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学園生活、2年目 ~前期~
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しおりを挟む「・・・本当に追い込むだけでいいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ。多分」
カイナス副官と歩きながら作戦会議。団長さんが隠れている・・・というかいる所は大体わかっている。
昼寝しているか、または訓練に参加して体を動かしているか、だそうだ。
訓練場に行くと、そこには他の騎士さんに混じって練習試合をしている団長さんを発見。
…あれ?あれってドラン?と、エド?
「あれ?あれって」
「ん?ああ、学園生ですね。今は毎日数人志願者を加えて訓練をしているんですよ」
「そ、そうなんですか」
「知り合いでしたか?」
「あー、え、そうですね」
ドランが強いのは知っていたけど、エドもかなりの腕前のようだ。今フレンさんが相手をしているけれど、楽しそうに剣を重ねている。
エドはそれに対してギリッギリのやり取りをしているみたいだけど。あれだけできればいいんじゃないかなと。
「・・・彼はサヴァン伯爵家の子息でしたか。あの腕なら近衛に入れてもやっていけそうだ」
「そうなんですか?そんなに強かったんだエド」
「おや、なかなか深い知り合いみたいだね。妬けるな」
「カイナスさんが許してくれるならいつでも『シオン様♡』とお呼びしますよ?」
「アナスタシア様にこってり絞られそうだ」
ひょい、と肩を竦めたカイナス副官。全く心にもないことを言うんだから。そうやって他の女性にも気を持たせて透かしてきたんだったらこの人とってもプレイボーイだな。
「どうしました?」
「カイナスさんたら何人の女性に期待させて来たんですか?未だに独り身なのってそのせいですか?」
「期待させてなんていませんよ?」
「さっきみたいなセリフ、気がない女性に言うもんじゃないですよ、期待させる気がないのなら」
「そのセリフはそっくりそのまま返しますよ、お嬢さん?俺の執務室でのセリフは男の前で言っちゃダメだ」
「私は決めた相手にしか言いませんよ?カイナスさん」
「・・・やれやれ」
「で、やります?ここじゃない方が私としてはありがたいんですけど」
「お嬢さんの魔法?確かに他の奴には見せない方がいいかもしれませんね。なら向こうの開けた所に追い込みますからよろしく」
パチリ、とウインクして歩いていくカイナス副官。
うん、だからそういうウインクとかもさ…エドもそうなのよね…だからのぼせちゃう女の子もいると思うんだけど。
さてさて、あの魔法試すの楽しみだなー。あの某忍者マンガみたく鎖を大量にまだ出せないし。研究の余地はある、うん。
********************
俺が訓練場に来たことを察知している団長。学園生と試合しながらもこちらをチラチラ見ているのがわかる。
騎士達も俺が来たことで『また団長逃げてたのか』『離れとくか』と場を開けだしている。
近くまで行くと、団長も訓練を中断してこっちを見た。
「おう、シオン。お前もやるか?」
「いいえ。そろそろ仕事に戻ってください団長」
「あーん?まだアナスタシア帰ってきてないだろ?もう少しいいじゃねえか」
「俺の分はもう終わりましたよ。全部後は団長の部屋へ運んできますから」
「げ、もう終わったのか?ホントに有能だな」
「誰かさんのおかげで内勤業務がやたら早くなりましたのでね」
「俺のおかげじゃないか」
にこやかに会話をしているが、団長はジリジリと俺から逃げるコースを割り出している。
俺もそれを判断しつつ、それを塞いでいく。お嬢さんに任せろと言った手前、できなきゃ格好悪いからな。
…お嬢さんがどんな魔法を出してくるのか気になるし。
アナスタシア様が『姫』と呼ぶタロットワーク一族秘蔵の姫だ。どんな人物なのかは謎。ここで少し知るきっかけになるだろうか?…まずいな、俺も毒されてきてるのか。
団長が逃げる体制になる。奥へ追い込むには、ここにいる騎士の力も借りるとするかな。
「サヴァン、団長を抑えろ!モーリス、ドラン、退路を断て!」
「っ?了解!」
「はっ、了解!」
「・・・了解」
一番近くにいたサヴァンに団長が動こうとした方向を塞がせ、奥庭へ行かざるを得ないように別の退路を近くにいた騎士に指示を出して邪魔をさせる。
団長は瞬時にその意図に気付き、奥庭の方へと逃げる。
予想通りだな。奥庭からも回り込んで逃げるルートがあるし、走りきれば俺が追いつく前にギリギリ抜けられるだろう。
大体いつもそっちに追い込む事が多いし、俺も必死に追いかけるのだが三回に一回追いつけばいい方だ。
「サヴァン、よくやった。モーリス、ドランもいい判断だ、礼を言う。この場から離れる事なく訓練を続けろ」
俺も団長の背を追う。お嬢さんの魔法を見逃すのも惜しいからな。騎士達に指示を出した分、スタートダッシュは遅い。いつもより開けた団長との差。
チラッと後ろを確認する団長の顔がしてやったり、と笑っていた。くそ、追い詰めてやる…!
