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26話
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馬車から外を眺めていると風に乗って独特な臭いが流れてきた。
「クシュッ……クシュンッ!」
アンジェロはしかめっ面をして俺をみてくる。
「はははっ、この臭いは油の臭いだな。慣れるまでの辛抱だ」
嗅覚の鋭いアンジェロには特にキツイと思うが我慢してもらうしかないな。
アンジェロを慰めるように撫でていると、大きな建物が連なり煙を出し続けていた。
「あれ……ないぞ……ないないない! 草木が全然ないじゃないかあああああああ!」
「この辺りは鉱石が多いだけじゃなく山には油田もあるからな。ほかの国と違って自然はほとんどないが、変わりに輸入物が多いのが特徴だ」
賊の姿をしたシルエが説明し、そのまま馬車は慣れたように門を通る。
「うへぇ~……緑がないよぉ……」
「ワフゥ……」
こりゃあ気が滅入るな……色がほしいよ色が……。
アンジェロと共に項垂れていると大きな時計塔が見えたが、大通りを離れ宿の前で止まった。
「今日はこの辺りで様子をみよう」
周りを警戒しつつ宿に入る。
「さて、俺は情報収集に行ってくる。外に出てもいいが目立つ行為だけは控えてくれ」
「わかってる、大人しくしているよ」
家具や床が木造りなのが唯一の救いだろう。
夜になり部屋で夕食を食べていると外で大きな音が響く。
「な、なんだ今の音……」
窓から外を見てみると大きな煙がみえる。
爆発か? ……怪我人がいるかもしれないな。
「アンジェロ、ちょっと様子を見てくるから待っててくれ」
「ワフッ」
煙のするほうへ走ると人だかりができていた。
「まったく懲りないもんだねぇ」
「こううるさくちゃおちおち酒も飲んでられねぇよ」
人混みをかき分け前に出ると、鍛冶場で人が壁によりかかるように倒れている。作業着姿でゴーグルを付けたまま動かない。
「おい、しっかりしろ!」
声を掛けるとゴーグルの中の目が開かれる。
「……また失敗……ん? お兄さん、誰ッスか?」
この声、女性だったのか。
「君が倒れていたから声をかけさせてもらった。怪我はしていない?」
「いつものことなので大丈夫ッス! ほらこの通り」
元気よく立ち上がろうとした女性は顔を歪め脇腹を抑える。
「お、おい、無理をするな!」
回復薬を取り出し渡そうとするが女性は受け取らない。
「新手の押し売りッスか、その手には……乗らないッスよ」
女性は無理に立ち上がろうとするがよほど痛いのか呻きながら壁に背を戻した。
別に金なんかとらないって……うーん、無理やり飲ませるか?
「カーラ! また勝手なことをしやがって、今日という今日は許さねぇぞ!」
声がしたほうを見ると人混みをかき分けるように男性が出てくる。
「そこのボンクラ野郎! てめぇらに払う金なんざねぇんだ! とっとと出て行け!!」
なんだこの酔っ払い、喧嘩腰にもほどがあるぞ。
「このくそ親父! 他所から来た人間の区別もつかねぇッスか!?」
父親だったのか、面倒なことになりそうだな……。
「あー今出ていきます。ねぇ君、これ、お金はいらないから飲んでね。味も効果も保証するよ」
カーラと呼ばれた女性の横に隠すように薬を置くとその場からすぐに立ち去った。
「ただいま~」
「ワフッ」
宿に戻り出迎えてくれたアンジェロを撫でているとシルエが戻ってくる。
「何か爆発があったらしいが大丈夫だったか?」
「様子を見に行ったけど酔っ払いに絡まれたから逃げてきたよ。そっちのほうはどうだった?」
「それらしい情報はなかったが、どうやらこの国では魔物が頻繁に出没しているらしい」
「魔物か~、あいつらしぶといからなぁ」
「もう二、三日探って何もなければまずは城へ向かおう」
