異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

文字の大きさ
上 下
47 / 158
学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~

70

しおりを挟む


アリシアさんともカフェの入口で別れる。一応貴族専用フロアを見たけど、カーク殿下はいなかった。もしかして衝撃度高かったのかしら?それはそれは。あれくらいでめげてちゃダメよねえ?

私も帰宅し、明日のエリザベスさんとのご飯が非常に楽しみです。





********************





翌朝。エドの紹介して貰った商会から買ったお米で、和風の朝食。炊きたてご飯にお味噌汁。お魚の切り身に、卵焼き。浅漬けの漬物。
やっぱり和食よね、日本人にはこれが一番。

炊飯器はないけれど、土鍋さえあればご飯は炊ける!一時期土鍋ご飯に凝って、試行錯誤していて良かった!


「お味はいかがですか、コズエ様」

「最高です!梅干しもあったらいいのに。あの商会で見つかりませんかね~」

「そうですね、また改めて伺うとしましょう。しかしこの『コメ』というのは美味ですね。色々な食べ方もあってマートンも色々と作っておりますよ」

「昨日のライスコロッケ、美味しかったですもんね」


そう、タロットワーク別邸では今や空前のコメブーム!
おにぎりにしたり、リゾットにしたり!ゼクスさんは毎日お昼におにぎり持参しているらしい。

ターニャやライラはなにやらリゾットに夢中。チーズとろ~りで美味しいもんね。カロリーだけが気になる。

セバスさんに至っては、普通の炊きたてご飯がいちばんのよう。浅漬けを教えたから、マートンと様々なお漬物を試作しているみたいだ。


「昆布や海苔があれば、佃煮も作れますしね」

「ノリはこの間買ってみました。コズエ様がおにぎりに巻きたいと言ってましたし。旦那様も香ばしいと気に入ったようですよ」


そうよね、やっぱ年配になればなるほど、和食のヘルシーさに魅了されるに違いない。
お魚もムニエルだけじゃなくて、焼き魚にしてくれるようになったし。醤油ありきよね。

今日はお昼にタイのポワレって言ってたし!
お魚づくしはいい事だ!お肉も好きは好きだけどね!

午前の授業を済ませ、私はキャズ達に断りを入れてから食堂へ。ここ、平民と貴族の使う入口違うんだけど…どうしようかな。と、思っていたらエリザベスさんは平民の使う出入口で待ち構えていた。目立つ、目立っています…!


「あっ、お待ちしてましたのよ!」

「エリザベスさん、すごい目立ってます」

「あら、私ったら。でもここで待たないとコズエさん困るだろうと思って」


確かに。貴族専用の入口に一人で待つ勇気はない。いや、できないことはないけど。大人はなんでもできるようになるんです、なんででしょう。

エリザベスさんに連れられて、貴族専用の入口に。そこには執事のような人が立っていて、通る人に挨拶をしていた。
私を見て止めようとするけれど、ちらっとエリザベスさんが見ると身を引いた。…これがローザリア公爵令嬢の威力ですよ。もう顔パスなんだよねきっと。


「ローザリア公爵令嬢、本日はお一人ですか」

「いいえ、お友達と二人です。どこか空いているお席はありまして?」

「・・・かしこまりました、ご案内いたします」


一瞬間がありました。『友達ってこの平民生徒?』とか思ったに違いない。それでもポーカーフェイスで仕事をするあたり流石なのでしょうか。

席に案内されると周りの貴族生徒の注目を一心に浴びております。まーそうだよね、エリザベスさんが平民生徒連れちゃってるんだもん。いつも取り巻きのお嬢様達と食べているのかな?あっ、なんかすごいガン見してるお嬢様三人いるけどアレだったらどうしましょ。

席はなぜかカーク殿下の近くだった。いえ、遠くても全然いいんですけど。同じテーブルには、いつものドランとエドがいた。


「ごめんなさいねコズエさん、周りの方達のマナーがなってなくて。私、恥ずかしいですわ」


スムーズな爆弾を投げ込むエリザベスさん。
周りの人、一斉に明後日の方向向き始めたけど?

