異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編 ~昇級試験~

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昇級試験はぶっ続けで行われている。
…すいません、ギルマスさんの体力は底なしですか?



「・・・ねえキャズ?ギルマスさんて体力おばけなの?」

「あんた言い方可愛いわね、それ使うわ。ギルマスは現役時代戦士ウォリアーでね。パーティでの防御専門職タンクをしていたのよ。だからこういう体力勝負にはうってつけなの」

「なるほどねえ」



キャズが私の傍を離れないので、別の職員が審判をしている。
時折、試合の合間にその人がギルマスさんへ回復魔法ヒールを使用している。まるでセコンド。

総勢14名の試合をやり抜き、次は試験官がチェンジ。
『獅子王』が愛剣を引っ提げ、中央へ。



「おら、誰からでも構わねえぞ」

「では胸をお借りします!」

「おや、さっきの青髪君」
「・・・青の均衡ブルーバラストのカーバイドね。
ここ1年でグッと伸びてきたパーティよ。斥候スカウトを入れた事が大きいみたいね」

「へえ、キャズちゃん情報通」

「当たり前でしょ?受付嬢だからね。大抵のギルド員・・・上級クラスの人間の顔と名前くらいはね」

「人気のあるパーティ?」

「そうね、割と指名依頼も多いかしら。討伐専門の冒険者ね。
・・・ちなみに、僧侶職プリーストの子とデキてるって噂。幼馴染なんですってよ。前にいた盗賊シーフの子はリーダーの事で揉めて辞めたらしいわね」

「やだあ、パーティ内での色恋沙汰。興味ありすぎて気になっちゃうわ」

「あんたそういうの好きなの?」

「人の不幸は蜜の味よね?」

「性格悪いわよ」

「知ってる、ものすごく」



だってーそんな昼ドラみたいなの、面白すぎじゃなーい?
つーか、やはりというかなんというか、四六時中、年齢も近い若い男女が一緒にいたら、ふとしたきっかけで『それってどんな?』ってなるでしょうがよ!

しかもリーダー、イケメンだし?そりゃあ修正入って素敵に見えるでしょうよ、特に危険な時とかさあ!

目の前では『獅子王』が無駄なく青髪君を叩きのめ…ゲフンゲフン、稽古を付けてあげている。…あれは稽古よね?多分?
同じ剣士でも、青髪君はシオンと同様に長剣を使っている。なので、大剣使いの『獅子王』と渡り合うには技術がいる。
しかし彼にはその技術がまだ追い付いていない。なのでいい様に翻弄されてしまうわけだ。



「・・・ていうか、『獅子王』にあの武器持たせたらいかんくない?」

「そ、そうね。今更だけど替えてもらうべきかしら」

「じゃないとこれって一方的なやつよ?」



キャズはギルマスさんのところへ。
二、三言話して中断。『獅子王』の獲物を変更させた。

愛剣を別の装備に変更させられた事に少々納得の行かない顔をしているが、軽く振り回してからちょいちょい、と青髪君を挑発。
大剣から長剣に変えた所で、勢いは変わらず。
…習熟度、大剣も長剣もほぼ同じだったしね。状況に応じて使い分けとかしているんでしょう。

その後も次々とお相手をして終了。
実技試験はほぼ問題ない、のかしら?



********************



「ったく、舐められたものね、ギルドも」
「本当よ、あんな何処の馬の骨ともわからない人間を試験官にするだなんて。失礼しちゃいますね」

「あ、あの・・・あの方は『塔の主』ですし、きちんとした方だと思いますけど・・・」

「何?C級が私達に意見する気なの?」
「どこのパーティかな、君は」

「す、すみませんっ」

「ジョシュアもダメね、もっとハッキリ言ってやればいいのに。『部外者は帰れ』って」
「あの女に思い知らせてやりましょうか。魔術師だって、今はギルドの方が優秀だってこと」



・・・なんか言ってますなあ。
この距離で聞こえないと思っている方がどうかしてませんか?



