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134話
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「それじゃあルルはここで立っててくれ」
念のためルルの横に師匠とアルフレッドさんが立ち、アンジェロが浄化をかける。
「――身体に何か違和感とかない?」
「ううん……」
アンジェロの浄化が効いていないだと。
「ウムト、どういうことだ」
「アンジェロの浄化はできています。だけどこの子の鑑定結果は変わっていない……僕もこんなこと初めてです……」
「……お、お兄ちゃん、私を置いてくの?」
「そんなことしないよ。君の身体に異変がないかチェックしてたんだ」
「現時点では何もわからないわね。仕方ない、とりあえずこのまま聖域に向かいましょう」
◇
見たこともない草が大量に生えている。
ここが果ての谷……天国か?
いや、聖域があるというくらいだから実は天国への入り口なのかもしれない。
「っと、さっそくでたか」
奇妙な二足歩行の魔物が数体こちらに向かってくる。
確かにほかの魔物に比べて隙がないようにみえる。
「変ね……こんな魔物いたかしら」
「あれから何年も経ってるんだ。生息域が変わったんじゃないのか」
師匠とアルフレッドさんは余裕そうだな。
俺も足手まといにだけはならないようにしなければ。
「ま、魔物……」
「心配いらないよ。あれくらい俺たちの相手じゃ――」
「リッツさん! その子から離れてください!」
ウムトの声に反応しルルを見ると全身から穢れが溢れ出てくる。
「なんだこれッ!? おい、ルル大丈夫か!?」
「マモノ……カラナキャ……」
ルルは全身からでた穢れで異形の姿になると魔物に襲い掛かった。
魔物たちはルルを相手に戦い始めたが一方的に倒されていく。
「ど、どうなってるんだ」
「リッツ、構えなさい。あれがこっちにきたらやるわよ」
「師匠、あれはルルです!」
「アンジェロの浄化が作用しないのであれば助ける手段はないわ」
「無理なら俺が変わりにやる。後ろにさがっていろ」
「アルフレッドさんまで……」
ルルだった者は魔物を倒すとしばらくその場に立ち尽くし倒れた。
「どうする? 今なら手っ取り早くやれるぞ」
「ま、待ってください! 何か変です!」
ティーナが声を上げると穢れが徐々に消えルルが元の姿に戻っていく。
「みんなは周囲の警戒を! ティーナちゃん、私から離れないで」
「は、はいっ!」
ルルの姿は怪我一つなく気を失っているだけだった。
リヤンとウムトはそれをみてずっと考え事をしている。
「穢れが消えるなんて初めてみたわ……」
「僕もだ……。しかも体に傷一つない、これじゃあまるで……」
「――不死と再生。穢れを纏った人間、穢者といったところか」
アルフレッドさんのいうことは的を得ている。
この子は人間とみていいのか。
「う、うーん……あれ、お兄ちゃん?」
「ルル、痛いところとか、身体に異常はないか」
「平気……私、また寝ちゃった?」
「魔物ならリッツ様が倒しましたから、もう少し眠っててもいいんですよ」
「……うん」
ニエが頭を撫でるとルルは眼を閉じた。
こうしてみると普通の人間だ。
「師匠、ルルは何も覚えていないみたいです。もう少し様子をみさせてください」
「少しでもこちらに害があれば……わかってるわね?」
「はい、そのときは俺が必ずやります」
師匠との約束、破ることは許されない。
もし少しでもこちらに敵意を見せたらそのときはこの手で……。
念のためルルの横に師匠とアルフレッドさんが立ち、アンジェロが浄化をかける。
「――身体に何か違和感とかない?」
「ううん……」
アンジェロの浄化が効いていないだと。
「ウムト、どういうことだ」
「アンジェロの浄化はできています。だけどこの子の鑑定結果は変わっていない……僕もこんなこと初めてです……」
「……お、お兄ちゃん、私を置いてくの?」
「そんなことしないよ。君の身体に異変がないかチェックしてたんだ」
「現時点では何もわからないわね。仕方ない、とりあえずこのまま聖域に向かいましょう」
◇
見たこともない草が大量に生えている。
ここが果ての谷……天国か?
いや、聖域があるというくらいだから実は天国への入り口なのかもしれない。
「っと、さっそくでたか」
奇妙な二足歩行の魔物が数体こちらに向かってくる。
確かにほかの魔物に比べて隙がないようにみえる。
「変ね……こんな魔物いたかしら」
「あれから何年も経ってるんだ。生息域が変わったんじゃないのか」
師匠とアルフレッドさんは余裕そうだな。
俺も足手まといにだけはならないようにしなければ。
「ま、魔物……」
「心配いらないよ。あれくらい俺たちの相手じゃ――」
「リッツさん! その子から離れてください!」
ウムトの声に反応しルルを見ると全身から穢れが溢れ出てくる。
「なんだこれッ!? おい、ルル大丈夫か!?」
「マモノ……カラナキャ……」
ルルは全身からでた穢れで異形の姿になると魔物に襲い掛かった。
魔物たちはルルを相手に戦い始めたが一方的に倒されていく。
「ど、どうなってるんだ」
「リッツ、構えなさい。あれがこっちにきたらやるわよ」
「師匠、あれはルルです!」
「アンジェロの浄化が作用しないのであれば助ける手段はないわ」
「無理なら俺が変わりにやる。後ろにさがっていろ」
「アルフレッドさんまで……」
ルルだった者は魔物を倒すとしばらくその場に立ち尽くし倒れた。
「どうする? 今なら手っ取り早くやれるぞ」
「ま、待ってください! 何か変です!」
ティーナが声を上げると穢れが徐々に消えルルが元の姿に戻っていく。
「みんなは周囲の警戒を! ティーナちゃん、私から離れないで」
「は、はいっ!」
ルルの姿は怪我一つなく気を失っているだけだった。
リヤンとウムトはそれをみてずっと考え事をしている。
「穢れが消えるなんて初めてみたわ……」
「僕もだ……。しかも体に傷一つない、これじゃあまるで……」
「――不死と再生。穢れを纏った人間、穢者といったところか」
アルフレッドさんのいうことは的を得ている。
この子は人間とみていいのか。
「う、うーん……あれ、お兄ちゃん?」
「ルル、痛いところとか、身体に異常はないか」
「平気……私、また寝ちゃった?」
「魔物ならリッツ様が倒しましたから、もう少し眠っててもいいんですよ」
「……うん」
ニエが頭を撫でるとルルは眼を閉じた。
こうしてみると普通の人間だ。
「師匠、ルルは何も覚えていないみたいです。もう少し様子をみさせてください」
「少しでもこちらに害があれば……わかってるわね?」
「はい、そのときは俺が必ずやります」
師匠との約束、破ることは許されない。
もし少しでもこちらに敵意を見せたらそのときはこの手で……。
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