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121話 『終結』
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「リリアさん、今日の分のお食事置いておきますね」
「ありがとうアリス……いつもごめんね」
「いえ、私にできることはこれくらいなので……何かあればすぐに呼んでください」
あれから数日、魔界では死人が出るような大きな被害もなかったため、ただの喧嘩だったとすぐに収まりをみせた。エディとシェリーについてはスラム街での困窮を訴えるための行動だったとし、罪人とはなるもののリッドの下で監視、働くという名目で保護することになった。
まぁ……それもこれも王様やレイラさんたちが色々と三文芝居を打ち事実を捻じ曲げてくれた部分が多いのだが…………。
「もうしつこいなぁ、終わったことをいってる暇があるなら鍛錬の一つでもしてなよ!」
また言われてるのかな。本当にもう大丈夫だからって言ったのに……どうしたらいいんだろ。
「あーもう! 毎日毎日しつこいったらありゃしない!」
「ふふふ、もう気にしなくていいのにね」
事が収まり真実を聞かされたエディとシェリーは子供ながら必死に謝罪を続けていた。
スラム街では自分の起こした問題は自分で責任を取る――それがルール。しかしシェリーはまだしも、エディは自分の腕にヒラヒトツが使われ、死罪になるはずが私たちのお願いによりこれ以上ない酌量を与えてもらい助かった。そんなことをエディはすんなり聞き入れてはくれなかった。
それ以来、ことあるごとにミントや私たちに何かできることはないかと聞いてくる。果てには奴隷にしてくれと言ってくる始末だ。
「ったく、早くお前からも言ってやってくれよ……もううんざりだよ……」
ミントが語り掛けた視線の先、私の目の前にあるベッドでは彼が身動き一つせず眠っている。何度も私を助けてくれた身体は利き腕を失くし、呼吸はしているがとても弱々しく小さい。
本能が生きようとしているのか辛うじて何かを飲み込むことはできるようで、食事はすべて液状にし飲ませている。
もちろん、最初は回復薬から希少な薬まで色々飲ませてみたが、何も変化は見られなかったため今はごく普通の食事だけを与えることになっている。
きっとレニ君なら『遅かれ早かれ使うモノだった、それがお前だっただけだ、だから気にすんな』とか上手いこと言って説き伏せちゃうんだろうなぁ。
「みんな、そろそろご飯にしよっか」
「クゥー」
並べられた食器を取り机に持っていく――食事中会話を挟むが、どこかぽっかりと穴が開いたようにふと静まり返る。もう何度も繰り返し、そして慣れてしまった空気。
まだあれから何日かしか経っていないはずなのに……まるで数ヵ月が経ったような気分……。そんな中扉を叩く音が響く。
「失礼、食事中だったか」
「アインさん、何かありましたか?」
「大事な話があるんだが夜に時間はつくれそうかい」
今の私たちは基本的に何かがあるわけではない――強いて言えば彼に夕食を与え、たまに体を拭きミントの魔法で清潔を保ってあげる。あとはこの部屋を使わせてもらっている以上、レイラさんたちに何か仕事があれば私たちも協力させてもらうように伝えている……のだが、今のところミントが鍛錬の協力をしているくらいでほかには何も言われていない。
ほぼ間違いなく、気を遣ってのことだろう。このままという訳にもいかないのはわかっているのだが……。
「いってきなよ、あいつは僕とルークで見てるからさ」
「クゥクゥ」
「それに少しは外に出ないと、こいつみたいに太っちゃうぞー」
ミントがルークの身体を叩く。そうはいうが実際ルークは太ったりしていない。今となってはミントなりの気遣いというのがすぐにわかる。
「ふふふ、それもそうだね……それじゃあいってこようかな」
「すまないね、君たちも協力してくれてありがとう」
アインさんはそれだけいうと時間がきたら呼びにくると言い残しすぐに部屋を出ていった。大事な話ってなんだろう……もしかして、まだ予言の本はどこかに残っているとか……。
「そういえばあの子のほうはどうなんだい? いくら君の話は聞くといっても一筋縄じゃいかないんじゃないの」
「そうでもないよ。元々学ぶ機会がなかっただけでちゃんと説明すれば理解してくれるし、それに私以外にもレイラさんたちが助けてくれるから。たまにわがままなところはあるけど、子供ってそういうものでしょ」
