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第二章 <断罪阻止>
閑話 <クッキーとアシュガ……と、リコラス。>
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「なぁ、リコラス。」
「なんだ」
アシュガは、不意に読んでいる本から顔をあげた。
今日の我が主、アシュガはなんだか思い悩んでいる気がする。読む本もいつもに比べ全く進んでいない。
何かあったのだろうか?
まさか、今日の試験で何かあったとか?……いや、アシュガに限ってそんなことは……
「……ローズに、何かをプレゼントしたい。」
「いやそんなことかよ!?」
しまった、思わず本音が漏れてしまった。
ちょっとでも心配した自分がバカバカしい。ただの惚気じゃねえかぁぁぁ!!!
「そんなこととはなんだ。大事なことだ」
アメシストの目が据わっている。
「あー……わかったわかった。つか、なんでもいいんじゃねぇのか? 今までだって色々あげてきたんだろ?」
「それはそうだが、なんというか……もっと、こう、心のこもった……」
彼女の姿でも思い浮かべているのだろう。
ふにゃりと腑抜けた顔をしている。
はぁ……全く、この幸せオーラをなんとかできないものか。
腹立つやつめ……。
「おい、主に向かって何を言うんだ」
「はっ、声に出てたか」
「思いっきりな」
アシュガは、愛しの婚約者を溺愛している。
それはもう、溺愛している……。
そして幸せオーラを撒き散らして俺に被害が来るのだ!!
「はぁ……ローズ嬢の好きなもんあげればいいんじゃねえのか?」
と、適当に言っておく。
勝手に幸せにでもなんでもなっておけ、俺に被害が来ない程度にな!
……おおよそ、主であり自国の王太子に向かって思うようなことではない。
「ローズの好きなもの……。そうか、ありがとうリコラス。今すぐ小麦粉とチーズ、それに……バターと砂糖を。あと、ローズに手紙を出してこい。明日出掛けると。」
「は、え、ちょっと待て」
「それと、明日は海に行く。頼んだぞ」
何故この横暴な王太子に従者が一人しかついていないのか、誰か教えてくれ!!
そう心の中で叫びつつも、リコラスは全てを完璧にこなすのだった。
……ただし、かなり夜遅くまで奔走する羽目になった。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
リコラスは、毎朝アシュガの予定を確認……または、起きていなかった時に起こすために、アシュガの寝室へ足を運ぶ。
「アシュガ、入るぞー」
ドア越しに声を掛けるも、既に起きているはずのアシュガから返事は来ない。
「おい、まだ寝てるのか?」
珍しいこともあるものだ。
カチャリ、とドアを開けて中を見たが、そこはもぬけの殻だった。
「……ん?」
ベッドの上に視線を向けると、そこには一枚の紙が。
『学園の厨房に行ってくる』
…………。
「そういうのは従者を起こして言えよ!!!」
妙なところで優しさを発揮するなと、声を大にして言ってやりたい。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
厨房。ということは食堂だ。恐らく、毎日行っている食堂……いや、まて。昨日俺が用意した材料は、クッキーの材料に違いない。ということは……
「はぁ……お前な!」
「おはよう、リコラス。ちょっと待ってくれ今焼いてるんだ」
「……あ、はい。」
朝っぱらから、オーブンを凝視する我が国の王太子を見てしまった。
……クッキー、自分で作ってんだな!!
予想した通り、ローズ嬢がよく行くカフェの厨房だった。
まだ朝早いのだが、カフェの従業員達の何人かは何かしら作業している。
「もういいかな?」
「うん、アシュガ君!もうできてるよ!ほらほら早く出して~」
「あぁ。よし、これでローズに喜んでもらえる……ふふふ……」
緩みきった頬。いや、誰だよあいつ。あれが王太子とか信じたくねぇ。
「はい、アシュガ君。彼女とのデート楽しんでね!」
クッキー作りを教えていたであろうパティシエの女性が、アシュガに四角い籠を持たせてニヤニヤしている。
「世話になった。ありがとう」
王子スマイルを作ってから、アシュガは俺に言った。
「……っと、リコラス、今日はこれからローズと二人でデートを楽しむんだ。お前は来なくていいぞ」
「はぁ!? お前護衛を連れずに行く気か!?」
とうとうご乱心かぁぁ!!
「バカか。俺がローズに危険が及ぶような真似をすると思うのか? 別の護衛を連れていくから、お前は休んでいろ。……そうそう、ローズの侍女のリリーだが、今日はローズが突然休みを与えたせいで暇してるだろうなー」
「お前最後棒読みだからな!?」
「じゃあ、俺は楽しんでくる」
……ったく。
心の中で主に文句を言い続けながらも、リコラスはリリーのもとへ向かうのだった。
「なんだ」
アシュガは、不意に読んでいる本から顔をあげた。
今日の我が主、アシュガはなんだか思い悩んでいる気がする。読む本もいつもに比べ全く進んでいない。
何かあったのだろうか?
