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2度目の夏至祭
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しおりを挟む「でもアリシアさん?もうすぐ合同結婚式始まっちゃうんじゃないの?コズエと悠長に話していて大丈夫なの?」
お茶を入れてもらい、アリシアさん、私、キャズ、ディーナの4人でまったりお茶会。しかし、現実はキャズの言う通り、そんなに次官はないのである。
合同結婚式が始まるのは日が中天に登る時間から。
つまり、お昼の12時からだ。あと1時間程しかない。リハーサルとかやらないのかな?
アリシアさんが言うには、現在は講堂内を巫女総出で清め、飾り付けている最中なのだそうだ。リハーサル自体は昨日のうちに済ませ、今日は朝から巫女達が場を清め、花を用意したりと色々と忙しいらしい。
なので、毎年『星姫』は当日は朝から身を清め、準備をして待つだけとなるそうだ。
「・・・なんですけど、レオノーラさんは講堂にいるそうですけどね」
「へ?待機じゃないの」
「巫女頭として、やる事があるんだそうですよ」
「へー」
「ふーん?怪しいわね、何か企んでないといいけど」
「キャズ、滅多な事を言うもんじゃない」
「え、そういう噂でもあんの」
「さあね?でも私の耳に入る巫女頭の話ってあんまりいい話聞かないのよね。ヒステリーだとかさ」
「ん~?神殿での純粋培養のお嬢さんには競争して『聖女』の座を争うよう気概はないとか?」
「違うわよ、逆よ。なりたくてなりたくてたまらないって方。子供の時から『神童』って言われるくらい巫女としてずば抜けてたらしくて、自分でも『大きくなったら聖女になるのが夢』って言ってたような人よ。それがまあ対抗馬が出てきたもんだから大焦り」
「キャズの話はかなり主観もありそうだが、私も同じような印象だな」
「ディーナはその巫女頭さんに会ったことあるの?」
アリシアさんは黙って聞いていた。もう既に1度聞いている話なのかもしれない。キャズもディーナもアリシアさんと交流はあったしね。
ディーナの様子を見てると、『聞いた』というよりも『見た』って感じ。騎士のお勤めで神殿警護とかもあるのかな。
「前にな、仕事でね。巫女頭が他の街の神殿に詣でるという事で警護をしたんだ。世話係は側付きの巫女が付くんだが、巫女側と騎士側で橋渡しをするのに女騎士が必要になって、私が行く事になったんだ」
「へえ、そんな事もするのね」
「ああ、神殿の巫女達は男性に免疫がないとの事でね。私達はそうは思わないが、やはり巫女からしてみれば騎士達は粗暴に見えるだろうから。だから私が橋渡しをしたんだけど」
「大変だったのね、その口振りからすると」
「そりゃそうよね、冒険者ギルドでも噂だったわよ?途中の村で巫女頭様が癇癪起こして騒動になったって」
どうやらキャズもアリシアさんもそれは知っているそうだ。キャズはギルドで、アリシアさんは町の噂で。
途中に寄った村で、なんでも村長の孫が病を得ていた様で巫女頭に見てもらえないか相談したようなのだけれど、巫女頭様は見てくれなかったのだとか。
『治療をしてもらいたければ神殿にお行きなさい』といっただけで見なかったのだそうだが…
「それって、何か不味いの?旅の途中だからといって巫女頭が勝手に魔法使って治したら後で何か問題にならない?」
「まあそうなんだろうけどね。言い方の問題っていうか、タイミングが悪かったっていうか」
「神殿の巫女達にも規律があって、むやみやたらに魔法治療をしてはならないそうなんだ。だが、その村に常駐していた巫女が無理やり巫女頭に直訴したみたいでな。巫女頭様はそれに癇癪を起こして大騒ぎになったんだ」
その村の巫女も巫女なのだが、巫女頭様もお口が滑ってしまったらしい。信者でないものに癒しを与えたりなどしたくない!だとか…
周りが『だから聖女に相応しくない』とか『星姫ならばそんなことは言わないだろう』とか煽ってしまったのも良くなかった。
「あ~なんか可哀想な人ね~」
「そう?あんたっていい方に物を考えるわよねホント」
「そこがコズエのいい所だろう?キャズ」
「ですよね!だからコズエさんらしいっていうか!