「さて、試験を始めましょうか。最初はC級の昇級試験からにしましょう」

「すみませぇん、一度にやって頂けないんですかぁ?」
「僕達、そんなにじゃないんですよねぇ」

「・・・まあ構わないけど」

「ごめんなさい、すぐに終わらせますからねえ?」
「僕達、とーっても、なので」



おお、いい度胸だ。
ならイスト君たちに組んだレベルでもいいな。
一定時間置きに属性変化と時間制限。酸素が徐々に減っていくモード、と。んー、彼等は1時間にしたけど、彼女達は初めてだし3時間くらい?

もちろん先に見せてもらった資料で、持っている属性は把握済みだ。面倒なので、A級昇級試験を受ける3人には、それで決まり、と。



「なら、先に貴方達から始めるわ。
こちらに来て、一定距離を置いて立って頂戴」

「これでいいんですか?」
「僕達の呪文、この距離で受けられるんですか?」

考えてあげるわ?頑張ってに脱出してね」

「制限時間?」
「何を言っているんです?」

「それでは試験を開始します。『難解障壁パズルウォール』」



フォン、と音を立てて一瞬にしてひとりひとりを薄い膜の中へ閉じ込める。さて、どのくらいで解けるかしら?



「なっ、何よこれ!出しなさいよ!」
「こ、これは、結界?」

「それが試験よ。自分達のできる限りの知識と魔力を持って、そこから出ること。物理攻撃は一切効かないのでそのつもりで。
とてもという事なので、私の研究室の子達と同様の難易度にしておいたわ。でも制限時間は伸ばしておいたから頑張ってね?」

「・・・うわあ」
「凄いそあれ・・・」
「『塔の主』って・・・マジなんか・・・」



見ている子達が引いています。
なんかぎゃあぎゃあ結界内が煩いので、声をシャットアウト。
音って風魔法の応用で聞こえなくできるのよね。ありがとうキリ君、君のアドバイスは今役に立っています…!

にっこり笑って残りの受験者に向き直る。



「さて、試験内容は理解しましたね?
もちろん、貴方達にも同じ事をしてもらいます。ただ、きちんと難易度はそれぞれに合うように下げますから無理しないでね」

「よ、よかった・・・」
「難しそうだな・・・」
「頑張らないと・・・!」



さて、B級には、複数属性を組み合わせたものを。
C級には『獅子王』と同じように単独属性で作成。ただし、本人のいちばん苦手な属性を組み込む。

全員が難解障壁パズルウォールに包まれた。
残されたのは、私達試験官と、見学者のみ。



「ちょ、ちょっと!これあんたの魔力持つの?」

「んー、まあ足りたみたいね」

「ったく!あのA級受験者何なのよ!何様のつもり!」

「まあまあキャズ。私も意地悪く難易度高くしといたから」

「え」

「これねえ、時間制限付けてるの。徐々に酸素濃度減ってくのよね」

「・・・マジ?」

「ええ。3時間にしといたけど、解けなかったら酸素不足で倒れるわね?そしたら解いてあげるけど」

「ま、やりすぎとは言わねえよ。いい薬だろ」



ぽん、と私の頭に手を置く『獅子王』。
その後ろでギルマスも苦笑しながら難解障壁パズルウォールをしげしげと眺めている。



「レディ、これは解けるものなのですか?」

「ええ、ちゃんとこの障壁がどの属性の魔力でどうやって構成されているかを理解して、自分の魔力で相殺干渉すれば解除は可能ですよ?」

「まあ、楽じゃねえけどな。かなり魔力持ってかれるぜ」
「お前やったのか、アルマ」

「ああ、こないだな。頭使うしいいと思うぜ、魔力操作ができねえと厳しいがな。後衛職なら魔力操作のできないやつもいねえだろうし、いいんじゃねえか」
「なるほど、魔力操作か。・・・レディ、後で構わないので私も参加させてもらえますか?」

「いいですよ、これが終わらないと私も制御できないので、終わったらでいいですか?」

「・・・制御?って、エンジュ、お前これ全部制御コントロールしてんのか?」

「A級に挑戦している子達のだけはね。一定時間で構成変化するように組んでいるから、それの制御コントロールは必要なの。他のものは自動制御オートモードなんだけど」

「・・・そりゃ今んとこ、所長とお前にしかできないわけだ」

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