異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、1年目 ~春季休暇~

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なかなかに濃い話を聞かされ、ぐったりして帰る私。
別邸に着く頃にはうっかり馬車で寝てました。

気がつけば、自分の部屋のベットに転がっていたので驚いた。


「あれっ!?」

「お目覚めですか、コズエ様」

「ターニャ?あれ?馬車は?」

「もうとっくにお帰りいただきましたよ?お疲れだったんですねコズエ様?」


馬車に乗ったまんま寝たのか私。ローザリア公爵家の馬車も乗り心地よくてウトウトしてたのは覚えてるんだけど。

夜ご飯どうしますか?と聞かれたけどさすがにチーズフォンデュとお茶コースであまりお腹は空いていない。
そう言うと、何か野菜スープでも作ってもらいましょうか、と言ってくれた。それくらいならいいかな?

私は一階に降りて、ダイニングへ。
そこにはゼクスさんが夜ご飯を食べようと寛いでいた。


「あら、ゼクスさん。帰ってきていたんですか?」

「今日は早く目処が付きましたのでな。コズエ殿はローザリア公爵家に招かれていたとか」

「・・・はあ」


ぐったりした私に、ゼクスさんは興味深そうな顔をして席を進めてくれた。
私はゼクスさんの向かいへ座り、聞いた話をした。何か知ってるかもしれないもんね、ゼクスさん。

するとゼクスさんも顎髭を撫でつつ、考え込む仕草をした。


「ローザリア公爵家もそのような事になっておりましたか。それではエリザベス嬢にはちとつらい環境でしょうな」

「そうですね、まさか子供に向かって母親がそんなに暴露話するとは思いませんでしたよ。でも誤った認識を持つよりはマシなのかな、と思う面もあります」

「ローザリア公爵夫人の事を知りたいならば、エオリアに聞くが宜しいでしょう。あれは社交界に通じていますからな」

「そうですね、今度聞いてみます」

「して、コズエ殿のお気持ちもしかとわかりました。儂としてはコズエ殿が望むのならばシリス王子の正妃となられるのに異論はないのですが、無理に進めようとは思いませんぞ」

「どうしてそういう結論になりました?」

「血の濃さ、という観点から話をするならば、シリス王子の正妃に誰が立とうとも構いませんのです。その場合側妃としてタロットワークの血を引く姫君を迎えて子を成せば良いだけの事。元々婚約していた隣国の姫君にも、過去タロットワークより姫や王子が輿入れしておりましたからな。年がいささか離れはしますが、他に側妃を選定し始めてはいたのですよ。
カーク王子がローザリア公爵令嬢と婚姻し、子を成せばよし。別の姫君を選ぶのならば、同じように第二夫人にタロットワークの血を引く姫君を迎えて子を成す。
そうして産まれた次世代の子供達をまた婚約させて血を繋げば良いのですから。
ゲオルグとエオリアの間には姫が産まれませんでしたが、その次の世代、または儂の弟妹の方からも姫が産まれれば安泰ですな」

「・・・なんだか、繁殖させているみたいな気がしますね」

「そうですな、傍から見ればそうなります。しかし、貴族というものはこうして血筋を守っていくものです。
それが良い、とは言えませんがそうして繋いでいくことにも意味があるのだと思います」


こういうの聞くと、本当に庶民でいいやと思うわホント。


「しかしなるほど、アリシア・マール、ですか」

「ゼクスさんの方にも何かお話ありました?」

「いや、儂はあまり『聖』属性に重きを置いておりませんのでな。確かに必要と言えば必要なのですが、治癒魔法の使い手は『聖』属性持ちでなくとも使えますからな。
ですが神殿としては一定数の『聖』属性持ちを揃えておきたいというのも理解はできますが」


やはり後天的に属性を獲得、しかも『聖』属性であれば知りたいと思うのだろう。しかしゼクスさんとしては精霊の加護が関係してくる事だから、法則性はないでしょうとの事だ。

そうすると、アリシアさんのケースはかなり珍しい事だし、神殿としては見過ごせないのでは?


