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10皿目
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あれから、大亮さんと康太君は毎日こっちに顔を出すようになった。
どうやら、彼等がやっていた仕事は、会社ごと仲間達に託したらしい。
確かに、未練も愛着もあったようだけど、『違う道を歩く事にしたんだからよ、潔くいかねえとな!』なんて言っていた。
そんな思い切りのいいのも、大亮さんらしいと言えばらしいかもしれない。
・・・・・康太君は少し寂しげだったけれど。
創業から一緒に作り上げた仲間と道を分かつのは、やっぱりキツイらしい。
大亮さんは新しいことに生き生きしちゃって、そうは見えないけれど。
康太君は勿論楽しそうではあるのだけど、多少ぼんやりと考え事をしている時がある。
気になってはいるのだけど・・・・・
はたして私が聞いてもいい事なのだろうか?
そんな、オープンに向けて準備中のある日の事。
▪️ ▫️ ▪️
「あれ。1人?」
「ああ、大亮さんならハルさんに引きずられて買出しに行ったぜ?」
「はは、ハルも大亮さんや康太君が来てくれて嬉しそうだからね」
「そうかな?巽さんといい、ハルさんといい・・・・・人使いが荒いんだよな」
「あはは、ん~じゃあお願いしにくいかな・・・・・」
「え、何々?響子さんの頼みならいいぜ!」
「何それっ」
『いやー男の頼みだとアレだけど女の人の頼みは聞かないと!』なんて独自の理論。
それって、晴明や浩一朗も同じような事言ってたような・・・・・?
意外に考え似てるんじゃないの?それとも似ちゃったの???
「あのね、近くにアパートがあるんだけど。そこを見に行くの。
よかったら、康太君ついてきてくれると助かるんだけど」
「いいぜ!行く行く!!!暇だし!!!」
「じゃあちょっと待ってて。浩一朗に言ってくるから」
康太君を残して、キッチンに向かう。
音がしているから、浩一朗がいるはずだ。
ひょい、と中を覗くとキッチンの色々なところをチェックする人影。
「浩一朗」
「ん?なんだよ」
「ちょっと外に出てくるから」
「ついてってやろうか?」
「ううん、康太君を誘ったから。借りてくわね?」
「そうか。・・・・・アパートでも見に行くのか?」
「大当たり。あそこ、従業員用の寮にしようかと思って。
近いし、もしも夜遅くなっても帰りやすいでしょ?」
「なるほどな。今はいいかもしんねぇが。ディナー始めたら遅くなっちまうからな」
「うん。家賃はナシで、光熱費だけは自費で。・・・・・その分お給料安くても我慢してくれるかな?」
「十分だろ。大亮や康太なんて喜んで引っ越すんじゃねぇか?
今はルームシェアしてるが、やっぱり1人の部屋が欲しいだろうからな」
「・・・・・と思って、下見に連れてこうと思って。いいかしら?」
「ああ。行って来いよ。昼は用意するからな?帰ってこいよ?」
「はーい。」
「午後は俺に付き合えよ。メニュー、ある程度決めたからな」
「もう?早いわね・・・・・」
「早くはねぇだろ?オープンは来月って言っても、もう2週間しかないんだぜ?
早めに決めちまわねぇと、材料の仕入れとかも考えねぇとな」
「そっか・・・・・メニュー表とかもいるもんね。あと制服も」
「そういうこった。・・・・・さっさと行ってきちまえよ?」
「ふあーい」
そうかー。時間はあると思ってたけど、意外にやる事いっぱいあるもんね。
キッチンから出てくれば、康太君が心配そうな顔をした。
「どうした?響子さん?」
「ん?何もないよ?」
「いや、なんか不安そうな顔してたぜ?
