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第六章:病室で休む二人
68 僕は他の人もしているのかが気になってしまった
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その後も色々なことについての説明が続いたのだけど、まとめらしき文章が表示されて、壮大で感動的な音楽が鳴り響いた後に、動画は消えてしまった。
ライナートさんは板状の魔道具を少し触った後に、テーブルの端の方に移動させた。
「教材はこれでお終いです。セルテ様、何か疑問点などございましたら、遠慮なくお尋ねください」
そして彼は柔らかな笑顔で僕を見る。
「疑問点……」
教材はいたって真面目な雰囲気だったので、見ていて恥ずかしいとは全く思わなかった。
だけど面と向かって誰かと性的な話をするのは恥ずかしくて、抵抗感がある。
とはいえ、他に聞ける人がいないので、勇気を出して二人に聞いてみることにした。
「えっと、その、自慰行為……自分で扱くやつ、ですが……」
「はい」
「お、お二人も、しているのでしょうか? 毎日……」
自分で性器を扱くなんて、考えただけでも恥ずかしい。
遠慮なく聞いていいと言われたとはいえ、口にした瞬間に、自分は何てことを人に聞いているんだと、心の中で突っ込んでしまった。
でも、本当に皆がそんなことをしているのか、気になるし……
恐る恐るライナートさんとスタイズさんの顔を交互に見ると、スタイズさんが右手を軽く握ったものを下腹部のあたりで上下に動かしながら、力強い笑顔を見せてくれた。
「もちろん、私も男だからな。毎日出しているぞ!」
この手の動きは……自慰の真似事?
身体が大きいスタイズさんは、きっとアレも大きいのだろう……きっと男らしくて格好良いのだろうな。
うう、やばい。
想像すると顔が熱くなって、変な気分になってくる……
「セルテ様、私もですよ。若い男性なら皆していますので、ご安心ください」
ライナートさんの声が聞こえてきたので彼の方を向くと、彼は胸に手を当てて微笑んでいる。
……あれ?
しばらく彼の姿を見ているうちに、変な気分は落ち着いてしまった。
僕は視線を落として考える。
別にライナートさんの裸を見たいとは思わないし、スタイズさんと違ってドキドキはしない。
そういえば、教材の説明の中には、誰かを想ってドキドキしたり性的に興味が湧くのは「恋心」だ、というのがあった。
確かに僕はスタイズさんのことが凄く好きだし、性的な面でも興味はある。
つまりそれは、僕が彼を恋愛的な意味で好きだということなのだろうか?
……少しそうなのかなと思ったことはあるけれど。
でも恋愛って、普通は男女でするものじゃないのか?
男が男を好きって、おかしいのでは?
本当にこれは「恋心」なんだろうか?
もしも、このことがスタイズさんに知られてしまったら、彼はどんな反応をするんだろう?
彼は僕のことを気に入っていると言ってくれた。
けれど、彼は僕の親権者で、彼と僕は法的には親子の様な存在だ。
子供同然の存在、そして男の僕から恋愛的な目で見られていると知ったら、優しい彼も流石にドン引きするのではないだろうか?
