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真面目な警察官に感謝
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正門には、私たちを案内してくれた警察官が背筋を伸ばし威厳を示しながら直立不動で立っていた。とてもじゃないが不審者は入ってこれない。だけど疲れないのだろうか。私の若い時と違って、最近の警察官は真面目だ。いや、私と私の年下の上司の巡査部長がいい加減だったのだ。あの巡査部長がここの警備に配属されていたなら、はっきり言って事件現場は不審者や野次馬によって荒らされていただろう。そして容疑者を絞るのが難しくなっていた。第一容疑者の夫人はほくそ笑んだことだろう。
私たちが怪盗で培った忍び足で近づいてきたとはいえ、この警察官が全然動かないのは気になる。まさか寝ているのか? いや、立ったまま眠る芸当ができるのは、警察広しといえども、私とあの巡査部長だけだ。暇つぶしにたっぷり練習したからな。そして私が辞めた今となっては、あの巡査部長だけなはず。だけど、私の後釜に収まった新人警察官がいたとして、あの巡査部長から指導を受けていたら増えてるかもしれない。もしここにいる警察官がそうなら、寝ている可能性はあるということだな。確かめておかないと、場合によっては容疑者が爆発的に増える。そしてなにより、夫人が犯人とする証拠の信頼性が薄れてしまう。
私は忍び足を続け、前にいる警察官に近づいていった。阿部君と明智君も察してくれたのか、それとも久しぶりのミッションもどきを楽しんでいるのか、私の後ろでぎりぎり気配を消している。この緊張感はたまらない。やはり私は生粋の怪盗なのだろう。怪盗ズハイを楽しみつつ、もう少しでその警察官の背中に手が届くという所まで来たその時、明智君の大音量のくしゃみが静寂を切り裂いた。
そうそう、明智君は絶対にしてはいけない時に限って、たまにだけどこういうはた迷惑なくしゃみをするのだ。そのせいで、私はほんの何回かだけど死にかけた。決して大げさには言っていない。明智君は自身が招いた大騒ぎを愛くるしく反省するので、とてもじゃないが怒れない。それどころではない窮地に陥ってるというのもあったが。
運の良いことに、今は、珍しく私の被害はさほど大きくなかった。明智君のくしゃみで驚いた阿部君に突き飛ばされた程度だ。その私は、阿部君が押した勢いが加わり、二人分の力ですぐ前にいた警察官を押してしまった。今回の一番の被害者は、この警察官だったな。寝ていたかどうかは判断に迷うが、よだれの跡もないし警察官を信用しようじゃないか。よだれの跡がないのに気づいたのは、しばらくしてからだけど。なぜならこの警察官は、阿部君と私が押した勢いが加わり、自分自身が明智君のくしゃみを聞いて驚いてものすごい勢いで飛び出したのだ。まるで映画のワイヤーアクションのようだったと言っても過言ではないくらいだったな。そしてその勢いの凄さのあまり、何が起こったのか理解できていない。もちろん私たちは説明しない。だって悪いのは警視長お気に入りの明智君なんだぞ。この警察官は仕返しも捕まえることもできない明智君を前にして悔しくて泣き出すじゃないか。ハハハ。明智君、だめだぞー。一応、私から叱っておいたから、この件はこれで終わりだな。警察官は無傷みたいだし。
この警察官の無事を確認すると、私は因縁をつけられるかもと心配になった。阿部君と明智君は、言うまでもなくこの警察官が吹っ飛んだ時に阿部君パパのいる車のすぐ近くまで到達している。こいつらの逃げ足は世界一なのだ。それでも今日は、私が戻ってくるのを待ってくれる優しさを持っていたようだ。いや、違う。次に何をしたらいいのか分からないのだ。『名探偵ひまわり』と『名犬あけっちー』は。