・・・だから、お話したかったんです。ちょっとだけ不安だったので。上手く出来なかったらどうしようかって、昨日から考えちゃって。こんなことじゃだめなんですけど!」
アリシアさんは自分で自分の頬を両手でパチン!と叩いて気合を入れていた。そしてちょっぴり赤くなった頬に、しっかりした瞳を私に向けてニコッと笑う。
「よし!気合入れました!頑張ります!」
「この流れでどう気合が入ったのアリシアさん!」
「この子もわからないわ、私」
「無理をしていないか?アリシアさん」
「ふふ、レオノーラさんのこと、私も苦手意識があったんです。だからついつい気後れして。でもそんな事してちゃいけないですよね。レオノーラさんもレオノーラさんらしく頑張っているんですよね」
すると、扉が開き、騎士さんが入ってきた。
ペコリとお辞儀をして『お時間です、星姫様』と告げてまた部屋を出る。どうやら、時間切れのようだ。
アリシアさんは立ち上がり、私達も続く。
振り返って私の手をぎゅっと握って、笑顔を見せた。
「私、しっかり『星姫』のお勤めしてきますね!コズエさんは私の頑張りを見ていってください!」
「うん、頑張ってねアリシアさん。気にすることなんてないわ、思いっきり祝福をしてあげて。だって皆その為に来ているんだから」
「はい、そうですよね!」
行ってきます!と元気に返事をして、アリシアさんは護衛の騎士さんに連れられて講堂へと向かった。
私達も部屋を出ると、そこには先程案内をしてくれたジェイクさん。あれ、行かなくていいのかな。
「では、お嬢さん方は観覧席へどうぞ。星姫アリシア様よりご案内する様言付かっております」
「ありがとうございます。あの、ジェイクさんはアリシアさんと行かなくていいのですか?」
ジェイクさんの先導で、私達は講堂へ。関係者席のような特別席があるからそちらへ、と案内される。
その道すがら、私はジェイクさんに聞いてみた。
「ええ、大丈夫です。お嬢さん達をご案内した後は私も星姫達の警護に加わります。会場の警備は王国騎士団がしておりますから」
「そうなんですか。ディーナは知ってた?」
私は後ろを歩くディーナに聞く。ディーナは勿論だ、と言葉少なに返事をする。ん?もしかしてジェイクさんに気がある?ディーナの目は前を歩くジェイクさんに注がれている。
廊下を抜けると、すぐに講堂へ出た。
ボックス席…とでも言うのか?2階から見下ろす場所。
「こちらを用意しました。星姫の祝福も、主役の夫婦達も見やすいでしょう」
「いいんですか?ここって、特別な所では」
「いえ、いつもは使われない席ですね。ここから他の巫女達が見学したりしますが、今回こちらは使われないそうなので、私がお借りしました。姫の護衛の方にも話は通していますのでご心配なく。
向かいの場所には・・・見えますか?あれらが神殿の巫女達です」
警備面でも、こちらは守りやすいとの事。
どうやら影でセバスと話したようで、こちらに案内したようだ。
セバスがわかっているのなら、問題ない。安全は確保されたようなものだ。
向かいには、数名の巫女達がいる。確かに未来の『星姫』を目指す彼女達にとって、この本番を見るのは勉強になる。
それではごゆっくり、と出ていくジェイクさんがディーナを手招きする。ディーナはこくりと頷き部屋を一旦出ていった。
「何かな」
「・・・あんた、多分考えてる事違うわよ」
「えっ!?何かな!?」
「また『ロマンス?』とか思ってるんでしょ?違うから、絶対」
「え、なんで?だってディーナかなりジェイクさんの事見てたし!素敵!って思ってたんじゃないの?」
「あー・・・それはまた、ね・・・。
そういえばディーナ、言ってなかったのね?ケリー、覚えてる?今、ディーナと付き合ってんのよあいつ」
「えええええ!?」
「ケリーね、ディーナと同じく王国騎士団にいるのよ。で、意気投合したんじゃない?半年くらい前からかしら。付き合ってるって話だけど」
そ、そ、それは初耳ー!いやでもディーナも理知的美人だし!キリッとしたところがなんとも…!ケリーが見逃すわけないもんね!
これは戻ってきたら色々と聞かないと!
アリシアさんがどんな祝福をするか気にもなるけど、ディーナの恋バナも気になるー!ワクワクしながら待つ私でした。
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