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第二章:アータイン魔術研究所

25 僕はまだ受け入れられないけれど

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 僕の元にやって来た看護士のライナートさんが少し屈んで、穏やかな表情で微笑みながら、ベッドに座っている僕に視線を合わせてくれた。

 「セルテ様。イズリーから、あなたが魔術士になった経緯を聞きました」

 イズリーさんって確か、金髪で青い瞳の看護士さん……叔母さんの話をしてくれた人だ。
  看護士の人は沢山いるから、なかなか覚えられないんだよな……。


 「魔術士が辿る運命を考えれば、本人の同意を得ずに魔術士にするなんてことは、あってはならないことです。医務室の職員全員がステラの行為に憤り、セルテ様の苦しみや悲しみに深く同情しています」


 僕が辿る運命? それがどういうものかは分からないけれど、そのうち教えて貰えるのだろうか?
 それにしても、僕を魔術士にすることを母さんに提案した叔母さんのことを酷いと思っていたけれど、同じように思ってくれる人がいるんだ……


 「医務室の職員は、セルテ様の魔術士を辞めたいとか町に戻りたいという希望を、叶えてあげることは出来ません。私たちに出来ることは、あなたが少しでも心穏やかに過ごせるよう、支援することだけです。色々と力不足なのは否めませんが……」


 看護士の皆は、何かと気を使って声をかけてくれる。
 魔道具で音楽を流してくれたり、一緒に体操をしてくれたり。

 本当は転生系小説だって、純粋に、他の魔術士と交流するきっかけにと用意してくれたものなんだろう。
 それなのに僕は、捻くれた受け取り方をしてしまった…… 

 「ごめんなさい。僕、皆さんが親切にしてくれているのに、失礼な態度を取ってしまって……」

 「気になさらないで下さい、セルテ様。魔術研究所にいる者は、覚悟の上で壁の外から来た者、または壁の中で生まれ育って『そういうものだ』と割り切れている人ばかりです。セルテ様が理不尽な状況の変化に戸惑い、怒り、悲しむのは当然だと思っていますので」


 正直いって、魔術士になったことは、まだ受け入れられない。
 だけどグズグズしていたら、またエイシア様が怒って、皆に迷惑がかかってしまうだろう。
 とりあえず服を着替えて、パートナー志望者との面談をすることにした。





 ライナートさんに手伝ってもらい、魔術士の制服に着替えた僕は、病室を出て医務室の隣にある面談室へと案内された。
 白い壁の部屋の真ん中に、低い長テーブルが一つ、それを挟むように三人掛けのソファーが二つあるだけの、小さな部屋だ。

 「セルテ様。これから五名の職員と面談してもらいますが、今回はあくまで第一弾ということで、すぐに決めてしまう必要はありません。パートナーは魔術士と共に歩む者ですので、よく考えて下さいね」

 「はい……」

 ライナートさんが部屋を出て行き、僕は奥側にあるソファ―に一人で座り、面談の相手を待つことになった。
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