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118話
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森を抜け荒れ果てた空き地の中に小さなお墓が置いてある。
元々村があったここはすべて片付けられ、風景だけが俺の記憶と少しだけ一致しているが、それも思い出補正というやつなのかもしれない。
「師匠、俺は素材を採ってきます」
「わかったわ。ニエちゃんはどうする?」
「私はミレイユさんのお手伝いをします。リッツ様、何かあればすぐにお呼びください」
「この辺りは魔物もでないし大丈夫だよ。アンジェロもくるか?」
「ワフッ!」
アンジェロと一緒に歩いていくと懐かしい思い出が蘇る。
俺の家は元々小さな薬屋だった。といってもここは人里から距離があるため、回復薬を作る材料は畑で栽培をしていた。
俺は妹と一緒に手伝いをしていたが、あるとき妹が変な草が生えてると大喜びで俺たちを呼んだときがあった。
まさかそれが世界樹の葉だったなんてのは当時の俺は知ることもなく、両親に何なのか聞いてみたことがある。
言い伝えではどこにでも生えているものだが気づくことが難しく、みつければ幸せを運んでくれるという。あくまでも噂のようなものだが。
「…………アンジェロ、俺はここで生まれ育ったんだ」
「くぅん」
いつの間にか足が向かっていたのは俺の家があった場所。空き地には雑草が生えわたり、人が住んでいたという形跡もわからない。
数年経った今では思い出もすっかり影を潜め、どちらかというと『紅蓮の風』のみんなとした修行のほうが色濃く残っている。
だが、そんな中でも一つだけ、ハッキリと焼き付いて覚えていることがあった。
――――村が襲われたあの日、俺は山深くに入っていた。妹のように世界樹の葉を見つけたかったから。
当時は妹のように褒めてほしいと思い、そして幸せというのがくればみんなが笑顔になるという認識だった。そして、村は滅んだ。
「あのとき、妹はまだ息があった。だけど俺は助けられなかった、何もできなかったんだ……。アンジェロ、お前を見つけたときと同じだよ……」
アンジェロの大きな顔を撫でているとなんとなく心が落ち着くような気がする。アンジェロはジッとして動かなかった――。
「リッツ様ーーーーーー!!!!」
俺を呼ぶ声にハッとして振り返ると大急ぎでニエがこちらに走ってくる。その蒼い瞳は涙を溜め俺を一直線に見据えていた。
師匠がいる限り大抵の問題は問題ではない、ニエの反応は異常だ。
「何があった!? 師匠は!?」
ニエは俺に抱き着いてくるとそのまま俺の胸に額を強く押し当てた。
「リッツ様大丈夫です! みんないますから、ミレイユさんも、アンジェロもずっと一緒です!!」
「……はっ? な、なんのことだ」
「私だっています! ティーナさんやエレナさんだってずっと、ずっと――」
「お、お、落ち着け! いったん深呼吸だ! ほら吸ってー、吐いて―……」
泣きながら何かを訴えるニエを宥めていると師匠が歩いてくる。
「師匠、何かあったんですか」
「ニエちゃんが突然あなたが泣いてるって言って走り出したの。この様子じゃ、何かが起きたのは間違いなさそうね」
しばらく待ってみたが何か話そうとすると泣いてしまうため俺たちは宿に戻ることにした。
元々村があったここはすべて片付けられ、風景だけが俺の記憶と少しだけ一致しているが、それも思い出補正というやつなのかもしれない。
「師匠、俺は素材を採ってきます」
「わかったわ。ニエちゃんはどうする?」
「私はミレイユさんのお手伝いをします。リッツ様、何かあればすぐにお呼びください」
「この辺りは魔物もでないし大丈夫だよ。アンジェロもくるか?」
「ワフッ!」
アンジェロと一緒に歩いていくと懐かしい思い出が蘇る。
俺の家は元々小さな薬屋だった。といってもここは人里から距離があるため、回復薬を作る材料は畑で栽培をしていた。
俺は妹と一緒に手伝いをしていたが、あるとき妹が変な草が生えてると大喜びで俺たちを呼んだときがあった。
まさかそれが世界樹の葉だったなんてのは当時の俺は知ることもなく、両親に何なのか聞いてみたことがある。
言い伝えではどこにでも生えているものだが気づくことが難しく、みつければ幸せを運んでくれるという。あくまでも噂のようなものだが。
「…………アンジェロ、俺はここで生まれ育ったんだ」
「くぅん」
いつの間にか足が向かっていたのは俺の家があった場所。空き地には雑草が生えわたり、人が住んでいたという形跡もわからない。
数年経った今では思い出もすっかり影を潜め、どちらかというと『紅蓮の風』のみんなとした修行のほうが色濃く残っている。
だが、そんな中でも一つだけ、ハッキリと焼き付いて覚えていることがあった。
――――村が襲われたあの日、俺は山深くに入っていた。妹のように世界樹の葉を見つけたかったから。
当時は妹のように褒めてほしいと思い、そして幸せというのがくればみんなが笑顔になるという認識だった。そして、村は滅んだ。
「あのとき、妹はまだ息があった。だけど俺は助けられなかった、何もできなかったんだ……。アンジェロ、お前を見つけたときと同じだよ……」
アンジェロの大きな顔を撫でているとなんとなく心が落ち着くような気がする。アンジェロはジッとして動かなかった――。
「リッツ様ーーーーーー!!!!」
俺を呼ぶ声にハッとして振り返ると大急ぎでニエがこちらに走ってくる。その蒼い瞳は涙を溜め俺を一直線に見据えていた。
師匠がいる限り大抵の問題は問題ではない、ニエの反応は異常だ。
「何があった!? 師匠は!?」
ニエは俺に抱き着いてくるとそのまま俺の胸に額を強く押し当てた。
「リッツ様大丈夫です! みんないますから、ミレイユさんも、アンジェロもずっと一緒です!!」
「……はっ? な、なんのことだ」
「私だっています! ティーナさんやエレナさんだってずっと、ずっと――」
「お、お、落ち着け! いったん深呼吸だ! ほら吸ってー、吐いて―……」
泣きながら何かを訴えるニエを宥めていると師匠が歩いてくる。
「師匠、何かあったんですか」
「ニエちゃんが突然あなたが泣いてるって言って走り出したの。この様子じゃ、何かが起きたのは間違いなさそうね」
しばらく待ってみたが何か話そうとすると泣いてしまうため俺たちは宿に戻ることにした。
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