まさか、今日の試験で何かあったとか?……いや、アシュガに限ってそんなことは……
「……ローズに、何かをプレゼントしたい。」
「いやそんなことかよ!?」
しまった、思わず本音が漏れてしまった。
ちょっとでも心配した自分がバカバカしい。ただの惚気じゃねえかぁぁぁ!!!
「そんなこととはなんだ。大事なことだ」
アメシストの目が据わっている。
「あー……わかったわかった。つか、なんでもいいんじゃねぇのか? 今までだって色々あげてきたんだろ?」
「それはそうだが、なんというか……もっと、こう、心のこもった……」
彼女の姿でも思い浮かべているのだろう。
ふにゃりと腑抜けた顔をしている。
はぁ……全く、この幸せオーラをなんとかできないものか。
腹立つやつめ……。
「おい、主に向かって何を言うんだ」
「はっ、声に出てたか」
「思いっきりな」
アシュガは、愛しの婚約者を溺愛している。
それはもう、溺愛している……。
そして幸せオーラを撒き散らして俺に被害が来るのだ!!
「はぁ……ローズ嬢の好きなもんあげればいいんじゃねえのか?」
と、適当に言っておく。
勝手に幸せにでもなんでもなっておけ、俺に被害が来ない程度にな!
……おおよそ、主であり自国の王太子に向かって思うようなことではない。
「ローズの好きなもの……。そうか、ありがとうリコラス。今すぐ小麦粉とチーズ、それに……バターと砂糖を。あと、ローズに手紙を出してこい。明日出掛けると。」
「は、え、ちょっと待て」
「それと、明日は海に行く。頼んだぞ」
何故この横暴な王太子に従者が一人しかついていないのか、誰か教えてくれ!!
そう心の中で叫びつつも、リコラスは全てを完璧にこなすのだった。
……ただし、かなり夜遅くまで奔走する羽目になった。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
リコラスは、毎朝アシュガの予定を確認……または、起きていなかった時に起こすために、アシュガの寝室へ足を運ぶ。
「アシュガ、入るぞー」
ドア越しに声を掛けるも、既に起きているはずのアシュガから返事は来ない。
「おい、まだ寝てるのか?」
珍しいこともあるものだ。
カチャリ、とドアを開けて中を見たが、そこはもぬけの殻だった。
「……ん?」
ベッドの上に視線を向けると、そこには一枚の紙が。
『学園の厨房に行ってくる』
…………。
「そういうのは従者を起こして言えよ!!!」
妙なところで優しさを発揮するなと、声を大にして言ってやりたい。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
厨房。ということは食堂だ。恐らく、毎日行っている食堂……いや、まて。昨日俺が用意した材料は、クッキーの材料に違いない。ということは……
「はぁ……お前な!」
「おはよう、リコラス。ちょっと待ってくれ今焼いてるんだ」
「……あ、はい。」
朝っぱらから、オーブンを凝視する我が国の王太子を見てしまった。
……クッキー、自分で作ってんだな!!
予想した通り、ローズ嬢がよく行くカフェの厨房だった。
まだ朝早いのだが、カフェの従業員達の何人かは何かしら作業している。
「もういいかな?」
「うん、アシュガ君!もうできてるよ!ほらほら早く出して~」
「あぁ。よし、これでローズに喜んでもらえる……ふふふ……」
緩みきった頬。いや、誰だよあいつ。あれが王太子とか信じたくねぇ。
「はい、アシュガ君。彼女とのデート楽しんでね!」
クッキー作りを教えていたであろうパティシエの女性が、アシュガに四角い籠を持たせてニヤニヤしている。
「世話になった。ありがとう」
王子スマイルを作ってから、アシュガは俺に言った。
「……っと、リコラス、今日はこれからローズと二人でデートを楽しむんだ。お前は来なくていいぞ」
「はぁ!? お前護衛を連れずに行く気か!?」
とうとうご乱心かぁぁ!!
「バカか。俺がローズに危険が及ぶような真似をすると思うのか? 別の護衛を連れていくから、お前は休んでいろ。……そうそう、ローズの侍女のリリーだが、今日はローズが突然休みを与えたせいで暇してるだろうなー」
「お前最後棒読みだからな!?」
「じゃあ、俺は楽しんでくる」
……ったく。
心の中で主に文句を言い続けながらも、リコラスはリリーのもとへ向かうのだった。
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