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元年下上司の万年巡査部長に再会
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阿部君パパは、パトランプを入手できたのは、自分の娘だけのおかげだと信じて疑っていない。確かに言ったのは、阿部君だし、言い方もうまかった。明智君の名前さえ出せば、大抵の事は通る。だけどそれは、私と警視長の長年の友情があってこそなんだぞ。
別に私は手柄を私のものにしたいわけじゃない。せめて我々怪盗団3人全員の手柄にしてもらえると、阿部君パパの私を見る目が少し変わるかもしれないのに。と思うのは意味のないことだったな。
まず阿部君はそんなに優しくない。自分一人の手柄だと信じ切っているのだから付け入るすきもない。そんな娘の性格を知っていながら、阿部君パパはみんなの手柄だとはあえて考えようにしている。そもそも阿部君パパにとって誰の手柄かなんてどうでもいいのだ。例え私一人が頑張って手に入れていたとしても、運転手代を負ける気なんて露ほどもない。それとこれとは別問題なのだ。
阿部君パパはパトランプが手に入った事だけを、素直に喜んでいる。それ以上でもそれ以下でもない。しいて言えば、正当な方法で手に入れたという事だけが重要だった。違法な方法で手に入れたものなら、せいぜい誰も見ていない所で鑑賞する程度だろう。いや、阿部君パパなら小さな躊躇のすぐ後に考えもなしに使うかもしれない。それが阿部家の血統だろう。それでも交通量が少なく目撃者もいない時と場所に限定する。うん、してくれると期待しよう。
しかしこのパトランプは正々堂々と使用できる。だからって、いつでもどこでも好きな時に使っていいものではないのだけれど。正当なタイミングで使ってほしいと思うが、はっきり言ってそんなタイミングなんて我々とは無縁だ。なぜなら逮捕権がないので犯罪者を追いかける理由がない。それに我々が関与していい事件は、この事件だけなのだ。他の事件には首を突っ込めない。
仮に私の名推理で追い込まれた犯人がすきを突いて逃げたなら、待ってましたとばかりに喜んで使うだろう。使うチャンスは、この一回きりだ。本来なら。だけど阿部君パパは何の考えもなしに使うに決まっている。警視長の後ろ盾があるとかも思わない。そういう意味では、ずる賢くないから好感を持てるのだろう。ただ使いたいだけで使うのが、阿部君パパなのだ。もちろん、時も場所も気にしない。阿部君と明智君も決してとがめない。そして私がたしなめても聞く耳を持たない。
私が気にしているだけで、世間の人はそれほど気にならないかもしれない。そのように祈るだけだ。ただの覆面パトカーが走っていると思っておくれ。貸してくれた警察が特に切に願っていることだろう。ただ事故だけは起こさないでくれと神に祈りながら。
緊急かどうかは別として、緊急走行中とはいえ注意力が散漫なドライバーと事故なんて起こそうなら、正規の警察官ですら何かと批判されるのだ。もらい事故だろうが何だろうが、万が一我々の車が事故を起こしたなら、マスコミやモノ好きな暇人たちが楽しそうに根掘り葉掘り調べ上げる。そしてきっと、我々が本職は怪盗団だというところまでたどり着くだろう。マスコミや暇人たちを侮ってはいけない。
こんな情けない形で怪盗だとバレて逮捕されるなんて、死んでも嫌だ。阿部君パパに一つだけお願いをしよう。パトランプを使わないでなんていう、不可能なお願いではない。ただの安全運転だ。
阿部君パパは私のすがるような態度から、本気度を感じてくれた。それとも、ただの嫌がらせを思いついたのだろう。阿部君パパは、パトランプを輝かせサイレンを鳴らしながら、私の希望通りに安全運転をしてくれた。我々の車の後ろには大渋滞ができていることになんて、気にも留めずに。それでもパトランプの力でノンストップで病院に直行できたので、時間的には普通に安全運転で走った時とさほど変わらなかった。
