エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬

文字の大きさ
上 下
57 / 150

57話

しおりを挟む
「……こんなんなっちゃった」

「……何をどうしたらこうなる。普通ならないよな? さぁ、説明をするがいい」

 もうここに来るのも慣れた気がする――城の客室、足を組んで座るシリウスの前には、穴が開き生々しい色に染まった服が置いてあった。

 やっぱり白はいけないな……汚れが目立つ。

「ちょっと転んで怪我しちゃって」

「お前、私に嘘が通用しないことを忘れてないか」

 あっ……。

「ん~色々ありすぎて何をどこまで話したらいいか、時間がかかっちゃうなぁ」

「案ずるな、今はシルエが対応している。時間はたっぷりとあるぞ」

 くそ! お前サボりたいだけなんじゃないのか!?

「ニエはどう思う?」

「リッツ様のご自由にしてください」

 ニエは笑顔で膝に置いたアンジェロを撫でている。

「……シリウス、話してもいいが聞いて後悔するなよ?」

「ほう……私を脅すというのか。面白い、受けて立つぞ」

 いや、まじで面白くもないしヤバいんだけど。知らないよ、後悔したって遅いんだからね?

 俺はシリウスに順を追って説明した。







「――これが証拠、その2だ」

 俺は首元が真っ赤に染まってしまったニエの服を机に並べる。これが決定打となったのかシリウスは机に肘を付き頭を抱えた。

「…………」

「おーい?」

「うるさい、今整理中だ」

 シリウスはぶつぶつと独り言を呟き、しばらくすると顔をあげた。

「よし、ひとまずお前とその子を一緒にさせてしまおう。式はいつ頃がいい?」

「ちょっと待て! 人の話聞いてた!?」

「もちろんだ。問題が二つあったときは一つに纏めてしまったほうが解決しやすい、君もそう思うだろう?」

「とても素敵な案ですね。リッツ様は照れ屋ですから」

「何をどうしたら俺が照れ屋に見えるんだよ」

「そういうところです、うふふ」

 どうやらニエは俺を前にすると頭が弱くなるようだ。

「私にはお似合いにしか見えないが……まぁいい、話を戻すぞ。その少年はリッツが生きていると分かればまた襲ってくることは間違いない。ならば服も耐久性に優れたものを選んでおいた方がいいと思うのだが」

「あー言われてみれば確かに……だけど鎧じゃ動き難くてダメだし、どうしたもんかなぁ」

 シリウスは顎に手を当て何かを考える。

「……海を渡った先に【ザーフニーゼン】という島国がある。噂ではアーティファクトがよく見つかっていると聞く。そこなら何か使えそうな防具や品を見つけられるかもしれんぞ」

 海の向こうか……考えたこともなかった……。

「行ってみる価値はありそうだな」

「数日後に船が出るはずだ、それまで考えてみるといい」

「わかった、ありがとう」

 俺は服を片付け城を出た。

「ニエは海の向こうに行ったことある?」

「ありません。ですからリッツ様がこれから向かうというのであれば楽しみですね」

 ニエは笑顔で返事をする。

 もしかしたら見たこともない草が生えてるかも……これはまたとないチャンスだろう。

「やっぱ、行ってみたいよな」

「ふふふ、そうですね」

「……いくか」

「リッツ様がそう思うのであれば行きましょう」

 俺の胸は高鳴り、興奮止まず家に戻ると師匠たちに話をする。

 みんなも行ったことがあるらしく、緑豊かで【カルサス】に似ている部分もあるという。つまり、未知の草に出会える期待度は大、これは行くしかないだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...