エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬

文字の大きさ
上 下
65 / 150

65話

しおりを挟む
「こりゃあまた随分と……あなた、ハンターか冒険者稼業でもしてるの?」

「知人に強い人がいてね。お金は問題ないから俺の分とあともう一つ、これも頼む」

 俺は鞄からニエの服を出すと店主に渡した。

「あら、これまたすごい状態ね」

 受け取った店主は服をじっくりと調べる。

「二つとも生地の素材としては申し分ないけど、新しいのを使う?」

「ニエ、残してもいいがどうする?」

「思い入れのあるものでもないのでリッツ様にお任せします」

「それなら服を生地に使ってもらおう。新たに気持ちも切り替えられるしな」

 師匠に見つかればどんな地獄が待っているかわからないし、捨てずに済むならそれに越したことはないからな。

「わかったわ。あとは素材を選ぶけど希望は?」

「まず防刃、耐火もほしいな。衝撃吸収なんてのもつけれる? あ、でも俺は武器を使わないからな……打撃の力は損なわないようにしたいんだが」

「武器を使わないとはよっぽど腕に自信でもあるのかい」

「色々あってな。で、いけそうか?」

「素材は申し分ないからあんたの分だけならやれそうだね」

「それじゃあ頼む。ニエの分はとにかく本人を護れるように作ってくれ」

「はいよ、それじゃ素材を選ぶから待ってな」

 店主が二つの袋に素材を詰めると手渡してくる。

「それじゃこれをルガータに持って行ってくれ。仕事だと言えばわかる」

 俺たちは店を出るとルガータの家へ戻った。

「やぁどうだった?」

「この通り、あんたの仕事をもらってきてやったよ」

 素材の入った袋を手渡すとルガータは中を確認する。

「こりゃあ今日は徹夜かなぁ……。僕は仕事に入るから、君たちは島の観光でもしてきたらいい。昨日使った部屋は勝手に使っていいからね」

 ルガータは袋を持つと小屋に入り扉を閉めた。

「ちょうど時間ができたわね、話があるからついてきて」

 リヤンの後を追うと遺跡のような場所に出る。

「なんだここ?」

 中は広そうだな……。いつの時代に作られたモノだろう。

 リヤンは入り口で立ち止まるとこちらに振り返る。

「リッツといったか、あなたたちは穢れをどこで知った?」

「俺はあんたと同じようなヤツを二人見ていてね。一人は助けられたが、もう一人の神獣を連れた少年には殺されかけたんだ」

「……やはり、封印が解かれたのね…………」

 リヤンは小さく確認するように言葉を放った。

「聞きたいことは山ほどあるが、リヤンはあの少年のことを知っているのか?」

「えぇ、だけどその前にあなたたちは一族と神獣、そして穢れについてどこまで知っているか答えて」

 何度か質問を聞かれ、俺とニエは知っている範囲で答えていく。

「ニエ、あなたはほかに聞いていることはない?」

「ありません。私はリッツ様を見届けよと言われてきましたので」

「……わかったわ」

 リヤンはしばらく何かを考えると俺をみた。

「リッツ、あなたを襲った少年は……私の兄よ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

裏切り者扱いされた氷の魔術師、仲良くなった魔族と共に暮らします!

きょろ
ファンタジー
【※こちらの作品は『第17回ファンタジー小説大賞』用に執筆した為、既に書き終えてあります! 毎日1~2話投稿予定。9/30までに完結致します! 宜しくお願い致します】 勇者パーティの一員として、魔族と激戦を繰り広げた氷の魔術師・アッシュ。 儚くも魔王に辿り着く前に全滅してしまった勇者パーティ。 そこで氷の魔術師のアッシュだけが、囚われの身となってしまった挙句、 何故か彼は予期せずして魔族と親交を深めていた。 しかし、勇者パーティの一員としての使命を決して忘れずにいたアッシュ。 遂に囚われの身から解放され、仲間の待つ王都へと帰還。 だがそこで彼を待ち受けていたのは信じられない“絶望”だった。 裏切られ、全てを失った氷の魔術師アッシュ。 凍てつく程に冷たい感情が芽生えた彼が次にと行動…。 それは、親交深めた“魔族”との共生であった――。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

処理中です...