「阿部君パパ、ありがとう」
もう少しスピードを上げても構わないぞ、なんて言わない。終わってしまう。
「いえいえ。気持ちいいですよね、安全運転。私を追い抜かす根性のある奴が現れなかったのは残念でしたけど」
やはり嫌がらせを楽しんでいたな。なんて陰険なやつなんだ。でも口に出すだけましか。阿部君と明智君も嬉しそうに後ろの車を眺めていたからな。私は、私は……うん、正直に言うと、実に気分が良かった。王様になったようだったな。
『大怪盗』を卒業して『怪盗王』を目指すか。それには実績を積まないとな。今から楽しみだ。『名探偵』も出世したら『探偵王』を名乗るのだろうか。うーん、言ったもの勝ちだな。私は今から『探偵王リーダー』だ。
「『探偵王ひまわり』も悪くないですね。どうしようかな」「『ワンワオンワワンワーン』ワンワワンワワワワーンワンワン」
嬉し恥ずかしとは、こういう事だな。理由は言わないぞ。ちなみに明智君は『犬王あけっちー』を検討しているのは、犬語が分からない私でも理解できた。『名犬』が『犬王』になるだけで随分意味合いが変わるが、そんな小さな事を気にする我々ではない。いや、明智君なら、真の『犬王』になれるかもしれないな。
私たち3人の探偵王候補は、バカ笑いの阿部君パパを車に残し、爽やかな笑顔で病院の受付に進んだ。病院内で、そんな笑顔は不謹慎だろとか言って責めないでほしい。笑うのを堪えるのは難しいのだ。それに病院が悲しみで溢れているはずもない。悲喜こもごもだ。まあ今の私たちの笑顔が、ここにふさわしくないのは認めるが。
「すすすすいません。エヘンっ。昨日、ある事件に巻き込まれた人が運び込まれたと思うんですけど、その人はどこにいますか? おそらく、まだ身元不明の。警察官もまだ付いているはずですけど」
「ああー、その人なら、まだ集中治療室です。面会はできませんよ」
「分かりました。ありがとうございます。警護している警察官に話を聞いてみます」
私たちが集中治療室の近くまで行くと、病院には不釣り合いの一人の制服警察官がいた。私には見覚えがある。私が交番勤務時代にずいぶんとかわいがってくれた、年下上司の巡査部長だ。向こうも私に気づいたようで、いきなり敬礼をした。こいつの方からしたのは初めてだ。こいつも、私たちが警視長付きの捜査官だと知らされているようだな。ただ、やけに悔しそうだ。これくらいの事をポーカーフェイスでできないから、万年巡査部長なんだぞ。出世するには、わざとらしくないゴマすりが必須だということだな。
しかし、こいつがいる交番は、この辺りは管轄外のはず。答えは簡単だ。飛ばされたにしては近いので、ただの転勤なのだろう。それとも、警察界で一二を争う暇なこいつが応援で来ているのかもしれない。どうでもいいが。それよりも敬礼を返さないと、こいつはいつまでも動かないぞ。しばらく眺めていてやろうかな。いや、私たちはそこまで暇ではなかった。
それでも敬礼は返さずに、私たちはさっきもらったばかりの特別な警察手帳をこれみよがしに見せた。こいつは既に私たちを捜査官だと認識しているので、わざわざ見せる必要はない。ただ単に見せびらかしたかったのもあるけれど、私たちの方が立場が上だと、こいつに思い知らせるためだ。警察では階級がすべてなのだ。そして私たちの階級は、なんと警視長と同等だった。
いやー、こんなに堂々と警察手帳を披露する日が来るとは思いもしなかった。警察官時代は制服を着ていたので見せるまでもなかったが、例え見せるように言われてもすぐには見せなかっただろう。巡査だったからな。一般の人はいちいちそこまで見ないし、こっちが気にしているだけというのは分かっていた。いや、忘れよう。なにせ今の私は、上から数えた方が圧倒的に早い階級の警視長もどきなんだからな。最大で一週間だけとはいえ。