まさか、巽さんに苛められたのか!?」
「下手な事言うんじゃねぇよ、康太」
「うげっ、巽さんっ」
出てきた浩一朗にごつん、と拳骨をもらう康太君。
痛え、とぴょんぴょん跳ねる。
「お前は大げさすぎんだよ」
「んな事ねえ!!!巽さん、力加減おかしいだろ!!!」
「うるせぇな。ほら、早く行って来いよ」
「はーい」
「はーい」
仲良く返事をして店を出た。
ちょっと楽しいかも。
▪️ ▫️ ▪️
歩いてアパートへ向かう。
車出さなくていいのか?って聞かれたけれど、アパートまではホントに歩いて2~3分。
車を出して行くほどの距離じゃない。
「すぐだよ?ほんの2~3分だし」
「そうなのか?んじゃ、歩いてくか」
たわいない話をしながら到着。
「近っ!!!」
「だから言ったじゃない」
「いやこんなに近いと思わなかったんだって・・・・・」
「えーと。下からでいいか」
「は?どゆ事?見る部屋決まってんじゃねえの?」
「いや、全部の部屋見たことないし。内装とか一緒なのかしらね?」
「はあ?全部?何で?」
「何でって。なんか部屋ごとに微妙に内装違うって話なんだよね・・・・・」
「そうなのか?でもよく不動産屋が鍵貸してくれたな?普通立ち会うだろ?」
しきりに首を捻る康太君。
・・・・・あ、そうか。彼は此処が私の持ち物だって知らないんだ。
不動産屋さんから、借りるために下見に来たと思ってるのかも。
「響子さん、家あるのに部屋なんて借りるのか?」
「あ、いや、違うの。ここ、私のなの」
「え?」
「えっと、このアパートの大家さんは、私なの」
「えーーーーーーっ!!!!!」
「まーそうなるよね」
「嘘だ!!!凄えじゃん!!!」
「遺産で貰ったのはいいんだけど、中を見てないのよね。
だから今日はそれを確認しに来たの。1人じゃなんだし、康太君一緒なら、クリーニング必要かもわかるでしょ?」
「あー。なるほどな!!!任せとけよ!!!」
ぱあ、と笑顔を見せる康太君。
コロコロと表情が変わるのが、なんだか可愛らしい。わんこみたい。
「えー、では1部屋目」
「おー。ぱちぱちぱち。」
ガチャ、と鍵を回し、中に入る。
中は普通の1K。
部屋の間取りは・・・・・Kが3畳くらい?部屋は8畳くらいあった。
結構広い作り。クローゼットもあるし、収納もある。窓もそこそこ大きい。
一応ベランダ付きだし、エアコンも完備。
「おおお、風呂とトイレ別。いいよな!」
「それは外せないよねー。でも洗面は一緒?」
「だな。まーそれくらいはいいんじゃねーの?」
壁はクリーム色。結構いい部屋かも。
「クリーニング済んでるみたいだな。築何年?」
「10年くらいみたい。ま、いい物件かもね」
「だなー。んじゃ、次行こうぜ」
「はーい」
それから次々と部屋を移動。
間取りは一緒。広さも。
でも3階はロフトがあった。コレも3畳くらいかな。
部屋の違いは、それくらいだった。
部屋の壁紙はクリーム色だけど、微妙に模様が違うくらい。
模様っていっても、じっと見ないとわかんないくらい。
大した事ないかな。
後は角部屋が窓が1つ多いくらい。
「・・・・・あんま変わんなかったね」
「だな」
「うーん、普通だな。でも使いやすそうな部屋で良かったかも」
「・・・・・なあ、響子さん」
「ん?」
「頼む!!!俺に一部屋貸してください!!!!!」
「え」
「今、大亮さんとルームシェアしてんだけどさ。
やっぱ男とはいえ、ずっと一緒は辛いからさ・・・・・」
「まあ、確かに。お互いに部屋ないとちょっと不便だよね」
「そうなんだよ。金ないし、そんな贅沢言ってられないってのもそうなんだけど。
家賃はちゃんとバイトして払うから!!!」
土下座でもしそうな雰囲気。どうやら、色々あるらしい。
でも、いい年した男が2人。
一緒に住むには、ちょっと厳しいよね?ずっとは辛いよね?