カーク殿下がコホン、と軽い咳払いをすると、周りも私達を気遣うこと無く、ランチタイムを再開。
今だけは感謝しておこう、今だけ。

ランチはとっても美味しかった。ここは学園ですよね?と確認したくなるほどのランチコース。
これは前に仕事サボって友達といいホテルのランチを食べに行った時を思い出す…


「お口に合いまして?」

「ええ、とっても。ちょっと量が多いのと、塩分多めなのを差し引けば」

「やっぱり少し塩気が多いですわよね。私もそう思ってましたの。もう少し薄味の方が私は好みですわ」


でもいいお魚使ってる。材料費に差がありませんか?でも平民ランチも結構美味しいけどね。私は何気にクラブハウスサンドとか好きです。
ただねー、お米がないからパンが主なのよね…
お昼に親子丼とか、定食食べたいわよね。だから私は米を手に入れてからほとんどお弁当です。

あ、パスタは美味しい。私はペペロンチーノよく頼みます。


「昨日は本当にありがとうございました。コズエさんがいてくれたおかげで、彼女の人となりがよくわかったと思いますわ」

「彼女もエリザベスさんと話ができてよかったと思いますよ。この先どうなるかはわかりませんけど」

「あら、何かありまして?」


ワクワク、というようなエリザベスさん。いや貴方が彼女の乙女ゲーに興味あったらダメな気がする。だって大本命ルート入ったら、婚約破棄されちゃうのよ?

私の気持ちを察したのか、エリザベスさんは食後のデザートを楽しみながら、声を潜めて話し出した。


「コズエさん、私の事はさん付けなしで呼んでくださらない?」

「それはちょっと」

「私、同性のお友達っていませんの。彼女とは多分、このままきっと平行線。でもコズエさんとは、もっと仲良くなれると思うんです」


グイグイ来ますよこのお嬢様!友達いません、って周りのお嬢様達はどうなる!


「あの方達は、『ローザリア公爵令嬢』に興味があるのであって、私にではありませんわ」


『公爵令嬢』『第二王子の婚約者』、彼女はそのフィルターを通してしか人から見られない。そんなの学園にいる意味がない、と。


「私、コズエさんの事をお父様に聞きましたわ。私達、いとこ同士になりますのね?」


表向きには、と来たか。確かにローザリア公爵家にタロットワークの血が入っている。遠縁の親戚と言われればそうだろう。そしてという事は私が『タロットワークの遠縁と他には言っている事』と同時に、『本当は遠縁ではなく後見を得ている身である』と知っているという事だ。
まさか私が『異世界人』とは教えられていないだろうから、彼女が暗に指しているのはタロットワークに関しての事と見た。

お願いしますと言いながらも、政治的手段に出てくるとは…エリザベスさんて見かけよりかなり策略家…?
しかし美少女のおねだりスタイルはかわいい。


「うーん・・・」

「どうしても、ダメ、かしら・・・」

「いいですよ」

「本当!? あの、できれば・・・」

「エリー、いやエリザベスだとベス、なのかしら」


そう言うと、エリザベスさんは頬をピンクに染め、私の手を握る。え、私別にプロポーズとかしてないわよね?すごく感動してない?


「いいえ、是非エリーと呼んで?その愛称は初めてだわ。私もコズエと呼んでもいいかしら?」

「いいわよ、好きに呼んで」

「じゃ、じゃあ、コズエ・・・」

「なぁにエリー」


名前を呼んだだけでキャッ♡と照れているエリザベスさん。いや、エリー…
大丈夫だろうか、百合…ではないよね…?

カーク殿下がこちらを見たまま、カトラリーを取り落とす。チラッと見ると『なぜ俺の時はダメで、エリザベス嬢の時はいいんだ!差別だろ!』と言っているように見えた。

当たり前ですよ、相手は美少女よ?
しかも公爵令嬢っつー自分の立場をこれでもかと理解してるもの。なら友達になってあげるのも悪くないわよね?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...