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111話
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小さな丸い髪留めが出来上がると掲げて光に当てる。反射した面にはニコニコ顔、それに可愛らしい犬の耳、アンジェロをイメージしただけあってなかなかの力作だ。
「親方、どうでしょうか!」
「あ、あぁ、いいんじゃないか。犬……だよな?」
さすが親方の指導だけあって素人だった俺もここまで腕を上げることができた。
最初は力加減がわからず土台ごと破壊してしまったり色々と迷惑をかけたが、鍛冶体験という名目のため親方は許してくれた。
ちゃんと弁償はさせてもらったけどね。
あれから色々調べてみたがこの国一番の鍛冶師というのは間違いなくこの人だった。『紅蓮の風』のみんなにも親方が作ったものを見てもらったが、ほかの店の量産品と違ってすべて手作りのためか精度が高いと評判が良かった。
そもそも軍事国家でもないこの国でここまでの物を作り上げられるのがすごいのだ。
あとはどうやって自信を持たせるかだが――。
「親方、一つ聞きますけどこの国で一番の鍛冶師って、何をもって一番なんでしょう」
「そりゃあ――なんだろうな……」
「そもそも一番ってのは誰かが決めた基準だと思うんです。例えばこの髪留め、言うのもなんですが俺が作った時点で連れは一番だと言ってくれるでしょう。親方がどれほどいいものを作ったとしてもです」
「それは、仕方ないだろう。誰にとっても一番ってのはあるもんだ」
「それですよ、お爺さんにとっては親方が一番の鍛冶師なんです。だからもっと自信を持ってください。それとも、いちいちお爺さんに聞かなきゃダメなんですか?」
半ば強引に、少し子供扱いするようにいうと親方は少しムッとして口を開いた。
「そ、そんなことはねぇよ!」
「じゃあ宝石の件は任せます。俺はこの髪留めを仕上げるのでもう少し通いますから!」
俺は親方に宝石を渡して屋敷に戻った。
◇
「リッツ様、おかえりなさい!」
「ただいま~裏のほうはどう?」
「結局みんな手を出したくなっちゃったみたいで、予定よりも早くできそうですよ」
「なんだかんだジッとしてられない人たちばかりだからなぁ。ま、ハリスが見てくれてるし大丈夫だろう。完成を楽しみに待つとするよ」
別棟に関しては完全にハリスに任せている。人も雇ってはいるが、配置やサイズに関しては知識が多いウェッジさんが担当している。
師匠が忙しくて鍛錬ができない分、団員は木材運搬など建築の手伝いをしろと言われたが、全員大喜びだった。
もちろん建築の仕事を奪うわけにはいかないのであくまで手伝い、しかし一番時間のかかる力仕事の大半を解決したため作業は驚くほど早く進んでいた。
「あの、まだ出かけるときはご一緒してはいけませんか?」
「師匠へのプレゼントが出来上がれば終わりだから、もう少し待っててくれ」
「わかりました。最近あまり一緒にいられないのが寂しいですね」
「人も増えてきたしアンジェロも友達ができたからな。ニエも俺だけじゃなくてみんなと話でもしたらどうだ? 教会にいけば子供たちやシスターも歓迎してくれるぞ」
「私は…………。そうですね、もう少し周りの方々ともお話してみようと思います」
ニエは笑顔をつくったがほんの少しだけ目を伏せた。
少し冷たいようだが少しは俺から離れてもいいと思う。いくら使命だと言ってもニエにだって自由になってほしい。
もっと広い視野で世界を見ることができれば、恋をしたりやりたいこともみつかると思う。
「なぁ、ニエはもう少し自由に生きていいと思うぞ。使命があると言いたいんだろうけど、俺は協力するし別にずっと一緒である必要だってないんだ。もっと自分の人生を生きてみたらどうだ?」
「……そうですね……。そうだ、今日の夕食当番は私ですが、何か希望はありますか」
「お、それなら久しぶりにおにぎりを頼む。食べやすいし好きなんだよな」
「それなら少し変わった焼きおにぎりというのがあります。リッツ様もきっと気に入るかと!」