「情勢にも寄るでしょうが、『聖女』認定という事もありえない話ではありますまい。ローザリア公爵令嬢の懸念は正しいと言えますな」

「本人は全くそんな感じでもないですけどね」

「彼女がこの国に残るのであれば問題はありません。しかし諸外国へ身柄を移そうとするならば、一悶着あるかもしれません。王国というよりは神殿が、ですが」

「神殿って国毎に違うものですか?それとも各国に支部があるという形ですか?」

「各国に支部がある、という形ですな。総本山は別の国にあります。『神公国カゼル』がそうですな」


今更だが、この国の名前は「エル・エレミア王国」という。タロットワーク一族の始祖が興した国。
1000年ほどの歴史がある。元々は小さな国だったそうだが、周りの小さな国を寄せ集めて大きくなったとか。
始まりは連合国だったのが、タロットワークの始祖が軸となってひとつの国にした、と記述がある。

神殿主国、「神公国カゼル」。
王国、というより公国という位置付け。小さな独立国家だ。君主は神殿の宗主であるから、他の王国とは少し成り立ちや決まりなんかも違うらしい。バチカン市国みたいな感じ。

シリス王子の元婚約者さんの国、「サルマール王国」。
山岳地帯に広がる王国。織物が主な輸出品。職人なんかも多くて、技術国家らしい。

海洋王国、「トルク・メニール王国」。
島国の国家。商人が多い国。ゼクスさんの下の妹さん、リーベル・タロットワークが嫁いだ大商人ガイナン・フレーベルの本拠地でもある。

そして東の大国、「蓬琳ほうりん皇国」。
ここ、エドから教えてもらった商人さんがお米を輸入してる国。もしかしたら中国や日本に近いかもしれない。
かなり遠くにあって、船を乗り継いでいかないと行けないそうだ。…飛行機とかないよね?

他にも小さな国はあるけれど、大体の大きな国はこのくらいだ。

各国にタロットワークの一族は散っており、さらに王族には過去に渡り輿入れをしている。
輿入れも勿論、国と国を繋ぐ公式な友好方法ではあるけどね。シュレリア様はこの国々の出身ではなく、また別の小さな国の出。トルク・メニール王国の近くにあるらしいけど。


「血の濃さ、よりもシリス王子に必要なのは傍に立ち、支えてくれる伴侶でしょう。婚約者であった姫君は物静かな大人しい姫君でしたからな。ああいう寄り添ってくれる姫君が良いかもしれません」

「で、今のところ有力なのはエリー、だと」

「それもこれもカーク王子次第ですかな?他に候補として数名の姫君が候補に上がっておるようですが、今ひとつ決め手に欠ける。まだまだ決まりはせんでしょうな」

「そうですか」


婚約破棄、ってラノベだとよく簡単に書かれているけど、本当にあると周りの辻褄合わせが大変な事なのね。
確かに、周りの同年齢の姫君達にとってはチャンスだろうけど、こんなにいきなりだとフリーの姫君なんて早々いるもんじゃない。


「ああ、後ですな。学園に来年度から留学生が来るようです」

「留学生ですか?」

「なんでも「蓬琳国」の第一皇子だそうですぞ。シリス王子が婚約破棄をしたという事で、彼国の皇女を案内するついでだとか」

「第一皇子自ら、留学ですか」


なんでも皇子自ら各国に留学を続けているらしい。今年はサルマール王国にいたのだとか。そして来年度からはこのエル・エレミア王国へ。
遊学、という事か。東の大国…はっ!これはイベントフラグなのでは!?ここでその皇子と親密度稼いだら、アリシアさん一気に王妃ルート!?

こ、これは見逃せない展開に!
だってそれでアリシアさん王妃になったら、また色々変わるじゃない!?うわー、大変だ!

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