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89話 『役割②』
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「たぶんだがサーニャさんはほとんど何も聞かされず会議は終わるだろう」
「えっ、それじゃあどうするの? お爺さんの証言だけじゃ証拠としてまだ難しいんじゃ」
「リリア様の言う通り、いったいどうなさるおつもりで……」
「あそこにはミントをおいてきた。手元にあった資料なり何か隠すようなことがあれば調べてくれる」
「あの妖精さんが……大丈夫なのでしょうか?」
「心配いらないよ。ミントはあんなんだけど俺たちより――いや、爺さんの何倍も生きてるからね」
「ミントってそんなにお爺ちゃんだったんだ……」
「妖精だから俺たち人間と感覚が違うんだよ、本人は気にしてるようだから言わないでやってくれ。さぁて、こうして待ってても暇だしどうするかな」
「これは大変失礼致しました。今お飲み物とお菓子をご用意してまいります」
気を遣わせてしまったようだがお菓子にリリアが反応したためお言葉に甘えることにした。さすがお城というだけあって、高級そうなお菓子と飲み物が運ばれてくる。
いつサーニャさんが戻ってくるかもわからないため、リリアとルークには羽目を外し過ぎないようにいったら二人はなぜか上品ぶっていた。俺も暇だったため爺さんと世間話をしながら待っていると扉がノックされ、サーニャさんと王様が入ってくる。
「待たせたの。さて、改めてになるが此度の件、礼を言うぞ」
「いえ、俺たちも旅の途中だったので。それに砂漠の国でも何やら大変だったようで……心中お察しします」
「そこまで知っておったか……サーニャには申し訳ないことをしたものよ」
「私は大丈夫です。それよりも父上、先ほどの会議はいったい」
「お前が気にするほどのことではない」
「なぜ隠そうとするのですか!」
サーニャさんは何一つ情報を得られなかったからか必死に王様から聞き出そうとしていた。
「サーニャさん、その辺で……王様もきっと姫様のためを思って色々考えていたんでしょう」
「ですが……仕方ありませんね……」
一度サーニャさんを落ち着かせると、王様は仕切り直すように咳払いする。
「して、お主たちは褒美に何を望む?」
「それならば一つお願いがあります。王様に面会を希望する人物がいるので会って頂けないでしょうか」
「儂にだと?」
「もちろん謁見という形でも構いません。どうしても渡したいものがあると……たぶん、献上品でしょう。すぐに終わるのでこのままサーニャ姫もご一緒に会って頂ければ」
「ふむ……それならばお主たちへの礼もできるしちょうどよいな。それでは準備ができ次第すぐに始めよう」
時間ができたため俺は準備をすませたラカムとフィルをサーニャさんの手引きで城へいれる。しばらくすると呼ばれたため謁見の間へと向かった。
「此度は我が娘、サーニャを救ってくれたことを感謝する」
「いえ、こちらこそわがままを聞いて頂きありがとうございます」
「その者らが儂に渡したい物があるということで間違いないな?」
「はい」
「よかろう、品を出すがよい」
俺の隣でひざまずいていたラカムとフィルが顔を上げる。王様はその顔をじっくり見ると何か思い出したように声をあげ、そして周りにいた側近たちも口々に騒ぎ始める。
「お、お主は……!」
「お久しゅうございますね、王様」
「あいつは! 兵よ何をしている、早くこの罪人を捕らえよ!」
「あんなやつを招き入れるとは……あいつらもひっ捕らえてしまえ!」
「やっぱりあんた人気者ね~」
周りが騒ぎ立てる中でサーニャさんが必死に訴えかけていると王様は静かに椅子へ座り直した。
「静粛に。この者の退場を命じる」
「父上……!」
「いいかサーニャよ。いくら恩人の願いと言え国を裏切った者を許すわけにはいかん」
「王様、ちょっとくらい話を聞いてあげてもいいのでは?」
