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留学帰国後 〜王宮編〜
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しおりを挟む「お帰りなさいまし、コズエ!」
「わぷ」
部屋に入るなりぱふん、といい匂いのする柔らかいものに飛びつかれました。
何この可愛い生き物…!
「エリザベス、コーネリア姫が困っているよ」
「飛びつくか、普通・・・」
「お2人共黙っていてくださいませ!」
私に抱きついていたエリー。
ゆっくりと離れ、私の顔を覗き込む。
嬉しそうに微笑み、完璧なる淑女の礼をして見せた。
「待ち遠しかったですわ、コーネリア様」
「ただいま、エリー」
********************
オリアナに案内され、入った部屋にはエリザベス、シリス殿下、カーク殿下の3人が待っていた。
入った瞬間、エリーが待ちきれない!とばかりに飛び付いてきた。可愛いから許します。
「本当によく戻ってきてくれました、コーネリア姫」
「お久しぶりです、シリス殿下。婚約おめでとうございます」
「貴方からそう言われると・・・ちょっと応えますね」
「何を言っているんですか兄上。エリザベスもいるのに」
「いいんですのよカーク様。私の1番はコーネリア様ですもの、シリス様も同じなんですのよ?」
「え?」
「は・・・?」
私とカーク殿下の声がハモる。
そりゃそうでしょ、この王太子カップル一体何言ってんの?
確かにエリーは友達だけども…いや私が1番ってなんやねん。
しかしシリス殿下もエリーも2人ともニコニコとしているだけ。
「そっ、それより」
「ええ、それよりも。お2人共、早く出ていってくださらない?
私とコーネリア様の女子会を邪魔するおつもりですの?」
「全くエリザベスは本当にコーネリア姫が好きだね」
「ええ、愛しておりますもの。シリス様は2番目でしてよ?」
「おや、妬けるね」
えーと…仲良いようで…?何よりです…?
シリス殿下は『また次の機会に』と私の手にキスしてから、カーク殿下を引きずって出ていった。
カーク殿下は何しに来たのだろうか?付き添い?
「さて、コーネリア?2人の時は敬称はいりませんわよね?」
「えっ?ああ、普段もいいんだけど」
「そういう訳には参りませんわよ?『タロットワーク』の名前を継いだのですから、お覚悟なさいましね?」
「こんなに大事だとは思わなかったのよ・・・」
「でも、私は嬉しいですわ」
ぎゅ、と私の両手を握りしめる。
潤んだピンクトルマリンの瞳が私を映す。
「いつ、いなくなるのだとしても。ここに今、こうして、肩の荷を降ろして語り合える友がいる。それだけで私は十二分に幸せなんですの」
「エリー・・・ありがとう」
「私こそ。私を『エリー』と呼んでくださる貴方が、大好きなんですのよ。ありがとうございます」
私はエリーにゆっくりと抱擁をした。
エリーも私に手を回して抱きつき返す。
私達は少しの間、そうして時間を過ごした。
「それよりも、ですわ!そのドレス!本当に素敵・・・
どなたから贈られましたの?もしかして高星皇子からですの!?」
「切り替え早くない・・・?」
メイドさんが入ってきてお茶の用意をしてくれたので、私達は揃ってテーブルにつきお茶会を始める。
さすがに王宮内で出るお茶。とっても香りのいい紅茶です。
ひと口飲んで、エリーが怒涛の質問攻め。
まずは着ていたドレスから。どうやら謁見の間から気になっていたのだとか。
「蓬琳皇妃様からだなんて。まあまあまあ。
でもやりますわね、高星皇子も。さすが私のコーネリアですわ」
「えっ何?」
「やっぱり気付いていませんでしたのね。その珠飾りですわ」
「これ?確かに高星皇子からだけど」
「それ、皇子の誕生石ですわよ?しかも付いている飾りも蓬琳皇国の皇族だけが使う意匠。見る人が見れば、コーネリアに求愛しているとしか思えませんわ」
「ブッ」
危うく紅茶を吹き出すところだった。
ま、まさか!?それで皇妃様と春妃様が意味ありげな目をしてたのか!
