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第五章:初めての魔法の訓練
53 僕は少し安心した
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僕の身に起こったことを説明している間、スタイズさんは真剣な表情で何度も頷きながら黙って聞いてくれていた。
そして僕が話し終わると、彼は穏やかな笑顔を見せてくれたんだ。
「突然のことでビックリしたよな。おそらく夢精で精通したのだろう。大丈夫だ」
夢精? 精通?
初めて聞く言葉に反応できずにいると、スタイズさんがまた僕の頭を撫でてくれた。
「詳しいことは訓練の後に教えるが、簡単に言うと、君の身体が大人のものに変わり始めたということだ」
「僕が、大人に……」
「ああ。そのうち私のように声が低くなったり、髭……いや、ちょっと待てよ。魔術士の身体が、そうでない人のものと同じかどうかは分からないな……」
彼は目を閉じて眉を顰め、顎に手を当てて考え事をし始めたようだ。
こちらを見ていないことをいいことに、僕は彼の顔をじっと見てみる。
笑顔が素敵な人だけど、そうでない表情も格好いい。
よく見ると、うっすらと髭が伸びている……後で綺麗に剃るのだろうか?
そういえば、父さんが病気で起きることができなかった時は、僕が髭を剃ってあげたっけ。
……そんなことを考えていると、彼が目を開けて力強い笑顔で頷いたんだ。
「よし! 訓練が終わったら、一緒に医務室に行って看護士のライナートさんに聞いてみよう。彼は真面目な男だし、医学的に正しい知識を教えてもらえるだろう」
「は、はいっ」
他の人と下の話をするのは恥ずかしいけれど、男性のライナートさんならまだマシかな。
とりあえず異常ではないということが分かったので、僕はホッと胸を撫で下ろした。
朝食と身支度を済ませた僕とスタイズさんは家を出て、集合場所である第五転送機へと向かって歩き出した。
魔術研究所の敷地の中には「転送機」と呼ばれる、瞬間移動の魔法を組み込んだ大型の魔道具が複数ある。
それと移動用の魔道生物を使えば、広い敷地内の移動もそんなに大変ではないそうだ。
「セルテ君。実は今朝、早くに目が覚めたから近隣を走り回ったのだが、その時に第五転送機を見つけてね。ここから歩いて十分くらいだから、わざわざ移動用の魔道生物を呼ぶまでもないだろう」
「そうなんですか。朝から走るなんて、元気ですね」
「軍にいた頃は毎朝早くに起きて訓練をしていたからな。朝日を見ながら身体を動かすのは、清々しい気分になっていいぞ。確か君は身体を鍛えていると言っていたし、毎日とは言わないがたまには早起きして、私と一緒に朝練をするのはどうだろうか?」
「はい。僕、頑張って起きようと思います!」
今はスタイズさんの胸ぐらいの高さに僕の頭がある。
僕の身体が大人のものに変わりつつあるそうだし、鍛えることで彼のように大きくなれるといいな。
晴天の下、穏やかな風に吹かれながら僕たちは平原を歩く。
スタイズさんはチラチラと僕の方を見ながら、歩く速度を合わせてくれているようだ。
とはいえ足が長い彼をゆっくり歩かせるのは申し訳ないので、僕は少し早めに歩いている。
そうして色々と話しながら歩いているうちに、第五転送機の前に着いてしまった。
直径五メートルくらいの大きな金属製の円盤が地面に置かれていて、そのすぐ横には幅一メートル、高さ二メートルくらいの大きな金属製の板が垂直に立っている。
板を見ると、一から二十までの転送機の番号と、それぞれの最寄りの施設が表示されている。
どうやら板の文字に触れた後に円盤に乗ることで、希望する転送機のところに瞬間移動することができるようだ。
しばらくしてから鐘が九回鳴り、朝の九時であることが知らされた。
その瞬間目の前が真っ白になって、光が収まったと思ったら……
目の前に広がっていたのは、紫色の空、緑色の海、灰色の砂浜、険しい岩山……さっきまでとは全く違う場所にいることがわかったのだった。
そして僕が話し終わると、彼は穏やかな笑顔を見せてくれたんだ。
「突然のことでビックリしたよな。おそらく夢精で精通したのだろう。大丈夫だ」
夢精? 精通?
