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第二章 危険な依頼と怪しい依頼人
危険すぎる奪還ミッション〜インテンス〜
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「そのままこっちへ来い」
銃声の鳴り響く中、おれは龍ケ崎に言われるままにひた走る。
「渉様、下がっていてください!」
「あいつは龍ケ崎の部下だ、逃すな!」
背後にそんな怒声を聞きながら龍ケ崎のいる塀の陰まで来ると、そのまま腕を引っ張られ抱きとめられた。
本当は躱してやりたかったけど全力疾走したせいでそんな体力もない。
「上出来だ」
龍ケ崎は満足そうに口角を上げた。
なんとか逃げ切った。
ほっとしたのも束の間、少し冷静のなると次々と疑問が溢れてくる。
なんで龍ケ崎がここにいるんだ?
まるでおれがここで何をしていたのか理解しているような口ぶりだった。
この依頼は龍ケ崎とは全く関係ないし、なんなら千崎の家に行くなんて言ってない。
ってGPSのせいか。
ここ最近拉致られなかったから忘れてた。
そういや影山さんは!?
キョロキョロと龍ケ崎の腕の中から見渡すと少し後ろに銃を構えて健斗さんと並んで待機しているのが見える。
更にその後ろに日下部さんもいた。そんな日下部さんの手にも拳銃が握られていた。
これ完全に撃ち合う気満々のやつじゃん!
状況からしてメンバー総出かと思ったが千影さんの姿はなかった。
表情を見るにお互い知らない間柄というわけではなさそうだ。
冷静に銃を構えているところを見ると皆現状を把握してるっぽい……?
そしてなんの違和感もなく待機している影山さん。
まさか影山さんも龍ケ崎の仲間?
そう聞こうとして口を開いた瞬間、また銃声が響き渡った。
「……チッ!おい、箱出せ」
「え?」
「千崎渉から奪い返して来ただろう」
「あぁ、そーゆーことね」
龍ケ崎の言葉にはたと思い出す。
黒い箱に刻まれていた龍のマークと龍ケ崎ホールディングスという社名。
つまりこの箱は龍ケ崎の物だったわけか。
「ほらよ」
おれはウエストポーチから黒い箱を出して龍ケ崎に手渡す。
龍ケ崎はその箱を受け取ると、立体パズルを解くように素早く箱を開けた。
は、拳銃……!?
箱に入っていたのは龍の刻印の入った真っ黒な拳銃だった。
この数日間でこんな物騒な物を立て続けに目にするなんて誰が想像出来ただろうか。
龍ケ崎はその拳銃をジャケットに隠れていたホルスターに仕舞い込む。
そしてそのままおれの腕を掴み、影山さんと健斗さんの方へ振り返りこう告げた。
「こいつを車に乗せてくる。それまで頼んだぞ。千影、健斗」
「はいは~い」
「言われるまでもねぇよ」
え……?
今、千影って言わなかったか?
龍ケ崎に名を呼ばれて返事をしたのは影山さんと健斗さんだ。
いやでも今の影山さんの口調や纏う雰囲気は千影さんと似ている気が……。
呆けているおれを他所に龍ケ崎はおれの腕を掴んだままずんずんと先へ進んでいく。
すぐ近くに停められていた車まで来ると半ば無理矢理中に押し込まれた。
「いいか、俺が戻ってくるまでお前はここに隠れていろ」
「おい、りゅーーーー」
瞬間、車の窓ガラスに銃弾が打ち込まれる。
時が止まったかと思った。
窓ガラスが厚かったのかガラスを打ち破った弾は力なくカランと音を立てて地面に落ちた。
「ひっ……」
サーッと血の気が引くのがわかる。
待て待て待て、ガラスが薄かったらおれ死んでたって!
今まで相手してきた奴の中にはナイフや銃を持ち出す者もいたがここまで容赦のない攻撃はなかった。
普通の人間なら一瞬でも躊躇うものだろう。
けど一切の躊躇もなく……。
おれは胸元にある兄ちゃんから貰ったネックレスをぎゅっと握りしめた。
軽くパニックになっているおれとは違って龍ケ崎は冷静に拳銃を構える。
「目閉じて耳塞いでろ」
おれは言われるがままに目を閉じて耳を塞ぐ。
そして龍ケ崎は拳銃を弾が飛んできた方へ向けて次々に撃ち放った。
遠くの方で「ぐあぁっ!」と悶え苦しむ声が聞こえた。
「お、おい、殺してないよな……?」
少し怖くて龍ケ崎のジャケットの背中の部分をキュッと引っ張るとそれに気付いた龍ケ崎がこちらを振り返る。
「安心しろ、殺してはいない」
龍ケ崎は口元を緩めておれを安心させるようにその大きな手のひらを頭にぽんと乗せた。
そして少し不器用に頭を撫でた後、そのまま龍ケ崎は車のドアを閉めて行ってしまった。
どれくらい経った……?
先程までの銃声が嘘のように聞こえなくなり辺りがしんとなる。
鳥の鳴き声だけが耳に届く。
終わったのか?
