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第二章 危険な依頼と怪しい依頼人
意味深な言葉と疑問
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小難しい会議?の後、次に連れてこられたのはとある料理亭だった。
おれなんかが入っていいのか?と入口で逡巡していると龍ケ崎に腕を引かれあれよあれよという間に席に座らされてしまった。
しぶしぶメニューを開き目を疑った。
お値段の桁が多い……!
しかも知らないメニュー名ばかり。
目を白黒させている間にささっと冬吾が注文を済ませる。
え、はやっ。
待っておれ、財布にいくら入ってたっけ?
ぐるぐると考えているとおれの心中を察したのか龍ケ崎は同じものを二つ注文した。
「安心しろ、ここは俺の奢りだ」
このときばかりは感謝した。
奢りならいっかとメニューを閉じて料理を待つ。
日下部さんは所用があるとのことで席を外していた。
改めて考えてみるとなんでおれはこんな所に龍ケ崎といるんだろうか。
本来ならさっさと帰って家でゆっくりする予定だったのに。
なんせ今日は久しぶり何も予定のない休日だったのだ。
食べたら即刻帰ってやる!
そう息巻いていたがその願いはあっさり叶うこととなる。
料理を待っている間に龍ケ崎のスマホが鳴った。
画面の表示を見た龍ケ崎は一瞬顔をしかめて席を外した。
数分して戻ってきた龍ケ崎は不機嫌そうな顔をしていた。
「……悪いがこの後急用が入ったから俺は店を出る。お前はどうする?このまま食べていくなら千影を迎え用に呼ぶが」
「じゃあ食べてく」
滅多に食べられないような額の高級料理なのだ。ここで食べなかったら次はいつ食べられるのかわからない。
それに龍ケ崎と早く離れられるならそれに越したことはない。
おれがそう答えると龍ケ崎は少し眉根を下げて「そうか」と頷く。
着いてきて欲しかったんだろう。
龍ケ崎の機嫌なんか知るか。おれはご馳走を食べるんだ。
「なら、千影が来るまでここを離れるなよ」
龍ケ崎はいつものおれの行動を見越して釘を刺す。
しかし余程急ぎの用だったのかそれだけ言うと出入口で待機していた日下部さんを連れて行ってしまった。
程なくして料理が次々と運ばれてくる。おれはその料理の数々に目を輝かせながら舌鼓を打つ。
どれもこれも美味しい~!
自然と零れる笑みを抑えつつおれは次々と料理に手を伸ばす。
そして運ばれてきた料理を全てたいらげる頃、千影さんがやって来た。
「美味しかった?」
「はい、それはもう!」
普段あまり見せないおれの満面の笑みに千影さんはふふっと笑って「そんな顔もするんだね」と口にする。
おれだって笑うわ、とは思ったものの美味しい料理を食べられて満足したおれは口にするのを止めた。
どうやら食事代は先に龍ケ崎が支払っていたようで、そのまま千影さんの後を追って車に乗り込んだ。
やっと家に帰れる……。
到着まで寝てようと目を閉じたところ車を運転する千影さんに話しかけられる。
「冬吾とのデート楽しかった?」
「で、デート?」
思わぬ言葉におれは首を傾げる。
あれは拉致りの延長でありデートなどでは断じてない。しかも社会見学という名の修羅場を見せられて、龍ケ崎の金で一人でご飯を食べただけだ。デートらしさの欠けらも無い。
「あれ、違った? 昨日冬吾から明日連れ回すから歩夢くんを連れてきたらすぐ帰っていいって言われてたんだけど」
「拡大解釈しすぎです」
おれがバッサリと言い切ると千影さんは「なんだ~」と少し残念そうにした。
そこで残念がる意味がわからない。
というか龍ケ崎ははなからおれを泊める気でいたのか。
ブランケットなんてかけずにそのまま帰れば良かった!
そうすればあんな恥ずかしいこと……!
