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第27話
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「それが、詳しい事は……明日、映画の方の撮影が終わった後に時間をとってほしいと言われたんですけど、大丈夫ですよね?」
「もちろん大丈夫だよ。でも僕の出番は少しだけど、監督はその後もしばらく撮影があるんじゃないのかなあ。それが終わるまで待ってないといけないの?」
「そう言えば、ひろしさんとリカさんのシーンで終わりにするために、明日の予定は少し変更するとかなんとか言ってたような。ひろしさん主演の話で頭がいっぱいで、ちょっと記憶が曖昧ですけど、うまく調整してくれてると思いますよ。ひろしさんは予定通りに入って、順調に犯人役を演じて、たぶんそこからそんなに待たずに打ち合わせをして、暗くなる前に帰れると思いますけどね」
「なるほど。じゃあ僕は予定通りに、美樹が迎えにきてくれるまで家で待ってたらいいだけだ」
「え? 明日はテレビ局のスタジオで撮影なのに、自分の車で入らないんですか?」
「美樹に電話するまではそのつもりでいたんだけど、主演の話なんて聞いて今日普通に寝られるかどうか分からないから、寝坊したら困るでしょ? 迎えにきてくれるよね?」
「もちろんですよ。会社の車かタクシーで行くので待っていてください。それにしても、ひろしさんが主役の仕事をこんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しいですよ」
「バスの仕事を始めた時点で主役は諦めていたから、普通にオファーが来るよりも倍嬉しいよ。そろそろ次の運行に行かないといけないから、また明日話そう」
「はーい。私は社長の目を盗みつつさぼりながらも、この事務仕事の山を小高い丘ぐらいにはなるように頑張ります。なので明日はフラフラしているかもしれないですけど、気を使ってドーナツとかを用意しておかなくても大丈夫ですよ」と言い終わってすぐに電話を切れた。
今さっきバスの中で小野さんを見た時の動揺はどこに行ってしまったのだろうと思うくらいに落ち着けたのは、塚谷君と話したおかげだ。ただ、今回はその塚谷君からあまりに耳寄りな話を聞いてしまったので、動揺が興奮に変わっていたけれども。
だからといって安全運転をできないような僕ではないが、普段とは違うのは明らかだ。バスから降りていくお客さんに向かって、塚谷君にも負けず劣らずの笑顔で「ありがとうございます」を無意識にやっていた。ナチュラルハイの状態になっていたので、その日の仕事が終わっても全く疲れを感じていなかったのは思っていた通りだ。なので、今までは撮影当日に東京へと向かうことがほとんどだったけど、この前の健二さんに見つかった時のように前日の今日に帰ろうと、家へ戻って着替えると晩ごはんは東京で食べるつもりですぐに出発した。
正直に言って、今日も塚谷君に迎えにきてもらおうか少し悩んだ。しかし塚谷君にとっては大変で辟易する事務仕事をしていたし、東京の家へというならまだしもこっちの別宅まで来るのはなかなかの負担になる。だから自分自身で運転するのを選んだが、運転は全くなんともないけど塚谷君がいない寂しさがあった。塚谷君がドーナツをあからさまに要求していた事を思い出したので、ぎりぎりドーナツ屋さんが閉まる前に買うのに成功して安堵した。ただ、目の前にこんなに美味しそうなドーナツがあってほんの少しだけ葛藤した後、味見してしまったのは当然の結末だろう。塚谷君なら理解してくれるに決まっている。ドーナツがたくさん入っている箱の中に不自然なスペースが残っているのを、見て笑っている塚谷君の笑顔を想像してしまった。
安全運転で無事に東京の家に着いた僕は、まずシャワーを浴びてさっぱりした。なのに、ナチュラルハイが隠していた疲労とドーナツという名の睡眠薬が突如として襲いかかってくる。仕方なく、今日あったたくさんの嬉しい事と晩ごはんを忘れて、布団の中へ入り夢を見ることとなった。
目覚まし時計をセットするのを忘れていたが、塚谷君が連打する呼び鈴の音で、僕にしては珍しく爽やかに気持ちよく目が覚めた。理由は言うまでもないだろう。それよりも、今は呼び鈴のボタンが心配だ。呼び鈴のボタンに容赦のない攻撃をくわえている塚谷君は、僕が普段はなかなか起きないのを知っているので、僕が顔を出すまでは呼び鈴のボタンにとっては無慈悲な修行のようなものだ。呼び鈴のボタンを救出するためにも、僕は玄関へと急いだ。
