96 / 150
96話 ミレイユサイド
しおりを挟む
「おやおや、朝からなんだと思えば揃いも揃ってどうしたんですか」
「くだらん芝居はやめろ。今度こそ、貴様ら【ヴェーダ】もここで終わりだ」
教会の入り口に立っている男はニヤけながら勢揃いした騎士団を眺めていた。騎士団の横からウェッジが出ていく。
「時間がねぇんだ。大人しくしてれば痛い目にあわなくて済むぞ」
「誰かと思えば『紅蓮の風』まで……しかし一人とは分が悪いのでは?」
教会の中から男と女がでてくると、男は短剣、女は背に槍のようなものを背負っていた。
「揃いも揃って暗器とはねぇ。ちゃんと使えんのか?」
「あなたが相手にしたのは奇襲専門でして、戦闘は最弱でしたからね。今度はご満足頂けると思いますよ?」
「そうか、そんじゃ仲良く牢に入ってくれよ」
空気が張り詰めると団長が手を挙げる。
「誰一人逃すな! 我々王国騎士の力、見せつけてやれ!」
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
兵たちの士気が上がると教会の前に立っていた男たちは散開した。ウェッジの前に立つ男の両手から刺突用の刃が現れる。
「短剣とも違うな、カタールか」
「ご名答、それでは始めましょう」
◇
数からみても有利と思われた戦いは予想外の展開を見せていた。
「攻撃を受けた者は下がれ! 治療班は敵の攻撃に警戒し毒の治療、投擲武器に注意しろ」
「この国の騎士団ってのも大したことねぇなぁ。俺もあっちにいけばよかったか」
団長の前で男がウェッジのほうを向きニヤリと笑う。手には異質な形状をした短剣が握られている。
「仕込み毒とは卑怯な真似を……」
「おいおい、俺たちが立派な騎士道精神を持ち合わせているとでも思ったのかぁ?」
男は動き出すと次々に兵を切り付け、切られた兵はその場に崩れていった。
「腕に自信のないものは一度下がれ!」
「仲間を下がらせるほど余裕があるのかぁ」
男は団長に斬りかかると同時にすかさずナイフを兵に向かって投げつけた。しかし投げられたナイフは石に弾かれ地面に落ちた。
「それくらいしか加勢できん、あとはそっちで頼む!」
「すまぬ、ウェッジ殿!!」
団長が男へ斬りかかると男は後ろに跳び距離をとった。
◇
「あんなに楽しそうにして……はぁ、こっちは雑魚ばっかりね……」
女は大勢の兵を前に溜め息をつくと、背中に付けていた槍のような長い武器を構える。先端には片刃で大きな剣のようなものがついていた。
欠伸をしながら片手で持ちあげると兵は後退るが、一人の兵が剣を手に構える。
「見た目に騙されるな! あのような武器を扱えるはずがない、スキルか何かが関係してるはずだ。同時に仕掛けるぞ!」
数人の兵が女を囲むと一人が走り出した。
「後に続けー!」
「あら勇敢なこと。――だけど、無謀ね」
女が武器を振り下ろすと兵は剣で受け流し、切られた地面が砂埃を上げると周りの兵も走り出す。
「ふん、ただ攻めるだけだと思うなよ!」
「大したものだけどこれはどうかしら」
女は刃のない背で横に薙ぎ払うと周りにいた兵をまとめて吹き飛ばす。驚異的な力と鎧に残った跡が続こうとした兵の足を止める。
「とっとと終わらせてあっちに混ざろっと」
◇
教会裏では逃げ出してきた者をすでに兵が捕らえ待機していた。
「ほ、本当にあの方を一人で行かせてよかったのだろうか」
「俺たちが行っても間違いなく邪魔になるだけだ。ここを片付けたら表の加勢に行こう」
「まさか『紅蓮の風』創設者同士の戦いとは……見てみたい気もするが」
「死にたければ止めないぞ」
「馬鹿をいうな。俺にだって大事な家族がいるんだ、無駄死にだけはしないと決めている」
兵たちが見つめる扉の先、教会内ではミレイユとアルフレッドが相対していた。
「やぁミレイユ。いつぶりだろう」
「慣れ合ってる暇はないわ。【エナミナル】をどうやって落とす気?」
「あの男、君の差し金だったか。新人を使うとはらしくないな」
「残念ながら彼は【カルサス】の使者よ。わかったらとっとと答えなさい」
アルフレッドの笑顔に対してミレイユは変わらず見据える。二人が消えた瞬間、お互いの拳がぶつかり衝撃が教会に走る。
「止めたければ力を示せ、あのときのようにな」
二人が距離を取るとミレイユは静かに深く呼吸を整えた。
「同じ風は二度吹かない。あなたの言葉、そっくり返させてもらうわ」
