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真実の扉 ~歴史の裏側~
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しおりを挟む星夜祭の後。
帰りもシオンさんが送ってくれるつもりでいたのだが、そこへアナスタシアが駄々を捏ねた。
曰く『帰りくらい私が姫を独り占めしたい』と…
フレンさんが宥めて連れ帰ろうとしたのだが、アナスタシアは『お前はさっさとキャロルの所へ帰れ。私は愛する姫と2人で我が家へ戻るのだ』と言い切った。
哀れ、フレンさんは撃沈して帰りました…シオンさんが送っていきました…
どうやらアナスタシアはワインを3本ほど空けていた様子。
セバスがササッとどこからか現れ、馬車を調達し、一緒に帰ってきました。甘えるアナスタシアは可愛かったです。
数日後、シオンさんから手紙があり、明日お出かけする事になりました。なにやらお話があるそうで…
「腹を括れ、って事よね・・・」
シオンさんは『自分の事を話したい』と書いてきていたけれど、話さないといけないのは私も同じ。
コサージュを受け取り、付けてもらう時にも言った事。まだ話せないと言ったけれど。
シオンさんが真っ直ぐに想いを向けてきてくれているのに、それに応える気がないのなら、このままではいけないのでは?
「・・・うーん、もうちょっと生姜かな」
「生姜ですね!コーネリア様!」
「あ、お醤油もほしいな」
今、何をしているかって?
考え事をしつつ、お料理中。思い悩んでいる時って、料理するとぱっと気晴らしになるし、考えまとまったりするし。
ふと思い立ち、マートンにお強請りをしてレッツクッキング。今日のレシピはミートパイです。
こっちにもミートパイはある。ただし、中のお味はトマトベース。私が今作っているのは、某パイ屋さんで食べていた和風ミートパイ!生姜が効いていて好きだったの!
何度かチャレンジしているんだけど、微妙に違っていて、今回は3回目のチャレンジ。毎回どれくらい調味料を入れたかメモはしているんだけどね。
味見してはいるんだけど、焼き上がりを食べるとなーんか違っていて…試行錯誤中。でもこのレシピが作れるようになったのは、蓬琳に行ってから色々と調味料をゲットしたからなのよね。感謝しなくっちゃね、高星皇子に。
キッチンにてああでもない、こうでもないと他のことで頭を悩ませつつ、肉ダネの味を決める。パイ生地はもうマートンがちゃっかり作っているから、私の役目はこの肉ダネの味を決めること!
「これまでのも美味でしたけどねえ」
「いやー、自分の記憶通りにはいってないのよね…って、ん?」
「こちらでしたか、コーネリア様。お客様が見えてますよ」
えっ?お客様?私に?
誰だろうと思っていると、セバスは『カイナス伯爵がいらしております』と。シオンさん?出掛けるのは明日では?
とりあえずキッチンを出て、そのままサロンへ。
そこには私服姿のシオンさんが待っていた。
「ど、どうしたんですか?シオンさん」
「こんにちは、コーネリア姫。お迎えに来たのですが、早かったですか?」
「え?お迎え?」
「・・・えーと、お約束をしていたと思いますが」
「えっ!?あれ?明日じゃありませんでした!?」
どうやら、私がお約束していた日を1日間違っていたらしい。サーっと顔から血の気が引く。し、しまった!!!
シオンさんはくすっと笑って許してくれる。
「では、日を改めましょうか。またお誘いしますね」
「ま、待ってください!そんな簡単にお休み取れませんよね?ごめんなさい私が勘違いしていたんですから、これから支度します!」
「いいんですよ、またの機会で」
「で、でも、シオンさん忙しいのに」
「コホン。では、本日は当邸でお話されてはいかがでしょうか?」
あわあわしている私と、シオンさんを見て、セバスが助け舟を出す。
「私は構わないのですが・・・姫は何かしていたのではないですか?」
「え?」
「その格好」
「・・・はっ!取ってくるの忘れてる!」
ふと見下ろせば、私は自宅用のシンプルなドレスにエプロン姿。確かに何かの作業中にしか見えない!
そりゃ支度します!とか言ってても説得力なんてゼロよゼロ!
「こ、これは料理してて」
「料理?・・・本当にやってるんですか、姫」
「えー、はい。気分転換にもちょうどいいので」
「・・・やはりお邪魔では?」
「いえ!1時間くらいで終わりますから!・・・でも、シオンさんがお時間なければ、無理にとは言えませんけど」
「私は休みですので、無理ではないですよ」
「じゃあ、あの、待っててもらえたら、嬉しいな、と」
「・・・お話はまとまったようですね?カイナス伯爵、お時間が宜しければまた当邸の書斎の本でもどうでしょうか。
姫様もお料理の続きは終わりますね?」
「では、お言葉に甘えます。姫、急がなくともいいですよ?」
「はい、ゆっくりしていてください。できれば試食もお願いしますね」
「喜んで」
よ、良かった!約束すっぽかした挙句に、何もせずに帰らせるとか失礼にも程があるわよね!
