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第一章 <婚約阻止>

閑話 <攻略本制作と手紙>

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 避暑に来て早1週間。
 避暑中はイベントは起こらないはずだから、暫くは平和である。残る学園前のイベントは……デビュタント?
 男爵令嬢になって初めての夜会だけか。
 そもそも、この出会いイベントとデビュタントというのも、回想として流れるものだ。
 ゲーム自体は学園入学時に始まる。

 避暑地ではゆっくりできるから、ゲーム知識を纏めた攻略本でも作ろうか。
 そうと決まれば、リリーに紙の束でも持ってきてもらおう。

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

 まずは、表紙。
 他の人に見られたら困るから……

<小説 フラワー・キスのアイデア>

 よし、これで見られても大丈夫。
 ……いや、私の心は羞恥で死んでしまうかもしれない。
 何があっても見られないように隠しておこう……。

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

 ★基本設定★

 舞台はヘルビアナ王国にあるブロッサム学園。

*アシュガ・シラー・ヘルビアナ(王太子)
 ヤンデレで腹黒い溺愛キャラ。要素多すぎでしょう。でもかっこよすぎる。

*リーゴ(騎士)
 ツンデレオレ様系の騎士。

*フォル・ユーヴィア・フルレンス(侯爵家長男)
 いけ好かないナルシスト。

*レンデュラ・ラスカ・シユリ(公爵家次男)
 ほんわかした優しいキャラ。大好き。

✳???←隠しキャラ。私もよく知らない。

 ↑攻略対象

 を攻略し、恋愛するゲーム。
 その中で悪役令嬢にいじめられ、卒業パーティーで断罪する。

 ヒロインは、デフォルトの名前はアナベル・イージュ。
 一応自分で付けることもできるからわからない。
 元平民で、オパール・アイという特別な瞳も持ったことでイージュ男爵家の養子になる。

(出会いイベントの時は平民だったはず……って、イージュ男爵に拾われるのは出会いイベントのすぐ後だ……!!
 ……まぁ、今更思い出しても仕方ない。
 それに、思い出していたとしてもどうにもできないだろうし。)

 好感度80以上が3人以上いないと断罪イベントは開始せず、恋人との結婚もできず、ノーマルエンドになる。

(ヒロインさん、できればこのルートでお願いします……。多分ベストエンド狙いだろうけど。)

 好感度150以上が二人以上いると断罪イベント終了後に刺されてバットエンド。
 好感度150以上が一人だとハッピーエンド、それがアシュガ様の場合はベストエンド。

 この世界では、魔力を持つ者は、瞳の色でどの魔法の適性が一番あるかがわかる。
 緑なら風、赤なら火といったように。
 オパール・アイは、全ての適性が全く同じだけある人であり、とても珍しい。
 また、紫は水と火の適性が全く同じといったように、混ぜた色の場合は、その二つが一番適性があるということである。

(基本設定はこんな感じかな……)

 ★ルートについて★

アシュガ様ルート←今回のルート
エンド:ベストエンド
悪役令嬢:処刑

リーゴルート
エンド:ハッピーエンド
悪役令嬢:没落

フォルルート
エンド:ハッピーエンド
悪役令嬢:没落

レン様ルート
エンド:ハッピーエンド
悪役令嬢:国外追放


 ★イベント★

出会いイベント
デートイベント
告白イベント
断罪イベント
結婚式イベント

(この五つはメインイベントだ。……他の細々したイベントは思い出せない。)

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

「ふぅ、こんな感じかしら……。」

 朧気な記憶を拾って書き出す作業は、かなり大変である。
 イベントももっとたくさんあったし、隠し要素ももっともっとあったのに……。
 どうして、こう思い出せないのか。
 アシュガ様以外のルートなんて、ほとんど思い出せない。
 そのアシュガ様のルートでさえ、大筋以外思い出せないのだ。
 神様の悪趣味なイタズラとしか思えない……。

 その後、コンコンとノックが聞こえてきた。

「ローズ様、クッキーと紅茶をお持ちしました」
「ありがとう、入って」

 顔を見せたリリーはにやっと笑って、

「あと、アシュガ殿下からの手紙も」
「……あのお砂糖で書いてる手紙のことかしら……?」
「はやく読んで下さいよ。お返事は1時間後に受け取りにきますから」
「1時間で書けと言うの!?」
「では、失礼しました」

 バタン。と扉が閉まる。
 ぐぬぬ……。リリーめ……。ぜぇったい、アシュガ様と私との攻防を楽しんでる……!
 こっちは真剣なのに!

 まずボフるためのクッションを用意してから、クッキーと紅茶を口に入れつつ、アシュガ様からの手紙に目を通す。

『愛しいローズへ
 体調を崩したりしてはいない?今年はとても暑いから、気を付けてね。
 私はローズに会えなくてとても寂しい思いをしている。はやく夏が終わって、君に会うことができたらと何度考えたことか。
 避暑が終わったら、城で夜会があるのは知っているね?ローズのデビュタントの夜会だよ。エスコートは私なんだ。カトレアを飾った君の手をとって最初のダンスを、そして二回目のダンスも踊ってほしい。
 あぁ、ローズ、本当に君に会いたい。私の心が君を求めている――』

 こんな様子で、便箋に二枚分、ぎっしりと私に対する小っ恥ずかしい言葉で埋め尽くされている。

 読み終わる時には、ローズの精神は羞恥でズタズタになっていた。

「も……無理……。」

 予想通り使うことになってしまったクッションにボフっと顔を埋めると、書かれていることが頭に反芻する。
 裏で手を回したのか、デビュタントのエスコートはアシュガ様になっているし。本当に、アシュガ様は、ここまでしてなぜ私と婚約したいんだ……。
 少し考えて、思い当たる。
 ――ゲーム補正、か。
 何故か、胸がツキンと痛む。……なんだかこの感覚、前も感じた気がする。
 その痛みを無視して、私はペンとインクをとって、返事を書き始めた。

 デビュタントの夜会はヒロインも参加するんだっけ……。
 気を付けていかないと。ヒロインも転生者かもしれないし、出会いイベントでの行動を考えるとアシュガ様を狙いにきているようだ。
 そういえば、この世界のデビュタントは、カトレア……「優美な貴婦人」という花言葉を持つ花を、どこかに付けていかなければならない。
 アシュガ様の『カトレアを飾った君』とは、そういう意味だ。
 『二回目のダンスも踊ってほしい。』というのは……。婚約者とは二回目のダンスを踊って良いきまりになっている。
 婚約者以外とは、同じ日に二度踊ってはならない。
 また、夫婦になると三回以上踊ることができる。
 つまり、その夜会までに婚約しろという意味か。

「もう、諦めてくれたらいいのに……。」

 そう言って、ローズはため息をついた。
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