「いくらお主たちの頼みだろうとそれだけはできん。サーニャのこともあるゆえ今回に限り罪は問わん、即刻この場を去れ」
「彼が砂漠の国からの使者だと言ったら……どうします? 大事な書状の一つでも持ってきてるかもしれませんよ」
その一言に王様はピクリと反応するとジッと黙りラカムを見つめる。ラカムはさっきから動揺することなく立っていた。
さすが修羅場をいくつもくぐってきた海賊だけあるな……そして続くようにフィルが前に出る。
「我らは常に見ている――王よ、2度目はないぞ、選択を違えるな」
そういうとフィルは別人のような雰囲気で王様を見つめた。
「ま、まさか…………」
「もしこれ以上惨めな行為を選ぶというのならば覚悟を決めることね」
「貴様、王に向かって無礼だぞ! えぇい何をしている、早くこいつらを捕らえろ!」
「やめて、彼らの話を聞いてください!」
サーニャさんは王様に言うが兵士が集まり周りを囲み始めていく……だが大方予想通りだ。そして……
「待て……話を聞こうではないか」
「王様!?」
「砂漠の国からの使者だと言ったな? 何用でここにきた」
「やっと聞く耳をもってくれましたか。いやね、あちらさんが姫様の件で謝罪をしたいと言っているんですよ」
「なぜそんなことをお主が……いや、それよりもそんな戯言を信じるとでも思うか?」
「この通り――書状も預かってきてるぜ。姫様も確認済みだ」
ラカムは俺が渡しておいた書簡を取り出す。王様はそれを見つめるとサーニャさんへ視線を移した。
「彼の言ってることに間違いはありません。もし、砂漠の国との友好が結べればこの国の平和にも繋がります」
「なぜそれを…………」
「失礼ですが王様、また裏切られる可能性のある国と友好を結ぶなど、いかがなものかと思われます」
側近の一人が近づいてくるが王様は黙って何か考えているようだった。そして、しばらく静まり返った場に声が響く……い~いタイミングだ!
「ちょっと多すぎでしょこれ――――まとめて持ってきちゃったよ」
「あ、ミントおかえり!」
「クゥー!」
頭上に現れたミントは魔法で紙の束を運んでいる。よし、ここからがもう一勝負だ。
「よ、妖精がなぜこんなところに……?」
「彼は俺の仲間です。ちょっと頼みごとをしてまして」
「はいこれ、読んでみなよ」
そういってミントは王様に紙の束を渡し戻ってくる。王様はそれを読むと、どんどんめくり進め……わなわなと震えると紙を叩きつけ立ち上がった。
「な、なんだこの内容は!?」
「妖精に嘘は通用しないんですよ」
「お、王様……いったいどうなされたのですか」
「読んでみろ。某国への書状だ……全面的な支援、そして隣国に対する防衛のための資源譲渡……こんなもの、誰がしてよいといった!」
複数の側近たちがその紙を読むと驚き慌てた――いや、この中にそれっぽく装っているやつがいるはず。
「父上、なぜ私が砂漠の国へ送られたのかはすべて知っております。だけどそれは国のためにしたこと……そのことを恨んだりはしておりません……ですが、隣国へ助けを求めようなどとは浅はかすぎます!」
「くっ……サーニャよ、もはやそう簡単な問題ではないのだ」
王様はそういうとため息をつき椅子へ座った。俺はすぐに手を上げ王様へ進言する。
「だったらこの問題の解決策を教えてあげましょうか?」
「……なんだと」
「簡単なことです。だけどそうですね……ここじゃ隣国のスパイがいるかもしれない。俺たちと王様、それにサーニャさん以外はここから出ていってもらいたい。あ、お付きの爺さんはそのままでいいですよ」
「なッ!? ふざけたことをいうな、王の身に何かあったらどうする!」
「じゃああんただけ残ってもいいけど」
俺はあえて一人を許可した。さっきから事あるごとに突っかかってくるから、俺の中じゃすでに黒扱いなんだが、ここじゃこいつだという証拠はでないだろう。そしてサーニャさんとフィルは王様へ提案をのむように勧めはじめる。
