61 / 150
61話
しおりを挟む
長かった船旅が終わり大地に降り立つ。まだ揺れている気もするが何かの間違いだろう。
「しかし、これはすごいな……」
船から見たときは【カルサス】より山が多いくらいにしか思っていなかったが、実際こうして島に降りてみると目の前が緑一色だ。秋が近いため場所によってはすでに紅葉が広がっていたが、それでも密度が違う。
隆起した大地は険しい岩肌を見せており、来る者を拒絶しているようにもみえる。
「リッツ様、あれはなんでしょうか?」
ニエが遠くにある山を指す。
「ん~? 何も見えないが」
「あ、落ちました」
ニエには何かが見えていたらしいが、鳥が飛んでいたりとまったく見分けがつかない。
「ワフッ!」
「え、お前も見えてたの?」
どんだけ目がいいの君たち……。
「せっかくだから見に行ってみよう。遅かれ早かれ森には入る予定だったしな」
森に入りアンジェロに乗ると目的地目指し突き進む。野生の勘なのかアンジェロは迷うことなく、山を登っていった。
「リッツ様、この辺りですね」
道らしいものは一切なく、俺たちがいること自体が不釣り合いな場所でアンジェロは止まった。
「お~い、そこの人たち!」
「……?」
声がしたため俺はニエとアンジェロを見るが二人はこちらを見ていた。
「こっちだよ、こっち~!」
上を見ると男性が木の枝にぶら下がっている……というか引っかかっていた。
「ちょっと身動きがとれなくてさ~、すまないが降ろしてもらえないかなぁ?」
木から降ろすと男性はぼさぼさになった髪を掻きながら乱れた服を直した。
「いや~助かったよ。君たち、この辺じゃ見かけない服装だね。もしかして外から来た?」
「あぁ、さっき着いたばかりなんだがこの辺で何かが落ちるのをみてな。来て見ればこの通り、あんたが木に引っ掛かってたわけだ」
「こりゃあ幸運だ! 僕はルガータ、君たちが来てくれなきゃまた一人で寂しい夜を迎えるところだったよ」
「またって……前もこうなったのか?」
「いや~お恥ずかしいんだがこれで五度目くらいかな? ちょっとした実験をしていてね、君たちはなぜここへ? えーっと……」
「俺はリッツ、彼女はニエで――」
ニエの横で大きいアンジェロが小さくなる。
「……こいつはアンジェロ、たまにでかくなったりする」
「こりゃあすごい! 外にはこんな生き物までいるのか!」
ルガータはアンジェロを見て大喜びしていた。
いてたまるか……この人は少し変わっているのかもしれないな。
「そうだ、助けてもらったお礼に家に来なよ。見てもらいたいものがあるんだ」
「それじゃあ宿もまだだしお邪魔させてもらうよ」
「歓迎するよ。あ、その前に……あれはどこにいったかな――」
ルガータは何かを探し森に入っていくと細長い板のようなものを持って戻ってくる。何か見たこともない装置が付いているが用途はまったく想像がつかない。
「それじゃ案内するよ」
◇
ルガータが持っていた板を俺が変わりに持ち、後ろをニエとアンジェロがついてくる。
山をしばらく登ると木造の家が現れ、隣にある大きな小屋は扉が開けっぱなしになっており、中にはルガータが見つけてきた板に似たようなものがいくつも置いてあった。
「はぁ……はぁ……ちょっと待ってくれ……君たち、体力凄いねぇ……」
遅れてルガータが到着すると膝に手をつく。アンジェロときたニエは息一つ切らしていない。
「ニエって結構体力あるんだな」
「リッツ様がどこへ行こうと遅れるわけにはいきませんから」
その執念をもう少し自分のことに役立ててもいいと思うんだが。
「ふぅ~ありがとう、もう大丈夫だ」
ルガータは立ち上がると小屋に向かった。
「なぁ、この板っていったい何なんだ?」
「よく聞いてくれたね! これは今研究中の『エアライド』といって、空を自由自在に飛ぶことができるアーティファクトなんだ!」
「……そのわりには落ちてたようだが」
「まだ課題はいくつか残っていてね、それさえうまくいけばきっと完成するはずさ」
「ふーん……俺も乗ってみていいか?」
「お、君も試してみたくなったかい! いかにコントロールが難しいか体験してみるといい。僕が落ちたのも頷けるからね」
俺はルガータが小屋から持ってきた板を借りる。
「足の前面にあるのが浮遊装置、後ろが加速調整だ。離せばそのままブレーキになるからやってみるといい」
俺はルガータが説明した通り板の前にあるスイッチを踏むと板に入っていた模様が光出す。
「おっ、おぉ!」
板が浮き上がると今度は後ろのスイッチを少し踏み込んでみる。
「おわぁ!?」
身体を踏ん張るとどんどん加速して空を飛んでいく。
こりゃあ楽しい!