「いいよ」
「えっ!?マジ!?」
「その代わり、給料安いけど我慢してくれる?」
「するする!!!」
「ていうか、ここ、従業員の寮にしようと思って。
家賃はナシだけど、光熱費は自分で持ってもらうよ?」
「それくらい当たり前だって!!!やった!!!1人部屋!!!」
「ま、ディナー始めたら、あんまり早く帰れないかもしれないしね・・・・・
電車無くなったりしたらアレだから、ここに住んでもらうようにしようと思って」
「あー。確かに。その方がオレ達にとっては有難いけど・・・・・いいのか?」
「うーん、お給料そんなにいっぱい出してあげられないかもしれないから。
その代わりと言ってはなんだけど、住む所を提供しようかなって。
空き部屋は普通に賃貸にしようかと思うけど。」
「勿体ないもんな。ここ、10部屋はあるだろ?」
「そうだね。3階建てだけど、1階が2部屋、2階と3階が4部屋。
一応玄関はオートロックだし、防犯はいいだろうしね」
「いいなー。な、いつ越してきてもいいんだ?」
「え?いつでもどうぞ?今の所全部屋空いてるよ?」
「マジで!?何階にしようかなー」
「とりあえず、店に戻って決めよう。管理会社さんにも言わなきゃね。
大亮さんはどうするかなあ?」
「どうだろ?でもここ借りれるんなら越してくるかもな?」
「んじゃ、店に戻って話そう?お昼、浩一朗が用意してくれるって言ってたし」
並んで店に帰る。
店の前まで来ると、車から荷物を降ろす大亮さんと晴明を発見。
「おお?お前等どこ行ってたんだ?」
「ちょっとねー」
「大亮さんには内緒!」
「なんだよ!俺にも教えろよ!!!俺はハルにこき使われて大変なんだぞ!!!」
「何言ってんだよ、大して動いちゃいねえだろうが」
「お疲れ様、2人とも」
ぎゃんぎゃん言いながらも、康太君は大亮さんを手伝って荷物を中へ運ぶ。
仲いいもんね、ホントに。
「ああ。それにしてもどこ行ってたんだよ響子?康太と2人だなんて」
「ふふ。すぐそこだよ」
「すぐそこ?・・・・・ああ、アパートか?」
「当たり。下見にね」
「どうだった?」
「結構綺麗だし、一人暮らしにはいいんじゃないかな?
康太君も気に入って、早く引っ越したいって」
「はは、成程な」
「ハルはどうするの?今の家で平気?」
「ああ。そのうち俺も移動するかもしれねえが、今のとこはまだいい。
多分巽さんもじゃねえか?」
「・・・・・浩一朗もハルもいいとこ住んでそうだもんね」
「お前には負けるよ。家持ちだもんな?」
「どういたしまして。とりあえずこれで結婚できなくても住むとこには困らないかもね!」
「何言ってるんだよ?いつでも嫁に貰ってやるから言えよ?」
「キャーしびれるー」
「棒読みじゃねえか」
だってねえ?
こんなにイケメンでいい男。他の女が離さないでしょ。
素敵だな、って思うけど。
私よりも他にいい女が大勢いるもの。本気になるわけがない。だから私も本気にしない。
コレくらいの距離感が一番いい。
どうやら、彼等がやっていた仕事は、会社ごと仲間達に託したらしい。
確かに、未練も愛着もあったようだけど、『違う道を歩く事にしたんだからよ、潔くいかねえとな!』なんて言っていた。
そんな思い切りのいいのも、大亮さんらしいと言えばらしいかもしれない。
・・・・・康太君は少し寂しげだったけれど。
創業から一緒に作り上げた仲間と道を分かつのは、やっぱりキツイらしい。
大亮さんは新しいことに生き生きしちゃって、そうは見えないけれど。
康太君は勿論楽しそうではあるのだけど、多少ぼんやりと考え事をしている時がある。
気になってはいるのだけど・・・・・
はたして私が聞いてもいい事なのだろうか?
そんな、オープンに向けて準備中のある日の事。
▪️ ▫️ ▪️
「あれ。1人?」
「ああ、大亮さんならハルさんに引きずられて買出しに行ったぜ?」
「はは、ハルも大亮さんや康太君が来てくれて嬉しそうだからね」
「そうかな?巽さんといい、ハルさんといい・・・・・人使いが荒いんだよな」
「あはは、ん~じゃあお願いしにくいかな・・・・・」
「え、何々?響子さんの頼みならいいぜ!」
「何それっ」
『いやー男の頼みだとアレだけど女の人の頼みは聞かないと!』なんて独自の理論。
それって、晴明や浩一朗も同じような事言ってたような・・・・・?
意外に考え似てるんじゃないの?それとも似ちゃったの???
「あのね、近くにアパートがあるんだけど。そこを見に行くの。
よかったら、康太君ついてきてくれると助かるんだけど」
「いいぜ!行く行く!!!暇だし!!!」
「じゃあちょっと待ってて。浩一朗に言ってくるから」
康太君を残して、キッチンに向かう。
音がしているから、浩一朗がいるはずだ。
ひょい、と中を覗くとキッチンの色々なところをチェックする人影。
「浩一朗」
「ん?なんだよ」
「ちょっと外に出てくるから」
「ついてってやろうか?」
「ううん、康太君を誘ったから。借りてくわね?」
「そうか。・・・・・アパートでも見に行くのか?」
「大当たり。あそこ、従業員用の寮にしようかと思って。
近いし、もしも夜遅くなっても帰りやすいでしょ?」
「なるほどな。今はいいかもしんねぇが。ディナー始めたら遅くなっちまうからな」
「うん。家賃はナシで、光熱費だけは自費で。・・・・・その分お給料安くても我慢してくれるかな?」
「十分だろ。大亮や康太なんて喜んで引っ越すんじゃねぇか?