「ひろしさん、おはようございます。じゃあ、行きましょうか?」
「ちょっと待って、今起きたばっかりだから。上がって待ってて。すぐに準備するよ」
「はーい、お邪魔しまーす。慌てないでゆっくり支度してくださいね、ひろしさん。やっぱり会社の車で来て正解でしたね。とりあえず私はミルクティーとドーナツで幸せタイムに入るので、邪魔しないでください」
「ドーナツがあるって、よく分かったね?」
「ひろしさんが私との約束を破るわけがないですからねって、もう邪魔してるじゃないですか、私の事はほっといて、自分の事だけに集中してください。あっ、でも、分かっているとは思いますけど、あんまり早く動かないでくださいね」
僕がすぐに出発できる状態でなかった事もドーナツを用意していた事も、塚谷君は知っていたのだろう。僕の車のすぐ横にある空いたスペースに、会社の車をきっちり停めてエンジンを切ってから、僕を迎えに来たことからも明白だ。そして、塚谷君がこう言えば、僕がああいう風に行動するというのも読まれている。敏腕マネージャーなのだから、それくらいはできて当然なのかもしれないが、ちょっと悔しい。でもまあ、あの笑顔を見せられると何もかも許せるから不思議だ。
塚谷君がドーナツを食べ終わるのに合わせてゆっくり支度をしたつもりだったけど、ドーナツがまだ2個残っていた。ミルクティーを作るのに手間取ったのだろう。塚谷君が訴えるような目で僕を見るし、僕は昨日の晩はドーナツしか食べてないのでトーストを焼いて食べることにした。それでも撮影時刻まではたっぷり時間があるので問題はない。
それでもまだまだ余裕を持って、ドーナツを平らげ大満足の塚谷君運転の車でテレビ局まで行き、楽屋でまったりしていると、ドアをノックする音がした。スタッフの人が呼びに来てくれたのだろうか。撮影開始までにはまだ時間があると思っていた僕と塚谷君までもが慌てふためいた。なぜなら着替えもメイクもこれっぽっちもしていない。撮影開始時刻を勘違いしていたのだろうか。これはまずい。せめて気の利いた言い訳を考えようか。いや、やっぱり正直に話して謝ろう。塚谷君も目でそう言っている。最低限の誠意を見せるためにも、ドアに急いだ。
「もちろん大丈夫だよ。でも僕の出番は少しだけど、監督はその後もしばらく撮影があるんじゃないのかなあ。それが終わるまで待ってないといけないの?」
「そう言えば、ひろしさんとリカさんのシーンで終わりにするために、明日の予定は少し変更するとかなんとか言ってたような。ひろしさん主演の話で頭がいっぱいで、ちょっと記憶が曖昧ですけど、うまく調整してくれてると思いますよ。ひろしさんは予定通りに入って、順調に犯人役を演じて、たぶんそこからそんなに待たずに打ち合わせをして、暗くなる前に帰れると思いますけどね」
「なるほど。じゃあ僕は予定通りに、美樹が迎えにきてくれるまで家で待ってたらいいだけだ」
「え? 明日はテレビ局のスタジオで撮影なのに、自分の車で入らないんですか?」
「美樹に電話するまではそのつもりでいたんだけど、主演の話なんて聞いて今日普通に寝られるかどうか分からないから、寝坊したら困るでしょ? 迎えにきてくれるよね?」
「もちろんですよ。会社の車かタクシーで行くので待っていてください。それにしても、ひろしさんが主役の仕事をこんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しいですよ」
「バスの仕事を始めた時点で主役は諦めていたから、普通にオファーが来るよりも倍嬉しいよ。そろそろ次の運行に行かないといけないから、また明日話そう」
「はーい。私は社長の目を盗みつつさぼりながらも、この事務仕事の山を小高い丘ぐらいにはなるように頑張ります。なので明日はフラフラしているかもしれないですけど、気を使ってドーナツとかを用意しておかなくても大丈夫ですよ」と言い終わってすぐに電話を切れた。
今さっきバスの中で小野さんを見た時の動揺はどこに行ってしまったのだろうと思うくらいに落ち着けたのは、塚谷君と話したおかげだ。ただ、今回はその塚谷君からあまりに耳寄りな話を聞いてしまったので、動揺が興奮に変わっていたけれども。