それから数日、組織について情報は得られなかったため俺たちは城へ向かうことにした。
「クシュッ……クシュンッ!」
アンジェロはしかめっ面をして俺をみてくる。
「はははっ、この臭いは油の臭いだな。慣れるまでの辛抱だ」
嗅覚の鋭いアンジェロには特にキツイと思うが我慢してもらうしかないな。
アンジェロを慰めるように撫でていると、大きな建物が連なり煙を出し続けていた。
「あれ……ないぞ……ないないない! 草木が全然ないじゃないかあああああああ!」
「この辺りは鉱石が多いだけじゃなく山には油田もあるからな。ほかの国と違って自然はほとんどないが、変わりに輸入物が多いのが特徴だ」
賊の姿をしたシルエが説明し、そのまま馬車は慣れたように門を通る。
「うへぇ~……緑がないよぉ……」
「ワフゥ……」
こりゃあ気が滅入るな……色がほしいよ色が……。
アンジェロと共に項垂れていると大きな時計塔が見えたが、大通りを離れ宿の前で止まった。
「今日はこの辺りで様子をみよう」
周りを警戒しつつ宿に入る。
「さて、俺は情報収集に行ってくる。外に出てもいいが目立つ行為だけは控えてくれ」
「わかってる、大人しくしているよ」
家具や床が木造りなのが唯一の救いだろう。
夜になり部屋で夕食を食べていると外で大きな音が響く。
「な、なんだ今の音……」
窓から外を見てみると大きな煙がみえる。
爆発か? ……怪我人がいるかもしれないな。
「アンジェロ、ちょっと様子を見てくるから待っててくれ」
「ワフッ」
煙のするほうへ走ると人だかりができていた。
「まったく懲りないもんだねぇ」
「こううるさくちゃおちおち酒も飲んでられねぇよ」
人混みをかき分け前に出ると、鍛冶場で人が壁によりかかるように倒れている。作業着姿でゴーグルを付けたまま動かない。
「おい、しっかりしろ!」
声を掛けるとゴーグルの中の目が開かれる。
「……また失敗……ん? お兄さん、誰ッスか?」
この声、女性だったのか。
「君が倒れていたから声をかけさせてもらった。怪我はしていない?」
「いつものことなので大丈夫ッス! ほらこの通り」
元気よく立ち上がろうとした女性は顔を歪め脇腹を抑える。
「お、おい、無理をするな!」
回復薬を取り出し渡そうとするが女性は受け取らない。
「新手の押し売りッスか、その手には……乗らないッスよ」
女性は無理に立ち上がろうとするがよほど痛いのか呻きながら壁に背を戻した。
別に金なんかとらないって……うーん、無理やり飲ませるか?
「カーラ! また勝手なことをしやがって、今日という今日は許さねぇぞ!」
声がしたほうを見ると人混みをかき分けるように男性が出てくる。
「そこのボンクラ野郎! てめぇらに払う金なんざねぇんだ! とっとと出て行け!!」
なんだこの酔っ払い、喧嘩腰にもほどがあるぞ。
「このくそ親父! 他所から来た人間の区別もつかねぇッスか!?」
父親だったのか、面倒なことになりそうだな……。
「あー今出ていきます。ねぇ君、これ、お金はいらないから飲んでね。味も効果も保証するよ」
カーラと呼ばれた女性の横に隠すように薬を置くとその場からすぐに立ち去った。
「ただいま~」
「ワフッ」
宿に戻り出迎えてくれたアンジェロを撫でているとシルエが戻ってくる。
「何か爆発があったらしいが大丈夫だったか?」
「様子を見に行ったけど酔っ払いに絡まれたから逃げてきたよ。そっちのほうはどうだった?」
「それらしい情報はなかったが、どうやらこの国では魔物が頻繁に出没しているらしい」
「魔物か~、あいつらしぶといからなぁ」
「もう二、三日探って何もなければまずは城へ向かおう」
それから数日、組織について情報は得られなかったため俺たちは城へ向かうことにした。
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