二人のためというよりは、この警察官から逃げたいがために、私はそそくさと立ち去ろうとした。しかし踵を返すと同時に呼び止められてしまう。強引に逃げる選択肢は今は使えない。また夫人に話を聞きに来ないといけないからだ。それに私の評判が悪くなるかもしれない。謝るのは、早ければ早いほどいいに決まっている。瞬時に冷や汗を流しながら、勇気を振り絞って私は振り向いた。
「ちょっと待ってください」
この警察官はなにゆえか笑顔だ。これは、やばい。吹っ飛んだ時に頭をぶつけたようだな。どうしようか。謝っても、おそらく何の事か理解できないぞ。でも、よく見ると別段おかしくなっているようには見えないな。とりあえず何事もなかったかのように応対するか。
「ご苦労さまです。こちらの捜査は順調ですよ。それでは、また後ほど」
今度こそ、声をかけられませんように。
「あっ、待ってください」
そう言えば、さっきも「待ってください」と言ってたな。ついつい慌ててしまった。私らしくないな。落ち着くぞ。
この警察官はまだ笑顔を継続中だ。少なくとも怒ってはないようだな。でも笑顔って? 原因がさっぱり分からなくとも、自分が吹っ飛んだ事に対して何か言いたくなるのが普通じゃないのか? ああ、そうか。私たちが気づいてないと思ってるんだな。それか、頭をぶつけたまでは正解で、その間の短い記憶が飛んだとか? ありえる。それだけの衝撃だったのは、この目で見ているからな。まあ、真相は分からないし、わざわざ私から蒸し返す必要はないだろう。相手はしてやるが、少しでも自分が吹っ飛んだ原因を探そうとしたら、後先考えずに全力疾走だ。
「あの、何か?」
「え? この笑顔で分からないんですか?」
分かるわけないだろ。勝手に阿吽の呼吸のような関係にするんじゃない。しかし、突き放すのもあれだな。怪盗団には入れないのを覆す気はないが、私が探偵の間は何かと世話を焼いてもらわないといけない。ここで「分からない」と素直な私を出してしまうと、後々の捜査に影響するかもしれないぞ。思案していると、気づけば阿部君と明智君が戻ってきている。私が怒られていないと分かって、さらにこの警察官が笑顔なので何かもらえると勘違いしたようだ。二人とも、もらえる物はとりあえずもらうようにしているからな。気に入らないと露骨に顔にだすが。
ああ、そうか。この警察官は何か私にくれるのだ。ああー、思い出した。阿部君が脅迫まがいで要求したパトランプを手に入れたのだな。確かに、褒められ待ちの笑顔をしている。阿部君が珍しく遅刻しないで仕事に来た時や、明智君がたまに部屋の掃除をした時の笑顔に似ているぞ。こいつも褒めて欲しいのだ。
阿部君と明智君も察しただろう。間違っても、この警察官は『名探偵ひまわり』と『名犬あけっちー』のサインを欲しがっているとは思ってない……はず。心配だ。こいつらが油性マジックでこの警察官の制服にサインという名の落書きをする前に、私が確かめるとするか。
「もしかしたらパトランプかな? いや、まさかな。パトランプを手に入れるなんて、信用や人望があってさらによほど頭の回転が早くないと上司を説得できないし。それもこんな短い時間で」
おだてておいて損はない。これで普通に正解を出すよりも、こいつは私に好印象を持つ。あと何回かは、ふっ飛ばしても原因に気づかないふりだけはしてくれるだろう。
「はい! 手に入れました。明智君様のために頑張らせていただきましたよー!」
いやいや、そこは嘘でも私たちみんなのためと言ってくれないと。それに、頑張ったとか言うべきではない。当たり前に義務を果たした風を装わないと。ちょっと恩着せがましいぞ。なるほど。分かった。こいつは明智君が原因で吹っ飛んだ事を知っている。そしてそれを使うと脅しのように聞こえて逆に反感を買うのを恐れたのだろう。良い判断だ。出世するのは、こういうやつなのだろうな。
「明智君も喜んでると思います。なので警視長も喜ぶでしょう」
まあ警視長には、こいつが一肌脱いでくれたことを、いちいち報告しないがな。なんか嫌だ。私は小さい人間か?