私は私史上最大の上から目線で警察手帳を見せた。阿部君は慣れたもので、いつも通りの上から目線で見せる。明智君は慣れていないのか、阿部君に何やら相談している。するとすぐに阿部君が万年巡査部長に話しかけた。
「あのー、警視長は、私たちを警視長だと思って接するように言ったはずですけど」
「はい、その通りです。本官に何か落ち度が?」
「はあー、万年巡査部長はこれだから」
阿部君はどうしてこいつが巡査部長だと分かったんだ? 明智君は会ったことがあるから、聞いたのだろうか? それとも、阿部君得意の当てずっぽうなのだろう。万年巡査部長も当たっているだけに、言い返さずに何やら思案している。するとすかさず、阿部君が続けた。
「こちらにおわす明智君を、ずいぶん上から見てなさるのね?」
「ははあー、失礼いたしました」
万年巡査部長は言うが早いか、片膝を付いた。それでもまだまだ明智君よりは目線が上だ。なぜか未だに敬礼のポーズをしている。私たちが敬礼しなかったから、止めるタイミングを逸したまま忘れているのだろうか。明智君阿部君、この人をあまりいじめないでおくれ。私はちっとも嫌な思い出なんてないのだから。と思っているそばから、明智君が再び阿部君にゴニョゴニョ言っている。
「明智君の心の広さに感謝するのね。立ちなさい。そしていつまで敬礼してるの。プッ……。リーダー、何か聞きたい事があるなら、早くしてください」
あれ? 終わりなのか? もう少しくらいいじめてやればいいのに。明智君を交番に連れていった時はバカにしてただろ。こいつと明智君を残して私が一人で見回りに出た時に、明智君はいじめられなかったのだろうか。さすがにそれはないな。そんな事をすれば明智君の理性が飛び、こいつが労災でしばらく休んでいたはずだからな。
それによく考えれば、明智君は誰にでも好かれる不思議な魅力がある。私に似てしまったのだろう。犬は飼い主に似るらしいからな。自慢している場合ではないし、魅力の塊の私が自慢すると反感を買う恐れがある。何より暇つぶしをしている場合ではなかった。『名探偵』改め『探偵王』……いや、控えめに謙遜もしないといけないな。奥ゆかしい私は、しばらくは『名探偵』でいかせてくれるかい。じゃあ、名探偵の名捜査を名披露してあげるとするか。
別に私は手柄を私のものにしたいわけじゃない。せめて我々怪盗団3人全員の手柄にしてもらえると、阿部君パパの私を見る目が少し変わるかもしれないのに。と思うのは意味のないことだったな。
まず阿部君はそんなに優しくない。自分一人の手柄だと信じ切っているのだから付け入るすきもない。そんな娘の性格を知っていながら、阿部君パパはみんなの手柄だとはあえて考えようにしている。そもそも阿部君パパにとって誰の手柄かなんてどうでもいいのだ。例え私一人が頑張って手に入れていたとしても、運転手代を負ける気なんて露ほどもない。それとこれとは別問題なのだ。
阿部君パパはパトランプが手に入った事だけを、素直に喜んでいる。それ以上でもそれ以下でもない。しいて言えば、正当な方法で手に入れたという事だけが重要だった。違法な方法で手に入れたものなら、せいぜい誰も見ていない所で鑑賞する程度だろう。いや、阿部君パパなら小さな躊躇のすぐ後に考えもなしに使うかもしれない。それが阿部家の血統だろう。それでも交通量が少なく目撃者もいない時と場所に限定する。うん、してくれると期待しよう。
しかしこのパトランプは正々堂々と使用できる。だからって、いつでもどこでも好きな時に使っていいものではないのだけれど。正当なタイミングで使ってほしいと思うが、はっきり言ってそんなタイミングなんて我々とは無縁だ。なぜなら逮捕権がないので犯罪者を追いかける理由がない。それに我々が関与していい事件は、この事件だけなのだ。他の事件には首を突っ込めない。