今はルームシェアしてるが、やっぱり1人の部屋が欲しいだろうからな」
「・・・・・と思って、下見に連れてこうと思って。いいかしら?」
「ああ。行って来いよ。昼は用意するからな?帰ってこいよ?」
「はーい。」
「午後は俺に付き合えよ。メニュー、ある程度決めたからな」
「もう?早いわね・・・・・」
「早くはねぇだろ?オープンは来月って言っても、もう2週間しかないんだぜ?
早めに決めちまわねぇと、材料の仕入れとかも考えねぇとな」
「そっか・・・・・メニュー表とかもいるもんね。あと制服も」
「そういうこった。・・・・・さっさと行ってきちまえよ?」
「ふあーい」
そうかー。時間はあると思ってたけど、意外にやる事いっぱいあるもんね。
キッチンから出てくれば、康太君が心配そうな顔をした。
「どうした?響子さん?」
「ん?何もないよ?」
「いや、なんか不安そうな顔してたぜ?
まさか、巽さんに苛められたのか!?」
「下手な事言うんじゃねぇよ、康太」
「うげっ、巽さんっ」
出てきた浩一朗にごつん、と拳骨をもらう康太君。
痛え、とぴょんぴょん跳ねる。
「お前は大げさすぎんだよ」
「んな事ねえ!!!巽さん、力加減おかしいだろ!!!」
「うるせぇな。ほら、早く行って来いよ」
「はーい」
「はーい」
仲良く返事をして店を出た。
ちょっと楽しいかも。
▪️ ▫️ ▪️
歩いてアパートへ向かう。
車出さなくていいのか?って聞かれたけれど、アパートまではホントに歩いて2~3分。
車を出して行くほどの距離じゃない。
「すぐだよ?ほんの2~3分だし」
「そうなのか?んじゃ、歩いてくか」
たわいない話をしながら到着。
「近っ!!!」
「だから言ったじゃない」
「いやこんなに近いと思わなかったんだって・・・・・」
「えーと。下からでいいか」
「は?どゆ事?見る部屋決まってんじゃねえの?」
「いや、全部の部屋見たことないし。内装とか一緒なのかしらね?」
「はあ?全部?何で?」
「何でって。なんか部屋ごとに微妙に内装違うって話なんだよね・・・・・」
「そうなのか?でもよく不動産屋が鍵貸してくれたな?普通立ち会うだろ?」
しきりに首を捻る康太君。
・・・・・あ、そうか。彼は此処が私の持ち物だって知らないんだ。
不動産屋さんから、借りるために下見に来たと思ってるのかも。
「響子さん、家あるのに部屋なんて借りるのか?」
「あ、いや、違うの。ここ、私のなの」
「え?」
「えっと、このアパートの大家さんは、私なの」
「えーーーーーーっ!!!!!」
「まーそうなるよね」
「嘘だ!!!凄えじゃん!!!」
「遺産で貰ったのはいいんだけど、中を見てないのよね。
だから今日はそれを確認しに来たの。1人じゃなんだし、康太君一緒なら、クリーニング必要かもわかるでしょ?」
「あー。なるほどな!!!任せとけよ!!!」
ぱあ、と笑顔を見せる康太君。
コロコロと表情が変わるのが、なんだか可愛らしい。わんこみたい。
「えー、では1部屋目」
「おー。ぱちぱちぱち。」
ガチャ、と鍵を回し、中に入る。
中は普通の1K。
部屋の間取りは・・・・・Kが3畳くらい?部屋は8畳くらいあった。
結構広い作り。クローゼットもあるし、収納もある。窓もそこそこ大きい。
一応ベランダ付きだし、エアコンも完備。
「おおお、風呂とトイレ別。いいよな!」
「それは外せないよねー。でも洗面は一緒?」
「だな。まーそれくらいはいいんじゃねーの?」
壁はクリーム色。結構いい部屋かも。
「クリーニング済んでるみたいだな。築何年?」
「10年くらいみたい。ま、いい物件かもね」
「だなー。んじゃ、次行こうぜ」
「はーい」
それから次々と部屋を移動。
間取りは一緒。広さも。
でも3階はロフトがあった。コレも3畳くらいかな。
部屋の違いは、それくらいだった。
部屋の壁紙はクリーム色だけど、微妙に模様が違うくらい。
模様っていっても、じっと見ないとわかんないくらい。
大した事ないかな。
後は角部屋が窓が1つ多いくらい。
「・・・・・あんま変わんなかったね」
「だな」
「うーん、普通だな。でも使いやすそうな部屋で良かったかも」
「・・・・・なあ、響子さん」
「ん?」
「頼む!!!俺に一部屋貸してください!!!!!」
「え」
「今、大亮さんとルームシェアしてんだけどさ。
やっぱ男とはいえ、ずっと一緒は辛いからさ・・・・・」
「まあ、確かに。お互いに部屋ないとちょっと不便だよね」
「そうなんだよ。金ないし、そんな贅沢言ってられないってのもそうなんだけど。
家賃はちゃんとバイトして払うから!!!」
土下座でもしそうな雰囲気。どうやら、色々あるらしい。
でも、いい年した男が2人。
一緒に住むには、ちょっと厳しいよね?ずっとは辛いよね?