シオンさんも暇ではないのだし、次の約束のためにまたお休みを取ってもらうのも申し訳ない。
よし、ちゃちゃっと味を決めてしまおう。
シオンさんにも味見してもらって、お詫びということに…なるかな?
私は急いで取って返し、キッチンでマートンとミートパイを作り上げた。後は焼くだけ、となった所でマートンが『私が責任持って焼き上げます!』と言ってくれたので私は着替えに戻ることに。
さすがにエプロン姿でお話するのも…ねえ?
*********************
私が着替えてサロンへ降りると、のんびり読書するシオンさん。私が部屋に入るとすぐに顔を上げて微笑む。
「よく分かりましたね、来たこと」
「それは勿論。愛しい女性が来たのですからね」
「またお上手ですよね、シオンさん。・・・何を読んでいたんですか?」
「これですか?兵法書、ですね。遠征に行くことも増えましたので、隊を指揮することも多いんです。部下にも教えてやらないといけませんし」
「難しそう、ですね」
「女性にはそう見えるかもしれませんね?でも任務でなくとも、通常の生活にも応用は効くんですよ」
「そうなんですか?意外ですね」
「例えば女性を落とす時なんかにですね」
「っ、」
にっこり、とそんな事を言うシオンさん。
…確かに、策士って感じ。じわじわと攻めてくる感じがエグい。もしかしてこういう詰んでくヤツ、お得意だったりする?
「も、もう、冗談ばっかり~」
「姫相手に冗談なんていいませんよ。正攻法で口説く方が姫には効果がありますからね」
「そんな事ばっかり!それより私、シオンさんに謝らないと、と思って」
「謝る?何をですか」
「今日の事です。すみません、勘違いしていて。てっきり明日のお約束だと思っていました」
「いいんですよ、私もちゃんと期日をはっきり書いておけばよかったですね。こうしてお時間を頂けているのですから、問題ないでしょう?」
「でも、どこかにお誘いをしてくださったのでは」
「ああ、お話するのにいい所・・・というか。お茶ができるサロンのような所ですかね。でもゆっくり話ができればいいと思っていたので、こちらのサロンをお借りできるならそれでも充分すぎる程です。さすがに私の邸に招く訳にもいきませんし」
「シオンさんのお邸、ですか?」
「邸という程の物でも。まあ伯爵位をもらった時に、生家の侯爵家から貰った邸があるんです。そこを使っていますがほとんど帰っていないので・・・お招きするのも恥ずかしいんですよ」
そうか、シオンさん基本的に近衛騎士団詰所にいるものね。あそこは騎士達の寮もあるし、そこにいる事が多いんだ。
フレンさんは侯爵家の本邸があるからそこへ帰るけれど、シオンさんはそうではないのかも。
「ちょっと見てみたい気もしますけどね、シオンさんのお邸も」
「・・・姫がそういうつもりで言っている訳ではない事はわかっていますが」
「あっ!あの、そういうつもりではなくて!」
「わかっていますよ。でもそのうちお招きさせていただきます。少し手入れをしないとなりませんので、お時間を下さいね」
「はい、楽しみにしておきますね」
その後も、少しシオンさんのお邸の話を聞いたり、読んでいた本について話したりしていると、セバスがお茶を替えに来た。
「失礼致します。コーネリア様、マートンがパイが焼けたとの事ですが。お持ち致しますか」
「ええ、お願いしてもいい?シオンさんはお腹空いてます?」
「姫が作ったパイですか?頂けるなら、是非」
セバスはすぐに戻り、マートンと一緒にパイを持ってきてくれた。流石のマートン、焼き加減が美味しそう…
せっかくなので焼きたてあつあつを!
味を見るべく、私が先に頂く事に。
「・・・うん!これはイイかも」
「成功ですか?姫様!」
「うん、記憶にある味かな。マートン、このレシピ書き残しておいてね?セバスもマートンも味見してみて」
「かしこまりました!」
「喜んで頂かせてもらいます、姫様」
うーん!これよこれ!あっさり醤油味に生姜の隠し味!
トマトベースのミートパイもいいけど、こっちが私は好き!
シオンさんもひと口食べて驚いている。
あまりこちらの人には醤油味、って馴染みがないわよね。
「初めて食べますが、旨いですね」
「お口に合いまして何よりです」
「・・・参りますね、本当に。俺の胃袋まで掴んで離さないつもりですか?」
「えっ!?そんなに美味しかったです!?」
「ええ、姫の料理を毎日食べたいと思うくらいにはね」
そ、そういう事平気で言えちゃう貴方が怖いわ!
どぎまぎしながらもミートパイをパクつく私。なんだか味がわからなくなってきちゃう。
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