上 下
6 / 23
第一章 おれとアイツの出逢い

連れてこられたのは……

しおりを挟む
それがあまりにも自然な動作だったので思わず車に乗ってしまった。
慌てて降りようとするもドアを閉められてしまう。
次いで龍ケ崎はおれの右隣に日下部さんは運転席に乗り込んだ。

「では行きましょうか」

日下部さんはそう言いながら車を発進させた。
おれどこ連れていかれるんだ?
ってか!

「なんでおれの居場所分かったんだよ?二日間顔を合わせただけだろ?」

おれがそう問いかけると龍ケ崎はこちらを振り返って不敵に笑った。

「俺の情報網を甘く見るなよ」

そんなん知るかって思ったけどさっきの名刺と二人の関係から察するにコイツ偉い人なんだよな、多分。
社長かはたまたその息子辺りが妥当か。
社長にしては若い気もするが。
けど偉い人だからってそんな簡単に顔合わせただけのおれの居場所を突き止められるわけがない。
不良に怯えられるくらいだ。危ないヤツとのつてがあってもおかしくはない。
深く突っ込まないでおこう。

「それでわざわざおれの居場所調べてまでして何の用なんだよ?てかどこ連れてくつもりだ!」

「着いたら教えてやる」

龍ケ崎はそれ以上何も答えてくれなかった。
いざとなったら能力使って逃げるしかないか。
二日も追いかけてきたコイツから逃げられるかは別として。
あんまり立て続けに力使いたくないんだけどなぁ。

おれは静かなった車内で流れる景色をただぼんやりと眺めていた。
おれ、これからどうなるんだ? 


――――――――――――

「おい、そろそろ着くぞ」

龍ケ崎の声にハッとして気が付くと目の前には大きなビルが見えた。
おれ達を乗せた車はそのビルの駐車場で停まった。
おれは車を降りると二人の後ろを着いていく。
廃ビルとか倉庫とかいかにもヤバそうなとこ連れてかれたらどうしようかと思ったけど全然そんなことなかったな。
どうやらここは普通の会社のビルらしい。
すれ違う人達が龍ケ崎に挨拶しているのを見ると龍ケ崎はまともな人で偉い人なんだとわかる。
痴漢男だけど。

二人がエレベーターに乗り込んだところで、今逃げるチャンスなんじゃ?とふと思い立ちおれは立ち止まった。
が、龍ケ崎に腕を引っ張られエレベーターに乗せられてしまった。

「油断も隙もあったもんじゃないな」

龍ケ崎はおれの腕を掴んだまま楽しそうに笑った。
なんでコイツはそんなに楽しそうなんだ。

エレベーターを降りて半ば引きずられるようにして入った部屋には二人の男がソファに座っていた。
一人は優しげな顔でにこやかな表情をしている。
もう一人は鋭い目つきに釣り上がった眉で怖い雰囲気を醸し出していた。

「遅かったね」

「呼び出しておいて遅刻はねぇんじゃねぇか?」

二人は龍ケ崎を見るなりそう言った。
龍ケ崎に敬語を使っていないところを見るとこの二人もそれなりの立場なんだろうか。

「待たせて悪かった。全員揃ったところで本題に入るか」

「ふ~ん、じゃあその子が例の子なんだ?」

ソファに座っている優しげな顔をした男がおれをまじまじと見つめる。
なんだか値踏みをされているようで気分が悪い。
龍ケ崎はソファに座り全員の顔を見回す。
龍ケ崎の後ろに日下部さんが立っていた。
そもそも龍ケ崎の言う全員におれも含まれているんだろうか?
うん、これは含まれているな。
龍ケ崎が隣に座れと言わんばかりにおれを見ながらソファをポンポンと叩く。
おれが座らないと話が進まないらしく、しぶしぶ龍ケ崎の隣に座った。

「皆に紹介する。彼は今日から俺達の仲間になってもらう御子柴歩夢だ」

「……はい!?」

龍ケ崎の突拍子もない発言におれは開いた口が塞がらない。
おれが?龍ケ崎の仲間?
いやいや意味がわからない。
周りを見ると龍ケ崎の発言に驚いてるのはおれと目つきの悪い男の二人だけだった。

「おれ、そんなこと一言も聞いてねぇ!」

「オレもんな話聞いてねぇぞ?こんなガキ仲間にするなんて何考えてやがる」

なんの説明も一切せず無理矢理連れてきて俺達の仲間にしますってアホか!
第一、何してる人達なのかもわからないしどこから突っ込めばいいのかわからない。
頭痛くなってきた……。

「あの、せめておれが理解できるように説明してくれませんか?」

助けを求めるように日下部さんをちらりと見ると日下部さんはため息をついた。

「冬吾様、だから言ったんですよ。説明くらいして差し上げたら、と」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

可愛い男の子が実はタチだった件について。

桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。 可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け

悠遠の誓い

angel
BL
幼馴染の正太朗と海瑠(かいる)は高校1年生。 超絶ハーフイケメンの海瑠は初めて出会った幼稚園の頃からずっと平凡な正太朗のことを愛し続けている。 ほのぼの日常から運命に巻き込まれていく二人のラブラブで時にシリアスな日々をお楽しみください。 前作「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」を先に読んでいただいたほうがわかりやすいかもしれません。(読まなくても問題なく読んでいただけると思います)

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

処理中です...