夢見るディナータイム

あろまりん

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商店街は活気に満ちていた。
・・・・・活気っていうか。

若干殺気?みたいなものを感じたのは・・・・・気のせいでしょうか・・・・・?



「・・・・・すごい活気だね」

「こんなに人、多かったでしたっけ?」

「ここの商店街って、儲かってるんだね」

「・・・・・いや、いつもはこんなに人がいなかったような・・・・・?」



満員御礼、って訳じゃないけれど。
いつもより人通りが多いのは事実だ。

沢山の人が行きかってて、数あるお店も活気がある。

賞品を抱えながら、商店街を歩いて福引のあるテントへ。



「こんにちは、会長さん」

「おお!!!店長さん!!!おや、スタッフさん達も」

「「「こんにちは」」」

「すみません、遅れてしまって。これ、賞品のお菓子詰め合わせ・・・・・」

「うおおおおお!!!!!!!」



こっちが引いてしまうくらいビックリした。
それくらい、会長さんは総悟君お手製焼き菓子セットに心を奪われているらしい・・・・・。



「待っていたんだよ!これを!!!」

「え、あの」

「10個か~~~何個当てられるだろうな!?」

「ちょ、」

「やっぱり券が足りないか?買い物してきますので、失礼!!!」

「・・・・・あの・・・・・」

「無理だって響子さん。目がいっちゃってるし」



ため息を付く眼鏡姿の総悟君。伊達眼鏡ですって。似合ってて格好いい。
万理ちゃんと薫君は、会長さんのあまりの変貌に言葉もない。



「驚かせちゃったね・・・・・会長さん、総悟君のお菓子に夢中だから・・・・・」

「そ、そうなんですね・・・・・」
「いるんだ、ああいう人・・・・・」

「ま、僕としては嬉しいけど・・・・・複雑だよね」



まあそうでしょう。
いきなり目の色変えてすっ飛んでいくおじいちゃんを見たら、かなりの人がショックだと思う。



薫君が賞品を見て、ぽつんと呟いた。



「ディナー・・・・・。」

「ええ。限定3組様だけどね」

「なんで限定なんです?」

「まだディナー始めてないから。それくらいの人数じゃないとうまくサービスできないと思って」

「ふぅん・・・・・」

「まあ、こっちとしてもお試し、って感じかな。
シェフももう1人くらいいないと、本格的にディナータイムを設けるのは無理だろうし」

「今は何人なんです?」

「メインは1人。お手伝いの人はいるんだけど」

「そっか。1人じゃ回らないし」

「そうなの。薫君がシェフだったら雇いたいわ」

「は、残念。俺は単なるウェイター止まりだからね」

「そうなの。残念。でも、ウェイターも雇いたいかな。もうちょっとしたら」

「俺に?」

「考えてくれる?」

「・・・・・」

「ディナーが始まったら、もう1人くらい欲しいかなって。まだ計画のうちなんだけどね」

「・・・・・考えとく」

「うん、そうして。本格的に必要になったら、万理ちゃんに声を掛けてもらうわね」



ちょっと考え込んだ薫君。
嫌って事はなさそうだけど、ちょっと考えさせて、って感じ。

当たり前だよね。
彼にだって、彼の人生ややりたいことがあって当然だ。
もしもよければ・・・・・のつもりで声を掛けたんだし。



「それにしても薫君てそういう喋り方するのね」

「は?」

「薫!敬語取れてる!」

「あ」

「あはは、いいわよ。構わないわ。そっちの方が君らしいし」

「すみません」

「いいんだってば。普通にして?君は従業員ではないのだし。
勿論、ウチの従業員になったらそれなりにちゃんとしてもらうけどね」

「・・・・・わかった」



しくじった、とでも言いたげな顔。
もう、とふくれっつらをする万理ちゃん。

こうなったらどっちが上だかわからないかも?



「ねえ、響子さん」

「ん?なあに、総悟君」

「これからデートする?」

「え?」

「僕、暇だし。商店街、まだ全部見た事ないんだよね」

「あ~なるほど。いいわね。行こうか?」

「うん。手、繋ごう?」



ぎゅ、と大きな手が包んだ。
優しくて、少しひんやりした手。

いくつも美味しいお菓子を生み出す、魔法の手だ。



「あああ!ずるいです、泉さん!」

「うるさいなあ、万理ちゃん。響子さんは僕とデートするんだから黙っててよ」

「ううううう」

「じゃあね。薫君、だっけ。万理ちゃん連れて帰りなよ?」

「アンタに言われなくても」



じゃあね~と私を引っ張って歩く総悟君。
万理ちゃんはあうあう言っているけれど、薫君と並んで歩き、後ろを付いてきた。



「なんで付いてくるんだろ」

「ふふふ、2人も商店街珍しいんじゃない?」

「なるほどね。今日は屋台も出てるし」

「そういう事!食べ歩きしちゃう?あのコロッケとか美味しそうよ?」

「本当だ。お肉屋さんのコロッケって惹かれるよね」

「だね」



◼︎ ◻︎ ◼︎



こうして、私と総悟君。
万理ちゃんと薫君は商店街のお祭り騒ぎを満喫した。

いろいろと趣向を凝らしているようで。

沢山のお店で、ちょっとした食べ物を食べ歩けるようにしたり。
イベントみたいな出し物もやっていた。



勿論、福引も大盛況。
夕方から始まった福引も、私達はちょっと遠くから眺めた。

ガランガラン、と当たりが出ると鐘が鳴り響き、アナウンスが流れる。

そうして、周りのお客さん達も立ち止まって振り返る。
なんだかちょっとしたお祭りだった。



商工会長さんは、めでたく総悟君の賞品を2箱ゲットしていた。
・・・・・どれだけの買い物をして何回福引したんだろう・・・・・。

束になった福引券を見たけれど・・・・・。

うん、考えるのやめておこう。怖いから。



帰りに、会長さんからおかきの袋をもらってしまった。

いろいろ詰め合わせみたいになったものだ。
しかも1人1袋も。



「壊れて売り物にならないものを詰め合わせにしたんだけどな!
よかったら持って帰ってくれ!」

「また来てくださいねぇ」



奥様も可愛らしいおばあちゃん。
いつも店番しているのを見かける。

総悟君は話し相手になっているようで、なにやらお相手をしていた。

・・・・・意外とマダムキラーなのかもしれない。
そういうのって、晴明や康太君の出番だと思っていたけど・・・・・。



他にも色々、商店街の人がお土産に食べ物を持たせてくれた。

なんでも、ウチの賞品を出したからなのか。
全体の売り上げが物凄く良かったらしい。

前回の3倍は伸びたとのお話を頂いた。



「またお願いしますよ!」



そう言われて嬉しい。
勿論、参加させてもらうつもりだ。

そして・・・・・

ディナーのご招待が当たった人のリストを貰った。
これが一番の目的だったのだけどね。



駅近くで、総悟君や万理ちゃん、薫君と別れて家に戻る。



リストには、3人の名前が書いてあった。

2人は女性。
1人は男性。

近日中に、電話があるだろう。
明日、朝礼でお話しなくちゃ。いつ予約の電話があるかわからないものね。

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