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132話

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 すっかり雪も溶け、いよいよ暖かい日差しが季節の変わり目を知らせる。

「よし、それじゃあ後の事は任せたぞ」

「はい、リッツ様もお気をつけて」

 ハリスとキャレットに見送られ船に乗り込む。

 船に乗っているのは俺とニエにアンジェロ、ウムトとリヤンにトリスタン、そして師匠とアルフレッドさんにティーナだ。

 リヤンが操縦すると船はあっという間に空高くまで浮き上がった。

「ほ、本当に浮いた……っ!」

「ティーナ、慣れないうちは恐いと思うからそのままアンジェロを抱いててくれ」

「わ、わかりました」

「ワン」

 実をいうとアンジェロが走り回らないようにしたかったからちょうどいい。

 やはり空を飛んでることが落ち着かないのか、ティーナは興奮しつつもアンジェロをギュッと抱いて大人しく座ったままだ。

「リッツ様、私もコワいので抱きついてよろしいでしょうか?」

「リヤンにならいいぞ」

「手元が狂ってもいいならいいわよ」

「ニエ、ストップ。今のなし」

 さすがに墜落するのはダメだ。

 船で移動した距離を走って帰るなんてめんどくさすぎる。

「仕方ない、腕だけな」

「やったー!」

 これで当分は大人しくなってくれるだろう。

 しばらく空の旅を満喫していると師匠が何かに気付いた。

「リッツ、あそこの村何か変じゃない?」

「俺にはさっぱりですけど……。ニエ、何かみえる?」

「ん-人が倒れてますね」

 目を凝らしてみても全然わからん。

 まぁ急ぎってわけでもないからちょっと寄ってみるか。

「リヤン、村の様子を見てくるから人目につかなそうな場所にとめてくれ」

 問題は村に誰を連れていくかだな。

 旅人だと思わせたほうが自然だろう。

「俺がいこう」

「アルフレッドさんが来てくれるなら、ここは師匠に任せていいでしょうか。リヤンとウムトも何かあったときのためにティーナの護衛を頼む」

「わかったわ。アル、二人を頼んだわよ」

 ん? 二人?

「リッツ様、準備ができました! 出発しましょう!」

 いつの間にかアンジェロに跨ったニエが手を振っている。

 ……こいつニエは危険とか関係ないんだった。

「なかなかタフな子だね」

「ニエはちょっとズレてまして……何かあれば俺が守るので気にしないでください」

 しばらく進み徐々に村の入り口が近づいてくると異様な気配を感じる。

「なんだか静か過ぎますね」

「門番はいないようだが油断はするなよ」

「はいっ」

 よほどの相手がでてきても問題はないがアルフレッドさんの言うように油断は禁物だ。

 村の中に入ると人が倒れており、すでに事切れていた。

「何か変ですね……魔物と戦ったんでしょうか?」

「村を守るために戦ったにしてはあまり争った形跡がないな」

 村の建物自体はそこまで壊れた様子はない。

 生存者を探しているとニエとアンジェロが何かに反応する。

「リッツ様、あそこから物音がしました」

 ニエが小さな声で俺たちに合図すると扉が半開きになっている家をみた。

 俺はアルフレッドさんとドアを開ける。

「きゃっ……!」

「子供? 一人か、ここで何があった?」

 部屋の片隅で震える少女は何かに怯えたように動かない。

 俺が近づこうとしたそのとき、アンジェロが唸り声をあげた。

「アンジェロ、相手は子供だ。怯えさせるな」

「クゥン……」

「恐がらせてごめんね。俺たちは旅をしてるんだが、この村には君一人?」

「……」

 少女はジッとしたまま動かないが視線は俺をみている。

「そうだ、これ――」

 俺は鞄からおにぎりを出して少女に差し出す。

 出来立ての香りに少女は反応を示した。

「お腹空いてない? とっても美味しいから一緒に食べよう」

 少女は小さく頷くとおにぎりを受け取り食べ始めた。
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