初めて聞く言葉に反応できずにいると、スタイズさんがまた僕の頭を撫でてくれた。
「詳しいことは訓練の後に教えるが、簡単に言うと、君の身体が大人のものに変わり始めたということだ」
「僕が、大人に……」
「ああ。そのうち私のように声が低くなったり、髭……いや、ちょっと待てよ。魔術士の身体が、そうでない人のものと同じかどうかは分からないな……」
彼は目を閉じて眉を顰め、顎に手を当てて考え事をし始めたようだ。
こちらを見ていないことをいいことに、僕は彼の顔をじっと見てみる。
笑顔が素敵な人だけど、そうでない表情も格好いい。
よく見ると、うっすらと髭が伸びている……後で綺麗に剃るのだろうか?
そういえば、父さんが病気で起きることができなかった時は、僕が髭を剃ってあげたっけ。
……そんなことを考えていると、彼が目を開けて力強い笑顔で頷いたんだ。
「よし! 訓練が終わったら、一緒に医務室に行って看護士のライナートさんに聞いてみよう。彼は真面目な男だし、医学的に正しい知識を教えてもらえるだろう」
「は、はいっ」
他の人と下の話をするのは恥ずかしいけれど、男性のライナートさんならまだマシかな。
とりあえず異常ではないということが分かったので、僕はホッと胸を撫で下ろした。
朝食と身支度を済ませた僕とスタイズさんは家を出て、集合場所である第五転送機へと向かって歩き出した。
魔術研究所の敷地の中には「転送機」と呼ばれる、瞬間移動の魔法を組み込んだ大型の魔道具が複数ある。
それと移動用の魔道生物を使えば、広い敷地内の移動もそんなに大変ではないそうだ。
「セルテ君。実は今朝、早くに目が覚めたから近隣を走り回ったのだが、その時に第五転送機を見つけてね。ここから歩いて十分くらいだから、わざわざ移動用の魔道生物を呼ぶまでもないだろう」
「そうなんですか。朝から走るなんて、元気ですね」
「軍にいた頃は毎朝早くに起きて訓練をしていたからな。朝日を見ながら身体を動かすのは、清々しい気分になっていいぞ。確か君は身体を鍛えていると言っていたし、毎日とは言わないがたまには早起きして、私と一緒に朝練をするのはどうだろうか?」
「はい。僕、頑張って起きようと思います!」
今はスタイズさんの胸ぐらいの高さに僕の頭がある。
僕の身体が大人のものに変わりつつあるそうだし、鍛えることで彼のように大きくなれるといいな。
晴天の下、穏やかな風に吹かれながら僕たちは平原を歩く。
スタイズさんはチラチラと僕の方を見ながら、歩く速度を合わせてくれているようだ。
とはいえ足が長い彼をゆっくり歩かせるのは申し訳ないので、僕は少し早めに歩いている。
そうして色々と話しながら歩いているうちに、第五転送機の前に着いてしまった。
直径五メートルくらいの大きな金属製の円盤が地面に置かれていて、そのすぐ横には幅一メートル、高さ二メートルくらいの大きな金属製の板が垂直に立っている。
板を見ると、一から二十までの転送機の番号と、それぞれの最寄りの施設が表示されている。
どうやら板の文字に触れた後に円盤に乗ることで、希望する転送機のところに瞬間移動することができるようだ。
しばらくしてから鐘が九回鳴り、朝の九時であることが知らされた。
その瞬間目の前が真っ白になって、光が収まったと思ったら……
目の前に広がっていたのは、紫色の空、緑色の海、灰色の砂浜、険しい岩山……さっきまでとは全く違う場所にいることがわかったのだった。
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