異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~

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新年を迎え、学園が再開する。季節は冬ではあるが、そこまで震えるような寒さではない。制服の上にストール巻けば大丈夫なくらい。

仲良くなった学園内のカフェ店員さんから、リコッタチーズを入手したと連絡があったのでルンルンで向かう。
やったやった、リコッタチーズのパンケーキ食べれる!毎日食べたいとは思わないけど、たま~に食べるには美味しくって好き。

貴族と平民共用のカフェへと向かっている途中、生徒の少ない庭園の一角でなにやらいじめ現場…らしき場所に遭遇。やだなぁと思っていると、貴族生徒に囲まれた平民生徒はアリシアさんだった。

…こ、これは!?まさかの『ヒロインが悪役令嬢に囲まれるの図』では!?

え、フラグ立ってるよね?
ここで助けに来るキャラが、今の時点で一番好感度高いんでしょ?そうなんでしょ?

好奇心に駆られた私は、こっそり様子を伺う。
助けろよ、と思うかもしれないが、もしかしたらもしかすると?ここで私が入る事でイベント発生しないかもしれないじゃないの!?それはダメ(どこまでもゲーム脳)


「貴方のような身の程知らずが、この学園にいるだなんて」
「恥を知りなさい!」
「平民の分際で王子殿下に媚を売るだなんて…」

「私、そんな事してません!」


はい!思いっきりイベント起きてますね!
ど、どうする?助けるべき?

私がうーん、と考えていると、颯爽とその場へ歩いていく一人の生徒がいた。


「お止めなさいませ、みっともない」

「エリザベス様!」
「このような所に来てはなりません!」

「貴方達、ここで何をしているの?」


貴族生徒のお嬢様三人に囲まれた平民生徒。その姿だけでよろしくない事があったと想像するには充分。
エリザベス嬢はひとつため息をついて、貴族生徒達に微笑んだ。


「貴方達に心配をかけてしまったのね、でもこんな事は二度としないでちょうだい」

「ですがエリザベス様・・・」
「この生徒は、婚約者がいる殿方に色目を使って近づいているというのですわよ?」
「王子殿下がお優しいのをいい事に調子に乗って・・・きちんと教えてやらなければ!」

「ええ、わかっているわ。彼女には私からきちんとお話をするから。だから今日は貴方達も私に免じてここは収めてちょうだい」


王子殿下の婚約者であるローザリア公爵令嬢にそう言われてしまえば、他のお嬢様達は為す術もない。エリザベス嬢に礼をして、彼女達は踵を返した。
アリシアさんは手を胸の前でぎゅっと握りしめている。


「大丈夫かしら?」

「あ、はい・・・」

「申し訳ないけれど、少し私にお付き合いしていただけない?」


お、大将同士の話し合いかあ。…っていうか、ここでエリザベス嬢が来るってことは、好感度一番高いのエリザベス嬢なわけ?そこら辺に攻略キャラ潜んでないかしら?

しかし私もこそっと見てた事を気付かれたくないので、彼女達の会話をすべて聞くことなく当初の目的であるカフェへと移動した。
んー、気になる事は気になるけどね!





********************





しかし、偶然というのは重なるのです。


「あら、こんにちは。貴方、クラスの出し物でクレープ屋さんにいた方よね?」

「え、はい・・・」


カフェのキッチンに入れてもらい、店員さんと共にリコッタチーズのパンケーキ作りに精を出していたら、エリザベス嬢とアリシアさんが現れた。
店に入るや否や、エリザベス嬢は私に気付いて寄ってきたのだ。クレープの記憶、パネェ。


「あの時のクレープ、とっても美味しかったわ!
・・・あら?今日は何を作ってらっしゃるの?」

「えーと、パンケーキです」

「まあ♡」

「・・・食べます?」

「いいのかしら♡」


だってもう目がハートマークなんだもの…
乗り出してこっち見てるし。この子、甘い物に目がないと見た…


「あと、貴方にお願いがあるの。このパンケーキとお茶は私が貴方の分も払いますから、少し私にお時間いただけないかしら?」


嫌な予感がします。
申し訳なさそうに見つめる美少女。

…私は美人に弱いです、はい。


「な、なんでしょう」

「あの、これから彼女とお話をするのだけど、貴方にも同席してもらえないかしら。・・・いらぬ噂を流したくはないから」


…なるほど、確かにカフェとはいえ、エリザベス嬢とアリシアさん二人だけなら色んな噂が立っちゃうわな。そこで部外者、しかも平民生徒を入れておけばそこまで噂にもならないって事かな。
しかもパンケーキ囲んでれば、少し風変わりな光景、くらいで落ち着くだろう。


「あ、良ければ今度食堂でランチはいかが?もちろん私がなんでもお支払いしますし」

「よろしくお願いします」


貴族生徒専用メニュー、食べてみたかったのよね。どのくらい美味しいのかなと…平民生徒だと頼めないし、エリザベス嬢ならバッチリ。

ここに同盟が爆誕しました(ウソです)

エリザベス嬢は店員さんに、三人分のリコッタチーズのパンケーキと、紅茶を頼んだ。パンケーキの作り方はもう教えたし、あとは私より店員さんの方が焼き方は上手いはず…

私はエリザベス嬢とアリシアさんと連れ立って席へとついた。アリシアさんは私とエリザベス嬢の会話が聞こえていなかったようで、落ち着かない様子。
エリザベス嬢と向かい合うようにアリシアさん。そしてアリシアさんの隣に私。だって向かい合わせの方が、美少女を見ていられるじゃない?


「ごめんなさいね、お待たせして。私のお茶に付き合っていただけて嬉しいわ」

「あ、いえ、あの」

「私は、エリザベス・ローザリアと申します。貴方のお名前は?」

「あ、はい、アリシア・マールです」


緊張気味のアリシアさん。アリシアさんも彼女がカーク殿下の婚約者だと知っているんだろう。けれど、さっきは他の貴族生徒から助けてもらった。一体どうしたら、と思っているのかな。

すると、エリザベス嬢は私にもニッコリ微笑んで名前を聞いてきた。そういえば名乗ってないっけ。


「そう、アリシアさんにコズエさんですわね?これからも仲良くして下さいな、私平民生徒にお友達はいませんの」

「わ、私でいいんですか?」

「ええ、何か問題あるかしら?」

「あ、あの、でも・・・」


アリシアさんは言いたい事が出てこない様子。ですよねー、『私貴方の婚約者と噂になってますけどいいんですか!?』とか聞けな…


「わ、私、貴方の婚約者と噂になってますけどいいんですか!?」


言ったぁーーー!!!
アリシアさん、ド天然でしたーーー!!!

マジか!ほんとに言ったよこの子!
エリザベス嬢もきょとん、としている。そらそうだ、こんなど真ん中ストレート投げてくるとはおもわ…


「ええ、そのようね?」


受けたぁーーー!!!!!
ストライク受けました!!!!!
見事なホームランかっ飛ばしておりますよ!!!!!

か、帰りたいよ…私なんでここにいるの?
ねぇ、どうして私はここにいるの?

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