上 下
134 / 150

134話

しおりを挟む
「それじゃあルルはここで立っててくれ」

 念のためルルの横に師匠とアルフレッドさんが立ち、アンジェロが浄化をかける。

「――身体に何か違和感とかない?」

「ううん……」

 アンジェロの浄化が効いていないだと。

「ウムト、どういうことだ」

「アンジェロの浄化はできています。だけどこの子の鑑定結果は変わっていない……僕もこんなこと初めてです……」

「……お、お兄ちゃん、私を置いてくの?」

「そんなことしないよ。君の身体に異変がないかチェックしてたんだ」

「現時点では何もわからないわね。仕方ない、とりあえずこのまま聖域に向かいましょう」





 見たこともない草が大量に生えている。

 ここが果ての谷……天国か?

 いや、聖域があるというくらいだから実は天国への入り口なのかもしれない。

「っと、さっそくでたか」

 奇妙な二足歩行の魔物が数体こちらに向かってくる。

 確かにほかの魔物に比べて隙がないようにみえる。

「変ね……こんな魔物いたかしら」

「あれから何年も経ってるんだ。生息域が変わったんじゃないのか」

 師匠とアルフレッドさんは余裕そうだな。

 俺も足手まといにだけはならないようにしなければ。

「ま、魔物……」

「心配いらないよ。あれくらい俺たちの相手じゃ――」

「リッツさん! その子から離れてください!」

 ウムトの声に反応しルルを見ると全身から穢れが溢れ出てくる。

「なんだこれッ!? おい、ルル大丈夫か!?」

「マモノ……カラナキャ……」

 ルルは全身からでた穢れで異形の姿になると魔物に襲い掛かった。

 魔物たちはルルを相手に戦い始めたが一方的に倒されていく。

「ど、どうなってるんだ」

「リッツ、構えなさい。あれがこっちにきたらやるわよ」

「師匠、あれはルルです!」

「アンジェロの浄化が作用しないのであれば助ける手段はないわ」

「無理なら俺が変わりにやる。後ろにさがっていろ」

「アルフレッドさんまで……」

 ルルだった者は魔物を倒すとしばらくその場に立ち尽くし倒れた。

「どうする? 今なら手っ取り早くやれるぞ」

「ま、待ってください! 何か変です!」

 ティーナが声を上げると穢れが徐々に消えルルが元の姿に戻っていく。

「みんなは周囲の警戒を! ティーナちゃん、私から離れないで」

「は、はいっ!」

 ルルの姿は怪我一つなく気を失っているだけだった。

 リヤンとウムトはそれをみてずっと考え事をしている。

「穢れが消えるなんて初めてみたわ……」

「僕もだ……。しかも体に傷一つない、これじゃあまるで……」

「――不死と再生。穢れを纏った人間、穢者といったところか」

 アルフレッドさんのいうことは的を得ている。

 この子は人間とみていいのか。

「う、うーん……あれ、お兄ちゃん?」

「ルル、痛いところとか、身体に異常はないか」

「平気……私、また寝ちゃった?」

「魔物ならリッツ様が倒しましたから、もう少し眠っててもいいんですよ」

「……うん」

 ニエが頭を撫でるとルルは眼を閉じた。

 こうしてみると普通の人間だ。

「師匠、ルルは何も覚えていないみたいです。もう少し様子をみさせてください」

「少しでもこちらに害があれば……わかってるわね?」

「はい、そのときは俺が必ずやります」

 師匠との約束、破ることは許されない。

 もし少しでもこちらに敵意を見せたらそのときはこの手で……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

処理中です...