「あれを焼くのか? よくわからないが、ニエがいうなら美味いんだろうな~」
「はい、間違いありません!」
俺たちはみんなが戻ってくるまで夕飯の準備を進めることにした。
「親方、どうでしょうか!」
「あ、あぁ、いいんじゃないか。犬……だよな?」
さすが親方の指導だけあって素人だった俺もここまで腕を上げることができた。
最初は力加減がわからず土台ごと破壊してしまったり色々と迷惑をかけたが、鍛冶体験という名目のため親方は許してくれた。
ちゃんと弁償はさせてもらったけどね。
あれから色々調べてみたがこの国一番の鍛冶師というのは間違いなくこの人だった。『紅蓮の風』のみんなにも親方が作ったものを見てもらったが、ほかの店の量産品と違ってすべて手作りのためか精度が高いと評判が良かった。
そもそも軍事国家でもないこの国でここまでの物を作り上げられるのがすごいのだ。
あとはどうやって自信を持たせるかだが――。
「親方、一つ聞きますけどこの国で一番の鍛冶師って、何をもって一番なんでしょう」
「そりゃあ――なんだろうな……」
「そもそも一番ってのは誰かが決めた基準だと思うんです。例えばこの髪留め、言うのもなんですが俺が作った時点で連れは一番だと言ってくれるでしょう。親方がどれほどいいものを作ったとしてもです」
「それは、仕方ないだろう。誰にとっても一番ってのはあるもんだ」
「それですよ、お爺さんにとっては親方が一番の鍛冶師なんです。だからもっと自信を持ってください。それとも、いちいちお爺さんに聞かなきゃダメなんですか?」
半ば強引に、少し子供扱いするようにいうと親方は少しムッとして口を開いた。
「そ、そんなことはねぇよ!」
「じゃあ宝石の件は任せます。俺はこの髪留めを仕上げるのでもう少し通いますから!」
俺は親方に宝石を渡して屋敷に戻った。
◇
「リッツ様、おかえりなさい!」
「ただいま~裏のほうはどう?」
「結局みんな手を出したくなっちゃったみたいで、予定よりも早くできそうですよ」
「なんだかんだジッとしてられない人たちばかりだからなぁ。ま、ハリスが見てくれてるし大丈夫だろう。完成を楽しみに待つとするよ」
別棟に関しては完全にハリスに任せている。人も雇ってはいるが、配置やサイズに関しては知識が多いウェッジさんが担当している。
師匠が忙しくて鍛錬ができない分、団員は木材運搬など建築の手伝いをしろと言われたが、全員大喜びだった。
もちろん建築の仕事を奪うわけにはいかないのであくまで手伝い、しかし一番時間のかかる力仕事の大半を解決したため作業は驚くほど早く進んでいた。
「あの、まだ出かけるときはご一緒してはいけませんか?」
「師匠へのプレゼントが出来上がれば終わりだから、もう少し待っててくれ」
「わかりました。最近あまり一緒にいられないのが寂しいですね」
「人も増えてきたしアンジェロも友達ができたからな。ニエも俺だけじゃなくてみんなと話でもしたらどうだ? 教会にいけば子供たちやシスターも歓迎してくれるぞ」
「私は…………。そうですね、もう少し周りの方々ともお話してみようと思います」
ニエは笑顔をつくったがほんの少しだけ目を伏せた。
少し冷たいようだが少しは俺から離れてもいいと思う。いくら使命だと言ってもニエにだって自由になってほしい。
もっと広い視野で世界を見ることができれば、恋をしたりやりたいこともみつかると思う。
「なぁ、ニエはもう少し自由に生きていいと思うぞ。使命があると言いたいんだろうけど、俺は協力するし別にずっと一緒である必要だってないんだ。もっと自分の人生を生きてみたらどうだ?」
「……そうですね……。そうだ、今日の夕食当番は私ですが、何か希望はありますか」
「お、それなら久しぶりにおにぎりを頼む。食べやすいし好きなんだよな」
「それなら少し変わった焼きおにぎりというのがあります。リッツ様もきっと気に入るかと!」
「あれを焼くのか? よくわからないが、ニエがいうなら美味いんだろうな~」
「はい、間違いありません!」
俺たちはみんなが戻ってくるまで夕飯の準備を進めることにした。
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