異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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留学帰国後 〜王宮編〜

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「コ、コーネリアさぁ~ん!!!   キャッ」

「えっ、何これ、アリシアさんのおっぱい大きくなってない?これあり?」

「そうなんですの、急に成長したんですのよ、羨ましい」

「えっ、ちょ、ちょっと、お2人とも、いやぁんっ」

「これはけしからん話よ、エリー?」
「そうですわよね、まさかカーク様がお育てになったわけではないと思いますのよ」

「あっ、もうそのくらいにっ、ダメぇっ」

「あらやだ、ちょっと感度いいじゃない、これってまさか相手はエドじゃないわよね?」
「あらあらあら、でもあの方ならアリかもしれませんわよ?」

「いっ、いい加減にしてくださいよぉ、私のおっぱい揉んで何が楽しいんですかぁっ」



じたばた、と嫌がりながらも顔を赤くして潤ませるアリシアさん。
嫌ならもっと逃げればいいのでは…?と思いつつ後ろから襲う私とエリーなのでした。

ちょっと百合っぽいかしら?とはいえここに案内してきたオリアナは全く止める気もなく。(侍女としてどうなのか)



「いやー、いいもの堪能したわ」
「嫌がるアリシアさんも可愛かったですわよね」

「ふ、ふたりとも、意地悪です」

「でも大きくなったわよね?本当に相手はエドじゃないの?」
「まさか本当にカーク様ですの?それともドラン様ですの?」

「も、もう、その話題から離れてくださいよぉ!」



諦め悪く尋問した結果、どうやらただの成長のようでした。亡くなった母親もお胸の大きな方のようで…羨ましい限りです。



「も、もう!2人とも素敵な大きさしてるじゃないですか!」

「いや、私はアリシアさんほど成長しませんでした」
「私は母様が大きい方でしたから、まあ」

「エリーは元々いい大きさしてたからこうなってても不思議じゃないっていうか?アリシアさんは前はぺったんこだったじゃない?それがそこまで成長するっていうのはそれは男性の手によるものかなとか思うじゃない」

「な、何もありませんよぉ!」

「・・・(ヘタレカークめ)」
「・・・(まったくですわ)」



この間の夜会を見るに、カーク殿下はアリシアさんに惚れている。そしてアリシアさんもカーク殿下に想いを寄せている…はずだ。エリーからの話を聞いてもそうに違いない。

私が不在のこの1年余り、2人はかなり学園において急接近していたようだ。決め手はカーク殿下が自らの想いをきちんと自覚したことによるものらしい。
それを見届けたからこそ、エリーはシリス殿下の婚約者の話を受けたのだそうだ。



「で、本日私を呼んだのはカーク殿下とのラブラブいちゃいちゃ話を聞かせてもらえるとか」
「あら、それは是非お聞かせ願いたいですわ」

「らっ、ラブラブって、ありませんよそんなの!」

「ん?腹を括ったんじゃないの?アリシアさん」



じっと見つけると、アリシアさんはモジモジしながら小さな声で『・・・はい』と答えてくれた。

私もエリーもにんまり、と笑ってしまったのは仕方の無い事だと言えよう。



「んふふふ、良かったねアリシアさん」
「ええ、私からも、良かったですわ」

「2人とも、ありがとうございます。エリザベスさんには一体なんてお礼をしていいか、あの」

「必要ありませんわ。あのまま私がカーク殿下の婚約者となっていても、婚姻を結んでもそれ以上の想いは育めませんでしたでしょうから。
自覚してからのカーク殿下も変わりましたもの。素敵な男性になりましたわよね」

「そうね、まだ話をした訳じゃないけど、何か芯が通ったというか」

「カーク様は、かなり変わられましたよ。以前とは比べ物にならないくらい、その、素敵です」



嬉しそうに想い人の話をするアリシアさんはとても綺麗で、可愛くて、私も幸せな気分になる。
エリーもそれは同じようで、心からの祝福を送っているようだった。エリーの幸せは別のところにあるのだと思う。



「さて、アリシアさんをいじめるのはこの辺りにして。アリシアさん、相談したい事があるのよね?」

「え、やっぱりいじめてたんですね・・・と、そうなんです、私だけではちょっと対処しきれなくて。
エリザベスさんに相談をするのも気が引けたんですけど」

「私に言いづらい、という事は・・・神殿関係ですわね?」

「・・・はい」



********************



アリシアさんの話は、このようなものだった。

2回目の『星姫』の要請が神殿からあった。自分は名誉な事だと思い、もちろん承諾した。
当日の打ち合わせの為に、神殿へと出向いた時の事。
その年の『星姫』は自分ともう1人だった。