仮に私の名推理で追い込まれた犯人がすきを突いて逃げたなら、待ってましたとばかりに喜んで使うだろう。使うチャンスは、この一回きりだ。本来なら。だけど阿部君パパは何の考えもなしに使うに決まっている。警視長の後ろ盾があるとかも思わない。そういう意味では、ずる賢くないから好感を持てるのだろう。ただ使いたいだけで使うのが、阿部君パパなのだ。もちろん、時も場所も気にしない。阿部君と明智君も決してとがめない。そして私がたしなめても聞く耳を持たない。
私が気にしているだけで、世間の人はそれほど気にならないかもしれない。そのように祈るだけだ。ただの覆面パトカーが走っていると思っておくれ。貸してくれた警察が特に切に願っていることだろう。ただ事故だけは起こさないでくれと神に祈りながら。
緊急かどうかは別として、緊急走行中とはいえ注意力が散漫なドライバーと事故なんて起こそうなら、正規の警察官ですら何かと批判されるのだ。もらい事故だろうが何だろうが、万が一我々の車が事故を起こしたなら、マスコミやモノ好きな暇人たちが楽しそうに根掘り葉掘り調べ上げる。そしてきっと、我々が本職は怪盗団だというところまでたどり着くだろう。マスコミや暇人たちを侮ってはいけない。
こんな情けない形で怪盗だとバレて逮捕されるなんて、死んでも嫌だ。阿部君パパに一つだけお願いをしよう。パトランプを使わないでなんていう、不可能なお願いではない。ただの安全運転だ。
阿部君パパは私のすがるような態度から、本気度を感じてくれた。それとも、ただの嫌がらせを思いついたのだろう。阿部君パパは、パトランプを輝かせサイレンを鳴らしながら、私の希望通りに安全運転をしてくれた。我々の車の後ろには大渋滞ができていることになんて、気にも留めずに。それでもパトランプの力でノンストップで病院に直行できたので、時間的には普通に安全運転で走った時とさほど変わらなかった。
「阿部君パパ、ありがとう」
もう少しスピードを上げても構わないぞ、なんて言わない。終わってしまう。
「いえいえ。気持ちいいですよね、安全運転。私を追い抜かす根性のある奴が現れなかったのは残念でしたけど」
やはり嫌がらせを楽しんでいたな。なんて陰険なやつなんだ。でも口に出すだけましか。阿部君と明智君も嬉しそうに後ろの車を眺めていたからな。私は、私は……うん、正直に言うと、実に気分が良かった。王様になったようだったな。
『大怪盗』を卒業して『怪盗王』を目指すか。それには実績を積まないとな。今から楽しみだ。『名探偵』も出世したら『探偵王』を名乗るのだろうか。うーん、言ったもの勝ちだな。私は今から『探偵王リーダー』だ。
「『探偵王ひまわり』も悪くないですね。どうしようかな」「『ワンワオンワワンワーン』ワンワワンワワワワーンワンワン」
嬉し恥ずかしとは、こういう事だな。理由は言わないぞ。ちなみに明智君は『犬王あけっちー』を検討しているのは、犬語が分からない私でも理解できた。『名犬』が『犬王』になるだけで随分意味合いが変わるが、そんな小さな事を気にする我々ではない。いや、明智君なら、真の『犬王』になれるかもしれないな。
私たち3人の探偵王候補は、バカ笑いの阿部君パパを車に残し、爽やかな笑顔で病院の受付に進んだ。病院内で、そんな笑顔は不謹慎だろとか言って責めないでほしい。笑うのを堪えるのは難しいのだ。それに病院が悲しみで溢れているはずもない。悲喜こもごもだ。まあ今の私たちの笑顔が、ここにふさわしくないのは認めるが。
「すすすすいません。エヘンっ。昨日、ある事件に巻き込まれた人が運び込まれたと思うんですけど、その人はどこにいますか? おそらく、まだ身元不明の。警察官もまだ付いているはずですけど」
「ああー、その人なら、まだ集中治療室です。面会はできませんよ」
「分かりました。ありがとうございます。警護している警察官に話を聞いてみます」
私たちが集中治療室の近くまで行くと、病院には不釣り合いの一人の制服警察官がいた。私には見覚えがある。私が交番勤務時代にずいぶんとかわいがってくれた、年下上司の巡査部長だ。向こうも私に気づいたようで、いきなり敬礼をした。こいつの方からしたのは初めてだ。こいつも、私たちが警視長付きの捜査官だと知らされているようだな。ただ、やけに悔しそうだ。これくらいの事をポーカーフェイスでできないから、万年巡査部長なんだぞ。出世するには、わざとらしくないゴマすりが必須だということだな。
