悪役令嬢になりたくないので婚約を阻止しようとしましたが、いつのまにか王子様に溺愛されています。

えるる

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第二章 <断罪阻止>

第18話 <海デートⅡ>

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 砂浜は少々歩きにくいが、踵の低い靴と身軽なワンピースであれば困ることはない。
 それよりも、目の間の美しい海……ではなく、このシチュエーションで頭の中は一杯だ。

 ――だって、海デートだよ!!

 頭の中で『海デート』という言葉が響く度、ドキドキが増していく。

 シチュエーションというのはこんなにも大事なものなのか。久しぶりとはいえ、二人で出掛けるなんて初めてではない。それなのに、その前に『海』という言葉が付くだけで……なんて差だ……!

 海デートと言えば、キャッキャウフフと海の水を掛け合ったり――

「? ローズ、どうかしたの?」
「ひぁっ!?」

 ――だめだ。

 変な妄想、ダメ、絶対。

「そんなに可愛い声を出して……食べてしまいたくなるね」

 耳元で囁かれ、ドキドキとやたら速い鼓動を刻んでいた胸は更にスピードを上げている。

「ぁ……アシュガ様、その、離れて……」

 ドキドキが致死量に達する前に離れてもらわなければならない。

 それなのに、アシュガ様は余計近づいてきて、

「どうして? 私の可愛い婚約者から離れなければならないの?」

 と、その整った顔に意地の悪い笑みを浮かべて、至近距離で問いかける。
 そんな表情すらも見惚れるほどに美しいのだから、一周回って腹立たしい!

「だっ……んぅ!?」

 柔らかいもので塞がれた唇。
 それが何かは考えるまでもない。

 体がカチンと固まって、漸く動けるようになった時にはアシュガ様はにっこりと先ほどと同じ笑みを浮かべていた。

「あ、あ、あしゅ……」
「ふふ、やっぱり私のローズは可愛いし……美味しいね」

 可愛いし美味しいってなに……!?

「わ……私は、食べ物じゃありませんっ」
「そうかな? 私にとってローズは甘いお菓子のようなものだよ」

 甘く蕩ける声で囁かれる。
 どっちかというと、アシュガ様のほうが甘いんじゃないだろうか。

 というか、下手すると海辺でキャッキャウフフな妄想よりも甘いんじゃないだろうか……!?

「……そ、それよりアシュガ様。折角海まで来たのですから、その……」
「うん、潮風に揺れるその髪も、海を見てキラキラさせるその目も、とっても可愛いよ。」

 そういう事じゃない!!

「そうじゃなくてですね!」
「あぁ、触ってみたい?」

 ちらりと海に視線を向けて言うアシュガ様。
 別に海の感触なら知っているが……

「は、はい!」

 とにかくこの激甘の空間から逃げ出したい。
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