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学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~
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しおりを挟むアリシアさんともカフェの入口で別れる。一応貴族専用フロアを見たけど、カーク殿下はいなかった。もしかして衝撃度高かったのかしら?それはそれは。あれくらいでめげてちゃダメよねえ?
私も帰宅し、明日のエリザベスさんとのご飯が非常に楽しみです。
********************
翌朝。エドの紹介して貰った商会から買ったお米で、和風の朝食。炊きたてご飯にお味噌汁。お魚の切り身に、卵焼き。浅漬けの漬物。
やっぱり和食よね、日本人にはこれが一番。
炊飯器はないけれど、土鍋さえあればご飯は炊ける!一時期土鍋ご飯に凝って、試行錯誤していて良かった!
「お味はいかがですか、コズエ様」
「最高です!梅干しもあったらいいのに。あの商会で見つかりませんかね~」
「そうですね、また改めて伺うとしましょう。しかしこの『コメ』というのは美味ですね。色々な食べ方もあってマートンも色々と作っておりますよ」
「昨日のライスコロッケ、美味しかったですもんね」
そう、タロットワーク別邸では今や空前のコメブーム!
おにぎりにしたり、リゾットにしたり!ゼクスさんは毎日お昼におにぎり持参しているらしい。
ターニャやライラはなにやらリゾットに夢中。チーズとろ~りで美味しいもんね。カロリーだけが気になる。
セバスさんに至っては、普通の炊きたてご飯がいちばんのよう。浅漬けを教えたから、マートンと様々なお漬物を試作しているみたいだ。
「昆布や海苔があれば、佃煮も作れますしね」
「ノリはこの間買ってみました。コズエ様がおにぎりに巻きたいと言ってましたし。旦那様も香ばしいと気に入ったようですよ」
そうよね、やっぱ年配になればなるほど、和食のヘルシーさに魅了されるに違いない。
お魚もムニエルだけじゃなくて、焼き魚にしてくれるようになったし。醤油ありきよね。
今日はお昼にタイのポワレって言ってたし!
お魚づくしはいい事だ!お肉も好きは好きだけどね!
午前の授業を済ませ、私はキャズ達に断りを入れてから食堂へ。ここ、平民と貴族の使う入口違うんだけど…どうしようかな。と、思っていたらエリザベスさんは平民の使う出入口で待ち構えていた。目立つ、目立っています…!
「あっ、お待ちしてましたのよ!」
「エリザベスさん、すごい目立ってます」
「あら、私ったら。でもここで待たないとコズエさん困るだろうと思って」
確かに。貴族専用の入口に一人で待つ勇気はない。いや、できないことはないけど。大人はなんでもできるようになるんです、なんででしょう。
エリザベスさんに連れられて、貴族専用の入口に。そこには執事のような人が立っていて、通る人に挨拶をしていた。
私を見て止めようとするけれど、ちらっとエリザベスさんが見ると身を引いた。…これがローザリア公爵令嬢の威力ですよ。もう顔パスなんだよねきっと。
「ローザリア公爵令嬢、本日はお一人ですか」
「いいえ、お友達と二人です。どこか空いているお席はありまして?」
「・・・かしこまりました、ご案内いたします」
一瞬間がありました。『友達ってこの平民生徒?』とか思ったに違いない。それでもポーカーフェイスで仕事をするあたり流石なのでしょうか。
席に案内されると周りの貴族生徒の注目を一心に浴びております。まーそうだよね、エリザベスさんが平民生徒連れちゃってるんだもん。いつも取り巻きのお嬢様達と食べているのかな?あっ、なんかすごいガン見してるお嬢様三人いるけどアレだったらどうしましょ。
席はなぜかカーク殿下の近くだった。いえ、遠くても全然いいんですけど。同じテーブルには、いつものドランとエドがいた。
「ごめんなさいねコズエさん、周りの方達のマナーがなってなくて。私、恥ずかしいですわ」
スムーズな爆弾を投げ込むエリザベスさん。
周りの人、一斉に明後日の方向向き始めたけど?