高星皇子も高星皇子よ!ちょっとグラッとしてしまいそうなくらいいい顔で『さよならは言わない』とか言ってんじゃないわよ!
アルコール入ってたら思わず押し倒してるとこだったわ!
よかった!あれ夜だったら(1晩くらいいいかな)とかうっかり思うところだったし!セーフ!!!
「と、ところで。王太子妃候補となったわけだけども」
「あら、私の事ですの?ま、いいですわ。この事は今度じっくり聞かせてもらいましてよ?
───ええ、お受けしましたわ。シリス殿下がコーネリアに恋している事も含めて、私しかいないと思いましたから」
にこり、と公爵令嬢としての微笑み。
けれど、すぐにその表情は剥がれ、頬杖をついて私を見上げた。
「だって、仕方ありませんでしょう?このままシリス殿下の婚約者の座を開けたままではいられませんでしたし。
他のどのご令嬢を選んだって、私がカーク殿下の婚約者である以上釣り合いが取れませんもの。今現在、コーネリアを除けば私以上の器量、身分のある令嬢はいませんのよ」
「他にいないわけね?」
「ローザリア公爵家と対等の公爵家というだけならありますの。けれど未婚の令嬢ともなると・・・ね。
リオネス公爵家、ファリエル公爵家と同格の家もありますけれど、ミランダ様もイリオラ様も婚約、嫁いでいらっしゃるの。
ここだけの話、イリオラ様に至っては婚約をないことにしてシリス様にアプローチしようと思っていたのですって」
イリオラ・ファリエル公爵令嬢。すでに国内の貴族と婚約中だったが、相手が侯爵家であったようで、婚約を白紙に戻してシリス殿下の婚約者候補として上がる用意があったらしい。
しかし、ファリエル公爵がそれを止めたという話だそうだ。
「イリオラ様、シリス様の事をお好きだったそうだから。
まあその頃はシリス様にもアレシエル王女殿下という婚約者がいらっしゃいましたしね」
「サルマールの王女様だったかしら?」
「ええ、アレシエル・フロウ・サルマール第1王女殿下。病弱だというお話ですけれど、なんでも王女付きの騎士と恋仲だそうですわよ?恐らく臣籍降下なさると思いますわ。
サルマールの王位は妹君のミラシエル・クラン・サルマール第2王女が王配を迎えて統治なさるのだとか」
「いつもながら詳しいわねエリー」
「王太子妃として当たり前の知識ですわ。近隣諸国の内情は知っておかなければなりませんものね。
いずれ国王となるシリス様を支えるのは王太子妃として、王妃として当たり前の事ですもの」
「・・・」
「どうかしまして?」
「ううん、凄いなと思って。やっぱりエリーしかいないわね」
「何を言っていますの?私よりもコーネリア、貴方の方が重要人物なんですわよ?王位継承権第4位、だなんて」
「それはもう聞かなかったことにしたい」
「あらあらまあまあ。私と一緒にシリス様の妻となれば楽になりますわよ?私、シリス様の寵愛をコーネリアと競う事はしませんから安心なさってね?」
「ちょ、あのね」
「わかっていますわ、国母としてきちんと子は産みますわ。2人くらいでよろしいかしら?きちんと男児が授かれば良いのですけれどね」
「おーい戻ってこーい」
「コーネリアは寵姫として愛される事は確実ですから、私は計画して子種を頂かなくてはなりませんから、難しいですわね。
コーネリアだけでなく、あと2人は側妃として上がってもらってシリス様の子を授からなくてはなりませんし、子を授かる順番も計画的にしなくては」
え?子供を授かる順番?
そこまで計算してるのかエリー…じゃなくて!私を込みで考えないで!
ていうか『後2人側妃に上がってもらって』?
エリーの今後の計画を聞くのがちょっと怖くなりました。
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