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66話
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※66話,67話は長文が多く大変読みづらい&不快に思われる方がいらっしゃるかもしれないため先に注意喚起をさせて頂きます。すぐ戻りますので苦手な方は数話だけお待ち頂ければ幸いです。
遥か昔、一族の守護者に若くして選ばれた少年がいた。
少年は村人や神獣からも信頼が厚く、次期長として有望視されていたのだが――。
「兄は私が病にかかったことを知り薬を探しに外へ出た。……それが全ての始まりよ」
遺跡の脇に座り、リヤンはアンジェロを撫でる。
「焦りからか、兄はあろうことか聖域に外の人間を連れてきたわ。数日後、兵が押し寄せそこで初めて兄は自分が騙されていたことに気付いた」
「なんでわざわざ聖域に? 一族が守ってきた植物があるくらいでほかには何もないだろ」
「兄は知っていたの。その植物が不死の霊薬を作る素材の一つであることを、そしてそれをどこかで喋ってしまった。それを利用した人間に、兄は植物を使えば病を治せると騙されていたのよ」
「ちょ、ちょっと待て、不死の霊薬なんて本当に存在するのか!?」
「あなたも不死という存在に目が眩んだかしら?」
「違う違う! 俺はエリクサーが不老不死の薬だと間違われていたせいで国を追放されたんだ。本当に不死の霊薬があるんだったら、なぜエリクサーが不死の薬と間違われていたのか気になったんだよ」
追放されたこと自体はむしろよかったとも思えるが、そもそも論として、誰がなんのためにエリクサーを不死の薬だなどと言い出したかがずっと疑問だったんだ。
「ふふふ、まさか本当にエリクサーが存在するなんて……兄を騙した人間ですら聞いたら驚いただろうね」
リヤンは鼻で笑うと一呼吸おき話を続けた。
「聖域で争いが始まると私は兄を庇い瀕死の重傷を負ったわ。怒りに飲まれた兄は神獣と共に暴れ回ると止めようとした仲間ですらも手に掛け、そして大勢の犠牲を出すと血で染まった聖域で兄はついに討たれた。だけど、兄は死ぬ寸前だった私の顔に触れると立ち上がり、植物の下へいった。……そして、ついに不死の霊薬を作り出した」
信じられん……。だがリヤンが嘘をついているようにもみえないし……というか嘘をつく理由が見当たらない。
「なぜ不死の霊薬を作ったなんてわかるんだ?」
「目の前にいるじゃない、その証拠が」
リヤンは俺の目を見た。
「――まさか!?」
口が開いたままの俺にリヤンは無言で頷く。
「私は老いることなく長い年月を過ごしてきた。だけどこの身体は呪われていてね、いくら不死だといっても病は治らないし、痛みを味わう日々はまさに生き地獄だったわ」
そ、そんなの地獄以上だろ……精神がよくやられなかったな……。
「俺の知り合いで呪いを解ける奴がいるんだ。そいつにお願いして解いてもらおう!」
「この呪いは解いても解けないの。呪われ続けているといえばいいかしら。……それに変だと思わない? 不死の霊薬は一つしかできなかったのに私と同じ時代に生きた兄にあなたは出会った」
そういえばあの少年も痣と穢れを持っていた。それにリヤンと同じ時代から生きているとすれば間違いなく不死のはずだ。
「もしかして、不死の霊薬を半分ずつ使ったってことか? それでどうなるかは俺にはわからないが、二人いるってことはそういうことだろ?」
「正解よ。聖域にある植物、その名は『エリクシール』。そしてその花こそが不死の霊薬だった。兄は私に花を使ったけど、それが呪われていることを知りすぐに自分へ使った結果、呪われた不死の兄妹が誕生したわけよ」
「ま、待ってくれ。花が呪われていたように聞こえたがどういうことだ」
「エリクシールは穢れを浄化する。その聖域で人の血と欲望が降り注いだら? 花というよりもエリクシール自体が呪われたと言った方がいいわね。私たちの不死の呪いはエリクシールの呪いを解かない限り消えないの」
リヤンは淡々とした口調で言うとアンジェロを撫で始めた。
……シリウスのようなスキルは持っていないが嘘をついているようにもみえないな。
「頭が追いつかないが……リヤンの兄は何を企んでいる? 俺を真っ先に始末しようとしたのはなぜだ?」
「さっき、エリクサーが不死の薬と間違われてるって言ったわよね。兄は万能薬のエリクサーがあると嘘を聞かされていたの。だから嘘をそのまま利用して世界に復讐しようとしているのよ。不死とは人間の欲望を掻き立て災いをもたらす――永遠の命を手に入れようと人々が必死になれば自ずと争いを生むと考えてね」
