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46話
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俺は新たな問題に直面していた。教会で販売していた薬草が市場の回復薬を上回ってしまい、一種の混乱を招いてしまったのだ。
うーん、もう少し雑にって言われても……。
原因はどうやら俺がしていた栽培方法にあったらしい。一見乱雑に生えているように見える薬草だが、無駄なく完璧な配置をしておりぐんぐん薬草が栄養を吸収し育った結果、市場でいう高級回復薬の素材――要は一等級の薬草が出来上がっていた。
そもそも薬草を栽培する者など滅多にいないため、たまたま品質のいい物が高級回復薬として出回るのだが――。
「珍しいな、お前が悩んでるなんて」
「あ、ウェッジさん……薬草の品質を落とせないかと言われたんですが、だからといって手を抜くなんてことはしたくないんですよ。だけどこのままだと前みたいに子供たちが危険な目にあうかもしれないし……はぁ……」
「だったらどっちも解決するしかないだろ。お前が栽培方法を教えて、教会は暇なヤツに護衛させるとか、売り物なんざ教会ブランドで押し通せばなんとかなるんじゃねぇか?」
「そんな大雑把な……いや待てよ……教会の子供たちが丹精込めて作った薬草だからこそ効果が高いと思えば……。ついでに『紅蓮の風』から一人か二人護衛を回してもらえば魔物が来ようと問題はない……」
ローテーションで護衛をお願いして契約金を出せばみんなも納得してくれるはずだ。これなら誰も損をしないし安全策もばっちりだろう。
「ウェッジさんさすがです。これなら心置きなく草を栽培できますし教会の安全策にもなる!」
俺はすぐに教会へ向かった。
「――ということで、これなら品質を落としてわざわざ売る必要もないですし、なんなら子供たちのために販売額を上げてもいいんじゃないかなと!」
「ありがたい話ですが皆様お忙しいんじゃないでしょうか? 毎日ボロボロになって戻ってきてるようですし……」
「それは気にしないで、むしろ喜んで引き受けてくれると思うよ。鍛錬以外であれば休みに感じる人たちだから」
実戦に向けた鍛錬の中では休憩などない。師匠は「鍛錬が当たり前になれば自ずと休める」と言っているが未だにその域に達した者はいなかった。
「それならよろしいのですが、最近道具屋から薬草を買い占め、高額で売り付けていたグループが摘発されたそうなんです。しかし一部ではまだまだ薬草が不足しているらしく、護衛をつけてもらえるというのであればもう少し薬草の収穫量を増やしたいのですが」
「構わないよ、子供たちも手伝ってくれているしやりがいも増えるだろう」
無事に話もまとまり家に戻るとみんなに説明した。
「よっしゃ! まずは俺から行こう!」
「悪党面のお前がいったら子供が泣くだろ。まずは子供たちの心を掴む必要があるし適任な奴をだな……」
みんなが顔を見合わせると一人だけ騎士の鎧を着たまま座っている者に視線が集まる。
「お前、確か教会の孤児出身だったよな。コイツでいいんじゃねぇか?」
フルフェイスの兜を付けたまま騎士は反応する。
「お、俺は無理だよ! 子供なんてとてもじゃないが相手にできないし、団長以外の女性となんてまともに話せるかも難しいんだ」
「何言ってやがる。この中で一番若いのはお前だし何事もやってみりゃいいんだよ。それともなんだ、団長は女性に入らないってのか? そりゃあお前、いくら鍛錬中の団長が鬼にしか見えないといっても、そこらの連中よりずっと美人だろ。あれで中身まで見た目通りだったら」
「ほう? どこがどう違うのか聞かせてもらおうか」
男の肩に師匠の手が乗ると一気に緊張が張り詰める。
「リッツ様、ただいま帰りました!」
「ワフッ!」
「……や、やぁみんなおかえり! さぁて俺は夕飯の支度をするか!」
勢いに任せ部屋を出ようとした俺の襟を師匠が掴む。
「ニエちゃん、みんなと大事な話があるからリッツは後で返すわね」