「くだらん芝居はやめろ。今度こそ、貴様ら【ヴェーダ】もここで終わりだ」
教会の入り口に立っている男はニヤけながら勢揃いした騎士団を眺めていた。騎士団の横からウェッジが出ていく。
「時間がねぇんだ。大人しくしてれば痛い目にあわなくて済むぞ」
「誰かと思えば『紅蓮の風』まで……しかし一人とは分が悪いのでは?」
教会の中から男と女がでてくると、男は短剣、女は背に槍のようなものを背負っていた。
「揃いも揃って暗器とはねぇ。ちゃんと使えんのか?」
「あなたが相手にしたのは奇襲専門でして、戦闘は最弱でしたからね。今度はご満足頂けると思いますよ?」
「そうか、そんじゃ仲良く牢に入ってくれよ」
空気が張り詰めると団長が手を挙げる。
「誰一人逃すな! 我々王国騎士の力、見せつけてやれ!」
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
兵たちの士気が上がると教会の前に立っていた男たちは散開した。ウェッジの前に立つ男の両手から刺突用の刃が現れる。
「短剣とも違うな、カタールか」
「ご名答、それでは始めましょう」
◇
数からみても有利と思われた戦いは予想外の展開を見せていた。
「攻撃を受けた者は下がれ! 治療班は敵の攻撃に警戒し毒の治療、投擲武器に注意しろ」
「この国の騎士団ってのも大したことねぇなぁ。俺もあっちにいけばよかったか」
団長の前で男がウェッジのほうを向きニヤリと笑う。手には異質な形状をした短剣が握られている。
「仕込み毒とは卑怯な真似を……」
「おいおい、俺たちが立派な騎士道精神を持ち合わせているとでも思ったのかぁ?」
男は動き出すと次々に兵を切り付け、切られた兵はその場に崩れていった。
「腕に自信のないものは一度下がれ!」
「仲間を下がらせるほど余裕があるのかぁ」
男は団長に斬りかかると同時にすかさずナイフを兵に向かって投げつけた。しかし投げられたナイフは石に弾かれ地面に落ちた。
「それくらいしか加勢できん、あとはそっちで頼む!」
「すまぬ、ウェッジ殿!!」
団長が男へ斬りかかると男は後ろに跳び距離をとった。
◇
「あんなに楽しそうにして……はぁ、こっちは雑魚ばっかりね……」
女は大勢の兵を前に溜め息をつくと、背中に付けていた槍のような長い武器を構える。先端には片刃で大きな剣のようなものがついていた。
欠伸をしながら片手で持ちあげると兵は後退るが、一人の兵が剣を手に構える。
「見た目に騙されるな! あのような武器を扱えるはずがない、スキルか何かが関係してるはずだ。同時に仕掛けるぞ!」
数人の兵が女を囲むと一人が走り出した。
「後に続けー!」
「あら勇敢なこと。――だけど、無謀ね」
女が武器を振り下ろすと兵は剣で受け流し、切られた地面が砂埃を上げると周りの兵も走り出す。
「ふん、ただ攻めるだけだと思うなよ!」
「大したものだけどこれはどうかしら」
女は刃のない背で横に薙ぎ払うと周りにいた兵をまとめて吹き飛ばす。驚異的な力と鎧に残った跡が続こうとした兵の足を止める。
「とっとと終わらせてあっちに混ざろっと」
◇
教会裏では逃げ出してきた者をすでに兵が捕らえ待機していた。
「ほ、本当にあの方を一人で行かせてよかったのだろうか」
「俺たちが行っても間違いなく邪魔になるだけだ。ここを片付けたら表の加勢に行こう」
「まさか『紅蓮の風』創設者同士の戦いとは……見てみたい気もするが」
「死にたければ止めないぞ」
「馬鹿をいうな。俺にだって大事な家族がいるんだ、無駄死にだけはしないと決めている」
兵たちが見つめる扉の先、教会内ではミレイユとアルフレッドが相対していた。
「やぁミレイユ。いつぶりだろう」
「慣れ合ってる暇はないわ。【エナミナル】をどうやって落とす気?」
「あの男、君の差し金だったか。新人を使うとはらしくないな」
「残念ながら彼は【カルサス】の使者よ。わかったらとっとと答えなさい」
アルフレッドの笑顔に対してミレイユは変わらず見据える。二人が消えた瞬間、お互いの拳がぶつかり衝撃が教会に走る。
「止めたければ力を示せ、あのときのようにな」
二人が距離を取るとミレイユは静かに深く呼吸を整えた。
「同じ風は二度吹かない。あなたの言葉、そっくり返させてもらうわ」
11
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる