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学園生活、2年目 ~前期~
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しおりを挟む順調に採取を続け、ホーンウルフだけでなく他にも魔獣が現れたりしたけれど、ケリーとダニエルさんの息の合った戦いでサクサク進めた。
私は一切魔法を使ってあげてないけど、特に問題もない。
ちょっとした怪我だと、皆自分の魔法で治しちゃうしね。
…回復役って必要でした?
いらないのでは?
そう思ったのは私だけではないらしく、ロリアさんがわざとらしく溜息を付く。
「なんか、いつもの授業と変わらないわね。合同授業って言うからもっと楽ができるのかと思ったわ」
チラ、と私を見ながら言うから言いたいことはわかる。敵を探すのにも、周りを探索するのにも自分がやっているし、治療に関しても自分達で対処できている。
何のために私がいるのかしら?と言いたいんだろうけど、私は楽ができて、散歩できて、見たことないものが見れて、思考に溺れなくて済むので万々歳だ。
たまに薬草を見かけてはプチプチ詰んでいたりもするが。
冒険者ギルドでいらなければ、私が持ち帰る気でいるからね。ポーションの材料費が浮く。
とはいえ、一応私も探索魔法かけてるんだけどね?
「ロリア、合同授業だからこそ気をつけないといけないんだろ?近衛副官殿も言ってたろ、イレギュラーが起こって高レベルの魔獣が湧く危険もある、って」
「それはそうだけど。探索魔法かけてるからそんなのわかるわよ。この辺りにはそういう危険性はありません!ダニエルだって私が色々してるのわかってるでしょ?」
「それはわかってるし、感謝してるけどさ」
「荷物持ちだけなら、いなくたっていいと思うのよね?」
マジックバッグ、私が持ってます。ジャジャーン。
この中に回復薬とか入ってるのでね!詰んだ薬草もこの中に入れてます。
すると、ケリーが舌打ちして振り返った。
「だったら探索魔法はコズエに任せていい。ロリアは目視で索敵に切り替えろ。ウダウダ言われながら探索するのはナシだ」
「別にそこまでしなくったって・・・」
「これはリーダー命令だ。ロリア、どうするんだ」
「・・・わかりました。でも探索魔法も私がするわ、目視確認も同時にした方がいいから」
「ならお喋りは控えてくれ」
なによ、と機嫌を悪くしながらもロリアは少し先を歩き出す。ケリーは私の隣を歩き出した。
「悪いな、コズエ」
「良いわよ言わせておいても。確かに私何もやってないし」
「何言ってんだよ、最初から探索魔法かけてるだろ?それに途中身体強化魔法もな」
「あら、バレてた?でもそれは薬草採取もしたかったのもあるんだけど?」
「まあそういうことにしとくさ」
さっき魔獣の数も多かったから、ケリーとダニエルさんにこっそり威力を絞って身体強化魔法をかけておいた。
団長さん達に使った時にかなり驚かれたから、私は今回威力を半減させて使ったのだ。その為か驚かれていない。よし、成功。
昼を回り、採取も結構済ませた。そろそろ戻ろうかと思い、出発地点へと向かっていると途中でディーナ達と会った。
「あ、ディーナ、キャズ」
「コズエか」
「どう?採取は?」
「結構順調だよ。私達はもう戻るつもり。そっちは?」
「ああ、私達はもう一箇所気になっている所があって。
ここで会えたのは良かった。少し手を貸さないか?」
ディーナ達の話によると、少し大きな群れの魔獣がいるらしい。けれど今の自分達では攻撃力に欠ける。放置しておくのは心苦しいが…と思っていたそうだ。
「なるほどな、じゃあ俺がそっちに加わればいいか?」
「ああ、ケリーが入ってくれれば大丈夫だろう。済まないがコズエ達は戻って伝えてもらえないか?」
「わかったわ」
「ケリーが行くなら私も行くわ!」
「いや、ロリアはダニエルと一緒にコズエを出発地点まで送ってくれ。途中何かあったらダニエルだけじゃ対処しきれないだろ」
「でも!」
「二人じゃ危ない事はわかるだろ?ロリア」
キュッと唇を噛み締める。ケリーと一緒に行きたいんだろうなロリアさんは。でもケリーはそれを許さない。
ロリアさんの代わりはキャズでもできる。でもキャズに変わってくれと言わないのは、多分キャズの方が討伐に適した能力の持ち主だからだ。弓の腕も魔力量も、ロリアさんよりキャズの方が少しだけ上だ。回復役にもなれる。
ディーナ達のパーティにケリーが入り、魔獣出現地点へと向かう。私達は当初の目的通り、出発地点へと向かった。
たどり着くまで、ロリアさんは一言も話さなかった。
出発地点へと戻ると、大半のパーティが戻っていた。私達はダニエルさんを先頭にして、団長さん達が集まっている所へ向かう。ディーナ達のこと話さないとね。
「───そうか、わかった。下がっていいぞ、ここまで戻ってくるのにも疲れているだろうから休め」
「了解しました!」
ダニエルさんは団長さんを前にして、ピシッと敬礼。
ロリアさんも同じく敬礼しているのを見て、私は慌てて頭を下げた。敬礼の仕方知らないもん。
私はダニエルさんとロリアさんにありがとうございました、と頭を下げてから魔術科の子達が集まっている所へ。
すでに戻っていた子達からお茶をもらい、一息つく。
皆も疲れているらしく、クエストの話をしながらゆっくりしていた。
すると、カイナス副官が近寄ってきた。私を見つけるとちょっと微笑んで隣へ。
「お嬢さん、ちょっといいですか?」
「どうかしました?」
「団長がお嬢さんに用があるみたいなんです」
なんだろ?と思いながら付いていく。テントが張られているところに、団長さんが騎士さん達に指示を飛ばしているのが見えた。
「一番近い奴に伝令を飛ばせ。お、来たかお嬢」
「どうかしました?」
「悪いんだが、お嬢がその友達のパーティと別れた場所どこだ?教えてくれ」
「えーと、この辺りですかね?方向としては向こうで」
「・・・お嬢?もしかして探索魔法かけてるか?」
「え?はい、まだ効果続いてますね」
「・・・どんだけ範囲広いんだよ」
「お嬢さん、そこまで範囲広い探索魔法なんて使える人いないですよ」
「えっ?でもゼクスさんやセバスさんだともっと明らかにおかしい範囲見えてますよ」
「あの人達を基準にするのは止めとけ」
そうなのかな?どこまでできるか限界に挑戦!とかってやってる場合じゃないのかも。
でもここまで戻ってきていると、さすがにディーナ達の事まではわからない。方向を絞ってフルパワーで使えば届くかもしれない?って感じだけど。
すると、一人の騎士が飛び込んで来た。息を切らせながらも、団長さんの前で報告をする。
「報告!学生パーティがマンティコアと交戦中!マイルズとトーニ、ハルターが援護に入りましたが、負傷者が出ています!」
「マンティコアだと!?なんだってそんなもんが出た!」
「場所は!?学生は誰だ!」
「場所はE35、パーティはクロフト隊です!」
っ、ディーナ!ケリーが入ったのに!?
負傷者、って報告してるって事は、すでに倒れている人を見たって事だ。
数人知らない人の名前が上がったのは、多分近衛騎士さん達がフォローに向かったって事。
でも、この人が一人で報告に来たって事は、予断を許さない状態だ。
私はディーナ達が向かった方向一点に向けて、広範囲に探索魔法を発動する。
───いた!遠いけど、身体強化魔法かけてめいっぱい走れば、なんとかなるかも!
誰かまではわからないけど、二人ほど倒れているように感じる。もしもそのうちのひとりがキャズだとしたら、回復役がいない!
そう思った瞬間、テントを飛び出した。フルパワーで身体強化魔法を使えば、嘘のように足が軽くなる。急げ、間に合って!
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