異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編~多岐型迷路~

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「これ一つで能力値回復薬パナシアが2つ・・・いや3ついけるかしら?でも数回は作りながら調整、かな・・・?」

「おいなんだよあの魔法はよ」
「俺だって知らないさ、独自の魔法じゃないのか?」

「色が違うのって意味あるのかしら・・・?どうみてもきのこの山なんだけどねえ。この中に胞子が凝縮されてるのね、なるほど。これは取り扱う時に無菌空間クリーンルーム必要だなあ・・・魔力消費もバカにならないわね」

「おい、言ってる意味わかるか?」
「・・・取り扱う時にさらになんらかの魔法を使用しないといけないんじゃないのか?よくわからないが」

「ああ、ごめんなさい。夢中になっちゃったわ」



一旦精査開始インスペクションを解除。
続きは魔術研究所に戻ってからにしよう。3袋もあれば上出来よね。1袋はゼクスさんに渡して、イスト君あたりにでも使ってもらおう。

私は能力値回復薬パナシアの作成に取り掛かるけど、何か別のアプローチで違うものができるかもしれないし。



「2人ともご苦労様でした、助かりました」



座ってはいるが、頭を下げる。
依頼とはいえ、迷宮ダンジョンなんてものに入って、魔物討伐をしてきてくれたのだもの。
これをドロップするのにどれくらいの悪魔茸デビルマタンゴを狩ったのかわからないけど、それ以外もたくさんいたはずだ。

すると2人は順番に話し出す。



「いや、こっちこそ済まなかった。もう少し採ってこられると思ってたんだがよ」
「レオニードが暴発しましてね」

「おい、ありゃ不可抗力だろ?」
「何言ってるんだよ、お前があんなとこに火炎球ファイヤーボール放らなければあんなに一気に相手することなかっただろ」

「仕方ねえだろ!俺だって好きであんなもん引き寄せてねえ!」

「えーと?何があったのかしら?」



お目当ての階である38階層で、悪魔茸デビルマタンゴを狩るべく滞在。しかしあまり交戦エンカウントせず、2日が経過。
1度別の階層に降りてみようかとした所、イライラした『獅子王』が適当なところに向かって火炎球ファイヤーボールを連発。
それが当たり所が良かったのか悪かったのか…



「キノコ型の魔物が押し寄せてきたんです」

「押し寄せて・・・来た?」

「ありゃ凄かったよな、どわーっと雪崩るように」
「どれが悪魔茸デビルマタンゴなのかを判断するどころではなく、片っ端から倒していくしかなくて」

「もっとドロップしてたのかもしんねえが、途中途中で焼いちまわねえとどうしようもなくてな」
「俺は一応止めたんですがね」

「お前だってキレかかって衝撃波出しまくってただろうが!」
「俺はお前ごとしようかと思っただけだ」

「ひでえよな、こっちは必死に依頼品を集めたいだけだってのによ」
「大剣振り回しながら火炎球ファイヤーボール連発する男を補佐する身にもなってみろよ、団長以下だったぞお前」

「カイナスよぉ・・・何気なく上司をディスってんぞ」
「まとめて斬った方が後腐れがなかったかもしれないよ」

「なかなか楽しいクエストだったみたいで何よりだわ」

「後はも助かった」



トン、とテーブルに出された小瓶。
中に入っていたキャンディは半分くらいに減っていた。やはり剣士の2人だからか、青いキャンディの消費が多かったみたいだ。



「美味しかった?」

「あのな、美味い美味くないじゃねえだろこれはよ」
「どうやったら作れるんですかこんなもの。画期的すぎて目眩がしましたよ?エンジュ様」

「聞きたい?」

「おうよ」
「参考までに、是非」

「掻き混ぜてたらこうなりました」

「・・・聞いた俺がバカだったな」
「非常識すぎますね、エンジュ様・・・」



失礼しちゃう、教えてくれって言うから言ったのに。
ともかくこれにて、クエスト終了だ。



「えーと?後は何をしたらクエスト終了?」

「ああ、カウンターで俺と一緒に申請でいい。
報酬もそこで払ってくれ、ギルドから俺の口座に入るようになってる」

「わかったわ。・・・副長さん?私にことはあるかしら」

「すまないレオニード、少し席を外せるか?」

「んだよ、仲間外れかあ?なら俺はギルドカウンターにいるよ、クエスト終了の手続きしとくから、レディは終わったら来てくれ」

「ええ、わかったわ」



んじゃな、とあっさり席を立つ『獅子王』。
ランクの高い冒険者、っていうのは自らの引き際も心得ているのよね。そういうプロ根性は素晴らしいわ。

シオンは珈琲で口を潤し、私に報告を始めた。



「私から報告せずとも、恐らくアナスタシア様よりエンジュ様へ今回の迷宮ダンジョン探索報告はされると思います。
ですが、私個人としてもこの報告によるエンジュ様のご意見を伺っておきたいのです」

「わかりました、続けてちょうだい」

「感謝致します。無論、こちらで見聞きした事は我が名において他言無用と致します。
───結果から申し上げて多岐型迷路ルーレットメイズ転移方陣ポータルは一定の出口には出ないものと推測します」

「その根拠は?」

迷宮ダンジョンにいる間、複数回遭遇した冒険者パーティがおりました。そのパーティのリーダーに、レオニード・・・『獅子王』が転移方陣ポータルの出口の場所を聞いたところ、誤差の範囲内でしょうが、ズレがあります」

「その報告は、『獅子王』がギルドに報告しているのかしら」

「はい、昨日帰還の際に報告済みです。近衛騎士団からも申請するつもりですが、各階層に出現する転移方陣ポータルの場所も報告義務を追加してもらうつもりです」



やっぱり別のところに出るんだ。
ゲームの場合は同じ場所だったけど、その辺りは少し違うものがあるみたいだな。とはいえ、出入口ホールに隣接する小部屋のいずれかに出るようで、そこまで大きく捉えてはいないそうだ。

シオンはもう1つ、懸念があると話す。



「私達も遭遇しましたが、ギルド員ではない者が迷宮ダンジョンへ入っている形跡があります」

「え?そんな事が出来るの?」

「わかりません、ギルドの管理能力はそこまで落ちてはいないと思うのですが。レオニード曰く『見覚えのない奴等』というだけですが、彼奴の勘は当たりますから。
入口の管理や警備を厳重にする、との事でした。袖の下を受け取って不正に入れている、という事も考えられます」

「・・・単純に、入口がもう1つあるとは思わない?」

「やはりそう考えますか」

「話を聞く限り、かなり可能性はあると思うけど?私があそこに行った感じ、結構地上に出ている所って小さかったじゃない。なら、管理は難しくないし、出入りも厳しいはず。ワイロもらって通す人がいないとは限らないけど」

「・・・再度探索に入ってみた方が良さそうですね」

「私が行ってみちゃおうかしらね」

「えっ!?本気ですかエンジュ様」



だって面白そうなんだもの。その言葉は一応飲み込みました。
でもシオンの顔を見ると、確実に伝わっている気がする。

はあー、っとため息をついて目元を手で覆う。



「なんか・・・既視感デジャビュが」

「あら大変、周りに無茶する人がいるのかしら」

「そうですね、今私の目の前にも1人いるようです」

「10階層目くらいまでなら、割りと安全なのでしょう?」

「まあ、そうですが・・・本気で行くつもりですか?」



咎める口調ではあるが、シオンの顔はすでに諦めモードへ移行中。別にシオンについてきてくれ、とは言ってないからね?

キャズに頼んでギルド調査員として入ることはできないだろうか?

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