「いえいえ、そんな。国民のみなさん一人ひとりのために働くのが私の喜びなので」
こいつは何が言いたいんだ? 回りくどい言い方で、警視長に報告しておいてくれとなんて言ってないよな? 言葉そのままに受け取っておくか。私は素直だから。へへっ。
「それで、パトランプはどこに?」
「あちらの方がみなさんの仲間だと仰ったので、渡しておきました。仲間なんですよね?」
「はい。残念ながら、私たちの知り合いです。ご迷惑をかけたでしょ? 正直に言ってください」
「えっとー、まあ、そうかな。いえいえ全然。ちょっと、アンパンと牛乳を買いに……。張り込みには定番でしょ? とか言われたので」
「張り込み? あの人は、ただの高給日雇い運転手です。なので捜査権はありません。私からきつく叱っておきますので、今回は穏便に済ませてやってください。ちなみに、アンパンと牛乳代の方は?」
「あっ、はい。その……あなたから1万円もらうように言われてます」
アンパンと牛乳代プラス手間賃だな。こいつがぼったくってはいない。そして予想通りなので驚かない。私は当たり前に1万円札をこの警察官に渡した。1万円分の罵詈雑言を浴びせるのが楽しみだ。
「あっ、そうだ。お願いついでに、もう一つ。私たちにも警察手帳のような身分証明書を頂けないでしょうか? それがあると、いろいろな人に話を聞くのがやりやすいんですよ。分かりますよね? もしだめなら、この明智君を……」
阿部君のやり方を使わせてもらった。阿部君、そんな目で見ないでおくれ。明智君までもが白い目で私を見ている。何が不満なんだ? まねをした事なのか? それとも自分たちが優越感に浸れる機会を、私が先に取ってしまった事なのだろうか。
「それなら、ここに。昨日、業者に徹夜で作らせたそうです。あの高給取りの運転手の方のは、なくても大丈夫ですよね?」
何? 気が利くのは嬉しいが、プライドを捨てて阿部君のやり方をまねした私の立場がなくならないか。阿部君と明智君の楽しみを奪って反感まで買ったというのに。
なくなる立場なんて、最初からないか。うん、一安心だ。
「はい、私たち3人の分だけで。ありがとうございます」
私たちが怪盗で培った忍び足で近づいてきたとはいえ、この警察官が全然動かないのは気になる。まさか寝ているのか? いや、立ったまま眠る芸当ができるのは、警察広しといえども、私とあの巡査部長だけだ。暇つぶしにたっぷり練習したからな。そして私が辞めた今となっては、あの巡査部長だけなはず。だけど、私の後釜に収まった新人警察官がいたとして、あの巡査部長から指導を受けていたら増えてるかもしれない。もしここにいる警察官がそうなら、寝ている可能性はあるということだな。確かめておかないと、場合によっては容疑者が爆発的に増える。そしてなにより、夫人が犯人とする証拠の信頼性が薄れてしまう。
私は忍び足を続け、前にいる警察官に近づいていった。阿部君と明智君も察してくれたのか、それとも久しぶりのミッションもどきを楽しんでいるのか、私の後ろでぎりぎり気配を消している。この緊張感はたまらない。やはり私は生粋の怪盗なのだろう。怪盗ズハイを楽しみつつ、もう少しでその警察官の背中に手が届くという所まで来たその時、明智君の大音量のくしゃみが静寂を切り裂いた。
そうそう、明智君は絶対にしてはいけない時に限って、たまにだけどこういうはた迷惑なくしゃみをするのだ。そのせいで、私はほんの何回かだけど死にかけた。決して大げさには言っていない。明智君は自身が招いた大騒ぎを愛くるしく反省するので、とてもじゃないが怒れない。それどころではない窮地に陥ってるというのもあったが。
