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留学帰国後 〜王宮編〜
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しおりを挟む皆様こんにちは!
コズエ・ヤマグチです!
あー…じゃなくて、改め、コーネリア・タロットワークでございます。
現在、私がどこにいるかと申しますと・・・
「まあ、そのドレス素敵ですわ」
「ありがとうございます、マーレイ様。マーレイ様のネックレスも素敵ですわね?エメラルドですの?」
「久しぶりじゃないか、ロドリー」
「たまにはお綺麗なご婦人方との付き合いもしなければな」
「ねえ、お聞きになりまして?あの噂・・・」
「まあまあまあ!知りませんでしたわ」
と、言ったように着飾ったお貴族様がお集まりになっている王城のパーティーなるものにいるのでございます。
あっちを向いてもドレス、こっちを向いてもドレス。
こんなに人がいたのかと思うほどの招待客なのです。
「ご覧なさいまし、ほら」
「本当に、絵になりますこと」
「ようやくお相手をお決めになった、ということか」
「仕方がないでしょう、あのような事があったのですから。
しかし、その甲斐もあったのでは?お幸せそうだ」
「悔しいですけれど、・・・ねぇ」
「あの隣に並ぶだなんて、ねぇ」
フロアに集まる人達の目を惹き付けてやまない、1組の男女。
大広間の中央、ゆったりと流れる曲に合わせてダンスをする2人に、会場の視線は釘付けだ。
それはそうだろう、このエル・エレミア王国第1王子、王太子たるシリス・ワン・アルゼイドが可憐な乙女を連れてダンスの真っ最中だ。
かの王子は数年前、婚約者の姫君と破局。
適齢期でありながら、浮いた噂の1つもなく、数あるパーティーでも決まった女性を連れることはなかった。
それが今、かくも麗しい乙女と見惚れる程の笑顔を浮かべてダンスの真っ最中だ。
目を惹くなというのが無理な話。
数多くの令嬢が、王太子にアタックしたことだろう。なにせ、王太子とつり合う年齢の姫君達は既に婚約者のある身の上が多かった。
故に、それよりも数年離れた令嬢達にも王妃の座という素晴らしい椅子がどーんと用意されたのだ。張り切らない令嬢などいるはずがない。
「あ、ねえ?こっちも手伝ってー」
「はーい、ただいまー」
脛の中ほどまでのロングスカートを翻し、私は呼ばれた方にパタパタと駆け寄る。
え?私?何してるのかって?
ただいま、王城のパーティーにてメイド姿でアルバイト中です☆
********************
蓬璘皇国より帰国すること、早2ヵ月。
私は自分の持ち帰った知識やお土産なんかを片付けたり、考えをまとめたりとそこそこ忙しかった。
学園に復学することもできたのだけど、何せこっそり出国、入国してますのでね。
もちろん帰国した事は国王陛下、王妃陛下には知らせは行っている。
ゼクスさんが色々と手を回してくれたのだ。
本来ならばお会いして報告などもしないと行けないのだろうけれど、今の私は『タロットワークのお姫様』だ。
これまでのようにおいそれと(いやこれまでもホイホイ行っていた訳ではないけれど)国王陛下夫妻に会うこともできない。
…いや、やればできると思うけど。
私は1年の間、エル・エレミア王国を離れ蓬璘皇国に行っていた間、どこから噂が広まったのやら、『タロットワークに年頃の姫君がいる』とそれなりに噂されていたらしい。
王太子となったシリス王子、そこに婚約者候補の話が広まり、またそれが第2王子の婚約者であったエリザベス・ローザリア公爵令嬢が筆頭に上がっていること。
そして第2王子と『星姫』とのロマンス。
年頃の子息、子女を子に持つ貴族の人達はもうお忙しくしていたらしい。
私という人間を知らないのに何故かタロットワーク本邸には幾つも婚約の申込が届いたそうな。セバスさんが片っ端から回収
していたそうなのだが…
「やはり、シリス殿下の婚約者はローザリア公爵令嬢で決まりかしらねえ」
「それはそうでしょう?あの方以外に隣に立てるようなお嬢様はいらっしゃらないのではない?」
「側妃候補として何人かお名前が上がっているご令嬢もいらっしゃるそうよ?私も少し若ければねぇ」
テーブルに置かれたお料理を『食べたいなあ』と思いつつ、周りを整えながらもご婦人方のお話を聞き耳。
やっぱりさすがだわエリー。元・第2王子の婚約者でありながらも今は王太子の婚約者候補としてしっかりと周りに認められるってなかなかの事じゃない?