そう悔やんでも後の祭りだ。
おれは頭に浮かび上がる昨日の記憶をぶんぶんと頭を振って追い出す。
千影さんと会話しているうちにあっという間におれの家に到着する。
おれは千影さんにお礼を告げて車を降りた。
すると何かを思い出したように千影さんは車の窓を開けて顔を出す。
「多分しばらくは誰も迎えに行けないと思うからゆっくり休めると思うよ」
「もう来ないでくれたらもっとゆっくり休めるんですけどね」
「まぁまぁそんなこと言わずにさ~」
千影さんは楽しそうにおれの嫌味を受け流した。
そうか、しばらくは来ないのか。
それはとても助かるな。
「……あと少しだね~」
千影さんは突拍子もなくそんなことを言う。
なんのことなのかさっぱりわからない。
「何がですか?」
「ん~、なんだろうね~?」
千影さんはおれの問いに答えてくれなかった。
この感じだと多分教えてはくれないだろう。
前もそうだった。
教えてくれないくせに匂わせるのやめて欲しいんだけど。
「それじゃ、僕はもう行くね」
「はい、ありがとうございました」
おれはぺこりと頭を下げて数歩下がる。
千影さんはハンドルに手をかけて車の窓を閉めながら口を開く。
「……君のこと気に入ってるんだ。お願いだから僕に殺させないでよ」
「え、今の」
どういう意味ですか? そう問いかけようとして車に近付く。しかし窓は完全に閉まってしまい、千影さんもニッコリ笑うだけでそのまま行ってしまった。
おれはそのまま玄関へ向かう。
その間もなぜか千影さんの言葉が頭から離れない。
あれは冗談、だよな?
ふとおれは自分が関わっている人達が何者なのか全く知らないことに気付く。
知る必要もないと思っていた。
そもそも何も教えてくれないくせに仲間になれというのもおかしな話だ。
龍ケ崎達は裏で何をやってる……?
それになんでこんなにおれに構うんだろう……?
いや、考えるだけ時間の無駄か。
おれは次々湧いてくる疑問を頭の隅に追いやって依頼の資料を取り出した。
おれなんかが入っていいのか?と入口で逡巡していると龍ケ崎に腕を引かれあれよあれよという間に席に座らされてしまった。
しぶしぶメニューを開き目を疑った。
お値段の桁が多い……!
しかも知らないメニュー名ばかり。
目を白黒させている間にささっと冬吾が注文を済ませる。
え、はやっ。
待っておれ、財布にいくら入ってたっけ?
ぐるぐると考えているとおれの心中を察したのか龍ケ崎は同じものを二つ注文した。
「安心しろ、ここは俺の奢りだ」
このときばかりは感謝した。
奢りならいっかとメニューを閉じて料理を待つ。
日下部さんは所用があるとのことで席を外していた。
改めて考えてみるとなんでおれはこんな所に龍ケ崎といるんだろうか。
本来ならさっさと帰って家でゆっくりする予定だったのに。
なんせ今日は久しぶり何も予定のない休日だったのだ。
食べたら即刻帰ってやる!
そう息巻いていたがその願いはあっさり叶うこととなる。
料理を待っている間に龍ケ崎のスマホが鳴った。
画面の表示を見た龍ケ崎は一瞬顔をしかめて席を外した。
数分して戻ってきた龍ケ崎は不機嫌そうな顔をしていた。
「……悪いがこの後急用が入ったから俺は店を出る。お前はどうする?このまま食べていくなら千影を迎え用に呼ぶが」
「じゃあ食べてく」
滅多に食べられないような額の高級料理なのだ。ここで食べなかったら次はいつ食べられるのかわからない。
それに龍ケ崎と早く離れられるならそれに越したことはない。
おれがそう答えると龍ケ崎は少し眉根を下げて「そうか」と頷く。
着いてきて欲しかったんだろう。
龍ケ崎の機嫌なんか知るか。おれはご馳走を食べるんだ。
「なら、千影が来るまでここを離れるなよ」
龍ケ崎はいつものおれの行動を見越して釘を刺す。
しかし余程急ぎの用だったのかそれだけ言うと出入口で待機していた日下部さんを連れて行ってしまった。
程なくして料理が次々と運ばれてくる。おれはその料理の数々に目を輝かせながら舌鼓を打つ。
どれもこれも美味しい~!