「この方は私を助けここまで導いてくれました。どうか話を聞いてはくれませんか」
「私たちとの約束を破ろうとしたあなたにほかに道はないわよ?」
フィルに関してはほぼ脅しだったが、それが功を成したのか王様は頭を抱えると周りをみた。
「全員外に出ておれ」
「王様!?」
「同じことを二度も言わせるな」
どこか静かなその声は部屋全体に響き、すぐに兵たちが部屋を出ていくと側近たちも渋々出ていった。
「えっ、それじゃあどうするの? お爺さんの証言だけじゃ証拠としてまだ難しいんじゃ」
「リリア様の言う通り、いったいどうなさるおつもりで……」
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気を遣わせてしまったようだがお菓子にリリアが反応したためお言葉に甘えることにした。さすがお城というだけあって、高級そうなお菓子と飲み物が運ばれてくる。
いつサーニャさんが戻ってくるかもわからないため、リリアとルークには羽目を外し過ぎないようにいったら二人はなぜか上品ぶっていた。俺も暇だったため爺さんと世間話をしながら待っていると扉がノックされ、サーニャさんと王様が入ってくる。
「待たせたの。さて、改めてになるが此度の件、礼を言うぞ」
「いえ、俺たちも旅の途中だったので。それに砂漠の国でも何やら大変だったようで……心中お察しします」
「そこまで知っておったか……サーニャには申し訳ないことをしたものよ」
「私は大丈夫です。それよりも父上、先ほどの会議はいったい」
「お前が気にするほどのことではない」
「なぜ隠そうとするのですか!」
サーニャさんは何一つ情報を得られなかったからか必死に王様から聞き出そうとしていた。
「サーニャさん、その辺で……王様もきっと姫様のためを思って色々考えていたんでしょう」
「ですが……仕方ありませんね……」
一度サーニャさんを落ち着かせると、王様は仕切り直すように咳払いする。
「して、お主たちは褒美に何を望む?」
「それならば一つお願いがあります。王様に面会を希望する人物がいるので会って頂けないでしょうか」
「儂にだと?」
「もちろん謁見という形でも構いません。どうしても渡したいものがあると……たぶん、献上品でしょう。すぐに終わるのでこのままサーニャ姫もご一緒に会って頂ければ」
「ふむ……それならばお主たちへの礼もできるしちょうどよいな。それでは準備ができ次第すぐに始めよう」
時間ができたため俺は準備をすませたラカムとフィルをサーニャさんの手引きで城へいれる。しばらくすると呼ばれたため謁見の間へと向かった。
「此度は我が娘、サーニャを救ってくれたことを感謝する」
「いえ、こちらこそわがままを聞いて頂きありがとうございます」
「その者らが儂に渡したい物があるということで間違いないな?」
「はい」
「よかろう、品を出すがよい」
俺の隣でひざまずいていたラカムとフィルが顔を上げる。王様はその顔をじっくり見ると何か思い出したように声をあげ、そして周りにいた側近たちも口々に騒ぎ始める。
「お、お主は……!」
「お久しゅうございますね、王様」
「あいつは! 兵よ何をしている、早くこの罪人を捕らえよ!」
「あんなやつを招き入れるとは……あいつらもひっ捕らえてしまえ!」
「やっぱりあんた人気者ね~」
周りが騒ぎ立てる中でサーニャさんが必死に訴えかけていると王様は静かに椅子へ座り直した。
「静粛に。この者の退場を命じる」
「父上……!」
「いいかサーニャよ。いくら恩人の願いと言え国を裏切った者を許すわけにはいかん」
「王様、ちょっとくらい話を聞いてあげてもいいのでは?」
「いくらお主たちの頼みだろうとそれだけはできん。サーニャのこともあるゆえ今回に限り罪は問わん、即刻この場を去れ」
「彼が砂漠の国からの使者だと言ったら……どうします? 大事な書状の一つでも持ってきてるかもしれませんよ」
その一言に王様はピクリと反応するとジッと黙りラカムを見つめる。ラカムはさっきから動揺することなく立っていた。
