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76話
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「――あ、先生! お久しぶりでブハッ!!」
俺のほうを余所見したユリウスの顔面に剣が刺さる。
「お~余所見したせいで今お前は死んだぞ。模造刀でよかったなぁ」
「し、師匠……挨拶くらいさせてくれても……」
「躱しながら挨拶すればいい、あいつらみたいに」
ウェッジさんがミレイユ師匠にしごかれている団員を指す。
「ふぁぁああああああああリッツじゃねえええええかぁーーー!!」
「お、お前こっちにくんじゃねえええええええ! おおああああリッツじゃねぇえかー!?」
「最近サボってばっかで鈍ってんじゃ――ああああああああああねぇのかああああ!!」
恐怖に叫びながらわざわざ声を掛けてくれているが、一手遅れた人から師匠にぶっ飛ばされ宙を舞う。
おー見事なやられっぷり……。みんなの姿を見るのもなんだか久しぶりだな。
懐かしい光景を眺めていると恐る恐るユリウスがウェッジさんをみた。
「全然躱せていないように見えるのですが……」
「当たり前だ、躱せたら鍛錬にならないだろ」
ユリウスが茫然とする中、全員がぶっ飛ばされたのを確認し師匠の下へ向かう。
「師匠、久しぶりに手合わせをお願いしていいですか」
「あら、どうしたの急に」
「勘を取り戻したいのと、この服の性能を確認したいんです」
「わかったわ」
息一つ切らしていない師匠から俺は少し離れ構える。
「それじゃいきます」
師匠に向かって距離を詰めると拳をぶつけた。その瞬間、受けた師匠の掌から乾いた破裂音が聞こえる。
「これは……打撃というよりも衝撃の増加ってとこかしら?」
「次いきます」
俺は蹴りを出すと師匠は腕で防御する。
「これも相当な威力、普通なら骨が折れるわね」
一通り攻撃をすると俺は距離を取り構えを変えた。
「攻めはなかなか、次は防御面ね――」
師匠が一瞬で間合いを詰めると俺の腹に拳が当たる。その瞬間、凄まじい衝撃波が起き俺は体が宙に浮いた。
「ぐぅ……ッ!」
着地をすると思っていたよりも衝撃が少なかったことに気付く。
「なるほど、強い衝撃ほど跳ね返す力も跳ね上がるってことね」
「――師匠ッ!? 手が!!」
師匠の俺を打った拳は出血していた。
「すぐ薬を出します!」
「これくらい平気よ。それより、その程度で私に勝ったと思った?」
師匠は構え直した俺に向かって同じ拳で打ってきた。だが、今度は俺の体を浮かせることはなく、背中から何かが突き抜けたと思うと吐き気が迫ってくる。
「ぐっ……お、おええぇ……っ」
な、なんだ今の…………。
「いくら最高の鎧だろうと中は生身、外がダメなら内からってね」
師匠はどうだと言わんばかりの笑顔を見せている。よっぽどダメージが大きかったのか、なかなか立ち上がれない俺に向かって師匠は声を掛けてくる。
「この程度で倒れちゃダメ。ほら、教えたでしょ。どんなときでも呼吸は正しく苦しいときこそ全身を使ってするのよ」
必死に息を整え立ち上がると今度は横蹴りがくる。
「ぐううぅ……ッ!」
「あなたはそろそろダメージを受け流せるようにしなきゃね。まずは内に響くその痛みに慣れなさい。次にそれを外へ逃がしてあげるのよ」
足の踏ん張りがきかず何を言われているのかもわからない俺に攻撃が次々にとんでくる。
「相変わらずリッツには容赦ねぇ……」
「昔、俺も食らったことあるけどまじでやべーんだよあれ」
「一発食らっただけで足がぷるぷるしてたもんな。あんときは笑って悪かったぜ」
周りで笑い声やユリウスの悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は師匠に一発も返すことができないまま地面に倒れた。
俺のほうを余所見したユリウスの顔面に剣が刺さる。
「お~余所見したせいで今お前は死んだぞ。模造刀でよかったなぁ」
「し、師匠……挨拶くらいさせてくれても……」
「躱しながら挨拶すればいい、あいつらみたいに」
ウェッジさんがミレイユ師匠にしごかれている団員を指す。
「ふぁぁああああああああリッツじゃねえええええかぁーーー!!」
「お、お前こっちにくんじゃねえええええええ! おおああああリッツじゃねぇえかー!?」
「最近サボってばっかで鈍ってんじゃ――ああああああああああねぇのかああああ!!」
恐怖に叫びながらわざわざ声を掛けてくれているが、一手遅れた人から師匠にぶっ飛ばされ宙を舞う。
おー見事なやられっぷり……。みんなの姿を見るのもなんだか久しぶりだな。
懐かしい光景を眺めていると恐る恐るユリウスがウェッジさんをみた。
「全然躱せていないように見えるのですが……」
「当たり前だ、躱せたら鍛錬にならないだろ」
ユリウスが茫然とする中、全員がぶっ飛ばされたのを確認し師匠の下へ向かう。
「師匠、久しぶりに手合わせをお願いしていいですか」
「あら、どうしたの急に」
「勘を取り戻したいのと、この服の性能を確認したいんです」
「わかったわ」
息一つ切らしていない師匠から俺は少し離れ構える。
「それじゃいきます」
師匠に向かって距離を詰めると拳をぶつけた。その瞬間、受けた師匠の掌から乾いた破裂音が聞こえる。
「これは……打撃というよりも衝撃の増加ってとこかしら?」
「次いきます」
俺は蹴りを出すと師匠は腕で防御する。
「これも相当な威力、普通なら骨が折れるわね」
一通り攻撃をすると俺は距離を取り構えを変えた。
「攻めはなかなか、次は防御面ね――」
師匠が一瞬で間合いを詰めると俺の腹に拳が当たる。その瞬間、凄まじい衝撃波が起き俺は体が宙に浮いた。
「ぐぅ……ッ!」
着地をすると思っていたよりも衝撃が少なかったことに気付く。
「なるほど、強い衝撃ほど跳ね返す力も跳ね上がるってことね」
「――師匠ッ!? 手が!!」
師匠の俺を打った拳は出血していた。
「すぐ薬を出します!」
「これくらい平気よ。それより、その程度で私に勝ったと思った?」
師匠は構え直した俺に向かって同じ拳で打ってきた。だが、今度は俺の体を浮かせることはなく、背中から何かが突き抜けたと思うと吐き気が迫ってくる。
「ぐっ……お、おええぇ……っ」
な、なんだ今の…………。
「いくら最高の鎧だろうと中は生身、外がダメなら内からってね」
師匠はどうだと言わんばかりの笑顔を見せている。よっぽどダメージが大きかったのか、なかなか立ち上がれない俺に向かって師匠は声を掛けてくる。
「この程度で倒れちゃダメ。ほら、教えたでしょ。どんなときでも呼吸は正しく苦しいときこそ全身を使ってするのよ」
必死に息を整え立ち上がると今度は横蹴りがくる。
「ぐううぅ……ッ!」
「あなたはそろそろダメージを受け流せるようにしなきゃね。まずは内に響くその痛みに慣れなさい。次にそれを外へ逃がしてあげるのよ」
足の踏ん張りがきかず何を言われているのかもわからない俺に攻撃が次々にとんでくる。
「相変わらずリッツには容赦ねぇ……」
「昔、俺も食らったことあるけどまじでやべーんだよあれ」
「一発食らっただけで足がぷるぷるしてたもんな。あんときは笑って悪かったぜ」
周りで笑い声やユリウスの悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は師匠に一発も返すことができないまま地面に倒れた。
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