普通なら弟の婚約者を兄が貰い受ける、なーんてこと許される事じゃなくない?でもすんなり…まあすんなり?受け止められているというかなんというか。
だってフロアで踊る2人のベストマッチといったらもう…!
金髪碧眼のシリス王子に、ストロベリーブロンドをきちんと結い上げ、ふんわりとしたラベンダー色のドレスに身を包んだエリー。
もうこれお似合いといわずになんと言うんですか?周りのご令嬢達だってほう…っとため息ついて見てるのよ?
これは外堀からガッツリ埋めて婚約者の座を確実にゲットでしょ。カーク王子?ナニソレオイシイノ?
そーいや、カーク王子見ないなあ。いてもおかしくないんですけど?
ウェイターの使用人が回収してきたワイングラスをまとめて他の人に渡しつつ、私はフロアを確認。
すると、ドランと談笑しているカーク王子を発見した。その隣には相変わらずエロさ全開のエドワード。そして…
「・・・おや、今宵は星姫殿もおいでか」
「ローザリア公爵令嬢と婚約破棄してからどうなるかと思ったが、カーク王子殿下もしっかりと王国の為に素晴らしい伴侶候補を見つけておいでのようだな」
「シリス王子殿下をお支えするのに、伴侶として星姫殿がいればこれ以上相応しい方もいるまいな」
「しかし、神殿には…」
1年経つと、カーク王子も男前に育ったもんだ。あの頃はまだ少年然とした雰囲気が抜けなかったけれど、今遠くに見えるカーク王子はもう青年へと成長する段階の男性にも見える。
不思議なもんよねえ、日本人なら17歳くらいってまだ子供に見える子も大勢いるってのに、どうして欧米人顔ってあんなに大人っぽく見えるのかしら?
ドランは前から見た目青年に近い顔立ちだったけどね。エドワードはもうあれ犯罪じゃない?近くにいるお嬢さん、顔が桃色ですよ?ダメよ側にいたら妊娠しちゃう!
横顔しか見えないけれど、アリシアさんもまあ大人っぽく綺麗になったこと。それはエリーも同じだけれど、エリーはもう初めっから美人一直線だったから磨きがかかったって感じだけど。
アリシアさんに至っては、気品が出てきたというかなんというか…前は元気いっぱい少女!って感じだけどこうして見ると他の貴族の令嬢にも引けを取らないのでは?エリーの教育の賜物なのかしら?
「…コーネリア様、手元が疎かですわよ」
「うわっ、びっくりした。脅かさないでターニャ。それに今はコーネリアじゃなくてコーニーって呼んでといったでしょ」
「これは失礼しましたわ、コーニー?
でも見すぎではありませんか?気づかれちゃいますよ?」
「ターニャ、あなたこの完璧すぎる変装がいったい誰に気付かれると思うわけ?」
「・・・無理ですね、私達以外には」
「怖い、その私達っていうのが誰を指すのかなんとなく察してしまうだけに怖い」
ターニャも私と同じくメイド姿。っていうかいつもメイド姿だけど。
私が潜入しているのをサポートすべく、本日はターニャもライラもパーティー会場にいる。しかしこの2人は割とゼクスさんに着いてきてたりするので違和感はないだろう。
…というか王城の使用人達はタロットワークの教育が済んでいる方が多いので、味方と言えば味方なのだが。
ターニャの言う私達がその使用人達を指すのか、それともターニャ達のようにいわゆる特殊な教育をされた人達なのかが微妙。私は後者だと思っているけども。
ちなみに今回の変装は、セバスさん監修の元に行われたものだという事をお伝えしておこうと思う…。
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