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学園生活、1年目 ~春季休暇~
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しおりを挟む学年後期の試験も難なく終わり、春季休暇。
ちなみに試験のトップはカーク王子です。次点はエリー。その次にアリシアさん。さすがだね。
私?私は計算し尽くして、20位前後をキープ!
いや結構難しいのよ?全力でやると上位入っちゃうし。伊達に14年も学生してません、試験の傾向さえわかっちゃえばテストで点を取る勉強の仕方など容易い。
というか、結構度々小テストをやっているので、それを復習すれば点は取れます。ほとんどそこから試験問題出してるし。
そこさえ気付けば点は取れるんだけど、割と皆さん気付いてない。私もそこをつつく気はないので、そこそこ点数を取れる辺りをキープしています。
春季休暇に入る前に、二年からどの専門コースに進むか面談をされた。まあ私は魔術コース一択ですのでね。他の皆も基本的に学園に入る前から、進学先を見据えて来るのでここで迷う事もないそうだ。
ただし、中には学園で一年過ごすうちに自分の限界が見えて進学を断念する人もいる。
それは平民だけでなく、貴族の生徒にもいる。
結婚が早まってしまい、学園を去る女子生徒もいれば、家業を継ぐ為に辞める子息もいるらしい。
なので、二年に進む時には少し人数は減る。
平民は2クラスだったが、二年からは1クラスになる。10人くらい進学を断念する人がいるからだ。貴族クラスも3クラスから2クラスに。
アリシアさんとはこれから同じクラスとなるが、専門コースに進むためそこまで一緒でもない。
私とキャズ、あと元アリシアさんのクラスからも二人が魔術コースへ。
メグとドロシー、あとアリシアさんが士官コースに。
ディーナと元アリシアさんのクラスからも一人が騎士コース。
「キャズとはまた一緒だね!」
「ま、あんたと一緒だと暇しなくていいわね」
「なにそれ」
「私もコズエといるのは退屈しないって事よ」
言葉の裏に『あんたトラブルメーカーだから』と聞こえたような気がしますが、それは流しておこうと思います。私は大人ですからね、大人!
しかし、学園に通いはしたものの、帰還方法については全く得るものがなかったな…
取りあえず収穫としては、米をゲット。食生活が潤った。
美人の友達を複数ゲット。しかも公爵令嬢まで。
…なぜか乙女ゲーの攻略対象らしき男子と知り合う。これは不可抗力としていいのだろうか。いや、リアルタイムで乙女ゲーイベントを見られると思えばいいのだろう。
二年目に入ると個人ルートに入るかもしれないしね!今のところハーレムルートっぽいけどね!
********************
春季休暇に入ると、早速エリーから食事会のお誘いのお手紙が届いた。ちゃんとした封書で。
それとは別に、魔法の手紙も届く。通信魔法には、『チーズフォンデュの作り方を教えてくださいませ!』と入っていた。
確かに当日までには、必要な材料は言っておかねば。しかしまだセバスさんからレシピ聞いてないのよね。
あれからチーズフォンデュの話をして、多分こんなの、とおおよその事を伝えはしたのだが。
確か、チーズを白ワインとかで伸ばしてるんだと思うんだよな…スマホあればレシピ調べられるけど…しかしここでスマホが使えるのかは謎だ。
しかしタロットワークの執事は完璧主義者。私はこの人達の熱心さを舐めていた。
「お、おおお!」
「いかがです?コズエ様」
「おいしーい!すごーい!」
「お褒めの言葉をいただき、光栄にございます」
数日前に言ったのに、もうレシピ出来てる!凄い!
