異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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異世界での新たな生活

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屋台街をふーらふら。
なんかすごく活気があって楽しい。
朝市、にも似てるかも。焼きたてのパンがあったり、麺があったり、フライドポテトがあったり、汁物、揚げ物、スイーツも。

私はお目当てのタピオカっぽい飲み物を買う。
あんまり人がいなかったんだけど、飲んでみればやっぱりタピオカっぽい。



「はいよ、お姉さん」

「どうもありがと」

「・・・でも本当にいちごオレじゃなくていいのかい?1番人気なんだけど」

「いやここは絶対濃いめのミルクティーでしょ?」



ほうじ茶ラテがあればそれを選ぶけど、ミルクティーしかなかった。蜜烏龍茶ラテも好きなんだけどないんだよね?
しかし、タピオカっぽいものは別売りしていたのでひと袋買いました。水につけて戻す、と言っていたのでやはりタピオカなのでは?



「プリオネはいちごオレだと思うんだけどね」

「・・・なんて言った?」

「プリオネかい?」

「それって、このぷにぷにした丸いコレのこと言ってる?」



プリオネって。クリ○ネかよ!
バッカルコーン出てこないでしょうね?

しかし歯ごたえや薄ら甘いところもタピオカにしか思えない。まあいいや、また来よう。

私はプリオネミルクティーを飲みつつ、アナスタシアの所へ戻るべく散策。他にも美味しいものないかしら?おやつにできそうなものとか欲しいかも。

この屋台街は毎日ここで開かれているのだそうで、特に定休日もないらしい。店を畳むところもあるが、また新しい人が店を出したりして入れ替わりもある。

毎日来てもいいかも?お昼のメニューに困らないなあ。
アナスタシアに聞いてみて、たまにはここでご飯を食べるのが習慣になってもいいかもしれない。

回り道をしつつ、屋台を見る。…あまり早く戻るのも、ね。
ふと、嗅いだことのある甘い香り。こ、これは…!



「ベビカス!」

「お、お姉さん詳しいね!焼きたて食べるかい?」

「喜んで!」



手を出せば、今焼きあがったばかりのベビーカステラ。
うわー、私これ大好きなのよね。たこ焼き器でも出来るけど…
そのままかじれば、懐かしい味。



「いくついる?」

「いくつ買ってもいい?」

「お、嬉しいねえ!そうだな、今なら50個はもうすぐ焼けるよ」

「じゃあそれ全部ね」

「・・・本気で?」

「好きなのよこれ。つまんでおやつにも出来ちゃうでしょ?」



全部くれ、と言ったら驚きのおじさん。
こっちにはマジックバッグあるんですからね!焼きたて全部貰っちゃうわよ!

もうひとつ試食でもらいながらも、焼き上がりを待つ。
うーんいい匂い、と思いながらもぐもぐしていると、おじさんが別の人にも声をかけた。



「お、お兄ちゃんもひとつどうだい?」

「・・・そうだな、じゃあもらうよ」

「はいよ、気に入ったら買ってくれな。とはいえそこのお姉さんが大人買いしたから少し時間もらうんだけど」



すまない、客の人。
だが私は譲るつもりはない!まあすぐ焼けるし、焼きたての方がいいでしょう。数分で焼けるだろうし、待ってもらいましょ。

ベビーカステラをかじりつつ、ちらりと隣を見れば、同じようにベビーカステラをかじるシオン。
向こうも私を見て、軽く微笑んだ。



「・・・」

「こんにちは」

「・・・こんにちは?」

「アナスタシア様に言われまして、お迎えに来ました」

「アナスタシアが?迷う距離でもないと思うわ」

「ここは複雑ですので、迷うよりはいいかと言っていました。不要でしたか?」

「なんだ、知り合いかい?」

「ええまあ」
「ええ、そうですね」

「はい、お待たせお姉さん。焼きあがったよ。じゃあお代は大銀貨1枚で」



シオンは私に渡された袋を見てギョッとしていた。
まあいくら小さいとはいえ、50個も買えばそれなりに嵩張る。

小分けにできる袋をオマケに付けられた。
1人で食べるとは思っていない?残念だな、これは誰にも渡さん…!