「いいよ」
「えっ!?マジ!?」
「その代わり、給料安いけど我慢してくれる?」
「するする!!!」
「ていうか、ここ、従業員の寮にしようと思って。
家賃はナシだけど、光熱費は自分で持ってもらうよ?」
「それくらい当たり前だって!!!やった!!!1人部屋!!!」
「ま、ディナー始めたら、あんまり早く帰れないかもしれないしね・・・・・
電車無くなったりしたらアレだから、ここに住んでもらうようにしようと思って」
「あー。確かに。その方がオレ達にとっては有難いけど・・・・・いいのか?」
「うーん、お給料そんなにいっぱい出してあげられないかもしれないから。
その代わりと言ってはなんだけど、住む所を提供しようかなって。
空き部屋は普通に賃貸にしようかと思うけど。」
「勿体ないもんな。ここ、10部屋はあるだろ?」
「そうだね。3階建てだけど、1階が2部屋、2階と3階が4部屋。
一応玄関はオートロックだし、防犯はいいだろうしね」
「いいなー。な、いつ越してきてもいいんだ?」
「え?いつでもどうぞ?今の所全部屋空いてるよ?」
「マジで!?何階にしようかなー」
「とりあえず、店に戻って決めよう。管理会社さんにも言わなきゃね。
大亮さんはどうするかなあ?」
「どうだろ?でもここ借りれるんなら越してくるかもな?」
「んじゃ、店に戻って話そう?お昼、浩一朗が用意してくれるって言ってたし」
並んで店に帰る。
店の前まで来ると、車から荷物を降ろす大亮さんと晴明を発見。
「おお?お前等どこ行ってたんだ?」
「ちょっとねー」
「大亮さんには内緒!」
「なんだよ!俺にも教えろよ!!!俺はハルにこき使われて大変なんだぞ!!!」
「何言ってんだよ、大して動いちゃいねえだろうが」
「お疲れ様、2人とも」
ぎゃんぎゃん言いながらも、康太君は大亮さんを手伝って荷物を中へ運ぶ。
仲いいもんね、ホントに。
「ああ。それにしてもどこ行ってたんだよ響子?康太と2人だなんて」
「ふふ。すぐそこだよ」
「すぐそこ?・・・・・ああ、アパートか?」
「当たり。下見にね」
「どうだった?」
「結構綺麗だし、一人暮らしにはいいんじゃないかな?
康太君も気に入って、早く引っ越したいって」
「はは、成程な」
「ハルはどうするの?今の家で平気?」
「ああ。そのうち俺も移動するかもしれねえが、今のとこはまだいい。
多分巽さんもじゃねえか?」
「・・・・・浩一朗もハルもいいとこ住んでそうだもんね」
「お前には負けるよ。家持ちだもんな?」
「どういたしまして。とりあえずこれで結婚できなくても住むとこには困らないかもね!」
「何言ってるんだよ?いつでも嫁に貰ってやるから言えよ?」
「キャーしびれるー」
「棒読みじゃねえか」
だってねえ?
こんなにイケメンでいい男。他の女が離さないでしょ。
素敵だな、って思うけど。
私よりも他にいい女が大勢いるもの。本気になるわけがない。だから私も本気にしない。
コレくらいの距離感が一番いい。
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