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48話

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「お父様、お母様、ティーナです。手紙を頂き急ぎ参りました」

 誰もいない玄関ホールに声が響くと老齢の執事がやってくる。

「ティーナ様、ようこそおいで下さいました」

「ハリス、元気そうでよかったわ」

 ハリスと呼ばれた執事はティーナの手を取ろうとしたがすぐに自分の手を組む。

「……私はこの通りです。エレナ、お嬢様にお変わりは?」

「変わらぬように見えますか? ……それより、遠くからわざわざ出向いたというのにこれはどういうことですか。お嬢様はすでにファーデン家へ身をおいているのですよ。この無礼はお嬢様だけでなくファーデン家への無礼になるということをお忘れなのですか」

 エレナさんが強くいうとハリスはすぐに頭を下げた。

「……まことに申し訳ありません。奥様はトリストン様の行方がわからなくなってからというもの、ずっと部屋に籠りっきりでして……。旦那様も、ファーデン家から来るお嬢様と使いの者にはトリストン様を見つけてくるまで会わぬと伝えろなどと申しており……」

 さすがにティーナの前じゃ言えないが、よっぽど性根が腐ってるみたいだな。

「ティーナ、ここにいても仕方ない。さっさと手掛かりになりそうな物を探そう」

「は、はい。ハリス、何かお兄様の匂いのするものはありませんか」

「匂い……ですか? そういえば、トリストン様は最近お気に入りの香水が見つかったと申しておりました。さすがに鎧を着てては付けられぬと置いて行かれたはず」

「それを持ってきてもらえないかしら」

「かしこまりました。少々お待ちを」

 ハリスが香水を持ってくるとティーナはそれを受け取る。

「アンジェロ、この匂い覚えられる?」

「ワフッ……クシュンッ!」

 ティーナが持つ香水からアンジェロは即座に離れた。

「ははは、さすがに強烈すぎたようだな」

 もういいですと言う様にアンジェロは首を横に振る。

「ハリス、返すわね。それじゃあ私たちはお兄様を探しに行ってきます」

「……お、お待ちをッ! お嬢様も向かわれるのですか!?」

「当たり前です。ファーデン家の皆様にご迷惑をお掛けすることなどできませんから」

 屋敷を出ると俺たちは馬車に乗り一度宿屋へ戻った。

「それじゃ捜索は明日の朝から始めるから今日はゆっくり休んでくれ」

「少し緊張しますね……私はついて行くだけだというのに……」

「大丈夫、何かあれば必ず俺が守ってやる」

「……ふふ、リッツさん、それはニエさんに言ってあげてください」

「こいつには言葉より行動で示すしかないんだよ。俺の近くで死なれちゃ困るからな」

 ニエをみると相変わらずニコニコとしている。

 はぁ、まったく……。

「お嬢様、戻ったら色々とやることが詰まっております。お早めのご帰宅をお願いしますね」

「うー……こんなときくらい忘れさせてよぅ……」

「待っている間にもお嬢様のスケジュールは進むのです。ただでさえ出遅れているのですから、人の倍以上に覚えていかねばメリシャ様のようにはなれないのですよ」

「だったら大急ぎで帰ってやらないといけないな」

「ワン!」

「ア、アンジェロ助けてぇ~っ」

 翌朝、エレナさんを宿屋に残し俺たちはトリストンが設営していたキャンプ地へと向かった。
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