そう、あの子というのはこの事件を起こしていた最大の元凶であり張本人のシャルのことだ。
シャルの想いによる力は絶大、両親もすでにこの世にはいないため、制御するという意味も含めて私が親代わりになった。
シャルは私と同じで過去にシトリーを召喚したことがある。そのときシャルに興味を持ったシトリーは、母という存在を利用し何度も自分を呼び出させていた。そしてシトリー曰く、今度は魔人と魔力が混ざった私を母親と勘違いしているという。
生きるうえで基本的なことから教えてはいるが……純粋がゆえの質問になかなか答えることができないときもある。この間は『なぜ好き勝手に魔法を使っていけないのか』ということに対し半日かかった。その前は『なぜ人の願いを聞いちゃいけないのか』、たくさんあったがどれも一概にダメとはいえない質問だ。
とりあえず気になったことはレイラさんや私たちに聞くようにしてはいるが……。
「ママーーあそぼーーーーッ!!」
「こら、ここはパパが寝ているからうるさくしちゃダメって言ったでしょ」
「えーだってパパいつまで経っても起きないんだもん」
「パパはたくさん疲れてるからいっぱい休まないといけないのよ」
「ぶぅー……それじゃあミントおじちゃん遊ぼ!!」
「だから僕はおじちゃんって言われる年じゃないって……もう、これ食べてからだからね。ルークもいくよ。君もたまには動かないと飛べない竜になっちゃうからね」
「クゥー?」
「やったー! ルーちゃんも一緒ー!」
シャルにとっては次元回廊に戻っていた頃と違い毎日新しい日々を過ごしている。シャルの両親が命をかけて守った……せっかくの新たな人生を無駄にするようなことはしたくない。
「ミント、ごめんね」
「いいさ、この子には教養が必要だからね。君もたまにはゆっくりしてるといい」
「ありがとう。シャル、終わったらちゃんと二人にお礼を言うのよ」
「あーい!!」
みんなが部屋を出ていくと特に何をするわけでもないが、彼と二人だけの時間はあっという間に過ぎていった。後悔は後からやってくると昔お婆ちゃんに教えてもらったことがあったが…………
こんなことになるなら、ちゃんと二人でお話しようって言うんだった。
「ありがとうアリス……いつもごめんね」
「いえ、私にできることはこれくらいなので……何かあればすぐに呼んでください」
あれから数日、魔界では死人が出るような大きな被害もなかったため、ただの喧嘩だったとすぐに収まりをみせた。エディとシェリーについてはスラム街での困窮を訴えるための行動だったとし、罪人とはなるもののリッドの下で監視、働くという名目で保護することになった。
まぁ……それもこれも王様やレイラさんたちが色々と三文芝居を打ち事実を捻じ曲げてくれた部分が多いのだが…………。
「もうしつこいなぁ、終わったことをいってる暇があるなら鍛錬の一つでもしてなよ!」
また言われてるのかな。本当にもう大丈夫だからって言ったのに……どうしたらいいんだろ。
「あーもう! 毎日毎日しつこいったらありゃしない!」
「ふふふ、もう気にしなくていいのにね」
事が収まり真実を聞かされたエディとシェリーは子供ながら必死に謝罪を続けていた。
スラム街では自分の起こした問題は自分で責任を取る――それがルール。しかしシェリーはまだしも、エディは自分の腕にヒラヒトツが使われ、死罪になるはずが私たちのお願いによりこれ以上ない酌量を与えてもらい助かった。そんなことをエディはすんなり聞き入れてはくれなかった。
それ以来、ことあるごとにミントや私たちに何かできることはないかと聞いてくる。果てには奴隷にしてくれと言ってくる始末だ。
「ったく、早くお前からも言ってやってくれよ……もううんざりだよ……」
ミントが語り掛けた視線の先、私の目の前にあるベッドでは彼が身動き一つせず眠っている。何度も私を助けてくれた身体は利き腕を失くし、呼吸はしているがとても弱々しく小さい。
本能が生きようとしているのか辛うじて何かを飲み込むことはできるようで、食事はすべて液状にし飲ませている。
もちろん、最初は回復薬から希少な薬まで色々飲ませてみたが、何も変化は見られなかったため今はごく普通の食事だけを与えることになっている。
きっとレニ君なら『遅かれ早かれ使うモノだった、それがお前だっただけだ、だから気にすんな』とか上手いこと言って説き伏せちゃうんだろうなぁ。
