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153話 『守護竜』
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あの時代の人々は魔法使いの力を恐れ、結果、魔女狩りという行為にはしった。そして人は同じ過ちを繰り返す――これは俺が前世でみてきた歴史であり、真実だ。
もしシャルとリリアの存在が大々的に知られれば……様々なことが浮かんでしまうが、とにかく今は目の前のことに集中しなければならない。
俺たちが降りた場所は別に視界が悪いわけじゃなかった。だからこそ謎が残る――先手を取ったドラゴンはいつでも俺たちを攻撃できたはずだ。
ましてやアビスに取り憑かれているのであれば、見境なく攻撃してきてもおかしくはなかった。
「私たちに気づいたのかな?」
「いや、気配ならとっくにわかってたと思う」
「あの攻撃は間違いなく僕らを殺そうとしてたからその線は薄いと思うよ」
となるとほかに考えられるのは、まだギリギリ意識が残っていた……というのは俺たちの願望が含まれ過ぎてるから却下だとして、何か理由があって近寄らせないようにしていたとか、そういう線を考えてみていいだろう。
「村に秘密があるのかもしれない」
「でも炎に囲まれてて入れないし……空からまた襲われたら危ないよ」
「いや、一つ試してみたいことがある」
≪スキル:ものまね(オアモール)≫
いくら炎がすごいといっても地面に接触して燃え上がってる状態だ。ならばもっと下から進んでいけば通れるはず。片手だが試しに土を掘ってみると豆腐のような感触で穴が開いた。
どちらかというと掘るというより手で掬ってるみたいだな……。
念のためリリアにクマを出してもらい、ドラゴン相手に通じるかわからないが認識阻害用の仮面とマントをつけておく。
「何か動きがあったらすぐに教えてくれ」
「わかった、気を付けてね」
「パパモグラみたーい!」
キャッキャするシャルに手を振ると地中をかき分けどんどん進んでいく。距離はなんとなく測っていたが念には念を入れ更に掘り進める。
騒ぎを起こさないようゆっくりと地上へ出ていくとちょうど見慣れた宿屋前へと出た。若干雰囲気は変わった気もするが懐かしい……。
『村の中にでたがそっちはどうだ?』
『こっちに異常はないよ』
『わかった、もう少し調べてみる』
周りに注意し歩いているとほとんどの家は残ったままだった。というより村の中は燃えてるように見えて、実際に燃えているのは外周沿いの家や小屋だけだ。
つまり、炎に囲まれてはいるが村自体の被害は限りなく少ない。これならば生存者も――希望を抱いた俺の耳に遠くから声が聞こえてくる。
「食料のほうはどうだ?」
「まだ数日分はありそうです」
「よし、子供たちを優先し大人は体力を考慮して分配しろ」
「はッ!!」
家の陰から覗くと数人の兵士たちが動いている。どうやら町の住人は中央の家へ避難しているみたいだ。両親の安否を確認したくなったが今は生存者がいるということだけでも十分、まずは状況を調べなければ……。
俺は一度リリアたちに報告し、再度聞き耳を立てた。
「隊長、助けは本当にくるのでしょうか……」
「それはわからない。だが、俺たちが村を見捨てたらどうなる?」
「しかし相手はあの守護竜、いつ牙を剥くかもわからない状態では……」
「お前は……竜の巫女の伝説を知っているか」
「えっ? えぇもちろん」
竜の巫女か、懐かしい、今は伝説になって伝えられているのか。ということはリリアのお母さんは伝説を作ったってことになるのか? ……いつか出会えたらサインでもお願いしよう。
「あれにはいくつか隠された真実があるんだが、特別に一つだけ、お前に教えてやる」
「そ、それはいったい……」
それはいったい!? 兵士と一緒に隊長の言葉に耳を傾けているとリリアから連絡が入る。どうやらアビスが複数出現したらしい。
大急ぎで戻るとそこでは獣の姿を模したアビスが迫っており、リリアたちが魔法で攻撃していた。
≪スキル:ものまね(英霊ヴァイス)≫
「あーパパおかえりー」
「シャル無事だったか! みんな、状況は?」
「今のところは大丈夫だけど少し変なの」
「なんかこいつら姿が変わっていってるし、こんなに魔法に対して強くなかったと思うんだけ……どッ!」
そう言いながらミントは魔法一発でどんどんアビスを倒していく。確かに、影に取り憑いていたアビスはもっと簡単に倒せていた。
今のミントは過剰なくらいの威力の魔法を放っている。リリアも複数攻撃を繰り返し倒しているみたいだし、やはり耐性が上がってるとみて間違いないだろう。
そしてさらには形状、無形のような存在だったはずのアビスが今、俺たちの目の前で形は崩れつつもはっきりと動物や人の姿を真似て襲ってきている。
アビスがどこから生まれてくるのかを見つけなくては――そう思った矢先、ルークが突如翼を動かし俺に緊急の合図を出した。
「何ッ!? みんな、今すぐルークに乗り込め!!」
すぐに飛び立つと空から無数の火球が降り注ぐ。最悪だ……まさかここであいつが戻ってくるとは。こうなったら俺もあいつの力を使うしかない。