しかし、こいつがいる交番は、この辺りは管轄外のはず。答えは簡単だ。飛ばされたにしては近いので、ただの転勤なのだろう。それとも、警察界で一二を争う暇なこいつが応援で来ているのかもしれない。どうでもいいが。それよりも敬礼を返さないと、こいつはいつまでも動かないぞ。しばらく眺めていてやろうかな。いや、私たちはそこまで暇ではなかった。
それでも敬礼は返さずに、私たちはさっきもらったばかりの特別な警察手帳をこれみよがしに見せた。こいつは既に私たちを捜査官だと認識しているので、わざわざ見せる必要はない。ただ単に見せびらかしたかったのもあるけれど、私たちの方が立場が上だと、こいつに思い知らせるためだ。警察では階級がすべてなのだ。そして私たちの階級は、なんと警視長と同等だった。
いやー、こんなに堂々と警察手帳を披露する日が来るとは思いもしなかった。警察官時代は制服を着ていたので見せるまでもなかったが、例え見せるように言われてもすぐには見せなかっただろう。巡査だったからな。一般の人はいちいちそこまで見ないし、こっちが気にしているだけというのは分かっていた。いや、忘れよう。なにせ今の私は、上から数えた方が圧倒的に早い階級の警視長もどきなんだからな。最大で一週間だけとはいえ。
私は私史上最大の上から目線で警察手帳を見せた。阿部君は慣れたもので、いつも通りの上から目線で見せる。明智君は慣れていないのか、阿部君に何やら相談している。するとすぐに阿部君が万年巡査部長に話しかけた。
「あのー、警視長は、私たちを警視長だと思って接するように言ったはずですけど」
「はい、その通りです。本官に何か落ち度が?」
「はあー、万年巡査部長はこれだから」
阿部君はどうしてこいつが巡査部長だと分かったんだ? 明智君は会ったことがあるから、聞いたのだろうか? それとも、阿部君得意の当てずっぽうなのだろう。万年巡査部長も当たっているだけに、言い返さずに何やら思案している。するとすかさず、阿部君が続けた。
「こちらにおわす明智君を、ずいぶん上から見てなさるのね?」
「ははあー、失礼いたしました」
万年巡査部長は言うが早いか、片膝を付いた。それでもまだまだ明智君よりは目線が上だ。なぜか未だに敬礼のポーズをしている。私たちが敬礼しなかったから、止めるタイミングを逸したまま忘れているのだろうか。明智君阿部君、この人をあまりいじめないでおくれ。私はちっとも嫌な思い出なんてないのだから。と思っているそばから、明智君が再び阿部君にゴニョゴニョ言っている。
「明智君の心の広さに感謝するのね。立ちなさい。そしていつまで敬礼してるの。プッ……。リーダー、何か聞きたい事があるなら、早くしてください」
あれ? 終わりなのか? もう少しくらいいじめてやればいいのに。明智君を交番に連れていった時はバカにしてただろ。こいつと明智君を残して私が一人で見回りに出た時に、明智君はいじめられなかったのだろうか。さすがにそれはないな。そんな事をすれば明智君の理性が飛び、こいつが労災でしばらく休んでいたはずだからな。
それによく考えれば、明智君は誰にでも好かれる不思議な魅力がある。私に似てしまったのだろう。犬は飼い主に似るらしいからな。自慢している場合ではないし、魅力の塊の私が自慢すると反感を買う恐れがある。何より暇つぶしをしている場合ではなかった。『名探偵』改め『探偵王』……いや、控えめに謙遜もしないといけないな。奥ゆかしい私は、しばらくは『名探偵』でいかせてくれるかい。じゃあ、名探偵の名捜査を名披露してあげるとするか。
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