恐る恐る顔を上げるとこちらへ向かって歩いてくる龍ケ崎達が見えた。
見たところ怪我などは特になさそうで安堵する。
龍ケ崎率いる部下達が一斉に車に乗り込む。
「あっちは手負いだ。撤収する」
そんな龍ケ崎の台詞が合図かのように発車した。
*
車が向かって行った方を見つめ佇んでいる男が一人。
「俺、やっぱりあの子欲しいなぁ」
彼の恍惚とした声は誰に聞かれることもなく静寂に呑まれていった。
*
銃声の鳴り響く中、おれは龍ケ崎に言われるままにひた走る。
「渉様、下がっていてください!」
「あいつは龍ケ崎の部下だ、逃すな!」
背後にそんな怒声を聞きながら龍ケ崎のいる塀の陰まで来ると、そのまま腕を引っ張られ抱きとめられた。
本当は躱してやりたかったけど全力疾走したせいでそんな体力もない。
「上出来だ」
龍ケ崎は満足そうに口角を上げた。
なんとか逃げ切った。
ほっとしたのも束の間、少し冷静のなると次々と疑問が溢れてくる。
なんで龍ケ崎がここにいるんだ?
まるでおれがここで何をしていたのか理解しているような口ぶりだった。
この依頼は龍ケ崎とは全く関係ないし、なんなら千崎の家に行くなんて言ってない。
ってGPSのせいか。
ここ最近拉致られなかったから忘れてた。
そういや影山さんは!?
キョロキョロと龍ケ崎の腕の中から見渡すと少し後ろに銃を構えて健斗さんと並んで待機しているのが見える。
更にその後ろに日下部さんもいた。そんな日下部さんの手にも拳銃が握られていた。
これ完全に撃ち合う気満々のやつじゃん!
状況からしてメンバー総出かと思ったが千影さんの姿はなかった。
表情を見るにお互い知らない間柄というわけではなさそうだ。
冷静に銃を構えているところを見ると皆現状を把握してるっぽい……?
そしてなんの違和感もなく待機している影山さん。
まさか影山さんも龍ケ崎の仲間?
そう聞こうとして口を開いた瞬間、また銃声が響き渡った。
「……チッ!おい、箱出せ」
「え?」
「千崎渉から奪い返して来ただろう」
「あぁ、そーゆーことね」
龍ケ崎の言葉にはたと思い出す。
黒い箱に刻まれていた龍のマークと龍ケ崎ホールディングスという社名。
つまりこの箱は龍ケ崎の物だったわけか。
「ほらよ」
おれはウエストポーチから黒い箱を出して龍ケ崎に手渡す。
龍ケ崎はその箱を受け取ると、立体パズルを解くように素早く箱を開けた。
は、拳銃……!?
箱に入っていたのは龍の刻印の入った真っ黒な拳銃だった。
この数日間でこんな物騒な物を立て続けに目にするなんて誰が想像出来ただろうか。
龍ケ崎はその拳銃をジャケットに隠れていたホルスターに仕舞い込む。
そしてそのままおれの腕を掴み、影山さんと健斗さんの方へ振り返りこう告げた。
「こいつを車に乗せてくる。それまで頼んだぞ。千影、健斗」
「はいは~い」
「言われるまでもねぇよ」
え……?
今、千影って言わなかったか?
龍ケ崎に名を呼ばれて返事をしたのは影山さんと健斗さんだ。
いやでも今の影山さんの口調や纏う雰囲気は千影さんと似ている気が……。
呆けているおれを他所に龍ケ崎はおれの腕を掴んだままずんずんと先へ進んでいく。
すぐ近くに停められていた車まで来ると半ば無理矢理中に押し込まれた。
「いいか、俺が戻ってくるまでお前はここに隠れていろ」
「おい、りゅーーーー」
瞬間、車の窓ガラスに銃弾が打ち込まれる。
時が止まったかと思った。
窓ガラスが厚かったのかガラスを打ち破った弾は力なくカランと音を立てて地面に落ちた。
「ひっ……」
サーッと血の気が引くのがわかる。
待て待て待て、ガラスが薄かったらおれ死んでたって!
今まで相手してきた奴の中にはナイフや銃を持ち出す者もいたがここまで容赦のない攻撃はなかった。
普通の人間なら一瞬でも躊躇うものだろう。
けど一切の躊躇もなく……。
おれは胸元にある兄ちゃんから貰ったネックレスをぎゅっと握りしめた。
軽くパニックになっているおれとは違って龍ケ崎は冷静に拳銃を構える。
「目閉じて耳塞いでろ」
おれは言われるがままに目を閉じて耳を塞ぐ。
そして龍ケ崎は拳銃を弾が飛んできた方へ向けて次々に撃ち放った。
遠くの方で「ぐあぁっ!」と悶え苦しむ声が聞こえた。
「お、おい、殺してないよな……?」
少し怖くて龍ケ崎のジャケットの背中の部分をキュッと引っ張るとそれに気付いた龍ケ崎がこちらを振り返る。
「安心しろ、殺してはいない」
龍ケ崎は口元を緩めておれを安心させるようにその大きな手のひらを頭にぽんと乗せた。
そして少し不器用に頭を撫でた後、そのまま龍ケ崎は車のドアを閉めて行ってしまった。
どれくらい経った……?
先程までの銃声が嘘のように聞こえなくなり辺りがしんとなる。
鳥の鳴き声だけが耳に届く。
終わったのか?
恐る恐る顔を上げるとこちらへ向かって歩いてくる龍ケ崎達が見えた。
見たところ怪我などは特になさそうで安堵する。
龍ケ崎率いる部下達が一斉に車に乗り込む。
「あっちは手負いだ。撤収する」
そんな龍ケ崎の台詞が合図かのように発車した。
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車が向かって行った方を見つめ佇んでいる男が一人。
「俺、やっぱりあの子欲しいなぁ」
彼の恍惚とした声は誰に聞かれることもなく静寂に呑まれていった。
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