運の良いことに、今は、珍しく私の被害はさほど大きくなかった。明智君のくしゃみで驚いた阿部君に突き飛ばされた程度だ。その私は、阿部君が押した勢いが加わり、二人分の力ですぐ前にいた警察官を押してしまった。今回の一番の被害者は、この警察官だったな。寝ていたかどうかは判断に迷うが、よだれの跡もないし警察官を信用しようじゃないか。よだれの跡がないのに気づいたのは、しばらくしてからだけど。なぜならこの警察官は、阿部君と私が押した勢いが加わり、自分自身が明智君のくしゃみを聞いて驚いてものすごい勢いで飛び出したのだ。まるで映画のワイヤーアクションのようだったと言っても過言ではないくらいだったな。そしてその勢いの凄さのあまり、何が起こったのか理解できていない。もちろん私たちは説明しない。だって悪いのは警視長お気に入りの明智君なんだぞ。この警察官は仕返しも捕まえることもできない明智君を前にして悔しくて泣き出すじゃないか。ハハハ。明智君、だめだぞー。一応、私から叱っておいたから、この件はこれで終わりだな。警察官は無傷みたいだし。
この警察官の無事を確認すると、私は因縁をつけられるかもと心配になった。阿部君と明智君は、言うまでもなくこの警察官が吹っ飛んだ時に阿部君パパのいる車のすぐ近くまで到達している。こいつらの逃げ足は世界一なのだ。それでも今日は、私が戻ってくるのを待ってくれる優しさを持っていたようだ。いや、違う。次に何をしたらいいのか分からないのだ。『名探偵ひまわり』と『名犬あけっちー』は。
二人のためというよりは、この警察官から逃げたいがために、私はそそくさと立ち去ろうとした。しかし踵を返すと同時に呼び止められてしまう。強引に逃げる選択肢は今は使えない。また夫人に話を聞きに来ないといけないからだ。それに私の評判が悪くなるかもしれない。謝るのは、早ければ早いほどいいに決まっている。瞬時に冷や汗を流しながら、勇気を振り絞って私は振り向いた。
「ちょっと待ってください」
この警察官はなにゆえか笑顔だ。これは、やばい。吹っ飛んだ時に頭をぶつけたようだな。どうしようか。謝っても、おそらく何の事か理解できないぞ。でも、よく見ると別段おかしくなっているようには見えないな。とりあえず何事もなかったかのように応対するか。
「ご苦労さまです。こちらの捜査は順調ですよ。それでは、また後ほど」
今度こそ、声をかけられませんように。
「あっ、待ってください」
そう言えば、さっきも「待ってください」と言ってたな。ついつい慌ててしまった。私らしくないな。落ち着くぞ。
この警察官はまだ笑顔を継続中だ。少なくとも怒ってはないようだな。でも笑顔って? 原因がさっぱり分からなくとも、自分が吹っ飛んだ事に対して何か言いたくなるのが普通じゃないのか? ああ、そうか。私たちが気づいてないと思ってるんだな。それか、頭をぶつけたまでは正解で、その間の短い記憶が飛んだとか? ありえる。それだけの衝撃だったのは、この目で見ているからな。まあ、真相は分からないし、わざわざ私から蒸し返す必要はないだろう。相手はしてやるが、少しでも自分が吹っ飛んだ原因を探そうとしたら、後先考えずに全力疾走だ。
「あの、何か?」
「え? この笑顔で分からないんですか?」
分かるわけないだろ。勝手に阿吽の呼吸のような関係にするんじゃない。しかし、突き放すのもあれだな。怪盗団には入れないのを覆す気はないが、私が探偵の間は何かと世話を焼いてもらわないといけない。ここで「分からない」と素直な私を出してしまうと、後々の捜査に影響するかもしれないぞ。思案していると、気づけば阿部君と明智君が戻ってきている。私が怒られていないと分かって、さらにこの警察官が笑顔なので何かもらえると勘違いしたようだ。二人とも、もらえる物はとりあえずもらうようにしているからな。気に入らないと露骨に顔にだすが。
ああ、そうか。この警察官は何か私にくれるのだ。ああー、思い出した。阿部君が脅迫まがいで要求したパトランプを手に入れたのだな。確かに、褒められ待ちの笑顔をしている。阿部君が珍しく遅刻しないで仕事に来た時や、明智君がたまに部屋の掃除をした時の笑顔に似ているぞ。こいつも褒めて欲しいのだ。