「わかりました。リッツ様、代わりに支度はしておきますね!」
ニエとアンジェロが軽やかな足取りで出て行くと全員が正座を始めた。
うーん、もう少し雑にって言われても……。
原因はどうやら俺がしていた栽培方法にあったらしい。一見乱雑に生えているように見える薬草だが、無駄なく完璧な配置をしておりぐんぐん薬草が栄養を吸収し育った結果、市場でいう高級回復薬の素材――要は一等級の薬草が出来上がっていた。
そもそも薬草を栽培する者など滅多にいないため、たまたま品質のいい物が高級回復薬として出回るのだが――。
「珍しいな、お前が悩んでるなんて」
「あ、ウェッジさん……薬草の品質を落とせないかと言われたんですが、だからといって手を抜くなんてことはしたくないんですよ。だけどこのままだと前みたいに子供たちが危険な目にあうかもしれないし……はぁ……」
「だったらどっちも解決するしかないだろ。お前が栽培方法を教えて、教会は暇なヤツに護衛させるとか、売り物なんざ教会ブランドで押し通せばなんとかなるんじゃねぇか?」
「そんな大雑把な……いや待てよ……教会の子供たちが丹精込めて作った薬草だからこそ効果が高いと思えば……。ついでに『紅蓮の風』から一人か二人護衛を回してもらえば魔物が来ようと問題はない……」
ローテーションで護衛をお願いして契約金を出せばみんなも納得してくれるはずだ。これなら誰も損をしないし安全策もばっちりだろう。
「ウェッジさんさすがです。これなら心置きなく草を栽培できますし教会の安全策にもなる!」
俺はすぐに教会へ向かった。
「――ということで、これなら品質を落としてわざわざ売る必要もないですし、なんなら子供たちのために販売額を上げてもいいんじゃないかなと!」
「ありがたい話ですが皆様お忙しいんじゃないでしょうか? 毎日ボロボロになって戻ってきてるようですし……」
「それは気にしないで、むしろ喜んで引き受けてくれると思うよ。鍛錬以外であれば休みに感じる人たちだから」
実戦に向けた鍛錬の中では休憩などない。師匠は「鍛錬が当たり前になれば自ずと休める」と言っているが未だにその域に達した者はいなかった。
「それならよろしいのですが、最近道具屋から薬草を買い占め、高額で売り付けていたグループが摘発されたそうなんです。しかし一部ではまだまだ薬草が不足しているらしく、護衛をつけてもらえるというのであればもう少し薬草の収穫量を増やしたいのですが」
「構わないよ、子供たちも手伝ってくれているしやりがいも増えるだろう」
無事に話もまとまり家に戻るとみんなに説明した。
「よっしゃ! まずは俺から行こう!」
「悪党面のお前がいったら子供が泣くだろ。まずは子供たちの心を掴む必要があるし適任な奴をだな……」
みんなが顔を見合わせると一人だけ騎士の鎧を着たまま座っている者に視線が集まる。
「お前、確か教会の孤児出身だったよな。コイツでいいんじゃねぇか?」
フルフェイスの兜を付けたまま騎士は反応する。
「お、俺は無理だよ! 子供なんてとてもじゃないが相手にできないし、団長以外の女性となんてまともに話せるかも難しいんだ」
「何言ってやがる。この中で一番若いのはお前だし何事もやってみりゃいいんだよ。それともなんだ、団長は女性に入らないってのか? そりゃあお前、いくら鍛錬中の団長が鬼にしか見えないといっても、そこらの連中よりずっと美人だろ。あれで中身まで見た目通りだったら」
「ほう? どこがどう違うのか聞かせてもらおうか」
男の肩に師匠の手が乗ると一気に緊張が張り詰める。
「リッツ様、ただいま帰りました!」
「ワフッ!」
「……や、やぁみんなおかえり! さぁて俺は夕飯の支度をするか!」
勢いに任せ部屋を出ようとした俺の襟を師匠が掴む。
「ニエちゃん、みんなと大事な話があるからリッツは後で返すわね」
「わかりました。リッツ様、代わりに支度はしておきますね!」
ニエとアンジェロが軽やかな足取りで出て行くと全員が正座を始めた。
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