角を曲がり、抜けた先には奥庭。
そこから裏手の細い道を抜ければ、もうひとつの訓練場に通じ、大きな回廊へと抜けられるようになっている。
団長が奥庭へと進んだその時。
「『捕縛魔法・鎖』」
「っ、なんだこりゃ!」
お嬢さんの声が響いた瞬間、地面に浮かび上がる三つの魔法陣。そこから金色の細い鎖がブワッ、と襲いかかる。
団長も咄嗟に避けるが、金色の鎖は逃げた団長の動きを追って生き物のように動き、団長の腕や足にカシャン、と絡み付いて自由を奪った。
「っ、力が?」
「す、凄すぎる」
「あれ、思ったより鎖出ましたね」
のんびりと聞こえる少女の声。
…俺はもしかして、ものすごい物を見たんじゃ?
********************
某忍者マンガのくノ一さんは、自分の背後から鎖を出してたけど私がアレンジした魔法は、魔法陣から捕縛用の鎖を出す形にした。
その方が地面でも空中でも応用効くし。
意外とうまくいったなぁ。しかし鎖もたくさん出たし。まあ全力でやってみたの初めてだしこんなもんか。
攻撃用じゃなくて、捕縛用だし、団長さんなら頑丈だし多分魔法防御もできると思ったから手加減ナシでやったけど、こんなに簡単に捕まるとは。
思い通りに動くように、ってのはもちろんクラピカさんをイメージしてだね!
「お嬢・・・なんだこの魔法・・・」
「私がアレンジした捕縛魔法です。なんかいい感じに仕上がって嬉しいですね」
「いや嘘だろ捕縛魔法ってこんな威力ないだろ・・・」
「え、これ捕縛魔法なんですか?」
「リボンとか、影からとか色々考えたんですけど、金色の鎖ってカッコイイかなって」
「いやそうじゃなくてお嬢・・・これ今俺の魔法も封じてるから」
「え?」
「団長?」
魔法を封じてる?いやそんなの付けてませんよ?ていうか捕縛魔法ってそもそも捕まえるだけの魔法で封魔のスキルないでしょ?
カイナス副官が私を見てくるけど、私もプルプル頭を振る。
「・・・お嬢、この鎖シオンにも付けてみろ」
「え?いいですよ、はい」
「えっ、うわっ、ちょ」
団長さんに付いてる鎖を一本カイナス副官へ移す。まだ具現化している鎖を近距離なら移動もできる。…最初できなかったけど、セバスさんにちょっと相談したら、対象を確保して具現化したままの鎖なら動かせるようになった。捕縛できなくて消えちゃった分は無理だけど。
カイナス副官は驚いたように鎖と私を交互に見る。
「・・・な、何ですかコレ!」
「な、嘘じゃないだろ」
…どうやらセバスさんとアレンジしまくった挙句、とんでもないスキルが付いてしまったらしい。
何度か団長さんとカイナス副官相手に試してみると、フルパワーで発動した時に限り封魔のスキルが付くようだ。
…そりゃわかんないや、だって今までフルパワーでやった事ないもんねこの魔法。
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