とろーりとろけるチーズに、パンをくぐらせる。うん、しつこくなさ過ぎず、チーズのコクがたまらない。
「凄いですね、ワインの他にもガーリック使ってます?」
「そうですね、他にも黒胡椒などで味を整えております。白ワインでなくとも、ミルクでもよいようですね」
「あ、なるほど。エリーに教えるのにはミルクの方がいいかもね」
子供ではないけど、ミルクの方が安心して教えられるかも。これで明日は安心してエリーの家に行ける。
そう、食事会は明日。エリーもアリシアさんも都合がいいし、それに待てないらしい…食に対する公爵令嬢のこだわりは強い…
レシピに必要なものは、先にセバスさんがローザリア公爵家の執事宛に通信魔法で知らせておいてくれたらしい。
くれぐれも当家のお客様に失礼なきように、との注釈を付けて…ここにも上下関係があるんですか?セバスさんも顔が広すぎるよ?
********************
翌日、ランチタイムに合わせて、ローザリア公爵家へ。
途中、アリシアさんを馬車で拾って移動。さすがにアリシアさんは徒歩で向かうわけにもいかないからね。
エリーが馬車で迎えを寄越すと言っていたけれど、私が途中で拾うから、と言っておいたのだ。
「さ、さすがに馬車までエリザベスさんのお世話には・・・」
「私は別にいいんだけど、さすがにローザリア公爵家の家紋入った馬車に乗り込むの見られると後でうるさいわよね」
「はい・・・」
そう、アリシアさんは寮住まい。なので学園まで迎えに行ったのだが、タロットワークの不思議な馬車ならば家紋は認識しにくいが、ローザリア公爵家の馬車はなかなかに派手だ。オリジナルの意匠を施しているので、遠くから見てももろバレなのである。
アリシアさんとエリーが言われるほど仲が悪い訳では無いらしい、と噂が出てきた以上、これを良くない方向に向かないようにしておきたいのだ。
そうした方が、貴族の生徒達がアリシアさんに文句を言いに来る頻度がガクンと下がるからね。
ローザリア公爵令嬢を差し置いて、自分達が意見を通すのもはしたない、なんて思うらしい。
テストの成績で上位をキープし続けるアリシアさんに、貴族生徒も一目置いている。
目立つ事がなければ、文句の付けようもないのだから。
馬車はスムーズに進み、ローザリア公爵家へ。
美しい意匠の門を通り、お屋敷へ。やっぱり無駄に広いんだなお庭…何人も庭師雇って雇用を作るのはいい事だと思うけどね。
アリシアさんもぽかんと口を開けて見ている。
貴族のお屋敷に遊びに行く、なんてなかっただろうしね。
私も最初にタロットワークの本邸へ行った時はこんな感じだったもんな。もう今では『ここもか…』くらいにしか思わなくなった。諦めかしら…。
お屋敷入り口には、もうエリーが待っていた。中で待てばいいのに、扉の外。そわそわしているのがわかる。
「お待ちしておりましたわ!」
「中で待てばいいのに、エリー」
「だって、お友達をこうして招くなんて初めてなんですもの!私自らお迎えしたかったのですわ!」
そんなエリーにアリシアさんは感激してした。
確かにこんなに丁寧に出迎えしてくれる貴族のお嬢様なんていないだろうし。
エリーはアリシアさんを連れて入っていく。私はそっと二人を見ながらあとに続いた。すると、そっと初老の執事さんが私に近づき、礼をする。
「ようこそおいでくださいました、タロットワークの姫君」
「どうも、お邪魔いたします。でも私はタロットワークの姫君、じゃないですから」
「いえいえ、セバスチャン様より言付かっております。私は当ローザリア公爵家にて家令をしております、アルベルトと申します。アルとお呼びくださいませ」
「・・・あの、アル、さんは、その」
なんでこんなに私に丁重にしてくれるんだろう?タロットワークの後見を得ているから?それとも…まさかね?
するとアルベルトさんはにこりと優しく微笑みながらも、セバスさんと同じように礼を取る。
「もちろん、私もでございます、姫君」
「そ、ソウデシタカ」
この人も元暗部なのかな~?なんて思っていたら、私の考えを読んだかのように微笑まれた。
つまり、昔はセバスさんと同様に影として王族に仕えていた一人ということ。どういう経緯でローザリア公爵家に入ったのかは知らない方が良さそうだ。
しかし、この国ホントに色んな裏事情があるんだなぁ…
王家ってのはどこもこんなもんなのかしら?
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