「だから唯一エリクシールに辿り着く可能性がある俺を殺しにきたわけか」
だが、待てよ……不死や穢れが本当にあったとしたらニエが言っていたお伽話って――。
「ちょっといいか。一族に伝わる神様が――っていう話はまさか……」
「あれは本当の話よ。私は兄が封印されている間、なぜ自分たちだけが聖域を護る使命を持たされていたのか気になって旅をしていたの。そして辿り着いたのが、穢れを浄化できる神獣の存在とアーティファクトだった」
リヤンは立ち上がると遺跡の中に俺たちを招いて歩き出した。
遥か昔、一族の守護者に若くして選ばれた少年がいた。
少年は村人や神獣からも信頼が厚く、次期長として有望視されていたのだが――。
「兄は私が病にかかったことを知り薬を探しに外へ出た。……それが全ての始まりよ」
遺跡の脇に座り、リヤンはアンジェロを撫でる。
「焦りからか、兄はあろうことか聖域に外の人間を連れてきたわ。数日後、兵が押し寄せそこで初めて兄は自分が騙されていたことに気付いた」
「なんでわざわざ聖域に? 一族が守ってきた植物があるくらいでほかには何もないだろ」
「兄は知っていたの。その植物が不死の霊薬を作る素材の一つであることを、そしてそれをどこかで喋ってしまった。それを利用した人間に、兄は植物を使えば病を治せると騙されていたのよ」
「ちょ、ちょっと待て、不死の霊薬なんて本当に存在するのか!?」
「あなたも不死という存在に目が眩んだかしら?」
「違う違う! 俺はエリクサーが不老不死の薬だと間違われていたせいで国を追放されたんだ。本当に不死の霊薬があるんだったら、なぜエリクサーが不死の薬と間違われていたのか気になったんだよ」
追放されたこと自体はむしろよかったとも思えるが、そもそも論として、誰がなんのためにエリクサーを不死の薬だなどと言い出したかがずっと疑問だったんだ。
「ふふふ、まさか本当にエリクサーが存在するなんて……兄を騙した人間ですら聞いたら驚いただろうね」
リヤンは鼻で笑うと一呼吸おき話を続けた。
「聖域で争いが始まると私は兄を庇い瀕死の重傷を負ったわ。怒りに飲まれた兄は神獣と共に暴れ回ると止めようとした仲間ですらも手に掛け、そして大勢の犠牲を出すと血で染まった聖域で兄はついに討たれた。だけど、兄は死ぬ寸前だった私の顔に触れると立ち上がり、植物の下へいった。……そして、ついに不死の霊薬を作り出した」
信じられん……。だがリヤンが嘘をついているようにもみえないし……というか嘘をつく理由が見当たらない。
「なぜ不死の霊薬を作ったなんてわかるんだ?」
「目の前にいるじゃない、その証拠が」
リヤンは俺の目を見た。
「――まさか!?」
口が開いたままの俺にリヤンは無言で頷く。
「私は老いることなく長い年月を過ごしてきた。だけどこの身体は呪われていてね、いくら不死だといっても病は治らないし、痛みを味わう日々はまさに生き地獄だったわ」
そ、そんなの地獄以上だろ……精神がよくやられなかったな……。
「俺の知り合いで呪いを解ける奴がいるんだ。そいつにお願いして解いてもらおう!」
「この呪いは解いても解けないの。呪われ続けているといえばいいかしら。……それに変だと思わない? 不死の霊薬は一つしかできなかったのに私と同じ時代に生きた兄にあなたは出会った」
そういえばあの少年も痣と穢れを持っていた。それにリヤンと同じ時代から生きているとすれば間違いなく不死のはずだ。
「もしかして、不死の霊薬を半分ずつ使ったってことか? それでどうなるかは俺にはわからないが、二人いるってことはそういうことだろ?」
「正解よ。聖域にある植物、その名は『エリクシール』。そしてその花こそが不死の霊薬だった。兄は私に花を使ったけど、それが呪われていることを知りすぐに自分へ使った結果、呪われた不死の兄妹が誕生したわけよ」
「ま、待ってくれ。花が呪われていたように聞こえたがどういうことだ」
「エリクシールは穢れを浄化する。その聖域で人の血と欲望が降り注いだら? 花というよりもエリクシール自体が呪われたと言った方がいいわね。私たちの不死の呪いはエリクシールの呪いを解かない限り消えないの」
リヤンは淡々とした口調で言うとアンジェロを撫で始めた。
……シリウスのようなスキルは持っていないが嘘をついているようにもみえないな。
「頭が追いつかないが……リヤンの兄は何を企んでいる? 俺を真っ先に始末しようとしたのはなぜだ?」
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リヤンは立ち上がると遺跡の中に俺たちを招いて歩き出した。
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