だからといって安全運転をできないような僕ではないが、普段とは違うのは明らかだ。バスから降りていくお客さんに向かって、塚谷君にも負けず劣らずの笑顔で「ありがとうございます」を無意識にやっていた。ナチュラルハイの状態になっていたので、その日の仕事が終わっても全く疲れを感じていなかったのは思っていた通りだ。なので、今までは撮影当日に東京へと向かうことがほとんどだったけど、この前の健二さんに見つかった時のように前日の今日に帰ろうと、家へ戻って着替えると晩ごはんは東京で食べるつもりですぐに出発した。
正直に言って、今日も塚谷君に迎えにきてもらおうか少し悩んだ。しかし塚谷君にとっては大変で辟易する事務仕事をしていたし、東京の家へというならまだしもこっちの別宅まで来るのはなかなかの負担になる。だから自分自身で運転するのを選んだが、運転は全くなんともないけど塚谷君がいない寂しさがあった。塚谷君がドーナツをあからさまに要求していた事を思い出したので、ぎりぎりドーナツ屋さんが閉まる前に買うのに成功して安堵した。ただ、目の前にこんなに美味しそうなドーナツがあってほんの少しだけ葛藤した後、味見してしまったのは当然の結末だろう。塚谷君なら理解してくれるに決まっている。ドーナツがたくさん入っている箱の中に不自然なスペースが残っているのを、見て笑っている塚谷君の笑顔を想像してしまった。
安全運転で無事に東京の家に着いた僕は、まずシャワーを浴びてさっぱりした。なのに、ナチュラルハイが隠していた疲労とドーナツという名の睡眠薬が突如として襲いかかってくる。仕方なく、今日あったたくさんの嬉しい事と晩ごはんを忘れて、布団の中へ入り夢を見ることとなった。
目覚まし時計をセットするのを忘れていたが、塚谷君が連打する呼び鈴の音で、僕にしては珍しく爽やかに気持ちよく目が覚めた。理由は言うまでもないだろう。それよりも、今は呼び鈴のボタンが心配だ。呼び鈴のボタンに容赦のない攻撃をくわえている塚谷君は、僕が普段はなかなか起きないのを知っているので、僕が顔を出すまでは呼び鈴のボタンにとっては無慈悲な修行のようなものだ。呼び鈴のボタンを救出するためにも、僕は玄関へと急いだ。
「ひろしさん、おはようございます。じゃあ、行きましょうか?」
「ちょっと待って、今起きたばっかりだから。上がって待ってて。すぐに準備するよ」
「はーい、お邪魔しまーす。慌てないでゆっくり支度してくださいね、ひろしさん。やっぱり会社の車で来て正解でしたね。とりあえず私はミルクティーとドーナツで幸せタイムに入るので、邪魔しないでください」
「ドーナツがあるって、よく分かったね?」
「ひろしさんが私との約束を破るわけがないですからねって、もう邪魔してるじゃないですか、私の事はほっといて、自分の事だけに集中してください。あっ、でも、分かっているとは思いますけど、あんまり早く動かないでくださいね」
僕がすぐに出発できる状態でなかった事もドーナツを用意していた事も、塚谷君は知っていたのだろう。僕の車のすぐ横にある空いたスペースに、会社の車をきっちり停めてエンジンを切ってから、僕を迎えに来たことからも明白だ。そして、塚谷君がこう言えば、僕がああいう風に行動するというのも読まれている。敏腕マネージャーなのだから、それくらいはできて当然なのかもしれないが、ちょっと悔しい。でもまあ、あの笑顔を見せられると何もかも許せるから不思議だ。
塚谷君がドーナツを食べ終わるのに合わせてゆっくり支度をしたつもりだったけど、ドーナツがまだ2個残っていた。ミルクティーを作るのに手間取ったのだろう。塚谷君が訴えるような目で僕を見るし、僕は昨日の晩はドーナツしか食べてないのでトーストを焼いて食べることにした。それでも撮影時刻まではたっぷり時間があるので問題はない。
それでもまだまだ余裕を持って、ドーナツを平らげ大満足の塚谷君運転の車でテレビ局まで行き、楽屋でまったりしていると、ドアをノックする音がした。スタッフの人が呼びに来てくれたのだろうか。撮影開始までにはまだ時間があると思っていた僕と塚谷君までもが慌てふためいた。なぜなら着替えもメイクもこれっぽっちもしていない。撮影開始時刻を勘違いしていたのだろうか。これはまずい。せめて気の利いた言い訳を考えようか。いや、やっぱり正直に話して謝ろう。塚谷君も目でそう言っている。最低限の誠意を見せるためにも、ドアに急いだ。
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