もう1人の名は、レオノーラといった。
神殿所属の巫女だという。アリシアさんは自分にも分かるくらい、聖属性の魔力を感じた。

神殿の方からも、巫女頭を務める有能な巫女なのだと説明を受けた。アリシアさんは素直に『凄い人なんだ!』と思ったらしい。
レオノーラさん本人からも丁寧な挨拶を受け、今年は2人だけど頑張ろうと決めたらしい。

しかし、異変はそれからだったのだという。



「顔を合わせる度に、なんだか冷たく当たられて・・・私も何か不愉快にさせることをしたのかと思い返したんですけど、特に接点がないのでなんとも言えなくて」

「ふんふん」
「まあ予想通りですわよね」

「巫女頭さんなので、神殿でのお役目もあるのだそうです。時折打ち合わせに間に合わない時もあって、その時は別の巫女さんが言付けをしにきてくださってたのですけど」

「何か言ってた?」

「・・・『穢れたものが聖女になれると思い上がるな』と」

「その穢れって何なのよ」
「俗世に塗れた、という意味でしょうね。神殿にいる巫女達は皆、幼少期から外界と隔絶されて神殿内で育ちますから。潔癖な巫女もいるそうですのよ」

「私も、その話は神官様から聞きました。そのような事を口走る未熟な巫女がいて申し訳ないと。
私は初めてそこで自分が『聖女』候補に上がっていると知らされたんです」

「アリシアさん、『聖女』って何か知ってたの」
「コーネリア、この国で知らない人はいませんわよ」



私はほとんど知らなかったが、『聖女』というのはかなり有名らしい。聖属性の魔力の高い巫女が『聖女』という称号を受けることがあると。それは『星姫』と同じように誉れとされるらしい。



「先代の『聖女』様はその時の国王陛下の側妃として迎えられたそうなんです」

「上級貴族でなければ王族に嫁ぐ事はありませんの。ですから世俗と縁を断っている巫女が目を掛けられるには『聖女』となる他ありませんわね。
巫女とはいえ、適齢期となれば貴族に見初められて妻、あるいは妾として神殿を出ていくことが許されるんですの。それがなければあの方達は一生巫女として過ごすのですわ。
または神官たちの慰めとして神の花嫁となりますの」

「えっ、それって『神の花嫁』って言うの?」

「巫女を娶れるのはそれなりの権力がないといけませんのよ?
貴族の妾となるのとどちらがいいのかはわかりませんけれど」

「その、レオノーラさんは『聖女』候補として神殿内では公然の方なんだそうです。ですけど、一部からは私がその、『聖女』に相応しいという方もいまして」

「えーと。アリシアさんはどうしたいの?」

「わっ、私は別に『聖女』とならなくてもいいんです!というか、私の目標は士官となって、国の役人となることなんですから!」

「そんなものにならなくても、もうカーク殿下がパクッとアリシアさんを頂いてしまえば済む話なのでは?」
「そうですわね、確かに」

「えっ・・・?パクッと・・・?」



確か『星姫』の選考基準に『清らかな身の上』ってなかった?
だからすなわち、カーク殿下と既成事実を作ってしまえば、いわゆる『乙女』でなくなるのだし。

でもってカーク殿下にはアリシアさんを捕まえる気はあるわけで。アリシアさんにもカーク殿下に捕まってもいいという気持ちはあるのだから。
これって一石二鳥ではない???



「さすがコーネリアですわ」
「えええええ!?そ、そんなのって、えっ!?」

「いやヤっちゃえとは言わないけど、いわゆる『既成事実』というか、周りに恋人同士と見せつければその『聖女』認定というやつは降りないのではと」



まあこれ本人同士の気持ちというか勢いというか、必要なのですぐにとはできないかもしれないけど。
カーク殿下にそれとなく、そろそろ捕まえないと他の誰かに攫われちゃうわよ、と発破をかけるのもいいかもしれない。

エリーがとてもいい顔で微笑んでいるので、その辺りは任せることにしようかな?と思う。



「まあ変な事になりそうだったら、私がタロットワークの権力使ってなんとか穏便にするから」

「えっ、いえ、そういう事をお願いするのは嫌です!」

「まあまあ、私が出るのもエリーが出るのも同じようなものだし」
「そうですわね、どっちにしろ使えるものは使わないとですわよ、アリシアさん」



まあその前に第2王子の権力振り翳してもらうけどね?
ここは友人よりも『王子様ナイト』の役目でしょうからね。


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