自然と零れる笑みを抑えつつおれは次々と料理に手を伸ばす。
そして運ばれてきた料理を全てたいらげる頃、千影さんがやって来た。
「美味しかった?」
「はい、それはもう!」
普段あまり見せないおれの満面の笑みに千影さんはふふっと笑って「そんな顔もするんだね」と口にする。
おれだって笑うわ、とは思ったものの美味しい料理を食べられて満足したおれは口にするのを止めた。
どうやら食事代は先に龍ケ崎が支払っていたようで、そのまま千影さんの後を追って車に乗り込んだ。
やっと家に帰れる……。
到着まで寝てようと目を閉じたところ車を運転する千影さんに話しかけられる。
「冬吾とのデート楽しかった?」
「で、デート?」
思わぬ言葉におれは首を傾げる。
あれは拉致りの延長でありデートなどでは断じてない。しかも社会見学という名の修羅場を見せられて、龍ケ崎の金で一人でご飯を食べただけだ。デートらしさの欠けらも無い。
「あれ、違った? 昨日冬吾から明日連れ回すから歩夢くんを連れてきたらすぐ帰っていいって言われてたんだけど」
「拡大解釈しすぎです」
おれがバッサリと言い切ると千影さんは「なんだ~」と少し残念そうにした。
そこで残念がる意味がわからない。
というか龍ケ崎ははなからおれを泊める気でいたのか。
ブランケットなんてかけずにそのまま帰れば良かった!
そうすればあんな恥ずかしいこと……!
そう悔やんでも後の祭りだ。
おれは頭に浮かび上がる昨日の記憶をぶんぶんと頭を振って追い出す。
千影さんと会話しているうちにあっという間におれの家に到着する。
おれは千影さんにお礼を告げて車を降りた。
すると何かを思い出したように千影さんは車の窓を開けて顔を出す。
「多分しばらくは誰も迎えに行けないと思うからゆっくり休めると思うよ」
「もう来ないでくれたらもっとゆっくり休めるんですけどね」
「まぁまぁそんなこと言わずにさ~」
千影さんは楽しそうにおれの嫌味を受け流した。
そうか、しばらくは来ないのか。
それはとても助かるな。
「……あと少しだね~」
千影さんは突拍子もなくそんなことを言う。
なんのことなのかさっぱりわからない。
「何がですか?」
「ん~、なんだろうね~?」
千影さんはおれの問いに答えてくれなかった。
この感じだと多分教えてはくれないだろう。
前もそうだった。
教えてくれないくせに匂わせるのやめて欲しいんだけど。
「それじゃ、僕はもう行くね」
「はい、ありがとうございました」
おれはぺこりと頭を下げて数歩下がる。
千影さんはハンドルに手をかけて車の窓を閉めながら口を開く。
「……君のこと気に入ってるんだ。お願いだから僕に殺させないでよ」
「え、今の」
どういう意味ですか? そう問いかけようとして車に近付く。しかし窓は完全に閉まってしまい、千影さんもニッコリ笑うだけでそのまま行ってしまった。
おれはそのまま玄関へ向かう。
その間もなぜか千影さんの言葉が頭から離れない。
あれは冗談、だよな?
ふとおれは自分が関わっている人達が何者なのか全く知らないことに気付く。
知る必要もないと思っていた。
そもそも何も教えてくれないくせに仲間になれというのもおかしな話だ。
龍ケ崎達は裏で何をやってる……?
それになんでこんなにおれに構うんだろう……?
いや、考えるだけ時間の無駄か。
おれは次々湧いてくる疑問を頭の隅に追いやって依頼の資料を取り出した。
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