カーク殿下がコホン、と軽い咳払いをすると、周りも私達を気遣うこと無く、ランチタイムを再開。
今だけは感謝しておこう、今だけ。
ランチはとっても美味しかった。ここは学園ですよね?と確認したくなるほどのランチコース。
これは前に仕事サボって友達といいホテルのランチを食べに行った時を思い出す…
「お口に合いまして?」
「ええ、とっても。ちょっと量が多いのと、塩分多めなのを差し引けば」
「やっぱり少し塩気が多いですわよね。私もそう思ってましたの。もう少し薄味の方が私は好みですわ」
でもいいお魚使ってる。材料費に差がありませんか?でも平民ランチも結構美味しいけどね。私は何気にクラブハウスサンドとか好きです。
ただねー、お米がないからパンが主なのよね…
お昼に親子丼とか、定食食べたいわよね。だから私は米を手に入れてからほとんどお弁当です。
あ、パスタは美味しい。私はペペロンチーノよく頼みます。
「昨日は本当にありがとうございました。コズエさんがいてくれたおかげで、彼女の人となりがよくわかったと思いますわ」
「彼女もエリザベスさんと話ができてよかったと思いますよ。この先どうなるかはわかりませんけど」
「あら、何かありまして?」
ワクワク、というようなエリザベスさん。いや貴方が彼女の乙女ゲーに興味あったらダメな気がする。だって大本命ルート入ったら、婚約破棄されちゃうのよ?
私の気持ちを察したのか、エリザベスさんは食後のデザートを楽しみながら、声を潜めて話し出した。
「コズエさん、私の事はさん付けなしで呼んでくださらない?」
「それはちょっと」
「私、同性のお友達っていませんの。彼女とは多分、このままきっと平行線。でもコズエさんとは、もっと仲良くなれると思うんです」
グイグイ来ますよこのお嬢様!友達いません、って周りのお嬢様達はどうなる!
「あの方達は、『ローザリア公爵令嬢』に興味があるのであって、私にではありませんわ」
『公爵令嬢』『第二王子の婚約者』、彼女はそのフィルターを通してしか人から見られない。そんなの学園にいる意味がない、と。
「私、コズエさんの事をお父様に聞きましたわ。私達、表向きにはいとこ同士になりますのね?」
表向きには、と来たか。確かにローザリア公爵家にタロットワークの血が入っている。遠縁の親戚と言われればそうだろう。そして表向きにはという事は私が『タロットワークの遠縁と他には言っている事』と同時に、『本当は遠縁ではなく後見を得ている身である』と知っているという事だ。
まさか私が『異世界人』とは教えられていないだろうから、彼女が暗に指しているのはタロットワークに関しての事と見た。
お願いしますと言いながらも、政治的手段に出てくるとは…エリザベスさんて見かけよりかなり策略家…?
しかし美少女のおねだりスタイルはかわいい。
「うーん・・・」
「どうしても、ダメ、かしら・・・」
「いいですよ」
「本当!? あの、できれば・・・」
「エリー、いやエリザベスだとベス、なのかしら」
そう言うと、エリザベスさんは頬をピンクに染め、私の手を握る。え、私別にプロポーズとかしてないわよね?すごく感動してない?
「いいえ、是非エリーと呼んで?その愛称は初めてだわ。私もコズエと呼んでもいいかしら?」
「いいわよ、好きに呼んで」
「じゃ、じゃあ、コズエ・・・」
「なぁにエリー」
名前を呼んだだけでキャッ♡と照れているエリザベスさん。いや、エリー…
大丈夫だろうか、百合…ではないよね…?
カーク殿下がこちらを見たまま、カトラリーを取り落とす。チラッと見ると『なぜ俺の時はダメで、エリザベス嬢の時はいいんだ!差別だろ!』と言っているように見えた。
当たり前ですよ、相手は美少女よ?
しかも公爵令嬢っつー自分の立場をこれでもかと理解してるもの。なら友達になってあげるのも悪くないわよね?
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