「お~やるじゃないか! リッツ君、いい感じだぞ!」
「ルガータさん、リッツ様を見る限り問題なさそうに見えますが課題というのは?」
「あぁ、乗りこなすのが難しいというのが一つと、もう一つが――」
急に俺の乗っていた板が揺れ始める。
「燃費が悪すぎるんだよ」
「うわああああぁぁぁっ……!」
力を失くした板と一緒に俺は木の上に落下した。
「しかし、これはすごいな……」
船から見たときは【カルサス】より山が多いくらいにしか思っていなかったが、実際こうして島に降りてみると目の前が緑一色だ。秋が近いため場所によってはすでに紅葉が広がっていたが、それでも密度が違う。
隆起した大地は険しい岩肌を見せており、来る者を拒絶しているようにもみえる。
「リッツ様、あれはなんでしょうか?」
ニエが遠くにある山を指す。
「ん~? 何も見えないが」
「あ、落ちました」
ニエには何かが見えていたらしいが、鳥が飛んでいたりとまったく見分けがつかない。
「ワフッ!」
「え、お前も見えてたの?」
どんだけ目がいいの君たち……。
「せっかくだから見に行ってみよう。遅かれ早かれ森には入る予定だったしな」
森に入りアンジェロに乗ると目的地目指し突き進む。野生の勘なのかアンジェロは迷うことなく、山を登っていった。
「リッツ様、この辺りですね」
道らしいものは一切なく、俺たちがいること自体が不釣り合いな場所でアンジェロは止まった。
「お~い、そこの人たち!」
「……?」
声がしたため俺はニエとアンジェロを見るが二人はこちらを見ていた。
「こっちだよ、こっち~!」
上を見ると男性が木の枝にぶら下がっている……というか引っかかっていた。
「ちょっと身動きがとれなくてさ~、すまないが降ろしてもらえないかなぁ?」
木から降ろすと男性はぼさぼさになった髪を掻きながら乱れた服を直した。
「いや~助かったよ。君たち、この辺じゃ見かけない服装だね。もしかして外から来た?」
「あぁ、さっき着いたばかりなんだがこの辺で何かが落ちるのをみてな。来て見ればこの通り、あんたが木に引っ掛かってたわけだ」
「こりゃあ幸運だ! 僕はルガータ、君たちが来てくれなきゃまた一人で寂しい夜を迎えるところだったよ」
「またって……前もこうなったのか?」
「いや~お恥ずかしいんだがこれで五度目くらいかな? ちょっとした実験をしていてね、君たちはなぜここへ? えーっと……」
「俺はリッツ、彼女はニエで――」
ニエの横で大きいアンジェロが小さくなる。
「……こいつはアンジェロ、たまにでかくなったりする」
「こりゃあすごい! 外にはこんな生き物までいるのか!」
ルガータはアンジェロを見て大喜びしていた。
いてたまるか……この人は少し変わっているのかもしれないな。
「そうだ、助けてもらったお礼に家に来なよ。見てもらいたいものがあるんだ」
「それじゃあ宿もまだだしお邪魔させてもらうよ」
「歓迎するよ。あ、その前に……あれはどこにいったかな――」
ルガータは何かを探し森に入っていくと細長い板のようなものを持って戻ってくる。何か見たこともない装置が付いているが用途はまったく想像がつかない。
「それじゃ案内するよ」
◇
ルガータが持っていた板を俺が変わりに持ち、後ろをニエとアンジェロがついてくる。
山をしばらく登ると木造の家が現れ、隣にある大きな小屋は扉が開けっぱなしになっており、中にはルガータが見つけてきた板に似たようなものがいくつも置いてあった。
「はぁ……はぁ……ちょっと待ってくれ……君たち、体力凄いねぇ……」
遅れてルガータが到着すると膝に手をつく。アンジェロときたニエは息一つ切らしていない。
「ニエって結構体力あるんだな」
「リッツ様がどこへ行こうと遅れるわけにはいきませんから」
その執念をもう少し自分のことに役立ててもいいと思うんだが。
「ふぅ~ありがとう、もう大丈夫だ」
ルガータは立ち上がると小屋に向かった。
「なぁ、この板っていったい何なんだ?」
「よく聞いてくれたね! これは今研究中の『エアライド』といって、空を自由自在に飛ぶことができるアーティファクトなんだ!」
「……そのわりには落ちてたようだが」
「まだ課題はいくつか残っていてね、それさえうまくいけばきっと完成するはずさ」
「ふーん……俺も乗ってみていいか?」
「お、君も試してみたくなったかい! いかにコントロールが難しいか体験してみるといい。僕が落ちたのも頷けるからね」
俺はルガータが小屋から持ってきた板を借りる。
「足の前面にあるのが浮遊装置、後ろが加速調整だ。離せばそのままブレーキになるからやってみるといい」
俺はルガータが説明した通り板の前にあるスイッチを踏むと板に入っていた模様が光出す。
「おっ、おぉ!」
板が浮き上がると今度は後ろのスイッチを少し踏み込んでみる。
「おわぁ!?」
身体を踏ん張るとどんどん加速して空を飛んでいく。
こりゃあ楽しい!
「お~やるじゃないか! リッツ君、いい感じだぞ!」
「ルガータさん、リッツ様を見る限り問題なさそうに見えますが課題というのは?」
「あぁ、乗りこなすのが難しいというのが一つと、もう一つが――」
急に俺の乗っていた板が揺れ始める。
「燃費が悪すぎるんだよ」
「うわああああぁぁぁっ……!」
力を失くした板と一緒に俺は木の上に落下した。
24
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる