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55話 ミレイユサイド

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 山奥にひっそりと佇む小屋の前でミレイユとウェッジ、そしてユリウスが立っていた。

「し、し、師匠……」

「あぁ? なんだ?」

 震えるユリウスの声にウェッジは面倒くさそうに振り返る。

「ほ、本当に、ぼぼ、僕が行くんですか」

「もう来てんじゃねぇか。ほれ、あとは突っ込むだけだ」

「ティーナ嬢に負けたくないのだろう? 少ししか話はしてないが、彼女は強いぞ」

 ミレイユの言葉にユリウスはゴクリと唾を飲み込む。

「も、ももも、もし僕が死んだら彼女に……心から愛してたと、そうお伝えください!!」

 ユリウスは震える手で剣を抜くと小屋の扉を蹴り開けた。

「ぉ、おぉお前たちの悪事もそこまでだ! 観念しろ!」

 震えるユリウスの声に中にいた男たちは一瞬固まるが大笑いする。

「なんだあ坊主、迷子かぁ?」

「へへへ、俺が遊んでやるぜ! おら、かかってきな!」

「う、うぅ……くそーー!!」

 酒を飲んでいた男が瓶を手に持ち歩いてくるとユリウスは斬りかかった。

「おっと、ほらどうした? そんなへっぴり腰じゃ当たんねぇぞ?」

 剣を振り回すユリウスを見て中にいた男たちは大笑いする。

「お~い、もっと頑張んねぇと死ぬぞ~。まぁ頑張っても死ぬがな!」

「遊んでねぇでさっさとやっちまえよ!」

 盛り上がる周りに応えるように男は瓶を持ち直す。

「そんじゃ遊びは終わりだ。あばよッ!!」

「わあああああああああ!!」

 叫ぶユリウスに男が瓶を振り上げ襲いかかると、ユリウスの頭を空振りしユリウスが持つ剣面が男の顔を殴りつけた。

「…………あっあれ?」

「クソガキ……よくもやってくれたな」

 ユリウスが倒れる男を見ていると仲間たちが近くに置いてあった武器を手に立ち上がる。

「死にやがれええええええ!」

「え、ちょ、し師匠ぉぉおおお助けてええぇぇぇッ!!」

 その声に突然、武器を持った男は吹き飛んだ。

「……?」

「初めてにしては――ん~ぎりぎり及第点ってところだな」

 ウェッジは頭を抑え涙目になっているユリウスへ目を向けた。

「な、なんだてめぇ!!」

 男たちが一斉にかかってくると真ん中の一人を残して倒れる。

「はっ……え?」

 残された男は一人立ち竦む。

「さて、残るはお前だけだ。色々と聞きたいんだが答えてくれるな?」

「あ、はいー……」



 城の兵がやってくるとウェッジは男たちを引き渡した。

「団長の言った通り、奴ら薬草を集めてどこかに送ってたようですね」

「お前は買い手の痕跡を探せ。私は異様な取引がないか調べてみる」

「あ、あの、こいつらはいったい何をしていたんですか」

「買い占めと市場の不法占拠ってとこだ。さぁ、お前は帰ってみんなに勇姿を知らせてこい」

 ユリウスは初めての実戦を思い出し震えていたが拳を握りしめ父がいる書斎の扉を叩いた。
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