阿部君と明智君も察しただろう。間違っても、この警察官は『名探偵ひまわり』と『名犬あけっちー』のサインを欲しがっているとは思ってない……はず。心配だ。こいつらが油性マジックでこの警察官の制服にサインという名の落書きをする前に、私が確かめるとするか。
「もしかしたらパトランプかな? いや、まさかな。パトランプを手に入れるなんて、信用や人望があってさらによほど頭の回転が早くないと上司を説得できないし。それもこんな短い時間で」
おだてておいて損はない。これで普通に正解を出すよりも、こいつは私に好印象を持つ。あと何回かは、ふっ飛ばしても原因に気づかないふりだけはしてくれるだろう。
「はい! 手に入れました。明智君様のために頑張らせていただきましたよー!」
いやいや、そこは嘘でも私たちみんなのためと言ってくれないと。それに、頑張ったとか言うべきではない。当たり前に義務を果たした風を装わないと。ちょっと恩着せがましいぞ。なるほど。分かった。こいつは明智君が原因で吹っ飛んだ事を知っている。そしてそれを使うと脅しのように聞こえて逆に反感を買うのを恐れたのだろう。良い判断だ。出世するのは、こういうやつなのだろうな。
「明智君も喜んでると思います。なので警視長も喜ぶでしょう」
まあ警視長には、こいつが一肌脱いでくれたことを、いちいち報告しないがな。なんか嫌だ。私は小さい人間か?
「いえいえ、そんな。国民のみなさん一人ひとりのために働くのが私の喜びなので」
こいつは何が言いたいんだ? 回りくどい言い方で、警視長に報告しておいてくれとなんて言ってないよな? 言葉そのままに受け取っておくか。私は素直だから。へへっ。
「それで、パトランプはどこに?」
「あちらの方がみなさんの仲間だと仰ったので、渡しておきました。仲間なんですよね?」
「はい。残念ながら、私たちの知り合いです。ご迷惑をかけたでしょ? 正直に言ってください」
「えっとー、まあ、そうかな。いえいえ全然。ちょっと、アンパンと牛乳を買いに……。張り込みには定番でしょ? とか言われたので」
「張り込み? あの人は、ただの高給日雇い運転手です。なので捜査権はありません。私からきつく叱っておきますので、今回は穏便に済ませてやってください。ちなみに、アンパンと牛乳代の方は?」
「あっ、はい。その……あなたから1万円もらうように言われてます」
アンパンと牛乳代プラス手間賃だな。こいつがぼったくってはいない。そして予想通りなので驚かない。私は当たり前に1万円札をこの警察官に渡した。1万円分の罵詈雑言を浴びせるのが楽しみだ。
「あっ、そうだ。お願いついでに、もう一つ。私たちにも警察手帳のような身分証明書を頂けないでしょうか? それがあると、いろいろな人に話を聞くのがやりやすいんですよ。分かりますよね? もしだめなら、この明智君を……」
阿部君のやり方を使わせてもらった。阿部君、そんな目で見ないでおくれ。明智君までもが白い目で私を見ている。何が不満なんだ? まねをした事なのか? それとも自分たちが優越感に浸れる機会を、私が先に取ってしまった事なのだろうか。
「それなら、ここに。昨日、業者に徹夜で作らせたそうです。あの高給取りの運転手の方のは、なくても大丈夫ですよね?」
何? 気が利くのは嬉しいが、プライドを捨てて阿部君のやり方をまねした私の立場がなくならないか。阿部君と明智君の楽しみを奪って反感まで買ったというのに。
なくなる立場なんて、最初からないか。うん、一安心だ。
「はい、私たち3人の分だけで。ありがとうございます」
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