「ね、ねぇドラゴンの様子が変だよ!」
リリアの声にスキルを使うのを止めよく見てみると、ドラゴンの視線は俺たちに向いていなかった。
もしシャルとリリアの存在が大々的に知られれば……様々なことが浮かんでしまうが、とにかく今は目の前のことに集中しなければならない。
俺たちが降りた場所は別に視界が悪いわけじゃなかった。だからこそ謎が残る――先手を取ったドラゴンはいつでも俺たちを攻撃できたはずだ。
ましてやアビスに取り憑かれているのであれば、見境なく攻撃してきてもおかしくはなかった。
「私たちに気づいたのかな?」
「いや、気配ならとっくにわかってたと思う」
「あの攻撃は間違いなく僕らを殺そうとしてたからその線は薄いと思うよ」
となるとほかに考えられるのは、まだギリギリ意識が残っていた……というのは俺たちの願望が含まれ過ぎてるから却下だとして、何か理由があって近寄らせないようにしていたとか、そういう線を考えてみていいだろう。
「村に秘密があるのかもしれない」
「でも炎に囲まれてて入れないし……空からまた襲われたら危ないよ」
「いや、一つ試してみたいことがある」
≪スキル:ものまね(オアモール)≫
いくら炎がすごいといっても地面に接触して燃え上がってる状態だ。ならばもっと下から進んでいけば通れるはず。片手だが試しに土を掘ってみると豆腐のような感触で穴が開いた。
どちらかというと掘るというより手で掬ってるみたいだな……。
念のためリリアにクマを出してもらい、ドラゴン相手に通じるかわからないが認識阻害用の仮面とマントをつけておく。
「何か動きがあったらすぐに教えてくれ」
「わかった、気を付けてね」
「パパモグラみたーい!」
キャッキャするシャルに手を振ると地中をかき分けどんどん進んでいく。距離はなんとなく測っていたが念には念を入れ更に掘り進める。
騒ぎを起こさないようゆっくりと地上へ出ていくとちょうど見慣れた宿屋前へと出た。若干雰囲気は変わった気もするが懐かしい……。
『村の中にでたがそっちはどうだ?』
『こっちに異常はないよ』
『わかった、もう少し調べてみる』
周りに注意し歩いているとほとんどの家は残ったままだった。というより村の中は燃えてるように見えて、実際に燃えているのは外周沿いの家や小屋だけだ。
つまり、炎に囲まれてはいるが村自体の被害は限りなく少ない。これならば生存者も――希望を抱いた俺の耳に遠くから声が聞こえてくる。
「食料のほうはどうだ?」
「まだ数日分はありそうです」
「よし、子供たちを優先し大人は体力を考慮して分配しろ」
「はッ!!」
家の陰から覗くと数人の兵士たちが動いている。どうやら町の住人は中央の家へ避難しているみたいだ。両親の安否を確認したくなったが今は生存者がいるということだけでも十分、まずは状況を調べなければ……。
俺は一度リリアたちに報告し、再度聞き耳を立てた。
「隊長、助けは本当にくるのでしょうか……」
「それはわからない。だが、俺たちが村を見捨てたらどうなる?」
「しかし相手はあの守護竜、いつ牙を剥くかもわからない状態では……」
「お前は……竜の巫女の伝説を知っているか」
「えっ? えぇもちろん」
竜の巫女か、懐かしい、今は伝説になって伝えられているのか。ということはリリアのお母さんは伝説を作ったってことになるのか? ……いつか出会えたらサインでもお願いしよう。
「あれにはいくつか隠された真実があるんだが、特別に一つだけ、お前に教えてやる」
「そ、それはいったい……」
それはいったい!? 兵士と一緒に隊長の言葉に耳を傾けているとリリアから連絡が入る。どうやらアビスが複数出現したらしい。
大急ぎで戻るとそこでは獣の姿を模したアビスが迫っており、リリアたちが魔法で攻撃していた。
≪スキル:ものまね(英霊ヴァイス)≫
「あーパパおかえりー」
「シャル無事だったか! みんな、状況は?」
「今のところは大丈夫だけど少し変なの」
「なんかこいつら姿が変わっていってるし、こんなに魔法に対して強くなかったと思うんだけ……どッ!」
そう言いながらミントは魔法一発でどんどんアビスを倒していく。確かに、影に取り憑いていたアビスはもっと簡単に倒せていた。
今のミントは過剰なくらいの威力の魔法を放っている。リリアも複数攻撃を繰り返し倒しているみたいだし、やはり耐性が上がってるとみて間違いないだろう。
そしてさらには形状、無形のような存在だったはずのアビスが今、俺たちの目の前で形は崩れつつもはっきりと動物や人の姿を真似て襲ってきている。
アビスがどこから生まれてくるのかを見つけなくては――そう思った矢先、ルークが突如翼を動かし俺に緊急の合図を出した。
「何ッ!? みんな、今すぐルークに乗り込め!!」
すぐに飛び立つと空から無数の火球が降り注ぐ。最悪だ……まさかここであいつが戻ってくるとは。こうなったら俺もあいつの力を使うしかない。
「ね、ねぇドラゴンの様子が変だよ!」
リリアの声にスキルを使うのを止めよく見てみると、ドラゴンの視線は俺たちに向いていなかった。
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