でも彼は真面目だから、内心気持ち悪いと思いつつも表には出さずに、魔術士のパートナーとして仕方なく僕と一緒にいてくれるような気もする。
……駄目だ、こんなことは絶対に誰にも言えない。
考えているうちに胸が苦しくなってきて、僕は目を閉じた。
気持ちを落ち着かせるために、深呼吸を繰り返す。
そうだ、ドキドキするからといって、必ずしも恋心とは限らないだろう。
「好き」にも色んな形があって、こんな風になるのは今だけで、きっとそのうち収まっていくはずだ。
「セルテ君、大丈夫か?」
優しげな声が聞こえてきたので目を開けると、スタイズさんとライナートさんの二人が、心配そうな表情で僕のことを見ている。
「セルテ様にとって、とても恥ずかしいお話かもしれませんが、大切なお話ですので……」
「あ……」
こちらから恥ずかしい質問をしておいて、何も言わないのはあんまりじゃないか。
僕は慌てて頭を下げる。
「だ、大丈夫、です。お二人とも、教えて下さって、ありがとうございます。皆がしていると聞いて、安心しました」
そしてスタイズさんとライナートさんを見ると、二人とも笑顔で頷いてくれた。
そうして性教育は終わり、僕とスタイズさんは病室に戻った。
何だかとても疲れてしまった。
これ以上、性的なことは考えたくない。
僕はベッドで横になり、布団を頭まで被った。
ライナートさんは板状の魔道具を少し触った後に、テーブルの端の方に移動させた。
「教材はこれでお終いです。セルテ様、何か疑問点などございましたら、遠慮なくお尋ねください」
そして彼は柔らかな笑顔で僕を見る。
「疑問点……」
教材はいたって真面目な雰囲気だったので、見ていて恥ずかしいとは全く思わなかった。
だけど面と向かって誰かと性的な話をするのは恥ずかしくて、抵抗感がある。
とはいえ、他に聞ける人がいないので、勇気を出して二人に聞いてみることにした。
「えっと、その、自慰行為……自分で扱くやつ、ですが……」
「はい」
「お、お二人も、しているのでしょうか? 毎日……」
自分で性器を扱くなんて、考えただけでも恥ずかしい。
遠慮なく聞いていいと言われたとはいえ、口にした瞬間に、自分は何てことを人に聞いているんだと、心の中で突っ込んでしまった。
でも、本当に皆がそんなことをしているのか、気になるし……
恐る恐るライナートさんとスタイズさんの顔を交互に見ると、スタイズさんが右手を軽く握ったものを下腹部のあたりで上下に動かしながら、力強い笑顔を見せてくれた。
「もちろん、私も男だからな。毎日出しているぞ!」
この手の動きは……自慰の真似事?
身体が大きいスタイズさんは、きっとアレも大きいのだろう……きっと男らしくて格好良いのだろうな。
うう、やばい。
想像すると顔が熱くなって、変な気分になってくる……
「セルテ様、私もですよ。若い男性なら皆していますので、ご安心ください」
ライナートさんの声が聞こえてきたので彼の方を向くと、彼は胸に手を当てて微笑んでいる。
……あれ?
しばらく彼の姿を見ているうちに、変な気分は落ち着いてしまった。
僕は視線を落として考える。
別にライナートさんの裸を見たいとは思わないし、スタイズさんと違ってドキドキはしない。
そういえば、教材の説明の中には、誰かを想ってドキドキしたり性的に興味が湧くのは「恋心」だ、というのがあった。
確かに僕はスタイズさんのことが凄く好きだし、性的な面でも興味はある。
つまりそれは、僕が彼を恋愛的な意味で好きだということなのだろうか?
……少しそうなのかなと思ったことはあるけれど。
でも恋愛って、普通は男女でするものじゃないのか?
男が男を好きって、おかしいのでは?
本当にこれは「恋心」なんだろうか?
もしも、このことがスタイズさんに知られてしまったら、彼はどんな反応をするんだろう?
彼は僕のことを気に入っていると言ってくれた。
けれど、彼は僕の親権者で、彼と僕は法的には親子の様な存在だ。
子供同然の存在、そして男の僕から恋愛的な目で見られていると知ったら、優しい彼も流石にドン引きするのではないだろうか?
でも彼は真面目だから、内心気持ち悪いと思いつつも表には出さずに、魔術士のパートナーとして仕方なく僕と一緒にいてくれるような気もする。
……駄目だ、こんなことは絶対に誰にも言えない。
考えているうちに胸が苦しくなってきて、僕は目を閉じた。
気持ちを落ち着かせるために、深呼吸を繰り返す。
そうだ、ドキドキするからといって、必ずしも恋心とは限らないだろう。
「好き」にも色んな形があって、こんな風になるのは今だけで、きっとそのうち収まっていくはずだ。
「セルテ君、大丈夫か?」
優しげな声が聞こえてきたので目を開けると、スタイズさんとライナートさんの二人が、心配そうな表情で僕のことを見ている。
「セルテ様にとって、とても恥ずかしいお話かもしれませんが、大切なお話ですので……」
「あ……」
こちらから恥ずかしい質問をしておいて、何も言わないのはあんまりじゃないか。
僕は慌てて頭を下げる。
「だ、大丈夫、です。お二人とも、教えて下さって、ありがとうございます。皆がしていると聞いて、安心しました」
そしてスタイズさんとライナートさんを見ると、二人とも笑顔で頷いてくれた。
そうして性教育は終わり、僕とスタイズさんは病室に戻った。
何だかとても疲れてしまった。
これ以上、性的なことは考えたくない。
僕はベッドで横になり、布団を頭まで被った。
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