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学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~
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しおりを挟むうららかな放課後のティータイム。
店内は暖かいはずなのに、今私の周りではブリザードが舞っているかのようです…タスケテ…
「あの、」
「積もる話もあるでしょうけれど、まずはコズエさんのパンケーキを食べましょう?美味しいものは美味しく食べたいものね?お話はその後にしましょう」
アリシアさんが勢い込んでエリザベス嬢に話しかけようとするも、エリザベス嬢はナイスタイミングで言葉を遮る。
確かに丁度いいタイミングで、リコッタチーズのパンケーキが運ばれてきた。
ホイップクリームとメープルシロップ。
これだけあればバッチリ美味しく食べれるもんね。
エリザベス嬢もアリシアさんも、最初はどう手をつけようかと悩んでいるみたい。
私は手本になるべく、ささっとメープルシロップをかけて、フォークで一口分をすくい上げる。
リコッタチーズのパンケーキって、普通のパンケーキと違ってメレンゲで作っているから、ふわふわ。ナイフで切ってとかしていると、形が崩れてしまう。なので私はフォークで一口分を切り取ってすくい上げるようにして食べる。
「うん、美味しい」
「ナイフは使わない方がいいんですの?」
「このパンケーキ、ふわふわなので普通にフォークに刺せないんですよ。だからすくった方が食べやすいかと」
「そうなんですのね♡楽しみですわ」
「わ、美味しい・・・」
エリザベス嬢はそーっと、アリシアさんは私の見様見真似で口に運ぶ。二人とも幸せそうな顔をした。やはりスイーツは偉大。
「甘いのかと思ったら、少ししょっぱいのですわね・・・」
「リコッタチーズが入ってるので塩気があるんですよ」
「まあ・・・邸のシェフにも教えたいですわ」
「レシピは秘密です」
「あらまあ♡ではここでなら食べられます?」
「とりあえずそのつもりです」
そう、私はこのレシピを外へ出す気はない。とりあえず学園内のカフェでのみ、としている。勿論、タロットワーク別邸では食べてますよ?
レシピはタロットワーク家経由で、学園内のカフェを経営する会社へと売っている。勿論秘密で。
作り方は今日私が実演してみたわけだ。あとはカフェ店員さんの腕の見せ所?
********************
美味しいスイーツで一休み。紅茶を飲んでまったりしていると、エリザベス嬢が口を開いた。
「さて、一応お話しなくてはなりませんわね。アリシアさん、私はカーク殿下の婚約者ですの。知ってまして?」
「は、はい。いろんな方が教えてくれました」
「いろんな方、ね・・・」
色んな人、ね。それはアリシアさんの友達であったり、さっきみたいな貴族生徒のお嬢様達なんだろう。
エリザベス嬢もそう思い当たったようで、困った事、と小さく呟いていた。と、アリシアさんが頭を下げる。
「すみませんでした!」
「・・・あら、アリシアさんは何を謝るの?」
「私、調子に乗って、カーク様がお優しいのをいい事に、お話を聞いてもらったりして、」
「そうみたいですわね。私の所にも同じような事を言いに来てくださる方がいましてよ。でも、アリシアさんはそれが『謝らなければならない事』だと思っていますの?」
「え・・・」
怒ることもなく、静かに聞くエリザベス嬢。そんな彼女に驚いたのか、アリシアさんが頭を上げてじっと見つめる。
エリザベス嬢はふわっと微笑んだ。
「ねぇ、アリシアさん。貴方、カーク殿下の事はお好きかしら?」
「え、ええっ!?」
「もし、もしもよ?貴方が『本当に』カーク殿下をお慕いしています、と言うのでしたら、私、婚約を解消してもいいと思っていますの」
そう言ったエリザベス嬢の瞳は真剣だった。
さっきまではふんわり優雅に微笑んでいたけれど、今の彼女は真剣にアリシアさんと向き合っていた。アリシアさんも真剣な顔になって、背中がピンと伸びる。
「エリザベスさん?それはどういう意味ですか」
「・・・私、幼い頃からずっと、カーク殿下の妻になるのだと言い聞かされて育ちました。たくさんの勉強、行儀作法・・・王族の伴侶となるにふさわしくある為に」
「・・・」
「貴族と言うのはね、アリシアさん。意に沿わない相手であろうと、親の選んだ相手と添い遂げ、子を成さねばならないの。その点、私は恵まれましたわね。私は少なからずカーク殿下に好意を持ち、これまで育ててきましたから。
ですけれど、愛し合う二人の仲を割いてまで、私はこの婚約を押し通す気はないのです」
「エリザベス、さん・・・」
「ですから、正直に答えて欲しいの。アリシアさん、貴方はカーク殿下をどう思ってらして?」
「わたし、わたしは・・・」
真剣なエリザベス嬢に、きちんと答えなければと向かうアリシアさん。けれど彼女にはまだ答えを出せるほどの想いは育ってないように感じる。
私が感じたその想いは、エリザベス嬢にも伝わったのだろう。目を伏せ、クスッと小さく笑う。
「ごめんなさいね、アリシアさん。私少し早まってしまったみたいね」
「え、あの、わたし、ちゃんと答えます、答えますから!」
「いいえ、今の貴方にはそれが答えでしょう?」
見透かしたような、エリザベス嬢の微笑み。
その笑顔に何も言えなくなってしまったアリシアさん。
エリザベス嬢はそっと席を立ち、カフェを後にした。途中、すれ違い様に私の袖をくい、とひっぱる。
「アリシアさん、ちょっとここいてね」
私はアリシアさんにそう言うと、エリザベス嬢を追ってカフェの外へと出た。
エリザベス嬢はカフェの外、近くの木の下で待っていてくれる。
「なんでしょう」
「彼女、思ったよりも子供でしたわ。悪い事をしてしまったかしら」
「と、いうよりも、周りが騒ぎ立てる程、彼女はカーク殿下に対して・・・というか他の男子生徒に対しても恋愛感情は芽生えてないと思いますよ」
「あら、まあ」
そう、カーク殿下だけではない。彼女の噂はあのオリヴァー・ドランやエド、はたまたあのピアノを弾いていたステュアートとも噂があるのだ。
噂と言っても、学園内のどこそこで話していた、程度。キスしてた訳でも抱き合っていた訳でもない。私としては『まだまだ好感度稼ぎ中か、イベントはまだか』くらいの気持ちだったのだから。
「そうでしたのね、私の方にもそんなに噂は盛り上がっていませんでしたから、気にすることもないと思っていましたの」
「まあ周りは尾ヒレをつけて流すのが楽しいんでしょうけど」
「まあ、うふふ。コズエさんたら楽しい方。私、コズエさんとはまた改めてお話したいわ。ランチはいつお誘いしたらいいかしら?私としては明日のランチにお誘いしたいのだけど」
「・・・早いですね」
「明日は、私のオススメの鯛のポワレが出ますの」
「お願いします、鯛大好きです」
食い物に釣られた、というなかれ。私は白身の魚が好きなんです!!!鯛が好きだ!!!金目の煮付けとかたまらないよね!
では明日、食堂の前でお待ちしていますわ、とウキウキで帰るエリザベス嬢。うーん、あの人割と可愛らしいな。
美少女は大好物です。仲良くなりたいなぁ。
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