は随分と飲んでいたな、と思い出す。勃ちが悪いのはアルコールのせいだろう。
少し悩んで、唇を離す。
「っ……荒垣」
「んぁ……なに?」
「コレ、直で触っていいか?」
コレ、と荒垣の股の間を指すと、赤かった荒垣の顔が固まる。
ここから先は寺崎にとっては完全に未知の領域だ。この先に進んでも良いかという確認も込めて、荒垣に尋ねた。
荒垣はたっぷりと間を置いて、頷いた。
荒垣が頷いたのを確認してから、寺崎は一度、触れるだけのキスをした。
「ローションとかあるか?」
「ある……待って」
荒垣はその場で伏せるように、ベッドの脇にあるサイドテーブルの引き出しに手を伸ばす。
取手を引いて中からローションを取り出した直後、寺崎は荒垣のパンツの中に右手を突っ込んだ。
「んぁ!?あ……あっ、んな、いきなり……」
「……やっぱり先走りも出てないか」
荒垣の陰茎を確かめるように触りながら、荒垣に覆い被さるようにして左手を伸ばす。
左手で荒垣の手からローションを取り上げるのと、右手の中にあるものを外に出すのは同時だった。
「あ……ぅあ、あんまり見んなよ」
性器だけ丸出しの間抜けな姿で荒垣は恥ずかしがって顔を隠す。が、陰茎はピクリと寺崎の手の中で動いている。
実際に他人の男性器をここまでまじまじと見たり、触ったりするのは寺崎も初めてだ。正直、コレを直で見ても嫌悪感が湧かないかが一番の壁だった。
結果的に恐れていた拒絶感がないことに、寺崎が一番ホッとしている。
寺崎は一度荒垣の陰茎から手を離し、右手にローションを絞り出した。
「荒垣、見てろ」
「はぁ……あ……?」
「俺がお前のちんこ触れてるとこ。お前のちんこ触っても大丈夫だってとこ、しっかり見てろ」
荒垣の視線が自身の性器に移動したのを確認してから、ローションまみれの手で荒垣のものを握り込んでやる。
先程よりも断然に滑りが良くなった手で緩く扱いてやれば、荒垣の下腹が震えた。
「あ、ふぅ……んぅ」
「コラ、視線を外すな」
荒垣が視線を外した瞬間、性器から手を離してやる。ぬちゃ、と音をたてながらローションが糸を引いた。
突然快楽から解放され、荒垣は切なそうな声を上げて悲しげに寺崎の顔の方を向いた。
「あぅ、わ、わかった……わかったから、もっと、触って」
「ふふ。ああ、もう目を離すなよ」
許すように笑ってやれば、荒垣はくすぐったそうに頷いた。荒垣が視線を戻したのを確認してから、再び性器に触れる。
ぬちぬちと音を立てて扱いてやれば、縋るように寺崎のトレーナーを握りしめた。
「あ……ふ、ぅ……きもち、ぃ……」
しかし、幾ら扱いてやっても、裏筋やカリ首をなぞってやっても、一向に荒垣の陰茎は持ち上がらない。
反応を見る限り荒垣は快感を拾っているようなので、決して寺崎が下手な訳ではない……筈だ。
筈なのだが、流石にここまで来ると自信が曖昧になってくる。
気持ちいいかと荒垣に聞けば、陰茎から目を離さないまま必死そうに頷くばかりだ。
やはり酒の勢いに乗じて上手く乗り切ろうとしたことがそもそもの間違いだったか。このままではキリがないし、さてどうしたものか。
「な、なぁ……ぁ、てらさき」
「ん?どうした」
正直どう収拾をつけようか悩んでいたところ、荒垣が訴えかけるように呼ぶので一旦手を止めてやる。
荒垣は躊躇うように、しどろもどろになりながら口を開いた。
「あのさ、ケツに突っ込むのって、平気?」
「ん?尻?」
「じ、実は……準備してきた。アナルセックスの。ちょっと解せば突っ込める、と、思う」
「……………ン!?」
今度は寺崎が驚きの声を上げた。
15
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