「・・・それ、全部?」

「ええ」

「・・・食べます?」

「まあ研究室の子達の軽食にもなるので」



ですよね、とホッとしたような顔。
だがしかし大半は私のおやつです。
おじさんにいつもここにいるか訪ね、毎日いると言われたので安心。これは定期的に仕入れが可能か。

迷わずマジックバッグに入れて、一旦置かせてもらっていたミルクティーを持って店を離れた。
シオンはそのまま隣を付いてきている。道案内だものね。



「戻られますか?」

「ええ、アナスタシアも昼の休憩が終わってしまうでしょうから。私は好きな時間で戻れるけど」

「先程研究室、と言っておられましたが、魔術研究所の方なのですか?」

「あら、貴方自分の事も話さないのに、私の事だけ質問するの?」



ちょっと意地悪かしら?こっちは貴方の事を知っているけど、それは『コーネリア』であって『エンジュ』ではない。

私の見た目はかなり変わっているはず。
だって『コーネリア』の時って、自分の若い時の姿に近かったけれどやっぱり少し補正入ってたもの。
瞳の色は同じ黒だけど、髪の色はもっと栗色に近かった。
でも今の私は『山口  梢ヤマグチ  コズエ』そのままだ。髪の色はカラー入れているから黒ではないが、栗色という訳でもない。
瞳の色は同じ黒、だと思うけど、面差しはかなり違うと思う。

つまり、似たような色味ではあるが、別人と言われれば『似てるけど違うね』というくらいは違う。

なので、あのペル○ナ眼鏡で魔力の色を判別、でもしない限り私を『コーネリア』と断定することは不可能ってこと。
その魔力パターンも、微妙な違いはあるみたいだし。前回の転移と今回の転移がどう違って、どう私に作用したのかよくわからないけどね。

シオンは申し訳なさそうな顔になり、口を噤んだ。
まあ人通りが多い場所を抜けるため、という事もあったのだろう。1番賑やかな広場への通りを抜け、私はアナスタシアの待つ所へ戻る。



「お待たせ、アナスタシア」

「お帰りエンジュ。御苦労、カイナス。戻っていいぞ」

「は、了解しました」

「手間をかけてごめんなさいね、騎士様」

「いえ、滅相もありません」



その場で私に向かい、近衛騎士の騎士礼。色んな人を見てきたけど、さすがに副団長ともなると年季が入っていて様になる。



「先程は失礼致しました。近衛騎士団にて副団長を拝命しております、シオン・カイナスと申します」

「エンジュ・タロットワークよ。彼女とは従姉妹になるの。
のは苦手なの、覚えておいてもらえると助かるわ」

「承りました、ご縁がありましたらいずれまた、お目にかかります」



私も引き止めないし、アナスタシアもだ。
シオンはサッと名乗って戻って行った。視線の先には部下達だろう、数名の騎士とご令嬢たち。

テーブルを確保していたようで、食事会のようだ。



「あら、あれって?」

「覚えているか?アントン子爵令嬢だな。名をフリージア嬢と言うそうだ」

「料理の腕は上がったのかしら?」

「さあ、どうだろうな?・・・エンジュ、余計な事をしたか?」

「怒ってないわよ?でも、私から話すつもりはないの。
私にとってはたったのふた月だけど、貴方達にとっては2年なのでしょう?
それに、私は『コーネリア』だったけれど、そのものじゃないわ。シオンがまだ『コーネリア』に気持ちがあったとしても、それは『エンジュ』ではないでしょう?」

「・・・私にとってはどちらも『君』だがな」

「ふふ、それはだからよ。でもシオンにとってはそうではないわ、違う?
それに・・・今の彼も割りと楽しそうではあるけど」



彼等を見れば、それなりに話も弾んでいるようだし、私が覚えているよりもシオンとフリージア嬢の仲は進展があったと思う。
でもそれは、この2年フリージア嬢が努力した成果じゃない?それをかっさらってしまうのはどうなのかしら。

…なんて、ただの言い訳ね。
シオンに再び会い、気持ちが動かないかと言われれば動く。『好き』という気持ちはある。

ただ、はいそうですか、とすんなり彼の胸に飛び込む勇気が私にはない。恋に対して臆病になっている自分への言い訳でしかない。

このままの距離でも私は構わない。
この世界アースランドでできた新しい家族と共に、緩やかに過ごせればそれで幸せだ。

アナスタシアはなんだか腑に落ちない顔しているけどね。



「ねえアナスタシア?私がもし、もしもよ?
シオンと結ばれたりしたら、カイナス伯爵家に行っちゃうわけだけど、それでいいの?」

「何故だ?」

「同じ屋根の下では暮らさなくなるけど」

「・・・そうだな、このままでいいな」



一瞬止まったアナスタシア。やはり思った通りの答え。
だってアナスタシアは『寂しくて』私をこちらに呼んだわけだから。一緒に暮らせなくなるなら、下手にシオンとの仲を勧めたくなくなるんじゃないかなー、なんて?

『コーネリア』がいなくなっても、クレメンス邸に戻らないアナスタシア。フレンさんと離縁する事はなくても、もう戻る気はないのだろう。子供達の為に、キャロルさんの為に。



「さて?戻りましょうか。お仕事よね?」

「ああ、少し遅くなるかもしれない。気を付けて」

「ええ、アナスタシアもね」

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