「みんな、そろそろご飯にしよっか」
「クゥー」
並べられた食器を取り机に持っていく――食事中会話を挟むが、どこかぽっかりと穴が開いたようにふと静まり返る。もう何度も繰り返し、そして慣れてしまった空気。
まだあれから何日かしか経っていないはずなのに……まるで数ヵ月が経ったような気分……。そんな中扉を叩く音が響く。
「失礼、食事中だったか」
「アインさん、何かありましたか?」
「大事な話があるんだが夜に時間はつくれそうかい」
今の私たちは基本的に何かがあるわけではない――強いて言えば彼に夕食を与え、たまに体を拭きミントの魔法で清潔を保ってあげる。あとはこの部屋を使わせてもらっている以上、レイラさんたちに何か仕事があれば私たちも協力させてもらうように伝えている……のだが、今のところミントが鍛錬の協力をしているくらいでほかには何も言われていない。
ほぼ間違いなく、気を遣ってのことだろう。このままという訳にもいかないのはわかっているのだが……。
「いってきなよ、あいつは僕とルークで見てるからさ」
「クゥクゥ」
「それに少しは外に出ないと、こいつみたいに太っちゃうぞー」
ミントがルークの身体を叩く。そうはいうが実際ルークは太ったりしていない。今となってはミントなりの気遣いというのがすぐにわかる。
「ふふふ、それもそうだね……それじゃあいってこようかな」
「すまないね、君たちも協力してくれてありがとう」
アインさんはそれだけいうと時間がきたら呼びにくると言い残しすぐに部屋を出ていった。大事な話ってなんだろう……もしかして、まだ予言の本はどこかに残っているとか……。
「そういえばあの子のほうはどうなんだい? いくら君の話は聞くといっても一筋縄じゃいかないんじゃないの」
「そうでもないよ。元々学ぶ機会がなかっただけでちゃんと説明すれば理解してくれるし、それに私以外にもレイラさんたちが助けてくれるから。たまにわがままなところはあるけど、子供ってそういうものでしょ」
そう、あの子というのはこの事件を起こしていた最大の元凶であり張本人のシャルのことだ。
シャルの想いによる力は絶大、両親もすでにこの世にはいないため、制御するという意味も含めて私が親代わりになった。
シャルは私と同じで過去にシトリーを召喚したことがある。そのときシャルに興味を持ったシトリーは、母という存在を利用し何度も自分を呼び出させていた。そしてシトリー曰く、今度は魔人と魔力が混ざった私を母親と勘違いしているという。
生きるうえで基本的なことから教えてはいるが……純粋がゆえの質問になかなか答えることができないときもある。この間は『なぜ好き勝手に魔法を使っていけないのか』ということに対し半日かかった。その前は『なぜ人の願いを聞いちゃいけないのか』、たくさんあったがどれも一概にダメとはいえない質問だ。
とりあえず気になったことはレイラさんや私たちに聞くようにしてはいるが……。
「ママーーあそぼーーーーッ!!」
「こら、ここはパパが寝ているからうるさくしちゃダメって言ったでしょ」
「えーだってパパいつまで経っても起きないんだもん」
「パパはたくさん疲れてるからいっぱい休まないといけないのよ」
「ぶぅー……それじゃあミントおじちゃん遊ぼ!!」
「だから僕はおじちゃんって言われる年じゃないって……もう、これ食べてからだからね。ルークもいくよ。君もたまには動かないと飛べない竜になっちゃうからね」
「クゥー?」
「やったー! ルーちゃんも一緒ー!」
シャルにとっては次元回廊に戻っていた頃と違い毎日新しい日々を過ごしている。シャルの両親が命をかけて守った……せっかくの新たな人生を無駄にするようなことはしたくない。
「ミント、ごめんね」
「いいさ、この子には教養が必要だからね。君もたまにはゆっくりしてるといい」
「ありがとう。シャル、終わったらちゃんと二人にお礼を言うのよ」
「あーい!!」
みんなが部屋を出ていくと特に何をするわけでもないが、彼と二人だけの時間はあっという間に過ぎていった。後悔は後からやってくると昔お婆ちゃんに教えてもらったことがあったが…………
こんなことになるなら、ちゃんと二人でお話しようって言うんだった。
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