さすが修羅場をいくつもくぐってきた海賊だけあるな……そして続くようにフィルが前に出る。
「我らは常に見ている――王よ、2度目はないぞ、選択を違えるな」
そういうとフィルは別人のような雰囲気で王様を見つめた。
「ま、まさか…………」
「もしこれ以上惨めな行為を選ぶというのならば覚悟を決めることね」
「貴様、王に向かって無礼だぞ! えぇい何をしている、早くこいつらを捕らえろ!」
「やめて、彼らの話を聞いてください!」
サーニャさんは王様に言うが兵士が集まり周りを囲み始めていく……だが大方予想通りだ。そして……
「待て……話を聞こうではないか」
「王様!?」
「砂漠の国からの使者だと言ったな? 何用でここにきた」
「やっと聞く耳をもってくれましたか。いやね、あちらさんが姫様の件で謝罪をしたいと言っているんですよ」
「なぜそんなことをお主が……いや、それよりもそんな戯言を信じるとでも思うか?」
「この通り――書状も預かってきてるぜ。姫様も確認済みだ」
ラカムは俺が渡しておいた書簡を取り出す。王様はそれを見つめるとサーニャさんへ視線を移した。
「彼の言ってることに間違いはありません。もし、砂漠の国との友好が結べればこの国の平和にも繋がります」
「なぜそれを…………」
「失礼ですが王様、また裏切られる可能性のある国と友好を結ぶなど、いかがなものかと思われます」
側近の一人が近づいてくるが王様は黙って何か考えているようだった。そして、しばらく静まり返った場に声が響く……い~いタイミングだ!
「ちょっと多すぎでしょこれ――――まとめて持ってきちゃったよ」
「あ、ミントおかえり!」
「クゥー!」
頭上に現れたミントは魔法で紙の束を運んでいる。よし、ここからがもう一勝負だ。
「よ、妖精がなぜこんなところに……?」
「彼は俺の仲間です。ちょっと頼みごとをしてまして」
「はいこれ、読んでみなよ」
そういってミントは王様に紙の束を渡し戻ってくる。王様はそれを読むと、どんどんめくり進め……わなわなと震えると紙を叩きつけ立ち上がった。
「な、なんだこの内容は!?」
「妖精に嘘は通用しないんですよ」
「お、王様……いったいどうなされたのですか」
「読んでみろ。某国への書状だ……全面的な支援、そして隣国に対する防衛のための資源譲渡……こんなもの、誰がしてよいといった!」
複数の側近たちがその紙を読むと驚き慌てた――いや、この中にそれっぽく装っているやつがいるはず。
「父上、なぜ私が砂漠の国へ送られたのかはすべて知っております。だけどそれは国のためにしたこと……そのことを恨んだりはしておりません……ですが、隣国へ助けを求めようなどとは浅はかすぎます!」
「くっ……サーニャよ、もはやそう簡単な問題ではないのだ」
王様はそういうとため息をつき椅子へ座った。俺はすぐに手を上げ王様へ進言する。
「だったらこの問題の解決策を教えてあげましょうか?」
「……なんだと」
「簡単なことです。だけどそうですね……ここじゃ隣国のスパイがいるかもしれない。俺たちと王様、それにサーニャさん以外はここから出ていってもらいたい。あ、お付きの爺さんはそのままでいいですよ」
「なッ!? ふざけたことをいうな、王の身に何かあったらどうする!」
「じゃああんただけ残ってもいいけど」
俺はあえて一人を許可した。さっきから事あるごとに突っかかってくるから、俺の中じゃすでに黒扱いなんだが、ここじゃこいつだという証拠はでないだろう。そしてサーニャさんとフィルは王様へ提案をのむように勧めはじめる。
「この方は私を助けここまで導いてくれました。どうか話を聞いてはくれませんか」
「私たちとの約束を破ろうとしたあなたにほかに道はないわよ?」
フィルに関してはほぼ脅しだったが、それが功を成したのか王様は頭を抱えると周りをみた。
「全員外に出ておれ」
「王様!?」
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